連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
主人公、参戦。
と見せかけて今回はまだ戦いません。
本当に申し訳ないと思っている。
―――……鈍い音が鳴り響いている。
―――……幾度も幾度も、空を穿つかのように。
―――……それが何から生まれているか、考える間もなく次々と。
「こ、のクソガァアア……!!」
ライザーの拳が人龍に突き刺さる。
岩をも砕くはずのその一撃は、しかし多少の傷を与えただけにとどまる。怯みを見せない人龍が爪の薙ぎ払いを繰り出すのに合わせ距離を離すも、すかさずもう片方の爪が伸びてくる。
それを蹴りで振り払い、勢いを利用して肘鉄を放つ。それは攻撃をいなされ不安定な体勢の人龍の横っ面に突き刺さり、大きく敵を吹き飛ばす。
「鬱陶しい……どれだけタフなんだこいつ」
一見対等な格闘を繰り広げているように見えるこの戦い。
しかしこれは先程から散々繰り返されてきた、いわば焼き増しのようなやりとりにすぎない。
ライザーの消耗もあるが、その最大の原因は人龍の防御力にある。
戦いながらも観察を続けた結果、倍加の力ももう打ち止めのようで今以上に強くなる気配はない。だが、それまでの強化で既に装甲が並みの攻撃では歯が立たないほどに強度になってしまっている。
本能に任せた乱雑な攻撃は問題ではないが、ただその一点。その一点が勝利を阻む高い壁となっている。
(……それ故に、その一点さえ攻略できれば)
もう一度最大火力の炎球に捕らえることができれば確実に倒せる。そう確信してはいるが、その隙をこの人龍が許すとは考えられない。攻撃の体勢を整える前に邪魔されるのがオチだろう。よしんばできたとしても、今状態では精々十数秒だけ拘束できるかどうか。
決定打に欠けるライザーは、今まさしくじり貧という状況であった。
「―――関係ないな」
―――しかし、その状況においてもライザーの闘志に陰りはなかった。
確かに強敵ではある。
だが正気をなくし獣となった相手に、どうして恐怖を感じるだろう。
こいつには意思がない、本能が命じるままに力を振るうだけだ。
それはつまり、戦士ではないということだ。
「……ふん」
その戦士というのに思い当たるのが仇敵であることに思い至ったライザーは、心底面白くないというような表情をして鼻を鳴らす。
構えを維持し、体勢を立て直した人龍へともう一度攻撃を仕掛ける。
―――その時であった。
何かが高速で迫ってくる、その気配を感じとったライザーは咄嗟に身を翻す。
それはまるでライザーのその動きを予測していたように体スレスレをすり抜けその先にいた人龍へと喰らいかかった。
目の前の相手にしか注意しておらず、反応の遅れた人龍はその一撃をまともに受けるしかなく、
「―――ギィヤアアァアアァアアア!!!!!!」
それは咄嗟に出した右腕を深々とえぐり、堅固なはずのその外装を切り裂いて腹部へと突き刺さっていた。
予想外の痛みに混乱したのか、翼の制御を失った人龍は呻き声を上げながら落下していく。
高度を落としていく人龍に突き立てられたその武器を見て、ライザーは思わず呟いた。
「槍……だと?」
そしてそれが放たれたと思われる方向、地上へと視線を向けそれを行った人物へ即座に顔を向ける。
そこには今まさに投擲を行った体勢で、空にいる自分に視線を向けている。その顔にある挑発するかのような笑みに、ライザーはこの攻撃の意味を察する。
「やはり貴様か……! 旗本奏平……!!」
たった一撃で自分よりも深い傷を負わせたという驚きなどもはやどうでもいい。
あのスレスレの軌道で自分に回避をさせたことにも意味があることになど、もうどうでもいい。
それよりも先に、もう一度こちらで戦いの主導権を握らなければ。
「横取りする気かぁ……貴様ぁ!!」
またあのときの、最初の時のように。
―――あの時、最初の時、先に逃げ出した悪魔を倒したのは奴だった。
自分との戦いの中でも、本来の目的を忘れず勝利を掴み取ったのは奴の方だった。
引き分けなどではない。
断じて、引き分けではないのだ。
だから勝ちたかったのだ。
もう一度戦い、今度こそ勝利しなければならなかったのだ。
「先約はこちらだろう、忘れたか旗本奏平!!!」
全力で戦い、勝敗を着けるのは自分が先だ。
それをこんな、こんなふざけたような相手に対して使う気なのだ。
奴が自分に使うはずだった、全力の、奥の手を!!
「―――悪いなライザー、こっからは俺の番だ」
聞こえるはずのない上空で、聞こえるはずのない声が聞こえた。
落ちていく人龍のその先にいる奴が、また新たに構えを取る。
顔を隠すように掲げたその手から、青白い光が発生しその体を包み、次の瞬間―――
―――全身を鎧で覆った、仮面の騎士がそこに現れた。
「……何ということだ」
その姿を見たライザーは悟る。
自らが認め、越えんとする戦士がその真の力を解き放ったのだということを。
同時に沸き上がる歓喜の感情。
挑むべき男の洗練された力の象徴とでもいうべきその姿から感じる瀑布のような圧力に、頭の先から末端まで痺れが広がり動き出すことができなかった。
だからこそライザーは暴れまわるその感情に逆らわなかった。
人龍を追うことを止め、その場に留まることを選んだのだ。
そして戦いを終わらせる権利を地上の好敵手へと渡すことを決め、その行く末を見守るべく静観の構えを取る。
―――そして始まるのは、異端と原典、両雄主人公によるぶつかり合い。
【タイコの戦士】旗本奏平
対
【人龍】兵藤一誠
勝負―――開始。
読了ありがとうございました。
次回はほんと、本当に戦わせますんで、勘弁してください。
ちなみに、槍はフィーバー状態で投げています。
あとは分かるな?