連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~   作:アゲイン

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どうも、アゲインです。

今回は生徒会二人に焦点を当てた話となっています。
彼女たちが奏平たちにどういうスタンスで対応していくかがきちんと書けていればよいのですが。



若輩者たちの踊る対談

 

 ―――木場と奏平の姿がなくなり、いつものメンバーだけとなった生徒会室。

 騒動の元凶たちがいなくなったことで軽くなった空気の中、今だ怒りが冷めやらぬ男が一人いた。

 

 ソファーから会長用の椅子に座り直したソーナ・シトリーだったが、その気持ちを落ち着かせる間もなく、眷属であり部下でもある男子生徒から先ほどのやり取りについて問い詰められていた。

 

「会長! どうしてあいつらを自由にしたんですか!! あんな危険な奴ら、こっちで監視しとかないと次何しだすか分かったもんじゃない!!」

 

 男子生徒の名前は匙元士郎、最近彼女の眷属になったばかりの転生悪魔である。貴族の御令嬢の部下になれたことに運命を感じている彼は彼女の夢に共感し、その実現のため研鑽の日々を過ごしていた。

 そんな彼だからこそ、今回の事態に憤っている。

 

「……匙、落ち着きなさい。ある意味でこの状況、悪くない。寧ろ良い方向に向かっているかもしれません」

「何を言って……あいつらは!! 片方は仲間を傷つけられた方で、もう片方はそれをやった奴なんですよ!

 それが原因でさっきの騒動が起きたっていうのに、その二人をよりにもよって一緒に行動させるって……一体何を考えているんですか!?」

 

 匙からしたら会長の判断は聡明な彼女に珍しく間違っているとしか思えないものだった。

 木場のやっていることが逆恨みだということを理解している匙は、その対象を近くに置いておくことがどういう事態を引き起こすのかを危惧していた。

 それが分からないはずがないのに、会長は敢えて奴らを自由にしている。

  

「また起きますよ……さっきみたいなお遊びじゃない、本気の殺し合いが!! いいんですか!?」

 

 匙は叫ぶ。

 自分達しか動けない状況で、学園にあんな奴らをのさばらせておくことが本当にいいのかと。

 それに対し、ソーナ・シトリーは努めて冷静に自身の考えを語り出した。

 

「……匙、あなたは先ほどの戦いを見て、どう感じましたか?」

「どうって……何ていうか、終始木場の野郎があしらわれてたっていうか……」

「ええ、私もそう見えました。流石にライザーが評価するだけのことはある……暴走状態とはいえリアスの眷属が敗北したのも納得できます」

「そいつって俺と同じ時期に眷属になったんですよね? キャリアはあの、旗本って奴の方があるんでしょう? 傭兵だっていうし、だったら別におかしいことじゃあ」

「そう、キャリアがあるの。だから私は木場君の身柄を彼に任したのよ」

 

 そう言って彼女は机の引き出しを探り、匙の前へある書類を取り出す。

 

「これは彼、『旗本奏平』という傭兵について調べてもらったものです。時間がなくてあまり詳しいことは分からなかったけれど、彼がここに来る前に受けていた依頼についてはここにある通りです」

 

 彼女に促され、匙は渋々だがその書類を手に取った。

 元々頭の良くない彼はこういった細々とした文字列を読むことに抵抗を覚える質なのだが、わざわざ主人が用意したものを無下にするわけにもいかず、渋々と文字列に目を通していく。

 そして最後までそれを読みきって、思わずまた最初から読み始める。

 

「……これ、本当ですか?」

「嘘であればよかったかもしれませんが、残念なことに本当です」

 

 彼女は奏平が冥界で戦いを終えたときより、彼に関する情報を集めていた。

 人間でありながらあれほどの戦いを繰り広げ、謎の能力によって人龍の暴走を鎮めたのを彼女は他の悪魔たちと共に見ていたからだ。

 

「……他の地方の事件だったけど、これの解決に野郎が関わっていたのか……」

 

 書類に書かれていたのはここより遠くの土地で起こっていた『連続殺人事件』に関するものだった。犯人の証拠が見つからず未解決として扱われていたこの事件、その実態は悪魔による享楽的な狩りであったのだ。

 悪魔の犯行だ、当然人間の表の技術ではその正体を探ることなどできるはずもない。

 しかしそこに、件の彼が現れたのだ。

 

