へっぽこマスターが物申す   作:剣聖龍

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今年初めての投稿……。お待たせして申し訳ないです。

最後にアンケートがあります、皆さんの意見を聞かせて欲しいです。


21話

「おぉー……」

 

「フォーウ?」

 

 

 白と黒のピッチリとした礼装『カルデア戦闘服』。自室にて、今着ているその戦闘スーツをじっくり眺める僕。改めて見るとすげぇ格好、エヴァのプラグスーツみてーだわ。……ガンドやオダチェンは使えないけど。

 

 あれから時間が許す限り魔術の練習はした、けども礼装の機能を使うことは出来なかった、一度もだ。ドクターやダ・ヴィンチちゃんが礼装や僕の魔術回路をチェックしてくれたけどやっぱり壊れていたり異常があるということではないらしい。原因は不明。

 

 機能が使えないのは不安だけど出来ないものはどうしようもない。出来るものあるものを使って、やらなければならないことに集中しなければ。

 

 プシーと空気が抜ける音が出入口から発せられる。立っていたのはオレンジと黒の女性用カルデア戦闘服に身を包んだキリエライトさんだ。……今更だが胸元が見えてその……恥ずかしいなコレ……。

 

 

「おはようございます先輩。どうしたんですか?」

 

「い、いや……このスーツの格好すげーなと思っちゃってさ。キリエライトさんはそう思わない?」

 

「そうでしょうか? 慣れれば違和感はありませんよ。……では、行きましょうか」

 

「……お、おう」

 

『私忘れないでねー』

 

(わーってるって)

 

「フォウ!」

 

 

 机に置いといた白短剣マオーを持ち、二人と一匹で向かうは管制室。

 

 アルトリアさん達サーヴァントの四人、ドクターとダ・ヴィンチちゃん、スタッフの皆さんが既に揃っており、挨拶が終わるとドクターより説明を聞かされる。

 

 内容はこれから向かう第一の特異点、西暦1431年のフランスについて。

 

 今日から遂に始まるのだ、グランダオーダーが……人類存亡をかけた『聖杯探索』が。

 

 

「サイズはピッタリのようだね。二人とも似合ってるよ、レイシフトスーツ」

 

「どうも。でも僕、これの能力使えないんですけど」

 

「大丈夫、レイシフト先ではあの魔術協会制服になってるから。着てもらうのはレイシフトの安全性を上げる為なんだ」

 

「ただでさえ危険を伴うからね。冬木の時は奇跡みたいなものなんだよ? ま、だからこの私がいる訳なんだが!」

 

 

 ドクターは優しく、ダ・ヴィンチちゃんはテンション高めで説明してくれる。

 

 そう、とんでもなく危険な行為なんだ。これから行うことというのは。

 

 

「では早速始めようか、二人共。サーヴァントの皆も用意はいいね?」

 

「勿論です」

 

「問題はない」

 

 

 アルトリアさんとエミヤさんが頷く。今回同行するのはこの二人、クー・フーリンさんと小次郎さんはカルデアで待機。予備戦力としてとカルデアの防衛が役目だ。

 

 ダ・ヴィンチちゃんに指示され細い筒のような機械『コフィン』なるものに入る。

 

 ……狭いな、コレ。

 

 

『どうだい、藤丸君。そのコフィン――“霊子筐体”に入った感想は?』

 

「狭いんですが……頭ぶつけそうで怖いです」

 

『ハハハ、そりゃそうだろうね! ……さて、前置きはこのくらいで。藤丸君、これからはキミが中心になる物語だよ』

 

 

 目の前に表示される通信スクリーン、相手であるダ・ヴィンチちゃんの言い方が途中で少し変わる。

 

 

『英雄ではなく、ただの人間として星の行く末を定める戦いが、キミに与えられた役割だ』

 

「役、割? ……どういうことですか?」

 

『――キミの判断が我々を救うということさ。それはそのまま逆の意味も持つけれどね』

 

 

 朝から緊張していた体が、更に震えるのを感じた。

 

 そうだ……僕の判断が、『人類最後のマスター』の行動が、これからの未来を左右するんだ。

 

 やらないと……いや、やらければならない、絶対に。

 

 僕は……『人類最後のマスター』なのだから……!

