連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
また期間があいてしまいましたが、私は元気です。
「―――……さて、先ほどは木場君を止めて頂きありがとうございました。生徒会の長として、何より悪魔貴族の一人として、深く感謝致します」
―――と、いうような。
こちらに対して腰の低い態度で話を始めた生徒会長を名乗る女生徒、支取蒼那に促され備え付けのソファーに対面するように座っている。
あれから俺と木場は生徒会の奴らに連れられ、彼らの拠点である生徒会室へと場所を移していた。
隣には木場も同じように座っていて、項垂れるような姿勢で彼女の話を聞いている。
「まずはライザーとの関係解消を発端とした先日の事件、四大魔王の一人『セラフォルー・レヴィアタン』の妹、ソーナ・シトリーとして謝罪いたします。
本来無関係であったあなたにまで被害が及んだことはあってはならないことでした。
こちらも今代の赤龍帝があのようなことになるとは思わず、この全くの想定外の出来事に対応が遅れる結果となってしまいました。それも上位貴族の眷属が起こした事態を赤の他人に解決させてしまったこと、重ね重ね謝罪致します。
赤龍帝の彼は今も意識不明の重症を負いましたが、神滅具の暴走による後遺症を考えれば寧ろ軽いと言えるものでしょう。
そうなるように配慮した戦いをし、更には貴重な回復薬もお譲りいただけたというのも、ライザーから聞いています。
それについて、我々はあなたに感謝する立場であると認識しています」
先日の戦いのことを悪魔陣営側がどう扱うのか。
それを彼女は身分を示すことによって明らかにしてきた。
四大魔王―――という、立場上同格とされていると推測できる家の親族が、グレモリー家の代行として謝罪をしてきたというところだろう。
外交的なものを鑑みるに、グレモリー家側から”これで手打ちにしてくれ”、という申し出と受けとることができる。これはかなりの譲歩だろう。
本来であれば眷属であろうと、自陣の者を傷つけられたならばその落とし前を着けさせるのが悪魔というものだ。
しかし、それをしないということで報復の可能性がないことをこの女は言外に伝えてきている。
「私たちもこの不測の事態によって少々……そうですね、突き上げを食らっている、というのでしょうか。ライザーたちフェニックス家が率先して他の貴族を抑えてくれたことで暴動が起きることはありませんでしたが、それでも現状その対処のために各家は身動きができていません」
ふむ……ここまでのソーナ・シトリーの説明を自分なりに解釈すると、だ。どうやらあの一件で、グレモリーの立場的なものがかなりヤバイことになっているらしい。
まあ、あんなことになるなんて予想できるとは思えんが……しかしそうも言っていられんのが現状というか。兵藤の暴走がなければ話はもっと簡単だったのだろうが、それは俺がいた時点で回避はできなかっただろう。
あの場は、俺とライザーのためのものだった。
例えその前に、奴らの主がどうのこうのなっていようが、関係のない話だ。
それに、奴らのやり方も何だかんだ奇襲染みていたもんだからその点も印象が悪ぃんだろうよ。いくら魔王の奥さまだろうと、あまり好き勝手やっちゃ反感買うのは目に見えてる。
まあそのことを分かってんならそもそもやらかすような下手は打たねぇ、とどのつまりあいつら全員馬鹿だったってことになるんだが……さすがにここで言うことではないしなぁ。
まあそのツケを今払わされていると考えればいいだろう。当分は身動きが取れないというのなら、こちらの動きも制限できないってことになる……とするとだ。
「勿論、そちらが納得のいくような罰を彼には負ってもらうつもりです。今回の件で裏のことが表社会に流出してしまうかもしれなかったのですから、それなりに重いものを課すことができますよ。
―――木場君、覚悟はできていますね?」
こちらが脳内で考え事をしている内にも、会長の話は進んでいたようで。俺への状況説明が済んでいたかと思えば、その矛先が木場へと移り変わっている。
「……はい」
「本当に分かっているのですか? あなたがしたことは、リアスたちの立場を更に悪くしかねないものだったのですよ。
リアスが婚約破棄を望んだことはともかく、レーティング・ゲームの結果に納得がいかないからとあのように式場に乱入した兵藤君の決断は、最悪の決断でした。
あなたの行動も、それに匹敵するほどの愚行だったんですよ」
「……本当に、申し訳ありませんでした」
戦いの時の激情が鳴りを潜め、沈痛な面持ちで謝罪の意思を示している様子の木場。粛々と自らの罪状を受け入れている。
意気消沈といった有り様だが、彼女の言葉に少し疑問があったもので話に割って入る。
「ちょっと待て、さっきから聞いてると木場裕斗にばかり言及しちゃいるが、俺についちゃ何もねぇのが気になるな。俺も関係者な訳だし、こんな事態になったのも俺が受けて立ったからだろ? 兵藤一誠も、元はと言えば俺が原因と言っていい。
それについて、あんたはどう思うよ。『こいつが余計なことをしなければ』とか、思ってんじゃあねぇのかい?」
―――なぁ、悪魔の貴族さん。お友達を悲しませている奴が目の前にいて、あんたどうも思わないのかい?
「匙っ!! 止めなさい!!」
「……っですが会長!! こいつっ……!!」
見え透いた挑発に、背後に控えていた部下の一人が動こうとして直ぐ様彼女の止められた。
匙と呼ばれた生徒は怒りで顔を歪ませこちらを睨み付けている。体を強張らせ、制止の命令さえなければ今にも殴りかかってきそうなほどだ。
主の命令であれば自分の怒りすら抑え込んでみせるか。何とも美しい主従関係だこと、あいつらにも見習ってほしいくらいだ。
「……あなたも、あまりこのようなことは」
「OKOK、謝るよ。悪いね、こういう風に話し合いをしてくれる悪魔ってのは珍しいからつい意地悪をしちまった。
……で、どうなんだ? 俺の処遇は”おとがめなし”という判断でいいのかい」
両手を掲げて降参ポーズ。これも煽りに見えたのか後ろの奴がまた動きそうになるが、それもまた生徒会長の彼女に窘められる形で思い止まる。
「……おとがめなし、どころか報酬を出していい程です。上が混乱している状況ですので今ここで、ということは出来かねますが」
「ああ……まあそれはいいわ。あの場で一応契約結んでるし、代わりと言っちゃ何だがよ」
何かお望みはありますか、というソーナ・シトリー。
それならば、と俺は隣を指差して提案した。
「―――こいつをしばらく俺の預かりにしてくれりゃいい。そのほうがお前らも面倒がねぇだろ?」
「「「……は?」」」
いきなりの俺の提案に、固まるのは当然のことだろう。
それぞれがそれぞれの理由で驚いていて思考が追い付いていないようだ。まあ、内容が内容だ無理ないだろうが。
だが、その要求を拒否できるほど判断力が混乱している状態の彼らにある訳もなく。
そして―――
「……」
「……」
―――学園、放課後の帰り道。
他の生徒たちが既に帰宅し、もしくは部活に精を出しているだろう時間帯。
生徒会室から解放された俺と木場、お互いに口を開くこともなく黙々と歩いている。
先を行く俺の背中を追いかけるようにして、とぼとぼと着いてきている木場はこの状況をどう受けとればいいか分からないって顔をしていることだろう。
だがそれに、答えてやるほど親切でもなし。
それから十数分、歩くことしばし。
「ここだ」
「……」
目的地、辿り着いたその場所は。
―――俺の現在の拠点である、一軒家の前でだった。
読了ありがとうございました。
奏平の行動の真意とは如何に。