連載版 ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~   作:アゲイン

28 / 29
どうも、アゲインです。

ようやく登場した第一の仲間、烏天狗の蒼天。
奏平の剣術の師匠である彼の登場で事態はどう動いていくのか。





三番勝負 邪心光剣・フリード・セルゼン 下

 

 

 フリードによって傷つけられ、倒れ伏す聖騎士たち。彼女たちを守るために立ち塞がる木場と、今度こそ止めを刺さんと襲いかかるフリード。

 しかし激突の瞬間、間に割って入ったのは予期せぬ乱入者。 

 突然現れた異形の存在に目を白黒させている木場たちをそのままに、師匠は吹き飛ばされつつもすぐに体勢を立て直したフリードに視線を向けている。

 

「はてさて、飛び込んでみたはいいものの……ふむ」

 

 刀はそのまま、もう片方の手で顎を撫でている師匠。着流しの上にローブを纏うファッションセンスも相変わらずだ。

 どうやら来てくれたはいいものの、さっきのは流れでやったことらしく今がどういう状況かを改めて見定めているようだった。

 師匠は広げていた翼を折り畳みながら、

 

 

「ふむ……」

 

 

 後ろにいる木場たちに見、

 

 

「ふぅむ……」

 

 

 そしてまたフリードへと視線を返す。

 そうして何かを考える素振りを見せ、何やら残念そうな顔をしてみせる。

 

「何とも難儀な……腕はよいのに性根が曲がりきっておる。御主、剣が泣いておるぞ」 

「……は? 何いってんだこいつ」

 

 そして飛び出す台詞がこれである。

 長年連れ添った御方の相変わらずの行動と、それによって掻き乱されていく光景は懐かしさすら覚える。

 前にもこんなことあったなーとなんて思い返すのも程ほどにしつつ、もう使う必要のなくなった武器を回収していく。太鼓たちも役目は終わったことだし、もうしまっても問題ないだろう。

 

 

 

 おそらく、もう戦いにならないだろうからな。

 

 

 

「何なんだこいつ……おい爺!! 邪魔すんじゃねぇですよ!!」

 

 師匠の乱入によって木場たちへ攻撃を阻まれたフリードは自分の思い通りに行かなかったことに聖剣を振り回して憤っている。ここまでいいようにこちらを欺いては主導権を握れていたというのに、その最後の一歩を最高のタイミングで邪魔をされたのだからその不満は凄まじいものだろう。

 しかしそんなものこちらに、特に師匠には関係がない。

 

「まあ待つがいい、そう急いても何も変わらん。御主が小僧の言っておった堕天使の手先であろう? 儂は来たばかりで何が何やらといったところじゃが、そのくらいは分かる」

 

 今も『剣気に淀みがあるからのう』、などといって師匠は余裕綽々といった態度を崩さない。というか何か説法でも始めそうな気配だ。

 聖剣を持つ刺客を前にしてあまりにもな態度に口を挟めない周りの連中を置いてけぼりにしながら、師匠は自分勝手に話を進めていく。

 

「小娘共の傷跡、ありゃわざとじゃな。いたぶるための浅い傷ばかり……女子(おなご)の身体に酷いことをする」

「いやいやいや、爺さん何言っちゃってんの? お宅敵を気遣えなんておっしゃりたいわけ?」

「いいや、そうは言わん。結局のところこの世は強者の統べる世界、どれほど低俗な行いとて強き者が行えばそれは道理に反さぬ。

 強者の道理に、弱者は(こうべ)を垂れるのみ。

 

 

 ただ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――それは儂の預かり知らぬところですべきだったな、下郎」

 

 

 

 ―――チン、

 

 

 

「げふぁああああああああ!!!」

 

 鍔鳴りの音が響いたかと思えば、突如口から血を吐き出したフリードが濁った絶叫と共に背筋を仰け反らせ地面に膝を着く。その体には先ほどまでなかった太刀傷が肩口から斜めに深く刻み込まれていた。

 背後には刀を鞘にしまった体勢で佇む師匠の姿があり、これがあの人の仕出かしたことだと察しがついた。

  

 

 あれは師匠が使用する奥義の一つ、『(ひらめき)』で間違いないだろう。

 

 

 本来移動しか行えないらしい『縮地』と呼ばれる仙術の最中に、その進路上の敵へと剣撃を見舞う必殺の奥義。消えたように見えたのはそのスピードが俺たちの目では追い付けないほどに速かったからでしかなく、自然と一体となる仙術の特性によって移動の余波すらほぼ起こらない。

 その難易度は師匠の元で長年修行を積んできた俺でさえまだ修得ができていないほど。そもそも俺では異能の関係で仙術が修得できないからいくら使いたくても無理なのだが。 

 

「な、何が起きたんだ……」

 

 しかし、それは俺だから理解できたこと。木場たちには今目の前で何が起こったのか理解できていないことだろう。術者以外はまるで時間が飛んだかのように感じていることだろうからな。それほどにこの奥義が与える衝撃は凄まじいものだ。

 しかし、それも当然か。突然謎の人物が現れたかと思えばそれまで苦戦していた敵にたった一瞬で致命傷を与えたのだ。先ほどの絶技も合わさって完全に彼らの理解できる範疇を越えてしまっている。

 

「がはっ…!……ううぅ……完全に…予想外でしょ、流石に撤退案件だわ…これ」

 

 そしてフリードも今ので師匠のヤバさが分かったのか、血が吹き出す傷口を押さえつけたまま聖剣の力を使い姿を霞ませていく。まだ師匠が背後にいるというのに形振り構わず逃げようというその行動、奴に余裕が残ってないことを物語っている。

 

「っ待て、フリード!」

 

