▶️《ロマニの『言葉』を否定する》
「なんで、そんなこと言うんだよ」
ロマニの胸ぐらを掴む。
貴方がそんなことを言ってはいけない、言ってはいけないんだ。
僕がそう言わせてしまった。だとしても、償いなんて言葉は、否定しなければならない。
「そんなこと、言っちゃダメなんですよ」
「ふ、藤丸君?」
「あなたが! よりにもよってあなたが! どうしてそんなことを言うんだ!! 償いなんて、そんなことは言わなくていいんだよ!!」
「藤丸君落ち着いて! 急にどうしたんだ」
「違う、違う、違う、違うんだよ……僕は、違うんだ……」
「違うって、何がだい?」
「僕は、ここにいる人間じゃないってことだよ!!」
「……それは、どういう意味なんだ? 君は、何かを知っているのか?」
……何やってんだ僕は。
何かを知っている。そう言われれば、色々知っていることになる。
掴んでいた手を話す。……だったらいっそのこと、全て吐き出してしまおうか。
現実での話をこの世界に持ち込んで大丈夫なのか。それが良いことなのか悪いことなのか。どんな影響があるのか。浮かんでくるたくさんの疑問、そのどれもの答えなんて分からない。
ただ、このままでいることはもう無理だと思った。自分が壊れて、おかしくなってしまいそうだった。
「……こういうこと、ですよ」
もうどうにでもなれと半分自棄に、いや、恐らくそうなった僕はスマホを取り出しあるアプリを起動させロマニへ見せる。
英雄の説明が表示される藍色のロード画面から、僕はもう第二部まで進めているので「Fate/Grand Order-Cosms in the Lostbelt-」のタイトル画面になり、画面をタッチしてスタートさせるとそこには見慣れたホーム画面とサーヴァントが表示される。
ロマニの表情がそこで変わった。
「これってアルトリア王……えっ? え? なんだいこれは」
「サーヴァントだけじゃない。僕はカルデアや、他の色々なことを知っているんです」
そう切り出して僕は全てを話した。
僕がこの世界の人間ではないこと。本当は別の人物がマスターになっていたこと。この世界がゲームになっていて何があるのか知っていること。……それを知っていながらオルガマリー所長を死なせてしまったこと。
全部を話した。
最初ロマニは信じられないという感じだったけど、ゲームの画面を見せながら説明し、最後に手袋の下にはめているソロモンの指輪のことを言うと、嘘ではないと思ってくれたようで、映し出されるFGOをじっと見ていた。
「……そう、だったのか」
ロマニからスマホを受け取る。
顔を見ることはできなかった。あの目と合わせるのが、期待を向けられるのが嫌だった。
「つまり……君はこことは違う世界の人間で、いつの間にかカルデアにいた。そして君の世界では、この世界のことがゲームになっていて、僕達のことを知っている。そして本来は君とは違う人間がマシュのマスターになっていた……ということだね?」
「……そうです」
「……仮にそれが本当だったとするよ。知っていたのならどうして、君はあのとき管制室に来たんだ? 僕はここで待っているよう言ったはずだ。わざわざ自分で首を突っ込んだようなものじゃないか」
……それを言われると何も言えない。本当になんで行ってしまったんだ、僕は……。
「そんなの分かりませんよ自分でも……! ただ行かなきゃいけない気がして、気づいたらあそこにいて……そうしたら冬木に……!」
もう感情で言うことしかできなかった。また涙が出てくる。言うだけ言って横向きの体勢からロマニへ背中を向ける。
今すぐ逃げ出したかった。
