連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~   作:アゲイン

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どうも、アゲインです。

今回でイッセーくんとの戦いは終わりです。



幕引きの一撃、勝者は地に伏す敗者に構わず

 

 数えるのも嫌になるくらいの斬撃の雨あられ。

 それに身を晒され、もはや元の面影がないほどの姿となった兵藤は、全身から夥しい血を流しながらそれでもまだ息をしていた。

 翼はもがれ、尻尾も半ばから切断されている。

 流石に足が持たないのか、地面に膝をついてはいるがそんな姿であっても未だに戦意が衰えていないことがこちらを睨み付けてくるその眼から窺い知れる。

 しかしそれに反して手を出してこない、不気味な静けさを持っている。

 その原因に思い当たることがある俺はしばし攻撃の手を緩め、奴が持つ最後の手段であろう魔力が蓄積されつつある箇所へと目を向けていた。

 

「ドラゴンブレスってやつか? こそこそと面倒なことを……」

 

 ガードの奥、眼光潜むその影の中で燻るように。

 牙のシルエットを浮かび上がらせて、伝説的代名詞とも言える一撃が準備されている。

 この野郎、身を守るふりをしながら堂々と一発逆転の手段を進めていたのか。身を削られながらもそういうことができるとは、案外頭は冴えてはいるみたいだな。

 起死回生の一撃だが、そうと分かっていれば避けられないものでもない。所詮はブレス、直線上にしか攻撃できないのだ。脅威ではあれど対処できないほどでもない。

 しかし、これはこれでありがたい。

 

「依頼的には好都合だ。いいぜ、受けて立つ」

 

 恐らくあれが最後の手段、残る魔力を振り絞った一撃のはず。

 もう少し攻撃を重ねてからと思っていたが自分から手放してくれるなら願ったりかなったりってもんだ。

 

 最初のプランとしてはこのまま削り続けて弱ったところを一発デカイ波長を叩き込むことで戦闘不能にするつもりだった。

 何せ龍の魔力で出来た鎧だ、暴走している本人を大人しくさせようにもその強力な魔力によって中まで波長が通らねぇ。だからまずその外装をぶち壊す必要があった。

 俺の目算ではまだ少し時間が掛かるはずだったんだが、逆に自分からその魔力を手放してくれるならこれほど好都合なこともない。

 あれほどの魔力が蓄積されたブレスなのだ、その後の硬直はこれまでとは比較にならないほどに大きいはず。

 そして何よりも―――

 

 

「―――ライザーの野郎から横取りしといてこのままってのもどうかと思ってたんだ、どうせだから真っ正面から叩き潰す。テメェはこのまま、良いとこなしで退場しろ」

 

 

 テメェが決めてきた覚悟の、その薄っぺらさ。

 自分の力があれば、どうにかなるとでも思ってたか?

 年単位での修練をやり続けたライザーを、悪魔になって間もない運だけのお前の力で倒せるとでも思ったか?

 

 

 ……甘いなぁ、甘すぎる。

 

 

 俺たちがどれだけの時間を費やしてこの姿になることができたのか、テメェは知らねぇ。

 俺たちがどれだけの苦痛と困難を乗り越えてきたのかをテメェは理解できねぇ。

 この姿は、この鎧は、俺たちにとってそれこそ血と汗と努力の証。

 

 

 

 

 

 

 ―――それをただ幸運に恵まれただけの奴が、何故何の努力もなしに手に入れている?

 

 

 

 

 

 

「ふざけてんじゃねぇぞ。

 ふざけてんじゃねぇぞ……おいっ……!!

 ここだ……こいよ、ど真ん中だっ!!

 盾についちゃあ特にどうということもねぇ、ただ堅いだけの何の変哲もない初期装備ってやつよ。

 逃げも避けもしてやらねぇ。

 だからさっさと―――撃ってこい。その御大層な一撃が、どれだけ無意味なものかってのを分からせてやる」

 

 だから―――やるのだ。

 たとえそれがどんだけ馬鹿げていようとも、ここでそれを証明する。

 決して、決して退くことはできない。

 ここで安易な道を選び、早々に勝負をつけることは簡単なことだ。

 だがそれは、この道を進むと決めた自分を否定することになる。

 立ち向かうと決め、歩んできた道筋に一つの汚点を残すことになる。

 それだけはできない。

 

 この暴力を見逃すならば、もう俺は戦士ではない。

 俺は戦士だ。たとえ誰が否定しようとも、俺自身がそう自分を定義している。

 そして戦士とは、何もできない相手をいたぶり殺す者のことをいうのではない。

 それが獣であろうとも、一矢報いるその牙を有するならば。

 受けよう、受けてみせよう。

 そしてその上で、テメェに示そう。

 

