連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
三勢力の和平によって世界に安寧を、とか言ってる連中はどうして過去の清算について考えないんですかね。
何も納得できてない奴らを放っておいて自分達の主張だけ通そうとするから軋轢が生まれるって、ちょっと考えれば分かると思うんですがねぇ。
自分の組織の反乱分子を抑えることも出来ない、これ政治で考えればヤバイなんてもんじゃないですよ。
だからこんなこと(主戦派の暴走)になる、ふざけんな。(中指)
それから木場は何とか立ち上がるも、それを戦闘再開の合図として動き出したパタポンたちによってもう一度叩き潰されて遂には気絶してしまった。
初日としてはまずまずといった結果だ。繰り返していけばもう少しマシな動きになるだろう。
そう判断した俺は今日はここまでにということにして、気絶した木場をパタポンたちに空いている部屋に運ばせることにしてその日はお開きとなるのだった。
しかし、これはあくまで初日。最低でもリアス・グレモリーたちがこっちに戻ってくるまでは続けるつもりだ。
―――こうして、木場は普通に学園に通いながら放課後にはパタポンたちに気絶するまでど突き回され生活が始まった。
何度意識を失っても強制的に覚醒させられて、体力の限界までシゴきが続行される。まるで○○学園の部活動のように容赦なく、余計な思考が入り込む余地を残さない徹底ぶりで奴の精神を叩き直しくれるわ。
△ △ △
―――と、いうようなことになっているという報告を俺は数日前に来たある場所で行っていた。内容についてはパタポンたちに関してだけボカしつつ、それ以外の部分についてはありのままを告げている。
そしてその後の木場の様子を聞いているのはこの部屋の主、生徒会長ソーナ・シトリー。人払いでも済ませているのか、この場には彼女しかいないようで前よりは気軽な会話が出来ている。
先日のようにテーブルを挟んで向き合って座る俺たち、彼女は自分で用意した紅茶を嗜みながら思案気にこちらを見ている。
「……なるほど、そちらはそんなことになっていたのですか」
「ああ、大人しいもんだろ? ギリギリまで体力を削ってるお陰で終わったらそれこそ虫の息だ、その後は俺の拠点で朝までグッスリって寸法よ」
「予想以上に厳しい扱いを受けているようで、少々心配になりますが……お陰様で監視も楽で助かっています」
「そいつはよかった。こうしてお茶に招かれるくらいだ、あんたからの信頼を得るのに十分な働きは出来ていたらしい」
初日のシゴきから数日が過ぎた今、パタポンたちの木場転がしも大分こなれてきた。
奴自身も彼らとの闘いに慣れてきたのか、今では武器持ちでの戦闘もできるくらいに進歩している。まあそれでもボコボコにされているのは代わりないがね。
「しかし、意外でしたね」
「ん?」
ある程度の報告が済んで会話が途切れる。その間にカップに手を伸ばしたところで彼女から話を振られた。
「何が?」
「いえ、こうして私と話をしているのもそうですが、木場君の面倒を見てくださっていること。悪魔嫌いを公言しているあなたがここまで協力的なのが意外でして」
ああ、そんなことか。
「別に、仲良しこよしをしようなんて思っちゃいねぇ。嫌いなのも悪魔だけじゃねぇしな。
ただ、俺には
そのためには積み重ねなきゃいけない条件が多く、その条件を満たすのは困難を極める。
そのために必要なことなら、俺は何でもやるってだけのことだ」
木場を更正させているのもその一環。
どうにも歪んだ思考が見られる奴を修正するには、言葉ではなく体験が必要だろうと考えたまでのこと。
リアス・グレモリーという、あの中途半端な悪魔との交渉材料が多くなればその対処に必ずと言っていいほど負担が生じる。その負担をあいつの家族は見てみぬ振りができないはずだ。
あの甘やかされた態度から考えればその程度、透けて見えるというもの。
約束を完全に履行する保証がこちらの有する契約書一枚というのも不安になるほどだ。打ち込める楔は多ければ多い方がいい。
「あんたと仲良くしてるのも、そういう打算があるからさ。敵対行動をしてないだけで、俺が常にあんたの仮想敵であることに変わりはねぇ。
こうしていい顔してんのも、あんたが魔王の妹だから。
そうでなきゃこんなことはしねぇ、面倒なんでね」
突き放すような言葉の連続、だがそこに嘘はない。
俺の過去には、そうするだけの理由がある。その感情を否定することはできないし、忘れることなど出来ようはずがない。
しかし、そこまで聞いて何を思ったのかは知らないが、彼女はどこか楽しげな表情をして俺を見ている。
この女の理知な態度からはあまり想像できなかったその笑顔に、逆に俺の方が顔をしかめることになった。
「……何だ、何か面白いことを言ったか俺?」
「いえ、そうではなくて。何て言うんでしょう、その……あまりに自然だったもので」
