連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
今回は拠点の地下のお披露目と、ちょっとだけ彼らを出します。
木場は犠牲になったのだ、お披露目の犠牲にな……。
―――で。
生徒会の二人があーだこーだと話し合っていた頃、その話題に挙がっていた方の二人はというと。
△ △ △
「―――おぼぁっ……!?」
吹き飛ばされて床に倒れ込んだ挙げ句、腹部にのし掛かる重圧に耐えかね思わず汚ならしい声を出てしまっている木場を見ながら、俺は先ほどの”彼ら”との戦いについて評価を下していた。
「全然駄目じゃねぇか、舐めてんのかテメェ」
全くもってなっていない。
いくら意気消沈しているとはいえ、あのやられようはない。
「あのなぁ木場、一応お前が本気を出せるようにってこの”特別訓練室”を使わせてやってんだぞ? すこぶる頑丈で防音完備、バスケコート二面分という広さをこの『空間拡張術式』によって確保した自慢の一部屋を。
そこんとこ分かってんのかテメェ、ぶっ殺すぞ」
「……無茶苦茶言わないでくれ、こっちは何が何だか分からないままなんだ」
「ああ? 知るかんなもん、今お前がするべきことはたった一つ」
俺はうだうだとのたまう木場を、正確にはその腹の上に乗っかっている
「―――何も考えずに戦え!! クソッタレなテメェにできることなんぞ、今はそれくらいだろうが!!
底辺這いつくばってる暇があったらさっさと立ち上がれ!! 男見せて見ろや木場ぁああ!!!」
「何で僕より君のほうが張り切ってるんだい!?」
俺がわざわざこの拠点に木場を連れてきた理由。
どこか影を持つこの悪魔の不安定な精神状態を感じ取っていた俺は、悪化して付け狙われる位ならばとこうして丁度いい相手をぶつけてやっているのだ。
「思い悩む余裕があるってんならよぉ……その余裕を剥ぎ取ってやるまでよぉ。徹底的にぃぃ、これでもかって位にぃぃ!! テメェが泣いたり笑ったりできなくなるまでシゴイてやるぜぇぇえええ!!!!
さあ、指示を下すぜ ”パタポンズ”!!! 戦闘を再開しろぉおおお!!!!!」
『『『オオォォーーーーーー!!!!』』』
俺の号令に従って、木場に乗っかっていた黒い物体、だけに留まらず。
その周りを囲んでいた同じような奴らからも雄叫びが挙がり、広い室内に響き渡る。
だが、彼らに口はない。
あるのは身体の大部分を占める大きな一つ目と、短い手足だけ。
だがその小さな体躯に秘められた力は、そんな見掛けの不利を覆すほどの可能性に溢れている。
―――それが”パタポン”、最果てを目指しあらゆる強敵に挑むことを恐れなかった勇敢な戦士たち。
異能への理解がある程度進んだ頃を境に、呼び掛けに応えるようにして現れた彼らはそれ以来頼もしい隣人としていくつもの戦いを潜り抜けた戦友でもある。
そんな彼らを十体ほど、木場のシゴキのために呼び出している。
「俺は悪魔に容赦はしねぇ。それが俺に敵対する奴ならなおのこと。他にも嫌いな連中はいるんだが、それは今関係ない話だからどうでもいい。
さあ、木場裕斗。
覚悟決めな……これから仲間が復帰するまでの間、テメェはここでしこたまボコられる。だが、そこから何を学ぶのかはテメェ次第だ」
―――だから頭カラッポにして、がむしゃらにやってみせな。
「うわぁぁあああああああああ!!!!!!」
しかしたった今木場を中心に再開されたパタポンたちのシゴきによって、俺のありがたい激励は掻き消されて届くことはなかった。
それを気にすることなく、ドタバタと騒ぎまわる彼らを眺めつつこの後控えている予定について思考を巡らせていた。
「くそっ! 小さいのに速い! 何て連携だ!!」
冥界での一件により、俺は今の冥界を治めている魔王サーゼクス・ルシファーとの謁見を奴の妹であるリアス・グレモリーに約束させてある。
だが、その場をいつ用意するかなどの条件を詰めきれてはいない。
「か、顔はよしてくれ! 何で執拗に顔を狙うんだ君は!?」
あの時グレイフィアとかいう女悪魔の話から推測するに、おそらくの時期というのは見当はついてはいる。近々三勢力で和平を結ぶとか何とか言ってたし、たぶんその時がそうなんだと思う。
「ぐぅう…へぶっ、はがぁ!!」
その時が来る前に、俺も俺で準備を進めなければいけないだろう。
まず最初に戦力の集結、各地で仕事をこなしているメンバーの中でも腕利きには既に連絡をとっている。
生憎距離が遠いせいですぐにとはいかないが、時間的な余裕はまだあるはずだしそこまで焦る必要はない。
「おっっ……ごぁはっ!?」
次に情報収集。
世界各地でやりたい放題の連中が一ヶ所に集まるんだ。それを狙って襲撃してくる奴らがいるかもしれねぇ。恨みを持ってる相手なんぞそれこそ数えるのもバカらしいほどにいるだろう。だが、それを理由に俺たちの行動を邪魔されるのはたまったもんじゃねぇ。
集まるメンバーとは別に、周辺のゴミ掃除を担当してもらう必要があるだろう。
「くそっ…くそぉおお!! どうして、どうして僕はこんな……こんな!!」
事前準備としては概ねこのくらい、だろうかね。
あまり綿密な計画を立てたところでイレギュラーは付き物、そもそもが人の範疇から外れた存在たちだ。備えは必要だが、それで足が鈍るのもよくない。
最悪の場合だけを考えて、そのためだけの対策を講じておいたほうがいい。そのほうが結局、自分の身を助けることになるだろうしな。
「―――さて……」
ある程度まで練っていた計画を脳内で反芻しながら、ボコボコにされた木場の様子を改めて見る。
この短い間に中々いい感じになっているな。例えるなら使い古されたボロ雑巾だろうか。パタポンたちにはダウンしている状態の時には手を出さないように指示をしてあるため、木場を囲むようにして様子をうかがっている。
木場は息を整えているのか、しばらくは倒れた姿勢のままだったが、ぐっと腕に力を入れ体を起こそうとしている。
しかし足に力が入らないのか、うつ伏せの体勢から立ち上がろうとして踏ん張れず、何度も体を床に叩きつけている。
だがそれでも、
「……ぁ、だ…!」
今にも噛みついてきそうなほど鋭い眼光を宿すその瞳は、一切の諦めを映してはいない。
奴にとってすこぶる理不尽なこの環境、しかしその中であってもあの眼をすることができるのならば。
「……ふむ、ちょいと見誤っていたか。案外根性がありやがる」
―――可能性、くらいは見えてくるかもしれない。
あまり肩入れするべきではないと自戒しつつ、それでも何かを感じてしまうのは奴が抱えるモノによるものだろう。
決して好奇心ではないが、この曖昧な感情に突き動かされていることは間違えようもない事実であり。
準備を整えるまでの暇潰しとでも思うことで自分を誤魔化しつつ、今日はこれくらいでおしまいにするかと、倒れ伏す木場の元へ歩いていくのだった。
読了ありがとうございました。
次回から本格的にストーリーを進めていきます。
教会勢に待ち受ける、異端者の洗礼。
はたして彼女たちの運命やいかに。