真・ゲッターロボ ~黒き獣の在り方~   作:陰猫(改)

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第八話"ジャパニーズマフィアの交渉術"

 修次はブラックゲッターから降りると遅れてやって来たアドレナ達と合流する。

 

「ツキオカ!」

 

 アドレナが駆け寄り、修次に抱き着くと修次は何とも言えぬ表情をした。

 

「……すまないが、離れてくれないか?」

「あっと!すまないな!

 嬉しくて、つい……」

「……嬉しい、だと?」

 

 そのアドレナの言葉に修次は静かな怒りを感じると彼女を強引に引き剥がし、マウントGに破壊された町並みへと振り返らせる。

 

「……お前にはこの惨状が解らないのか?」

「あ」

「おいそれと嬉しいなんて言葉は使うんじゃない。

 あのガキなんかを見てみろ。母親と右足持ってかれているんだぞ?」

 

 修次はそう告げるとシュンとして俯くアドレナから視線を外し、周りを見渡す。

 

 マウントGが残した傷痕は大きい。

 

 焼け爛れた皮膚を引き摺る女性。

 

 目や口から出血し、腸がはみ出した男性の屍。

 

 焼け焦げたアスファルトと瓦礫の上で独り泣く少女。

 

 そこはまさに地獄絵図であった。

 

「うちでも保護するが、お前のところでも保護しろ。これは俺達の失態だからな」

「……ああ。解った」

 

 修次にそう言われ、アドレナは真剣な表情で頷く。

 

 そこには先程までの少女の様な微笑みはなく、一人の戦士としての顔があった。

 

「だがな、ツキオカ。今回の発端は私達ーー米軍の生き残りのミスだ。

 そちらで見て貰う必要はない」

「……そうか」

「そう言う訳でブラックゲッターは此方で回収する」

 

 その言葉に修次は眉を潜めたが、すぐにアドレナに銃を突き付けられている事に気付く。

 

「出来れば、こんな真似はしたくなかった」

 

 アドレナは残念そうにそう言うと修次から距離を取る。

 

「ブラックゲッターは我々が改修したんだ。

 それにプラズマ駆動エンジンの取り換えも此方にしか出来ない」

「……アドレナ」

「これは命令だ。ブラックゲッターを差し出せ」

 

 アドレナは銃を突き付け、修次を威嚇する。

 

 そんなアドレナに修次はおかしそうに肩を震わせて笑う。

 

「何がおかしい?」

「いや、すまん。お前があまりにも下らない命令をするもんでな?」

「なに?」

「ブラックゲッターはそちらの好きにしろ。俺達には不要だ」

 

 その言葉に今度はアドレナが眉を潜めた。

 

「構わないのか?」

「ああ。お前の言う通り、ブラックゲッターはそちらでしか整備出来ない。

 月岡組もーーいや、日本の極道だけでは保管するだけで手一杯だろう」

「……そうか」

「だがな、アドレナよ?その次はどうする?

 お前達は自分達の生活で手一杯だと言うのに難民や負傷者も受け入れたとなれば、生活用品なんかに困るだろう?」

「それはーー」

「だから、取り引きと行こう」

「取り引き?」

 

 アドレナがおうむ返しに尋ねると修次は笑みを浮かべたまま頷く。

 

「確かに此方にはブラックゲッターの整備は確かに出来ない。

 だが、医療器具や日用品には充実している」

「……ふむ」

「それに加えて、難民も此方で少なからず、受け入れよう」

「見返りは?」

「緊急を有する際のブラックゲッターの使用だ」

 

 修次の提案にアドレナはしばし考え込むと、すぐに首を左右に振って溜め息を吐く。

 

「ならば、難民の件も此方で命令するだけだ。

 立場が解ってない様だが、ツキオカの命は今、私が握っているんだぞ?」

「いいや。お前に俺は殺せない」

「確かにツキオカには義理がある。だがーー」

「勘違いするな。恩義がどうとかじゃない。

 お前達で言うジャパニーズマフィアだからって事だ」

 

 修次はそう言うと不敵な笑みを浮かべ、アドレナを見据える。

 

「殺られたら殺り返す。それがヤクザもののやり方だ。

 そんな事になって見ろ。難民の受け入れどころか、月岡組とのタマの取り合いだ。

 そんなところを真下みたいな奴がまた狙って来たら、どうする?」

 

 その言葉にアドレナは迷う。

 

 そんなアドレナに修次は更に続けた。

 

「ブラックゲッターはな。

 流竜馬ーーかつてのパイロットが独学で改造した専用機だ。並みの奴には当然、動かせん。

 ゲッター線で知識を得た俺を除いてな?」

「……私を脅すのか?」

「言ったろう?やられたら、やり返すのが、ジャパニーズマフィアだってな?」

 

 そう言うと修次はアドレナに答えを求める。

 

「さあ、選べ。命令か交渉か、それとも戦争かをな?」

 

 その言葉にアドレナはもう一度溜め息を吐くと銃を下ろす。

 

「降参だ。私達はツキオカの所属するマフィアと交渉しよう」

 

 アドレナがそう言うと修次は米軍が持ってきたバイクに跨がる。

 

「交渉は後日、改めてやるぞ」

「此処じゃ駄目なのか?」

「難民の受け入れとなると義親父の許可が必要だからな。

 流石に若頭の俺だけの力じゃ無理だ」

「解った。此方の医療品が無くなる前に頼む」

「ああ。任せて置け」

 

 修次はそう言うとバイクに乗って、その場を後にした。

 

「いいんですか、リーダー?」

 

 そんなアドレナに米兵の一人が尋ねる。

 

「何がだ?」

「ジャパニーズマフィアと手を組むんですよ?」

「そうだな。普通ならマフィアと連携するなど、あってはならない事だ」

「解っているのなら良いのですが、指揮にも関わります。

 申し上げ難いのですが、あまり、あの男に心を赦すのは如何なものかと……」

 

 そう言われ、アドレナは周囲の仲間を見る。

 

 その目には確かに迷いや侮蔑のものがあった。

 

 なので、アドレナははっきりと告げる。

 

「異議のある者は前へ出ろ。但し、ツキオカの提案を覆せると言う答えを持つ者だけだ。

 それ以外は大戦士シュワルツの名の元に沈黙し、私に続け」

 

 その言葉に誰も前に出ようとはしない。

 

 そんな仲間にアドレナは諭す。

 

「確かに他のマフィアなら、一ヶ月位経って此方が衰弱した頃を見計らってから多額の請求なりして来るだろう。

 だが、ツキオカ達は違う筈だ。

 それは先のジャパニーズマフィアを見て、皆、解っているだろう?」

 

 アドレナはそう言うと仲間の肩に触れる。

 

「我々にはブラックゲッターがある以上、交渉はされる。

 それでも、もしもツキオカ達が約束を破ったり、多額の請求などをしてきたのなら、私は皆の慰みものになろう」

 

 その言葉に異議を唱える者はおらず、代わりに彼女を崇拝する者や獰猛な眼で見る者が現れる。

 

 そんな仲間にアドレナは毅然とした態度で接した。

 

 その姿はカリスマ的な物であったと言う。

ヤクザが主役のバイオレンスものの黒い獣はR-15でなく、R-18にした方が良いでしょうか?

  • R-15で大丈夫でしょう
  • いやいや、R-18になるでしょう

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