連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
フリード君の襲撃に会い、まんまと分断されてしまった奏平たち。
聖騎士たちが先にやられてしまい、そのために不利な状況から戦わざる得ない奏平たち。
三本の聖剣を操るフリードに対し、奏平たちは如何にして戦うというのか!
答えはこの後すぐ!!
「―――ずっ……ぱし!!」
フリードと呼ばれた刺客の動きは速く、狂った言動からは考えられないほど正確な剣筋で攻撃を仕掛けてくる。
その狙いは前に出ている俺、瞬時に武器を取り出そうとして、
「避けろ木場!!」
「え……うわ!?」
咄嗟に背後にいた木場に警告と同時に蹴りを放ち、その場から強制的に離れさせる。
当然自分に差し迫る刃は防げないが、
「……
―――それは俺を傷つけることなく、体を通りすぎていく。
「いつっ……!!」
そして逆に、標的ではなかったはずの木場の腕が薄く斬り裂かれていた。
何が起こっているのか分からず混乱している木場に分かるよう、怒鳴るようにして声を挙げる。
「幻覚だ!! それに合わせて透明化してる!! 音で攻撃を判断して避けろ!!」
斬りかかってきた姿はフェイク、幻覚を先行させ後ろから掛け声を挙げ居場所を偽装していた。自身は透明化して見えている虚像に意識が向いている木場を倒すといった算段だったのだろう。
「……そこか!」
『―――おっとぉおお!!』
だがしかし、それで出し抜かれるようでは戦士として二流もいいところ。いくら姿を消せてもそこにいるのならいくらでも感知する方法は存在している。
一つは嗅覚。周りから嗅ぎとれる血の臭いは、ゼノヴィアたちの返り血だろう。その臭いは奴の居場所を大まかにだが教えてくれる。それに従って数本の短剣を投げ付ければ、その内の一本が運良く奴に当たる軌道だったようで何もない空間で不自然に弾き飛ばされた。
「旗本!?」
「こいつの相手は俺がやる!! お前はあいつらの傍に行け!! そうすりゃこっちで何とかする!!」
何とか牽制を打つことはできたが、依然として圧倒的にこちら不利なのには代わりない。
急いで騎士どもを救援に行かなきゃならないが、その隙をこの襲撃者が見逃すとは思えない。木場に対処させるには荷が重い相手だ、ならば俺がやるしかない。
「出ろ―――『四方太鼓』」
俺は指示を出すと同時に、自身の異能は発現させる。
背後に出現させた四つの太鼓は独りでに旋律を刻み始め、周囲を音で満たしていく。
そして新たに短剣を両手に取り出し、次の攻撃に備え構えをとる。
「フリードの相手なら僕が……!」
「優先順位を間違えんじゃねぇ!! また目の前で殺させるつもりか!!」
木場としては是が非でもこの敵と戦いだろう。
折角聖剣を持って現れてくれたんだ、俺との約束を気にすることもないと考えているんだろうが、それを状況が許してくれない。
またも幻影を駆使してこちらを撹乱してくる敵の位置を探りながら、中々動かない木場に激を飛ばす。
「また聖剣の犠牲者を増やすのか!! お前の仲間がクソみたいな目的のために殺されて、お前も死にそうになって!!
お前はそれが嫌だったから、許せなかったから聖剣を憎んだんだろうが!! 破壊したかったんだろうが!!」
かつての仲間と、騎士どもではどちらが木場にとって大切か、言うまでもないことだろう。
だがそれでも、
「―――死なせるな!! これ以上、バカみたいな目的のために奪われる命があっちゃいけねぇ!! それを一番良くわかってんのはお前だろう!! お前自身だろう、木場!!」
こいつらもまた、聖剣の犠牲にされようとしているぞ。
それを見逃すのか?
それを許すのか?
それで聖剣さえ壊せればいいなんて、仲間の前で言えるのか?
「……ッ頼む!!」
「任せろ」
自身を苛む大きな葛藤に、それでも区切りを着けた木場の動きは早かった。自慢の速度でフリードの囲いを一気に突破し、騎士たちに駆け寄っていく。
その姿を見送りながら、周囲を取り巻く幻影に睨みを利かす。
幾体もの敵の幻影は、木場を逃したというのに全部が気色悪い笑顔を浮かべている。
「余裕って感じだな、お前」
「ん~~~、だってねぇ……あちらさんは兎も角御宅はマズイでしょ、自由にさせちゃ」
移動を続ける声の元を探す俺に対し、圧倒的有利に立つはずのこいつは何故か異様に静かだった。
殺気は相変わらず振り撒いているが、印象的だった狂ったような軽口は鳴りを潜めている。そして姿こそ見えないが、こちらを注意深く伺っている気配をどこからか感じる。
「あちらの奴さんらはどうとでもなりまさぁ、それこそ三分クッキングで合挽きハンバーグ作れちゃいますぜ。でも、その前に確実に俺がkillkillされちゃうでしょ?