「調べたところ、この悪魔は上位悪魔の眷属であったようです。しかし主を裏切りはぐれとなったため、人間界へと逃げ込んできていたらしいわ。

 元々そういった認識を誤らせる能力を持っていたみたいで、居所を掴ませないように長年逃げ回っていたの。でも今回、狩り場を見つけたことから調子に乗ってしまったのね。やり過ぎた結果、そいつは自分の首を絞めることになった」

 

 そこの元市長の依頼によって駆けつけた旗本により得意の隠匿を看破され、追い詰められた奴はあっさりとやられてしまったらしい。

 注目すべきはその依頼を受けてから解決までの速度、状況を考えるに異常といっていい。

 

「相手は姿を欺くことに特化したような奴だぞ。それをたった一人で、しかも二日と経たず見つけ出して倒すなんて……」

 

 土地勘のないところでこんなにも早く標的を見つけることもそうだが、それを躊躇なく抹殺してしまう冷徹さ。

 出来る能力があるからといって、それを実際に出来るようになるには余程経験を積んでいなければならないはずだ。

 

「実際に彼を目にしてその実力、そして人柄というものを確認できました。彼ならば木場君のことも無下に扱うことはないでしょう。

 私たちもリアスが動けない間、彼女たちの代わりこの町を守らねばなりません。木場君の監視に割ける人員の余裕がない以上、彼らが一緒に行動してくれるのならこちらとしても願ってないことです。

 

 匙、あなたの憤りは分かります。ですがそれは、あなたがまだこの世界の浅いことしか知らないからです。それは同時に、この世界の悲劇も知らないということ。

 彼らの行いに怒りで応じるのではなく、その奥底にある思いを汲み取ってみるのです。私たちの夢の実現のためには、多くの思想に触れて受け入れる寛容さを身に付けなければなりません。

 ―――成長しなければならないのです、あなたも、私たちも」

 

 

 これはそのための試金石となるでしょう―――。

 

「……っ!!」

 

 そう真っ直ぐに言い切った主のその姿に、匙は自身の未熟さを感じ深く恥じた。

 

 『この人はただ喚くしかできなかった自分とは遥かに違う視点でこの一連の流れを見ていたのだ!!』

 

 そう自覚したとき、自分があまりにも小さく狭い考えの中にいたのかを痛感させられ、同時に感動で身震いするほどであった。

 そしてそんな人に期待されている、その事が彼の意識を猛烈に奮い立たせた。

 

「分かりました会長!! 俺、会長の考えに従います!! そうっすよね、今やらなきゃいけないことはあいつらに構うことじゃないですもんね!!」

「……何か語弊がありそうですが、おおまかに言えばそうです。これから夜間の見回りなどについて会議をしなくてはなりません。匙、事後処理を行ってくれている他の役員たちを呼んできてもらえますか」

「了解です会長! 行ってきます!!」

 

 ソーナの指示に元気よく返事をした匙はそのままの勢いで身を翻し、スタコラと駆けていく。その姿を見送りながら彼女は一つ息を吐き椅子の背もたれに身を委ねた。

 

「……あの子、素直なのが良いところだけど。見ていて危なっかしいのよね」

 

 生徒会長、ソーナ・シトリー。

 彼女は最近眷属になった彼、匙元士郎の他の眷属とは少し違う態度に若干困り気味であった。やる気があるのはいいことなのだが、どうにも先走り感が否めないというか。

 まあそれを今考えてもしかたがないか、と彼女はこれからやらなければならないことを纏めることに集中し出していた。

 しかし、彼女の頭の片隅にはここから去った二人、木場裕斗と旗本奏平のことについてのことが離れずにいた。

 

 先ほどああは言ったものの、彼女自身この二人について分かりかねている部分がある。

 しかし、彼女はあの時挑発してきた奏平の瞳を見て、何故か木場を任せても大丈夫だと思ってしまったのだ。粗暴な態度であるにも関わらず、戦士のその瞳に相手を嘲るような色がなかったことがそう思わせたのだろうか?

 

 いつしか彼女の思考は奏平のことばかりとなり、役員たちが扉を叩くときまでそれは続いた。

 自身の変調に戸惑いながらも直ぐに精神を立て直した彼女は、集まった役員たちとの会議に没頭していくのだった。

 




読了ありがとうございました。

次回、奏平初披露。
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