今の言葉で呆れられたかもしれないということ、逃げて喚いたことで卑怯者や臆病者呼ばわりされること、オルガマリー所長を殺したこと、世界を救うということ。
全部から逃げたい。家に帰りたい。家族のいる家、こんな辛いことなんかない家に。
「…………」
ただそれが叶うなんてことはなく、歯を食い縛って背を向け続けるだけでいる。
嫌だよ、こんなの。誰か、なんとかしてくれよ……。
「……藤丸君。そのままでいいから聞いてて欲しい」
少しすると背中越しにロマニの声が聞こえてきた。怒っている感じじゃなかった。穏やかな感じでロマニは話していく。
「今、カルデアは危機に立たされている。人理は焼却され、ここもいずれは消えてしまう運命にある。……それを救うには、レイシフトを行うしかない。そして、それができるマスター候補は……繰り返しになるが、どう言っても君一人しかいないんだ」
……僕、一人しか、できないこと。
「繰り返したんだから分かってますよ……。でも僕一人だからなんだっていうんですか、だからやれと? 無理なんですよ僕には!」
「無論、君一人にやらせるようなことはしない。こちらも出来る限りのサポートは行う」
「そんなことをやる力や、資格なんて、僕には無いんだ!! 偽者なんだよ僕は! 何の力も持たない偽物の僕なんかに、世界を救うなんてできないんだ!!」
「……偽者とか本物なんてどうでもいいんだ!」
怒号が飛んだ、それに驚く間もなく肩を掴まれ体が正面に向けられる。目の前に現れるロマニの顔。真剣そのものという表情だった。真っ直ぐに見つめられ、僕は何も言えずにただ黙っているだけだった。
どうでも、いい? 偽物や、本物が?
「正直、君が違う世界から来たとことや、この世界がゲームだってことはボクにはよく分からない。だから、コレだけを言う。キミが、必要なんだ。本物とか、偽者とか、そんなの関係なく藤丸一捷。君という人間が、ボクらには必要なんだ」
「……でも、僕にはそんな力なんて」
「……キミみたいな子供一人に任せるなんてことはしたくない。……それでも、キミしかいないんだ。頼む! 力を貸して欲しい、この通りだ!」
そう言いロマニはまた頭を下げてくる。
……何やってんだ、何やらせてんだ僕?
ダメだ、こんなことを何度もさせちゃダメだ!! ロマニ・アーキマンに、貴方にこんな頭を下げさせてはいけない、貴方がそんなことをする必要なんかないんだ。
割り込ませるようにロマニの肩を押さえ、何度目かで謝るのを封じた。
「やめてください! 貴方が、貴方がそんなことをしないで!」
「それでもだ。ボクの頭なんかでいいならいくらでも下げる、だから」
「でも、でも……っ! ~~~~~~っ!!」
そしてこの人になんてこと言わせてんだ僕は……。
自分のことばかり。情けない気持ち。自分には無理だという諦めの感情。二つの感情に挟まれ押し潰されそうになる。
戦いは、怖い。冬木であんなに怖く痛い思いをしたのに、これからの特異点で起こることを考えると体が震える。僕なんかには無理だと思ってしまう。
……でも、それは僕だけが思っていることじゃあない。
このカルデアの人達だって、世界が滅びかけているのだから、自分も死ぬかもしれない恐怖を感じているはず。
それに目の前のこの人は、ロマニ・アーキマンはたった一人で、世界の滅びに立ち向かっている。その思い、味わってきた苦労、辛いことはとても僕なんかじゃ表せない。
それでも現実に立ち向かおうとしている、この人達は。カルデアは。
それを無視していいのか? ゲームの世界と同じだから。巻き込まれただけだから。主人公じゃないから、僕には関係ないことだと、切って捨てることができるのだろうか?
