へっぽこマスターが物申す   作:剣聖龍

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14話

「やあやあどうも。やっと会えて嬉しいよ」

 

「……誰だお前」

 

「え″っ。ご存知じゃないのかね私を」

 

 

 知らんがな。こんな真っ黒真理モドキみたいな奴に知り合いはおらん。

 

 ……どうでもいいけどコイツめっちゃイケボ。DIOみたいな声してる。

 

 というかここ何処よ。……念の為後方確認。何もなし。

 

 

「真理の扉ないからね」

 

「今確認したわ! じゃあここ何処なんだよ。僕は……あのまま死んだのか?」

 

 

 バーサーカーとなったアルトリア・オルタのでかい剣で切られたならまず死んでるだろう……。死んだんなら早く元の世界に帰して欲しいんだが。

 

 するとイケボな真っ黒は首を振った。いいえとでも言うように。

 

 

「お前さんは死んでない。魂だけがここに来ているのだ」

 

「魂……だけ?」

 

「そう、私が呼んだのさ。ここは私が作った空間。ここにいる間は外での時間は限りなくゼロに近くなる」

 

 

 なんだそのドラえもんのひみつ道具使ったみてーな能力……。

 

 

「じゃあ……なんで僕はここにいるんだよ」

 

「その前に一ついいかね。君、本当に私を覚えてないかい?」

 

「だから知らないって。お前みたいな真っ黒真理に知り合いなんざいないよ」

 

「いやいや、しっかり思い出してくれたまえ。あの時、君は私を“拾ってくれた”じゃないか」

 

 

 ……拾った?

 

 

「そう! わざわざ車で引き返してまで」

 

 

 車で引き返して、拾った……?

 

 …………。

 

 ………………。

 

 ん? んん? 待てよ。待てよ確か、仕事が終わってから……。

 

 

「あぁっ!! そう言えばあの時!」

 

 

 そうだあの時だ! 仕事が終わって帰ってる途中!

 

 暗いからライトつけて走ってたら道路の端に光る石みたいなのが見えた。最初は何も思わなかったけど、離れるにつれて他の車にぶつかったりしないかとか気になり始めて、途中でUターンして戻った。近くの駐車場に止めて、その石を拾って車に戻って……。

 

 それから……。

 

 

「……気づいたら、カルデアにいた」

 

「その通り。私はあの時、君が拾ってくれた石に宿る存在だ」

 

 

 そうだそうだ。よく考えたら、魔獣に襲われた時に口へ突っ込んだのはその時の石じゃないか。なんだって気づかなかったんだ。

 

 ……で、コイツ何者?

 

 

「何者と言われてもね。とりあえず私のことはマオーと呼んでくれたまえ」

 

「……魔王?」

 

「マオーね。二回目になるが、私は拾った石に宿る存在。意志であり、武器なのだよ」

 

「……なんだかよくわからないけど、そのマオーが僕に何の用なのさ」

 

「…………うむ。話は簡単だ」

 

 

 会話を区切り、改めるとそいつは真剣な顔で僕へ言ってきた。

 

 真っ黒だから表情見えんが。

 

 

「君の力を貸して欲しい。この世界を、君に歩んで欲しいのだ」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 僕に……この世界を歩め、だって?

 

 いきなり何を言ってんだこの真っ黒な。

 

 

「それはえーと……つまり? 僕にこのFGO世界をクリアしろってこと?」

 

「……まあ、その通りだ」

 

「ふざけんな!! 出来るわけないだろそんなもん」

 

 

 一般人にとって型月世界がどんだけ危険に溢れてると思ってんだ! ホントにマジで。

 

 

「サーヴァントとか! 魔術とか! 抑止力とか! その他云々! しかもよりによってFGOとか特異点回るんだぞ七つも! キャメロットとかバビロニアとかソロモンとか死ぬわ!! それでゲーティアも倒してフォウ君覚醒せずにでついでに1.5部と2部とか無理ゲーだわ!!」

 

「おぉう、FGOプレイヤーとは言えない暴言」

 

 

 んなこと言ってる場合じゃねえよ! 最初の最初だけど、実際に体験したから尚更なんだよ!!

 

 冬木でひいこらしてんのにこの先特異点回れとか絶望しかないわ!!