その構えといいよくわかんにゃい背中の奴といい、そういうお相手だとお見受けしますぜ」
くそが……本当にやりにくい相手だ。
搦め手ってのは奇襲でこそ最大の効果を発揮する、一撃が全ての戦法だ。失敗したなら即撤退が原則、だがこいつにその気配はねぇ。
つまりはだ、こいつには正面きって俺とやりあえるだけの実力があるといっているようなもの。手の内を全く見せちゃいないが、俺が下手に晒せば更に不利になることは予想できる。
そんなこちらの思惑を知ってか知らずか、フリードはニヤついた顔のまま会話を続ける。
「たった一回攻撃しただけでこっちのやり口を見抜くなんて、よっぽど戦闘経験がないとできやしませんぜ? 正直聖剣が三本もありゃ楽な仕事だと思ってたのに……計算が狂っちまったなぁ」
「そいつは悪いことをしたな、でもこっちも驚きだぜ。こうも簡単に分断させられたってのもあるが、どうにもお前木場と面識あるみてぇじゃねぇか。ここに来んのは始めてじゃあねぇな、テメェ」
「ええ、前の仕事でちっとばかし」
「……そうか」
ここで起こった事件となると、順に考えれば赤龍帝が目覚めた時の奴か。あれも堕天使が関係した事件だったはず。犠牲者も何人かいたと聞いているが……。
とことん面倒を引き付ける土地だな、ここは。どうしてこう、人間の世界でばかり……。
「……おいテメェ」
「お♪」
あれこれ悩んでも仕方がないことだ、何も解決もしやしない。
「やるか、そろそろ」
「おや、いいんですか~い。もっと時間は稼がなくても?」
フリードが言うように会話で気を逸らすのもここいらで限界だろう。木場もあいつらの所に辿り着けたみたいだし、俺の方も準備万端だ。
「ああ、こうして突っ立ってるだけなのも飽きただろう? 遊んでやんぜフリード君よぉ」
「はっ、そいつは楽しいお誘いですが―――」
途端、台詞と共にフリードの気配がぶれる。
幻影は木場たちへの道を阻むように配置を変え、まるで妨害するかのように立ちふさがる。
「てめ……ッ!」
それがどういう意図での行動なのか、理解と同時に動き出した俺の初動を阻むようにその幻影の先から光弾が撃ち込まれてきた。恐ろしく正確なその攻撃は逃げ道を潰すように、確実に防がなければいけないような軌道と数でこちらに差し迫っている。
この後に及んでこの野郎、万全の一人よりも手負いを含めた三人の方を狙いやがった!!
(捌くのに数秒はいる……! 間に合うか……!)
武器を変える時間もない、体の端を掠めるようなやつを無視し必要最低限の光弾だけを斬って進む。
多少の流血はお構い無しで強引に壁を突破し、その先でゼノヴィアたちを守ろうと魔剣を構える木場に襲いかかろうとしているフリードがいて……しかし、その視線はというと、
「―――こっちから先に逝かせてやんぜーーーーー!!!!!!」
「―――こい、フリード・セルゼンーーーーー!!」
敵対していたもの同士、決着を着けんと絶叫を挙げる二人――――――ではなく、
「逃げろ、お前では敵わん!!」
「うぅ……!!」
傷ついた体を必死に動かし、どうにか立ち上がろうとしているゼノヴィアたち―――でもなく、
―――彼らの頭上に飛来する、烏のような翼を持つその人に奪われていた。
ぶつかり合おうとしていた二人の間に飛び降りた彼は木場たちを背に、抜き身の刀でもってフリードの聖剣を受け止める。突然の介入者に動きを止めるフリードの腹を蹴り飛ばし、奴を大きく後退させた。
木場たちも戸惑いで動けない中、彼は一度刀を振り払いような所作を見せつける。
「―――やれやれ、もう少しはよぅ呼ばんか奏平。お陰で道に迷ったではないか」
こちらの名をを知る老年の男性、彼こそ俺が今回の依頼のために呼び寄せた増援メンバーの一人。
その正体は鞍馬山にて修練を積んだ烏天狗の剣士にして、我が傭兵団随一の実力者。
蒼天流剣術伝承者にして俺の剣術の師匠。
「―――だが、間に合うことはできたようじゃな」
『
読了ありがとうございました。
若干クサイとは思いましたがこれが木場に対する奏平の偽らざる本音です。
木場の行動には否定するべき所と肯定するべき所、それぞれあると思っているのでこういう風になりました。
何か違うなぁって人がいるとは思いますが、それはそれで正しいことだと思うので意見感想など頂ければありがたいです。
そして短編からようやく再登場の蒼天師匠。
彼が何者か覚えていない方も多いでしょう。
その時はもう一度短編を見てくれよな!
ではまた次回!