「嬢ちゃんは魔獣の方を片付けてくれ! アーチャーの方は俺とセイバーで抑える!」
「了解です!」
「藤丸、貴方は下がってなさい! 貴方がやられたら終わりなのよ!」
「は、はぃぃ!」
校舎を背にして戦っていたカルデア一行は、その校舎側の倉庫より放たれた魔獣によって、背中から強襲を受ける形となった。
四匹の魔獣はうなりながら獣の素早さで、慌ててオルガマリーの後ろへ隠れたマスターの一捷を狙う。
「ガァァウッ!」
「せぇあぁ!」
いち早く向かってきた一匹目をマシュが盾で殴り飛ばす、しかし一撃だけでは撃破に至らず。
二匹目が左、一瞬遅れで三匹目が右からマシュへ飛びかかる。
再び盾で迎撃、しかし飛んできた矢が邪魔をし、二匹の攻撃をガードするしかなくなった。魔獣二匹は全力で突破しようと押し込んでくる。この先のマスターには行かせはしないと、全力で踏ん張るマシュ。
「うぅぅっ!」
「キリエライトさんっ!」
彼女が必死で守る姿に、一捷は焦っていた。
さっきから自分は何も出来ていないじゃないか。
クー・フーリンとアルトリアはアーチャーの矢を撃ち落とし、双剣と切り合い押し留めてくれている。
オルガマリーは魔術をアーチャーだけでなく、魔獣にも放ち、牽制と援護でサポートしている。
対し、自分は……マスターなのに、何も出来ていない。
(何か、ないのか……! 僕に出来ることは!)
ロクに指示ができる訳でもない、援護の魔術も使えない、使えそうな武器もない。
できない、やれない、存在しない。
それでも、どうにか出来ないかと周りへ忙しく首を動かす一捷へ通信が入る。
カルデアからだ。
『藤丸君、令呪だ! 令呪を使うんだ!』
「令呪……そうか!」
さっき構えたばかりなのに、強襲で頭から抜けていた。右手の甲には三画の令呪が宿っている。
契約サーヴァントへエネルギーを送り込み、強化や命令を行えるマスターの力。
これでアーチャーを突破する、と早速令呪の起動に入る一捷。
「よし、令呪を持って命ず――」
ズ グ リ
うちがわを ながれる とおる
むりやり こじあける
なかで しらないものが あばれる
「がああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!?」
「先輩っ!?」
激痛に一捷はたまらず叫び、膝から崩れてしまう。
無理もないことだった。令呪は魔術回路に宿り、魔術回路は魔術を使う為の神経。だが本当に一般人の一捷は使ったことなどなく、そこにいきなり魔力を通した。いわば体の中の使っていない部分を無理矢理広げたようなものだ。
内側を引き裂くような激痛、神経へ流れ込む痛みに、耐えきれず踞ってしまった。
「ぐぅ、あっ……! なんだよっ、こりゃあ……」
こんなのは聞いてない。
こんなに痛いだなんて想像していない。
言わずもかな令呪の発熱は失敗、それだけでなく、余りの激痛は体を傷つけただけでなく、一捷の精神にも痛みを与えていた。
どうにかしようと思ったが、痛いだけで、どうにもできないじゃないか。
(僕には、無理なのか)
思わず心が弱い方に傾きかけてしまう。そんな一捷へ、オルガマリーが魔術で魔獣を必死で食い止めながら叫ぶ。
「藤丸! 早く起きなさい、死にたいの!?」
「は、はい……」
「やはり、こうなるか」
その姿を見て、首を左右にふり呆れる者がいた。エミヤだ。
成りたてのマスターに出来ることなどたかが知れている。だから邪魔をするのだ。
干将・莫耶でルーン魔術と斬撃を捌くと後ろへ跳躍。空中で両手の剣を一捷へ駆け寄ろうとしているマシュへ回転をかけ投擲、盾で弾かれるも動きを止めさせた。
干将と莫耶はエミヤの意思により、ブーメランのように弧を描きがら戻ってきて、二手に別れ各々クー・フーリンとアルトリアへ飛んでいく。
だが恐らく、あの二騎には防がれるとエミヤは踏んでおり、剣へありったけの魔力を流し込む。
「
「ぬぉぉおっ!」
「くっっ!」
魔力を大量に流し込むことによる自爆×2。
キャスターのクー・フーリンは飛び道具を無効化するスキル『矢避けの加護』を持ち、アルトリアにも『直感』スキルがある。それを踏まえての爆発だ。
爆風に二人は吹き飛ばされ、前面側を戦うものがいなくなった。エミヤは着地すると一捷へ矢を放つ。オルガマリーの光が撃ち落とすが後方、魔獣側への攻撃が少なくなり、隙が生まれてしまった。
「やれ」
「いぃっ!?」
マシュが相手をしていない残る二匹の魔獣……一匹目と四匹目が一捷へ飛びかかる。一匹はオルガマリーが撃ち抜いたが、四匹目は生きている!
「グォアァァッ!!」
「ぬわーーーーっ!?」
大きく開かれた口が、がぶりと顔目掛け噛みついて、そのまま一捷を地面へ押し倒した。
終わった。魔獣の力で噛みつかれれば人間などひとたまりもない。
首を引き裂かれ、噛み千切られて死んだだろう……そう思ったエミヤだったが、
「ガウッ、ガウゥゥッ!!」
「ひぃぃ! ひぃー! うぉぉおぉぉう!?」
「なんだと……?」
一捷は生きていた。ギリギリのところで。
ガギリ、ガギリ、ガギリ、と硬いものを噛むような音。
命を救っていたのは石だ。せめて武器にとここに来るまでに拾った石。
ガギリガギリガギリ。
咄嗟に盾代わりにし口の中に突っ込んだことで、牙をギリギリで防いでいたのだ。
ガギリッ! ガギリッ! ガギリッ!