 

 

(おーいおい、気を張りつめすぎてるぞ。リラックスリラックス)

 

(そんなんできるかよ……! こんな状態でさ……)

 

(……まあ無理な話だからな、実際)

 

『さて、実際に行う前にレイシフトとは何か? キミにちゃんと講義するとしよう』

 

 

 レイシフトが始まろうとする直前、そう言ってダ・ヴィンチちゃんがレイシフトの仕組みを解説し始めた。

 

 レイシフトとはつまり、

 

 ・タイムマシンのように使える観測機構

 

 ・まずコフィンに入った人間の脳波といったあらゆる数値を測定。今でいうと僕、“藤丸一捷という個体がどのような数値で成り立っているか”を定義づける。僕は◯×△□という数字ですよ、という状態にする。

 

 ・定義づけが完了したらコフィンに魔術をかけ、入ってる人間の生命活動を観測できない状態に、コフィンを魔術的に「生きているのか死んでいるのか分からない箱」へ仕立て上げる。

 

 ・次に霊子変換。僕の体を実際に「分解」し、同時に僕がいなくなることで起きる歴史や因果の狂いを計算しそれを補正。僕が生きていると“世界に誤認させる”。

 

 ・そして僕という存在を目的地に向けて投射。極小の地球モデルであるカルデアスのデータを元に、遥かな過去と土地へ跳躍させる。

 

 ……とのこと。え、ちょっと。改めて聞くとめちゃくちゃ危ないことしてるじゃんコレ。体分解してるとかなんとか。いや、過去を改変するんだから当然なのか?

 

 これらを行うのに必要なのはカルデアの演算装置、それを動かし続ける膨大な電力に魔力。そして人員の数々やダ・ヴィンチちゃんにドクター。

 

 これだけのことを、僕の為にしてくれている。

 

 ……だからこそ僕は、やらなければない、やるしかない。

 

 皆の、世界の為に。

 

 自分には重すぎる、と分かっていながら、その気持ちを無理矢理心の奥へと封じ込めた。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

『アンサモンプログラム・スタート。第1工程開始します』

 

『藤丸一捷、マシュ・キリエライト、アルトリア・ペンドラゴン、エミヤ。四名の全パラメータの定義、完了しました』

 

『続いて術式起動、“チャンバー”の形成を開始します』

 

『……“チャンバー”形成、生命活動「不明」へと移行』

 

『第2工程突入、霊子変換を開始します』

 

『……補正式、安定状態へ移行』

 

「第3工程、レオナルド! カルデアスは!?」

 

「落ち着きなよ、全てまるっとお見通し。我が叡智、我が万能、遮るものは何も無しさ!」

 

「……全工程完了! アーキマン司令、ご指示を!!」

 

「……分かった」

 

 

 全ての工程が問題なく終わったのを確認し、ロマニは深く息を吐くと、改めてモニターへ目をやった。

 

 

「それじゃあ皆、始めようか」

 

 

 その言葉に頷くスタッフ一同。

 

 

「――擬似霊子転移(レイシフト)、始動! グランダ・オーダー、実証を開始する!!」

 

 

 コフィンから放たれた光は一直線にカルデアスへ向かい、目を開けていられない程カルデアスが光を放ち、最初のレイシフトが始まるのであった。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 体が浮いて、何かに包まれた……と思った次の瞬間。周囲は狭いコフィンの中から全く別の場所へと変わっていた。

 

 風を感じる、匂いを感じる、地面に立つ感覚を感じる。

 

 目の前に広がっているのは、木と草と茂みだらけ。何処かの森の中だった。

 

 

「レイシフト完了、どうやら森の中に出たようです……」

 

「周囲に敵影らしき存在は……いないようだな」

 

 

 レイシフトの影響なのか少しボーッとしていたけど、キリエライトさんとエミヤさんの声を聞いて我に帰る。盾と弓と出しており、声がなかったアルトリアさんもエクスカリバーを構え周りを警戒してくれていた。

 

 

「マスター、体に不調等はありませんか?」

 

「僕は、大丈夫。それよりここは「フォウ!」うぉぉう!?」

 

 

 何処だろうかと言おうとした時、服の中をモゾモゾと何かが蠢いて思わず叫んでしまう。

 

 シャツの下から飛び出してきたのはフォウくんであった、いつの間にか紛れ込んでいたらしい。そのまま毛繕いを初め、終わると気ままに周りを歩いたりしている。……あ、ついでに今見たけど服がちゃんと魔術協会制服になってた。すごい。

 

 

「先輩、まずはカルデアに通信を。無事レイシフトが完了したことを報告しないと」

 

「あ、そうだね。えーと確かここを押して……」

 

 

 左手に巻き付けたバンド型の通信機。まだ慣れてない手つきでなんとか起動すると、『ププー』とゲームで聞き慣れた音がして、目の前に魔術を使った通信画面が展開された。そこにはドクターの上半身が映し出されている。