 

 

「現実的に考えたらクリア出来るかドアホ!! 大体こっちはワケわかんないだよ、いきなりぐだになってるし、死にかけるし……!」

 

「………………」

 

「そもそもあの時だ。あの石を拾ってから……」

 

 

 ――ちょっと待て。

 

 あることに気づいて言葉が止まる。

 

 あの石を拾った。そしたら、気付くとカルデアにいた。

 

 真っ黒なコイツ、マオー……は確か、石に宿ってるとか言ってたよな。

 

 石を拾ってからの記憶がなくて、魂をこんな空間に持ってくる力が、あるとしたら。

 

 

「……おいまさか、お前が僕をこの世界に連れてきたのか。あの石を拾ったから」

 

「………………」

 

 

 なんで答えないんだコイツ。否定しない……ってことは、

 

 

「…………そうだと、言ったら?」

 

 

 ――気付いた時、拳が奴の顔面へ食い込んでいた。

 

 柔らかいような、硬いような変な感触が伝わってくる。赤い血を吐き出して倒れ込む。血なのかどうか。効いてるのかすら分からない。

 

 今はただ、目の前の真っ黒野郎を許せないと、拳を叩き込む続けるだけ……!!

 

 

ふざけんな!!!! テメエ何のつもりだ!!」

 

「おごぉっ」

 

「何だって僕が、こんな世界に来なきゃならないんだ!! ぐだみたいに、世界を救わなきゃならないんだエェ!?」

 

「のぶぉっ」 

 

「僕は、ただの人間だ!! 一般人だ!! 普通の、本当に人間なんだよ!! それなのに世界を救えってか!?」

 

「ればっ」

 

「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!! フザケンナァァァァァァ!!!! 僕に、僕にそんなことが……っ、出来るわきゃねぇだろうが!!!!

 

「えばぁぁぁっ!?」

 

 

 殴った。とにかく殴った。馬乗りになり、真っ黒野郎の顔を力の限り、殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴りまくって、殴り飛ばした。

 

 今まで生きてきた中で、一番腹から叫び声を上げて、力一杯殴った。一生分くらい殴った気がした。それくらいこの真っ黒野郎が許せなかった。怒りが一気に振りきれた感覚。言ってやりたいことを、僕が何故だ何故こんなことと不安に思ったことを、思い付く限り叩きつけてやった。

 

 奴は起きてこない。ざまあみやがれ。こんな酷いことしたからだ。

 

 早く帰してくれ。ホントに。家にさ。そんだけでいいんだよ。

 

 悪いが世界を救うなんざ、それこそ英雄や英霊とか、本物ぐだとか衛宮士郎とか主人公じゃなきゃ出来ない。僕なんかじゃ……できっこないんだ。

 

 ……肩で息をしながら奴を睨み続ける内、少しずつ頭が冷えてくる。考えがまとまってくる。

 

 

「……気は、済んだかな?」

 

「っ……! 済むわけないだろ! さっさと僕を元の世界に帰してくれよ!!」

 

「それは出来ない」

 

「なんでだよ!?」

 

「私にも出来ることがあれば、出来ないこともある。今すぐに君を帰すというのは出来ないんだ、申し訳ない」

 

 

 じゃあ、どうすりゃいいんだよ!? このままホントに死ねってか!

 

 

「落ち着きなさい。今すぐに、と言っただろう。君の力を貸してくれれば、話は変わってくる」

 

「……どういうことさ」

 

「この世界を歩み、進めることだ。私は武器だ、力を与えることが出来る。そうして物語を最後まで進めてくれれば、君を帰すことが出来るだろう」

 

「だから無理だって言ってるだろ!! 何か、僕にサーヴァントと戦えってか!? あのバーサーカーみたいになったオルタを倒せって言うのかよ!!」

 

「他にやることがあるのか?」

 

 

 いきなり目と鼻の先に現れた真っ黒野郎が告げる。

 

 ビックリした……! なんなんだ一体。

 

 

「あの黒く染まった騎士王から逃げられるとでも思っているのかね。よしんば逃げられたとしても、外にはモンスターが屯している。何の力も持たない君が、どうやって生き残ると言うんだね」

 

「何を……!」

 

 

 偉そうに何を言うか、僕を巻き込んどいて……。

 

 だが反論しようにも、内容はその通り。……悔しいが何も言い返せない。

 

 ……じゃあどうすりゃいいんだ。

 

 

「君次第だよ。君が私にノーと言えば、それまで。死んで終わり。しかしイエスと言ってくれれば、私は君に力を与える。協力を約束しよう」

 

 

 真っ黒野郎が出す選択肢。

 

 ……こいつを、信じていいのだろうか。

 

 正直胡散臭い、怪しいことだらけだ。なんで僕をこの世界に連れてきたのか、どうして物語を進めることで帰れることになるのか。他にも聞きたいことがありまくってる。

 

 ……だけど。

 

 あのアルトリア・オルタに僕が勝てるわけない、切り殺されるのは火を見るよりも明らか。

 

 …………どうすればいい?

 

 死ぬのを回避するには。生き残るには。

 

 この真っ黒野郎のことを、

 

 

《信じない》

 

《……信じてみる》

 

 

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