 フリードがこの場から逃げようとしていることを察した木場は急いで追いかけようとしたが、しかしそれよりも先にフリードが撤退する方が早かった。

 既に全身を消し去ったフリードに魔剣を振り下ろすが、それは虚しく空を切る。既にその場から居なくなっているようで、木場は何とか行く先を特定しようと周りに視線を巡らせるが、奴はご丁寧なことに地面に血を振り撒いてどの方向に撤退したのかを分かりにくくしている。

 

 程なくして聖剣の効果が切れたのか、一際大きな血痕が道路の奥の方に伸びているのを確認できた。しかしそれも途中で途切れてしまっていて、これでは奴がどこへ行ったのか分かるような手がかりを得ることはできないだろう。

 木場もそのことを理解したのか悔しげな顔をしつつも闇雲に追いかけようとすることはなく、魔剣を持つ手が力なくしなだれている。

 

「何てことだ……奴を捕まえるチャンスだったのに」

 

 本来自分が果たすべき役目をかっさらわれ、挙げ句の果て敵には逃げられたのだからその心中は相当落ち込んでいることだろう。

 しかしその横を歩む師匠の顔にはそのような色はなく、寧ろ期待外れでもいうような表情でこちらを見ている。

 

「……やれやれ、来て早々面白くないことをさせる。奏平よ、もしやこんなことのために儂を呼んだのではないな?」

 

  おっと、いい加減見学に徹していたのがバレたか。鋭い視線がこちらに飛び、こちらに来いと言っている。

 そそくさと近寄った俺は師匠の前へと足を進め、先ほどの返答をする。

 

「あいつは所詮手下ですよ、師匠。親玉がヤバイってのは事前に伝えておいたはずですが?」

「分かっておるわそんなこと。あの程度の輩であれば、お前でも十分に討てたであろうに」

「まあ、状況が少しばかり」

「ほう……お前が言い訳とは珍しい、まあ面子が面子じゃからな。迷ったか」

「その通りで」

「精進が足りんな」

「おっしゃる通りで」

 

 やれやれここまでほとんど良いとこ無しの俺に対し、中々辛辣な評価を下してくださる。

 全く、この人は久々に会ったというのにすぐこれだ。窮地を救われていても、こうしてこちらの内心をズバズバと当てられては堪ったものではない。お陰で自然と頭が下がってしまう。

 そうして会話をしながら無遠慮に近づいていく師匠に警戒心を露にする木場を他所に、当の本人はその後ろにいるゼノヴィアたちへ視線を注いでいる。

 

「あ、あなたは……」

「まあ話は後じゃ。奏平よ、杖を出せ」

「治療ですね、分かりました」

 

 ある程度心を持ち直したらしい木場が改めて師匠に話を聞こうとするが、あえてそれを受け流し俺に指示を出してくる。

 ここでいう杖とは錫杖のことであり、その中でも『回復の錫杖』はより治癒能力を向上させた俺が持つ回復手段としてかなり使い勝手いいものだ。

 

「そんじゃ……『ミナヒール』!!」

 

 新たに手の中に出現させたきらびやかな装飾の錫杖をかざし、ゼノヴィアたちへ治癒の力を注いでいく。

 それによってみるみるうちに回復していき、彼女たちの体から見て分かるような傷は完全になくなっていく。

 

「これは……」

「き、きもちぃ……」

 

 ゼノヴィアたちもギリギリだったのだろう、心地よい癒しの力によってここまで二転三転とした展開の連続に張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったのか、治療が終わる頃にはそのまま気絶するように地面に寝転んでしまったのだった。

 

「よし、では拠点に運ぶとしよう。奏平よ、案内せい」

 

 そして治療が終わるなりそういって先に行ってしまう師匠の背中から、俺たちは地面に寝転がる聖騎士たち視線を移す。

 思わず木場と顔を合わせれば、奴もまた同じようなことを思っていたようで。

 

「……彼女たちは僕たちで運べって?」

「そういうこった、そっちの金髪は頼んだ。俺はこっちのを運ぶよ」

 

 何時ものことだと割り切っている俺とは違い、葛藤を乗り越えたばかりの木場はやはりまだ戸惑いがあるようで。

 しかし、それも俺がさっさとゼノヴィアを肩に担いでいるのを見て動かないわけにはいかないと考えたのか、どうにも諦めた様子で紫藤を両手で抱えて隣に並び、ゆっくりと歩き出した。

 

「はぁ……色々と説明、してくれるんだろうね?」

「ああ、ちゃんとしてやるよ。納得するかは別としてな」

「そうだね。さあ行こうか」

 

 君の師匠も待っていることだし、という木場が示すように案内しろといいつつ先に行ってしまっている師匠の背中が遠くに見えた。

 

「……本当自由だわあの人」

 

 でも愚痴を言っていても始まらない。

 

 

 

 

  

 

 こうして、一先ずの危機を乗り切った俺たち。

 フリードを逃しはしたものの、欠員を出すことなくどうにか一つ目の山場を越えることができた。だが、この結果は師匠が来てくれたからであることを忘れちゃいけない。そもそもフリードに分断されたのは俺自身の気の緩みが原因でもある。

 この後どうせ師匠に言われることになるんだろうなぁ……と若干嫌な未来を想像しつつ。

 今後をどう挽回するかを考えながら気を失った騎士たちを運搬する木場と共に、拠点を目指して歩き始めるのだった。

 

 




読了ありがとうございました。

次回は拠点にたどり着いた所から。
フリード戦の振り返りをしつつ、今後のことについて話し合います。
どうして師匠が追撃をせず見逃したのかとか、太鼓の意味はあったのかとか。
その辺りのことの説明会になると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。