 

 

『藤丸君、マシュ! 良かった、無事に繋がった。全員無事かい?』

 

「はいドクター。アルトリアさんとエミヤさん、それにフォウさんも一緒です。全員、問題ありません」

 

 

 ドクターはレイシフトが成功したことを聞き安心した表情を浮かべると、管制室から観測した情報を教えてくれる。

 

 周囲に魔力反応はなし。敵生生命体の反応もなし。僕達が今いる時間軸はA.D.1431年のフランス、ロレーヌ地方のドン・レミ村。確かそこは、この特異点に一番関係しているジャンヌ・ダルクの生まれた村だった筈。

 

 それに関係してこの場所にレイシフトしたのか、と考えたところで、

 

 

「ドフォーーーーウ!!!!」

 

 

 またもやフォウくんが考えを遮った。側にいたと思ったらいつの間にいなくなってる。しかも鳴き声は叫びのような感じ、明らかに普通じゃない。

 

 

「フォウさんの叫び声です!」

 

「私が先行します。マシュはマスターの護衛、アーチャーは後方の守りを!」

 

 

 直ぐ様アルトリアさんが駆け出しキリエライトさんが続く。

 

 

「……マスター、何をしている! 行くぞ!」

 

「……あっ、はい!」

 

 

 エミヤさんに促され、僕は慌てて二人を追いかけ茂みの中を突っ走っていく。

 

 森の深い部分でなかったのか直ぐに茂みを抜け開けた場所に出た、エミヤさんも直ぐにやってくる。出た先には叫んでいたフォウくんと、アルトリアさん、キリエライトさんが空を見上げ固まっていた。何かと思い僕も空を見て、そこにあったのものに思わず思考が止まった。

 

 青空、ではなく。そこにあったのはとんでもなく巨大な光の輪。

 

 ゲームで見ていた。分かっていた筈のもの。にも関わらず、実際に見るその光景に……圧倒されずにはいられなかった。

 

 

「こ、これは……」

 

『光の輪……? いや、衛生軌道上に展開した何らかの魔術式、なのか……?』

 

(あの輪っかは確か、ゲーティアの宝具……。あれがあるってことはゲーティアによって人理焼却が行われた……少なくともゲーティアはいるってことになる)

 

 

 光の輪、いや光帯からゲーム知識を合わせて考察。でもだとしたらあの黒い翼の騎士、エースは一体なんなんだろうか? 絶対にゲームにはいなかったし、あれだけ強いのならゲーティアが放置しておくとは思えない。そもそもサーヴァント……じゃないよなアイツは。

 

 それに、エースに対するレフの態度も……。

 

 そこまで考えたときだった。焦げ臭いような匂いがして、見下ろした先の村から煙が上がっているのが見えた。

 

 

「村が……焼かれてる!?」

 

「おそらくあれはドン・レミ村です……理由は分かりませんが、何者かが焼き払った後の……!」

 

 

 ゲーティアの宝具である光帯、ドン・レミ村が燃やされたこと、それらは1431年に起きていない。歴史は既に変わり始めている。

 

 人の歴史が壊されている。言葉だけじゃ漠然としていてイメージできなかったことが、目の前で起きていた。

 

 いつの間にか口の中に溜まっていた生唾を不安ごと飲み込む。やらないと、僕が。ドクターへ指示を仰ぐ。

 

 

「……ドクター、指示をお願いします。これをなんとかするのが、僕のやることの筈です」

 

『……あぁ、そうだね。まずは情報収集だ。この地で何が起きているのか、それを突きとめる必要がある』

 

 

 僕を入れた四人は頷いて情報を集めるべく周囲の探索を開始した。

 

 目的は特異点の修復。そのために必要なのは聖杯の回収。魔術王が各時代に放ち、歴史を歪めた聖杯を探し出さなければならない。

 

 周囲を警戒しながら見つけた砦や小さな町で話を聞いて情報を集めていく。

 

 

「ありがとうございます。話を聞かせてくれて」

 

「あぁ……」

 

 

 怪我をしている兵士さんにお礼を言うと皆の元へ戻る。

 

 現在地はロレーヌ地方のヴォークルールにある砦。ここも襲撃を受けたようでボロボロだ。

 

 決めていた集合場所にてキリエライトさん達と合流すると通信機が鳴り、出ると相手はダ・ヴィンチちゃんだった。

 

 

『情報収集の成果はどうだい? 藤丸君』

 