……。
…………。
……そんなこと。
「あぁぁぁっ、クソォ! あぁぁ、ああ、アァァァァァァァッ!!」
「藤丸君……」
「最悪だ……全く……」
感情に任せ叫ぶ、壁を叩き喚き散らす。
……この人達を見捨てるなんて、そんなことは、できない。
できる……もんか。
言い表せないくらい、怖いけど、逃げ出したいけど。
……それでも、それでも、それでも、僕は。
「……わかりました。わかりましたから、もう頭を下げないで下さい……」
ゆっくり立ち上がり、大きく息を吐く。
足取りが重いのが分かる。後悔と不甲斐なさ、その他負の感情で自分が嫌になる……けど、やってしまったことのけじめはつけなければならない。
まずは、謝らないと。
「……キリエライトさんの部屋、教えてください」
「藤丸君……!」
◆◆◆
「……ひとまず落ち着きましたか、マシュ」
「…………はい」
マシュの自室。一捷に拒絶されショックを受けたマシュは、時間が経ったことでなんとか話せる位にはなっていた。
それでも、その表情は暗い。
「……私、先輩が強い人だと思い込んでいました。一緒に戦って、力を貸してくださった先輩が……」
だが拒絶されてしまった。彼は弱さを見せ逃げ出した。
強くなどない。ただ虚勢を張っていただけ。
一捷は助けたマシュのことを、最初はその力を見て恐れた。
令呪を使ったあの戦いでも、危険だと分かって、それでもやるしかないと決断した。
それは普通の人間の反応や考えで、決して強いからではない。なのにいきなり世界を救って欲しいと頼まれても、無理だと言うのが普通だろう。
「なのに、強くないことは言われて分かっていたはずなのに……。先輩のことを考えずに……私は……!」
「マシュ……」
ポロポロと涙を落とすマシュの肩に手を置くアルトリア。
すると出入口の側に備え付けられたパネルより電子音。マシュは出れる状態ではないのでアルトリアが対応する。
『……僕だよ、キリエライトさん』
「先輩……!?」
『話をしに来たんだ。……入ってもいいかい?』
「……どうしますか、マシュ」
マシュは一捷が来たことに驚き、拒絶されたことから返事を躊躇う。
……だがこのままこうしていても仕方ない。どちらにせよ、また話はしなければいけないと思っていた。アルトリアに小さく頷くマシュ。
入れる許可を確認したアルトリアがロックを解除、一捷が入室してくる。
「それで、話とはなんですか。マスター」
アルトリアが問いかける。その目は鋭く逃げたことへの非難を含んでいた。
当然のことだ、と一捷は思う。一瞬退きそうになるが視線を受け止め、マシュへ話をしに来たことを伝え、椅子に座る彼女の前へ立った。
「キリエライトさん」
「せ、先輩……私」
「――ごめんなさい」
「……えっ?」
「マスター?」
「アルトリアさんも、ごめんなさい」
そして真っ先に、マシュとアルトリアへ頭を下げ謝罪した。そのまま頭は下げたままでいる。
呆気にとられる二人。
「先輩、頭を上げて下さい!」
「そうです、まずは頭を上げて。話をしに来たというのなら、こちらを見て下さらないとできません」
「……分かってるだろうけど、さっきのことで。僕が逃げたことで、謝りに来た。ごめんなさい」
「それは、こちらが先輩のことも考えずに頼んでしまったからで……」
「いや。そうだとしても僕が拒絶して迷惑をかけたことに変わりはない。……申し訳なかった」
三度目の謝罪でもう一度頭を深く下げる一捷。
「……顔を上げて下さい、先輩。私が言う資格は無いかもしれませんが、率直に申し上げて先程の先輩の反応は、普通の人間の反応……だと思われます。だから責めることはしませんし、先輩が悪いとは感じていません。元々一般枠だったのですから、無理に依頼することは……できません」
「でも、他に手がないんだろう? だから、僕に頼んだ」
「それは……そうなのですが」
「キリエライトさん、アルトリア。正直に言うと、さっき喚き散らした内容。あれは、僕の思っていること。本音だ」
情けない自分のことを白状していく。聞いてもらうマシュとアルトリアの目からは決して逸らさない。
謝罪して自分という人間、一捷という強くない人間をどういうものかちゃんと伝えなければいけない。
そうしなければここに存在するのもあやふやになってしまうような気がした。一捷はそう感じていた。