「俺は旗本奏平、又の名を『タイコの戦士』と自称する男だ。

 この姿、この有り様をよくその目に焼き付けておくがいい。

 お前が未練も見せずに棄てた、人間っていう弱っちぃ存在が、たった一つの願いのために心血を注いでたどり着いたものこそが、この姿なんだからな」

 

 目の前の相手には決して届いてはいないだろうが、それでもこれだけは言っておきたかった。

 そんなこちらの意図を理解はしていないだろうが、奇しくも奴が狙いをつけたのは的の大きな俺の盾であった。

 

 ジリジリと高まる緊張感。まるでミサイルにでも狙われているかのような感覚だ。それが今か今かと、発射される時を待ち望むかのようにして魔力を集束させていく。

 それと同時に突き刺さる視線に宿るものが、言葉などよりも如実に奴の心境を語っている。

 だからこそ、合図は要らなかった。

 

 

 

 ―――咆哮と共に、紅蓮に染まった息吹が放たれる。

 

 

 

 絞りカスの状態から放たれたとは思えないほどのその一撃は、もはや巨大な壁そのものであった。

 地面を消滅させながら、数瞬と待たず極炎が盾の表面へと到達する。音で表現するならば、ジュワリというような容易さで大地を溶かすその一撃。触れれば即死は免れないと、目に見えて理解させる。

 殺ったと、確実に殺したと、人龍は手応えをもって確信する。

 この一撃を受けれるわけがないと、本能が邪魔者の死に歓喜をあげる。

 もういい、もうこいつは十分だ。さあ、次は空のあいつだ。今度こそ殺してやる。

 ブレスを止めた人龍の意識は既に目の前の存在ではなく、上空にいるライザーへと向けられていた。

 

 

 

 

 ―――だがそれはあまりにも、旗本奏平という男を過小評価し過ぎている。

 

 

 

 

「―――おい」

 

 ビクリ、と。

 聞こえるはずがないその声が人龍の耳に届き、思わずその体が震えを発してしまった。

 ライザーに向けられていた視線が上から前へと、自然に下がっていく。

 その先に、地面が融解し蒸気が立ち上るその中を―――

 

 

 

「何だよ、もう少しやってくれるもんかと思ってたがこんなもんかよ。正直拍子抜けだな、ドラゴンって奴もよ」

 

 

 

 ―――前に構えた盾以外に一切傷を負うことなく、堂々と。剣の一閃で煙を散らし、厚いベールを斬り開いて進み出てくるのは絶対のあり得てはならない存在。

 そいつは悪魔でも天使でも堕天使でもなく、ましてや神器使いですらない。それなのに、どうしてこいつは、こいつは……!!

 

 

 

 

 

 

「灰汁抜きはそろそろいいか、さあ―――」

 

 

 

 

 ―――往生せいや、クソドラゴン。

 

 

 その一撃に、もはや抵抗できるほどの余力が人龍には残っていなかった。

 鎧の男の姿が霞んだ、彼がそう思った瞬間に勝負はついていた。

 

「ふんっ!」 

 

 瞬く間に懐に踏み込んできた奴は、まず拳で顎をかちあげた。

 浮き上がる体が強制的に伸ばされ無防備になる、そこへすかさず叩き込まれる追撃。

 がら空きの胴体へと打ち込まれたその一撃が、鎧に致命的な罅を生じさせる。

 勢いのまま地面へ叩きつけられたかと思えば即座に跳ねあげられ、空中へと投げ出される。

 そして―――

 

 

 

「―――激震一閃、汝を穿つ」

 

 

 

 ―――この戦いの終わりを告げる、最後の一撃が放たれた。

 

 

 

「《大響吽(だいきょうこう)》」

 

 真っ直ぐな軌道を描いて繰り出した拳撃が、ひび割れた鎧の急所へと突き刺さる。

 拳に高出力で込められた波長はぶち破った鎧の内側へと浸透し、兵藤の本体へと作用していく。

 それにより乱れ狂う龍の魔力が沈められていき、人龍の姿を維持することができなくなった兵藤は殻が剥けるように自身を覆っていた鎧を霧散させていく。

 そして龍の支配より解き放たれた宿主は、その強力な力の代償というように意識を失い地面へと崩れていった。

 力なく倒れ伏す男を静かに見つめ、放った拳を解きほぐすと踵を返し歩き出す。

 

「……ちっ、踏み込みがいまいちだった。まだまだ改善の余地ありだなこりゃ」

 

 悪態を吐きながら、もう興味はないとばかりにその場を去り行く男の態度には戦いを切り抜けた疲労一つなく。

 これが勝者の姿と言わんばかりの、あまりにも堂々とした行進であった。

 

 

 

 

 後に残された敗者と、先に進む勝者。

 対照的な二人の姿が物語る、決着の光景。 

 ―――以上、勝負あり。

 

 




読了ありがとうございました。

二人の勝負はこのような形で一度終わりとさせていただきます。
次回の投稿でこの騒動の締めを行いたいと思います。
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