「いくつか気になる情報を集められました。ドクターは?」

 

『彼は今休憩中さ。今は私が代わり。それで、内容を聞かせてくれるかい?』

 

「はい……」

 

 

 まとめた情報を伝えていく。

 

 まず一つ目。死んだされるオルレアンの乙女、聖女ジャンヌ・ダルクが甦ったこと。

 

 二つ目。ジャンヌ・ダルクの襲撃によりイングランドは既にフランスから撤退。そのフランスも国王であるシャルル7世が殺され、国家機能は麻痺状態。

 

 三つ目。フランス中央部のオルレアンを占拠したジャンヌ・ダルクはそこを拠点にし、各都市を襲撃していること。

 

 そして四つ目。甦ったジャンヌ・ダルクは『竜』を操り、無数の竜による軍勢を引き連れていることだ。

 

 

「本来の歴史ならば、竜のような幻想種はこのフランスには存在しないでしょう。恐らくその竜は、甦ったジャンヌ・ダルクが何かしらの手段で呼んだものと考えられます」

 

「仮にセイバーの言葉を真実とするならば、この特異点を形成している聖杯は復活したジャンヌ・ダルクの手にある、と踏んで間違いないだろう。今後の方針としては、ジャンヌ・ダルクを見つけることを薦めたいのだが」

 

「どうなされますか、先輩?」

 

「……アルトリアさんとエミヤさんの言う通りだ。まずはジャンヌ・ダルクを探そう。早く止めないと」

 

 

 ここまでの情報でゲームと違う箇所はなかった。聖杯はオルレアンにて待つ、術ジルが作り上げたジャンヌ・オルタの中にあることだろう。

 

 

(割り込んですまないが。ここから1㎞に生命反応多数、この砦に接近中だ。どの個体も大きな反応だぞ!)

 

 

 ジャンヌ・ダルクの情報を集めようと行動しようとしたらマオーの警告が頭の中に響き、続いてガン、ガァーンと高台の鐘が打ち鳴らされる。

 

 

「飛竜だ! 飛竜が来たぞぉ!!」

 

 

 見張り台の兵士が危機を知らせるべく叫んでいたが、その直後、見張り台を火の玉が直撃し崩れていった。

 

 火の玉が飛んできた方向の空には緑や茶色をしたワイバーンの群れ。空の青い部分が見えなくなる程の大群が砦ヘ迫ってきている。

 

 ワイバーンの大群に町の人々はパニックになって逃げ惑う。兵士や武器を持った人が戦おうと集まり、一瞬で町は戦場へと変わってしまった。

 

 

「男と兵士は武器を取れぇ! 女子供は逃げろ、焼かれるぞ!!」

 

「先輩!」

 

「……あっ、あぁ! 分かってる、あの竜を迎え撃って――」

 

『ストップ! その必要はないよ、二人とも』

 

 

 思わず突っ立っていたがキリエライトさんの声で気付き、戦おうと指示を出そうとしたら、何故かダ・ヴィンチちゃんに止められてしまう。

 

 どうして!?

 

 

『残念ながらここでの戦闘を認めるわけにはいかない。必要な情報は手に入れた、すぐにその場から離脱するんだ』

 

「待ってよ! 目の前で襲われてる人達を、見捨てろって言うんですか!?」

 

『今いる場所は特異点だ。特異点というのは、他とは切り離され隔離された時代。修復すれば、そこで起きた全てのことはなかったことになる。その時代の人間が死んでも何も問題はないということさ』

 

(違う、違うんだダ・ヴィンチちゃん。そうじゃないんだ)

 

『……あえて言うよ。その時代で死んでいけないのは、キミとマシュだけだ』

 

 

 けど目の前では竜によって人が食われ、殺されている。男や女、老人子供問わずだ。

 

 

『いくら私達でも、目に映る全ての人間を救うことは出来ない。出発前に話したろう? “キミの判断が我々を救う”と言った意味を、ちゃんと考えて欲しい』

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんの言葉。それは正しい、その通りでもある。

 

 ワイバーンに襲われる人々、その全てを助けることは……出来やしないだろう。

 

 少し離れた場所でも泣いている女の子が今にも竜に襲われようとしていた。

 

 僕は、それに――

 

 

《ダ・ヴィンチちゃんの指示通り撤退する》

 

《目の前に飛び込んで女の子を助けに行く》

選択肢の頻度は今ので良いくらいでしょうか?

  • 今くらいで十分
  • 少ない、戦いごと全てに
  • 多い、もう少し控えめに
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