「僕は弱くて、情けなくて、臆病者だ。命がけで戦ってくれた貴女達を拒絶するような、酷い奴だ」
「先輩……」
「……でも、それでも、もし。もし二人が許してくれるなら。図々しいけど、力を貸してくれないだろうか」
「っ? それは、つまり」
「ここに来るまでに、ドクターと話してきた。……ドクターは、こんな僕でも構わないと、言ってくれた。僕が必要だって。だから」
「……だから、戦うのですか?」
黙っていたアルトリアが会話に加わる。一捷へ向ける視線は未だ鋭く、同時に問いかけていた。どうして戦うのかを。
「他者に必要とされたから、そうしなければいけないから、そう感じたから。貴方は義務感で戦うと言うのですか、マスター」
「僕しかいないこと。この状況を放って置けないと思ったのは、もちろんあるさ。義務感……ってやつなら、そうなんだろうね。……でも、それだけじゃない。僕は、僕の意思で、ここに来たと思っている」
「それは何故ですか? どうして、貴方は戦うというのです?」
戦う理由。自らの芯となるもの。
一捷の中に、それはもう既にあった。決して大したものではない、誉められたものじゃないかもしれない。
それでも自分なりに、自分の中で、自分で出した理由。
一捷は騎士王の視線を逃げずに受け止め、逆に視線で返す。
「理由は、この世界を救うため。壊れた人理を直して世界を取り戻すこと。そして、僕のためだ。もっと具体的に言うなら……」
そこで言葉に詰まってしまう一捷。視線をさまよわせ、頭を抑えたりしてなんとか言葉を紡ごうとするが、なかなか出てこない。
「……えっと、その、なんていうか……その……」
「どうしましたか?」
「……事前に言っとくのもあれだけどさ、決して立派なもんじゃない。笑われるかもしれないし、呆れるかもしれない」
「……先輩。話して下さい。笑ったりなんかしませんよ」
「キリエライトさん?」
「私は、先輩が強い人だと思っていました。だから先程も、先輩なら大丈夫。この人ならやってくれるかもしれない、そう思っている部分がありました。……そうでは、ないんですよね」
「……あぁ、その通り」
「だから、知りたいんです。貴方を。先輩という人間が、どうして戦うのか」
「私も同じです、マスター。戦いの上で、自分の弱さを認めることは、決して恥ずべきことではありません。自分が弱いのだとしたら、その上で何故戦おうとするのか。私はそれが知りたいのです」
マシュは先輩である一捷のことを、どこか違和感を感じながらも知りたいと思った。
アルトリアは主が何を思い、何を以てこれからの大きな戦いに望もうとするのか、知らなければ戦えないと思った。
じっと一捷の答えを待つ二人。拒絶されても一捷のことを信じ、向き合っている。
ならば二人に答えなければならないと一捷は決意を固める。例えどんなものでも、何故、人理修復を引き受けるのかを伝え、知ってもらわければならない。
一度深呼吸。心を落ち着けてから一捷は、その理由を言葉にし、伝えていった。
「僕の戦う理由。それは――自分の家に帰るため。帰って、夕飯を食べるためだ」
「「えっ」」
「そう、帰るためだよ。家で夕飯食べるためだよ。それが僕の戦う理由」
その答えに固まる二人。
「……あの、ボケてるわけじゃあないからねコレ。大真面目だから。僕の戦う理由だから」
「夕飯を」
「食べるため」
おうよと一捷は胸を張る。本当に真面目に。
ただアルトリアとマシュの側からすると、余りにも答えが予想外過ぎてどう反応していいのか分からなかった。
そりゃ真面目に話していて戦う理由を聞いたのに、飯食うためだよなんて言われてどう反応しろと? という話である。
しばらく微妙な時間が流れて……やがてマシュなのかアルトリアなのか、どちらかが吹き出した。
「わっ、笑うんじゃあないよ! これでもしっかり考えたんだぞ僕はぁ!!」
「も、申し訳ありませんマスター……っ。ただ、最初の様子からは想像できないような、内容だったもので……」
「笑わないでくれって言ったじゃんか! キリエライトさんもさぁ!」
「す、すみません。ですが、その……なんといいますか。戦っていた先輩のイメージと違うといいますか、可愛らしいお願いだと思ってしまって」