「自然だった?」
「ええ。あなたは変わらない、ここに来てからずっと。口調や態度じゃなくて、雰囲気が。
あなたの言うことにはどこか芯がある。ブレない一本の芯が。
だからなのかどこにも違和感を感じない。それが何だか頼もしい、そう感じられたんです」
だからつい、笑ってしまいました―――なんて。
恥ずかしげもなくそう言ってしまう彼女の姿は、悪者の代名詞であるはずの悪魔何て思えないほど朗らかな雰囲気を醸し出していた。
予想していたような反応でなかったことで若干面を食らった、のだが。そういう動揺を顔に出さないだけの精神強度でもってピクリとも表情を変えることなく会話を続行してみせる。
「はっ、点数稼ぎが好印象だったようで何よりだ。グレモリーの奴らが帰ってきたらそこんとこ伝えといてくれよ、あんたからの釘刺しがありゃ、あいつらも約束を破りにくいだろうからな。
さて、報告も済んだことだ。ここいらでおいとまさせてもらうぜ」
「ああちょっと、待ってください!!」
そう言い渡して会話を切り上げた俺は、退室のために扉に早足で向かう。
もうここに用はないですとばかりに帰路を急ぐ俺を、しかし彼女は扉に手を掛ける寸前に待ったをかけた。
「あん? 話は以上じゃ? もう木場について話すことねぇぞ」
「いえ、それとはまた別の話でして。これはついさっき分かったことなのですが―――」
…
……
…………………
………………………………
「―――と、いう訳だ。お前も協力しろ」
「いや、唐突過ぎて何も理解できなかったんだけど。何に協力しろって? こっちはそれどころじゃないんだけど」
いつも通りパタポンたちにシゴかれていた木場に向けて今さっき聞いたことを伝えたのだが、彼らの猛攻によってダウンしている奴は腹の上にいる個体をどうにかしようとしていて上手く伝わっていないようだった。
「しょうがねぇな、もう一回だけ言ってやるからきちんと聞いとけよ。
いいか―――」
俺はもう一度、ソーナ・シトリーから語られた内容を伝えてやる。
生徒会室からの帰り際、彼女の口から語られたのはいつの間にやらこの街に紛れ込んだ連中のことと、それに対処すべく動きだした勢力のこと。
そしてそれに協力すべく、悪魔陣営からも人員を選出するのだという。
そしてそれが―――
「―――『堕天使幹部コカビエルとその配下によって奪われし聖剣エクスカリバー、これを教会より派遣した者たちと共に奪還せよ』
こいつが教会陣営から今しがた要請された依頼の内容だ。
この聖剣奪還作戦に、生徒会長様は俺たちを推薦したのよ。何てったってその堕天使連中、この町に潜伏してるらしくてよぉ。この町で今動けてそれなりの働きができるってなると……まあ、丁度良いのが手の空いてる俺たちな訳よ」
ソーナ眷属は今回フォローに徹し、実動部隊は俺と木場、そして教会から派遣されてくる奴らになる予定だ。あまり聖書の勢力に肩入れするのは個人的に嫌なのだが、ろくでもないこと企みがすぐ側で蠢いているというのなら働くのもやぶさかではない。
そこまで聞いて、ようやく木場はとんでもない事態に巻き込まれたことを認識できたようだった。
仰向けの体勢で聞いていた木場の表情が、みるみる内に驚愕の色に染まっていく。
「なん……だって………どうして聖剣が」
だが、その驚きようはどうにもこの町に対する脅威云々にではなく、奪われたというエクスカリバーに対するもののようだった。
次第に木場の瞳に浮かび上がってくる負の感情、それに呼応してかボロボロだった奴の体に力が満ちていく。ふむ、なかなかよろしくない兆候だ。
「眠らせろ」
『ムンッ!!』
暴れだすと厄介なので、そうならないようパタポンに木場の顔面をぶん殴ってもらい意識を強制的にオトすことにした。聖剣について意識を割いていた木場は腹の上にいた個体に対応できず、床に思いきり後頭部を叩きつけられた。思惑通りしっかり気絶してくれたようで、強張っていた手足から力が抜けていて白目を剥いていることが確認できて一安心といったところだ。
「……ま~た何か、良からぬフラグが立ったみたいだな。まさかこうも都合よくこいつに関わる事件が起こるとは……因果ってもんなのか、それともこれも龍の影響なのか。
……ちょいと急ぐか、妙に嫌な予感がしやがる」
木場の力試しにいいかと思ったが、こうなると人手が欲しい。
行動不能になった木場の世話をパタポンたちに頼み、俺はある人への連絡を急いでいた。
あいつら確か一旦集合してからこっちに来るはずだし、釘刺しときゃ余計な事仕出かすこともないだろう。
高まる嫌な予感に急かされながら、仲間たちの自由奔放さが発揮されないことを祈り端末へコールを掛けるのだった。
感想ありがとうございました。
木場くんの修行描写はバッサリカット、時間は流れて奴らの影が遂に駒王町に。
次回、教会勢の彼女たちが異端の戦士と対峙する。