ただし、本当にギリギリ。魔獣は今にも首を取ろうと力任せに押し込んでくる、何度も噛みついて、牙が顔を掠るほどの距離で暴れる。
ガギリガギリガギリッッッ!!
「死ぬぅぅぅ!! なんとかしてくれぇ!!」
「マスターッ!」
ガァンッ!!
「ガァォッ……」
押し込んでいた魔獣二匹を倒し辿り着いたマシュの盾が、噛みついている魔獣の頭を潰し飛ばした。
どさり、と体だけになった魔獣が倒れ、黒い粒子となって消えていった。虹色の石と青い結晶を残して。
「お怪我はありませんか先輩!」
「あ、アア……ありがと。ホントに」
「しっかりなさい藤丸! 呆けてる場合じゃない、戦闘はまだ続いているのよ!」
まだ半分呆然としている一捷をオルガマリーが叱りつける。
マシュに立ち上がらせてもらう一捷、だがどうにか生きている。四匹の魔獣も倒した。
残るはアーチャー、エミヤだけだ。
「しぶとい奴だ。その足掻きが自らを苦しめるのだと言うのに……」
「……?」
再び投影した干将と莫耶を一捷へ向けたエミヤ、そこを青い影が急襲。
「そら! さっきの礼だぜ、アーチャーッ!!」
ルーン魔術による身体強化を施した片腕のクー・フーリンが、逆向きの杖を槍代わりとし高速突撃!
投影し直した双剣で杖を受け流すエミヤだが、もう一騎のカルデアサーヴァント……アルトリアが斬り込んでくる。繰り出すのはスキル『魔力放出』による加速をつけた袈裟斬りだ。
「はぁぁぁぁっ!!」
「ちぃ……!
咄嗟に七枚の花弁で防御、花弁の何枚かが砕け散った。
このまま押しきられては不味いと双剣でアルトリアの剣を跳ね上げると後方へ飛び退く。アルトリアと離れたクー・フーリンによる追撃がくるが、投影した剣三本を地面へ撃ち込んで
(……このまま攻撃していても、勝てん……か)
エミヤの使命は漂流者の排除。目の前の奴等を、一捷をこの先へ行かせないことだ。なんとしても。どんなことをしてでも。
ならば、だ。
“アレ”を使ってでも、例え体が砕け散ろうと、使命を全うするのみと判断。
(許せよ、セイバー。私はここまでだ)
魔術回路へ魔力を走らせ、得意の魔術を起動。
「
ありったけの魔力で作り上げる。
剣を。
それは、大気を揺るがせるほどの光と魔力を放ちながら、エミヤの手の中へ現れた。
「何……!? この魔力量は!」
「まさか……アーチャー! 貴方は!」
いち早くエミヤの行いに気付いたのはアルトリアだ。だがもう遅い。
ありったけの魔力で投影したのは……青い柄。金の鍔。光の刀身で構成された、黄金の聖剣。
人々の願いがカタチとなった神造兵装。その偽物。
「我が贋作ながら、非道い出来だ……が、貴様らを殺すには、十分過ぎるだろう」
「アーチャー!」
「“鞘”でもあれば別だが。……魔術程度では、防ぎきれんぞ?」
聖剣を無理矢理投影した代償で、エミヤの体は既に崩れ始めていた。
それでもまだ、一撃放つくらいはできる。
「先へ進むと言うなら、これくらいは越える覚悟を見せてみろ」
弓に聖剣をつがえる。発射。
文字通り命を削りきってまで作り上げた黄金の一撃が、一捷達へ疾駆する。
◆◆◆
待て待て待て!! エミヤの奴なんてもん投影してんだよ!?
あれエクスカリバーじゃねえか! アルトリアとキリエライトさんなんか完全に硬直してるぞオイ。
というか神造兵装の投影って出来たか……?
いやそれより! どうやって防ぎゃいいんだアレ!?
「う、嘘でしょう? あんな魔力の剣を撃ってこようっていうの!?」
『皆、今すぐ逃げるんだ! 魔力量は対城宝具レベル、この距離で食らったらひとたまりもない!』
「……あぁっ」
「しょ、所長ォ!」
「クソッ、お前ら! さっさと退くぞ! 俺のルーンでも、アイツは防げねぇ!」
気絶してしまった所長を、魔術で杖をしまったキャスニキが担ぎ上げる。
で、でも何処へ逃げりゃいいんだ……!
「この距離では……ダメか、発動が間に合わない……!」
「アルトリアさん、早く! 殿は私が務めます!」
「キリエライトさん!?」
「宝具が使えなくても……この盾なら、時間くらいは稼げる筈です!」
キリエライトさんは宣言通り、僕らの前へ立ち盾を構えた。本当に受け止めるつもりだ。
アルトリアやキャスニキが戻るよう叫ぶけど、その場からキリエライトさんは動かない。
――輝く、黄金の一閃。
エミヤよりエクスカリバーが放たれる。
本物と同じ……いや見たことないけど、全てを消し去るような黄金の光が迫りくる。
キリエライトさんは真っ向から防ぐつもりだ、宝具もなしに、盾一枚で。
目の前に映る、彼女の背中。
それを見て、僕は――
《このまま防いでもらう》
《もう一度、令呪を使う》
BADENDもしくはDEADENDになる場合、ストーリーに合わせていくか、別にまとめるか、どちらがいはいですか?
-
ストーリーに合わせる
-
別でまとめる