「家に帰りたいだけだよ!? 飯食いたいだけ! 一般人なら普通の願いじゃないか……」
うがーと顔を真っ赤にして怒り、一通りしたら背を向け体育座りで落ち込む一捷。
繰り返しになるが本人は大真面目なので、それを笑われるわ可愛いわと言われ結構ダメージを負ってたりする。
「だって仕方ないじゃんお腹空いてんだから……やっと飯食えるって思ってたのに、いきなりこんなことになってさぁ。それを何よ可愛いって……こちとら大真面目よ……」
「申し訳ありません先輩……」
「何もそこまで落ち込まなくても。……確かにその気持ちは理解できますが」
それでも理由を聞いたことで、マシュとアルトリアは少なくともこの男が悪い人間ではないと
感じた。この人には力を貸してもいい、信頼して良いと思った。
この後なんとか一捷が戻ってから、三人はロマニの元へ向かい、彼を加えて管制室に戻る。
「先程は申し訳ありませんでした。僕は正直、強くない人間です。弱いし、痛みや戦いは怖いです。先程みたいに、皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれません。……ただそれでも、良いのなら。もし皆さんが許して下さるのなら、人理修復に力を貸して下さい。お願いします」
一捷は迷惑をかけたスタッフへ九十度体を曲げて謝罪。
先程のこともありスタッフ達はそれに困惑し、顔を見合わせていた。それでも深く謝罪する一捷の姿から誠意は伝わり、一捷へ快く答えてくれた。
「……もちろんだ。君一人にやらせないよ」
「私達はそのためにいるんですからね」
「もし辛くなったら、きちんと言うんだぞ」
「……ありがとうございます、皆さん」
「礼を言うのはこちらだ、藤丸君」
ロマニが一捷の前に出てきて彼の目を見る。
一捷の答えは、決まっていた。
「三度目になるけど、改めて依頼する。――ボクらに、人理修復に協力してほしい」
「…………自分にできる、なんて言えません。それでも、僕がやれることをやります。皆を救うためと、僕のために」
「……ありがとう。その言葉でボク達の運命は決定した」
一捷へ礼と共に頭を下げるロマニ。
今よりこの世界は動き出す。
「生き残った全てのカルデア職員に告げる! 現時刻をもって、ロマニ・アーキマンが正式に司令官の任に就く! そしてカルデアは前所長オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り、人理継続の尊命を全うする!!」
人類史の保護及び奪還。探索対象は七つの特異点、各年代と原因と思われる聖遺物、聖杯。そして――本来は存在しないモノ。
戦うべき相手は歴史そのもの。立ちはだかるのは多くの英霊に伝説。そして――邪なる野望。
挑戦と同時に、過去に弓引く冒涜。そして――運命への反逆。
人類を守るために、積み上げられてきた人類史に――歪められた『セカイ』に立ち向かう。
「生き残るためにはそれしかない。いや、未来を取り戻すためにはこれしかない。……例えどんな結末が待っていようとも、だ」
「……どんな結末」
「……以上の決意をもって、作戦名をファースト・オーダーから改める」
それは、カルデア最後にして原初の使命。
その名を――人理守護指定“グランドオーダー”。
「魔術世界における最高位の使命を以て――我々は未来を取り戻す!!」
本物ではない、へっぽこが加わって幕は開ける。
それは、未来を取り戻す物語。
……そして。
それは、奪われた運命を奪い返す、誰も知らない、あるはずのなかった物語。
「よし、じゃあ早速、ミーティングをだね……」
「……あのドクター、一ついいですか」
「なんだい?」
「さっきの話の中で……僕のこと、子供だと仰ってたんですが」
「あぁ言ったね。あ、ゴメン嫌だった?」
「……ぶっちゃけ、皆さんに僕って何歳に映ってます?」
「えぇ? うーんそうだねぇ……その見た目だと高校生くらい?」
「私もドクターと同じです、先輩」
「てっきり、私は中学生かと思いましたが」
「あ、もしや大学生だったりする?」
「そういう風に見えてますか。そうですかぁ。ハッハッハッハ……」
「……僕23です」
「「「………………嘘ぉ!!!?」」」
「普通に仕事してましたし車の免許も持ってます……」