へっぽこマスターが物申す   作:剣聖龍

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3話

「君は……キリエライト……さん?」

 

「はい、先輩。どうやら私はサーヴァントになったようです」

 

 

 状況は違えど、盾の騎士は同じように融合したようだ。彼女は盾の裏から何かを取り出し僕に放ってくる。

 

 

「まずはこれで傷の治癒を。治癒魔術のスクロールです」

 

 

 巻物の形をしたそれは、ほどけると体にまとわりついて淡い緑に輝いた。

 

 すると不思議なことに痛みが引いていき体内の痛みもなくなっていった。巻物は使いきりなのか消滅する。

 

 こいつが、魔術か。確かに不思議なものだ。

 

 生の魔術を味わい驚いていると、いきなり体が浮く感覚。

 

 

「えっ、ちょ、何!?」

 

「フォウ!?」

 

「失礼します先輩、フォウさん。急いで、ここから移動しなければならないので」

 

 

 抱き抱えられた僕に、早くもう一人と合流しなければ、とシールダーは続ける。

 

 もう一人って所長?

 

 

「少し遠くにいるようなので――飛びます」

 

 

 次の瞬間。

 

 僕とフォウ君を抱えたまま彼女は跳躍、空へと飛んだ。

 

 視線を落とせば町が一目で見下ろせる程の高さ。10メートル近くは飛んでいるんじゃないか。

 

 

「見えました。前方1㎞に要救助者、発見」

 

 

 自分には暗い町並みにしか見えないこの空中で、彼女はもう一人の位置を把握したようだ。

 

 視力どんだけだよ……。

 

 

「シールド、後方展開。空間固定シールド・カタパルト。――行きます、マスター」

 

 

 武器として使う十字盾を後方に呼び出し、空中に魔術で固定。それを足場代わりに蹴った。

 

 

 ドッッッッッッ!!!!

 

 

「おぉぉぉぉおおぉぉぉっ!!!?」

 

「口を閉じて下さい舌を噛みきりますよ!!」

 

 

 銃から発射された弾のように、猛スピードで空中を駆け抜ける僕達。

 

 廃墟の町を駆け抜けビル群が近づいてくると、「あの建物に着地します、衝撃に備えて下さい!」と彼女。

 

 

「ちょい待っ――ぐへぁ!!!!?」

 

 

 着地するのは彼女だが、衝撃は伝わる。

 

 着地したビルの屋上は砕け、それほどの衝撃が体を駆け抜けた。

 

 

「がっ、ゲホッ、ゲホッ……」

 

「着地成功です、マスター」

 

 

 そう言うのは衝撃を直に受けたシールダー。彼女の方が大きな衝撃を浴びたのにピンピンしている。

 

 ……おそろしく頑丈だ。融合しているとはいえサーヴァントだというのを思い知られされる。

 

 

「……イヤッ、助けて! 誰か助けてぇぇぇぇっ!!」

 

「!? 今の声って、確か」

 

「あそこです!」

 

 

 指差した方向はこのビルの丁度下の通り。

 

 瓦礫まみれになったそこで、所長が太ったハサンの分身に追いかけられていた。

 

 

「先輩とフォウさんはここにいて下さい!」

 

 

 いち早く飛び出すシールダー。

 

 盾を呼び出すと所長とハサンの間に割って入るよう飛び降りた。

 

 

「……!? !!」

 

「くっ! やあぁぁぁぁ!!」

 

 

 ハサンのタックルを盾でどうにか防ぎ、押し返した。たたらを踏むハサンを右から、左からと盾で殴り付け、下部分で腹を貫いた。

 

 

「や、やりました……」

 

「う、嘘。貴女……マシュ!?」

 

 

 分身ハサンが消滅し所長が気づいた所で、僕とフォウ君もシールダーに下ろしてもらい、合流することができた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

『藤丸くーん!! あぁやっと繋がった、ロマニ・アーキマンだよぉ、返事がなくてホントに心配したよ!! そっちの状況はどうなって……ってあらぁ!? マシュに所長ー!! なんでいるの!? というかマシュ、そのハレンチな格好は何!? 僕はそんな風に君を育てた覚えはないぞ! 所長はなんで生きてるの!? 頑丈ですね!』

 

「ハレンチ……」

 

「失礼ねアンタ……」

 

 

 所長と合流したら、そこはゲーム通りなんでここにいるのとかシールダーに何かしたのかと誤解されまくり、シールダーに誤解を解いてもらっていざ経緯を説明しようとしたらドクターの通信だ。

 

 何気にどえらい失礼なこと言うなドクター。……僕が言えないけど。

 

 とりあえず通信が繋がったので全員の意見を説明、交換することに。

 

 カルデア側は破壊工作により被害は甚大。

 

 ドクターが指揮しているのは彼より上の人間がいないからで、生存者は20人にも満たず、その中にレフはいないこと。最後の情報に所長が大変なショックを受けていた。

 

 こちらからはシールダーの状態とサーヴァントについて。

 

 魔力を使い様々な神秘や奇跡を再現するのが魔術。その魔術において最上級の1つが英霊召喚、神話や伝説で語られる偉人を使い魔として使役すること。その力はまさに規格外で、確か……人間と比べたらサーヴァントは戦闘機くらいの強さだった筈。サーヴァントは7つのクラスとそれ以外のエクストラクラスに分けられ、各々に特徴がある。

 

 で、シールダーの方は、彼女と融合したのは事前にカルデアで用意されていたサーヴァント。破壊工作でマスターを失い消える筈だったそのサーヴァントは彼女へ能力と宝具を渡す代わりに特異点の異変を排除するよう言い残して消滅してしまった。だから今の彼女は半英霊(デミ・サーヴァント)という状態。融合した英霊の名前は分からず、力の全てや宝具は使えない。半人前の英霊だと、シールダーは落ち込んでいた。

 

 そして、これからのこと。この冬木が廃墟と化しているのは、この地であの『聖杯戦争』が行われたから。7騎のサーヴァントを召喚し、戦って、最後に勝ち残った者があらゆる願いを叶える力を持つ願望機『聖杯』を手に入れる。そして冬木が特異点と化した原因はまず間違いなく聖杯。だから聖杯を手に入れてしまえば、この特異点は消滅する。

 

 これからの目的は、聖杯探索に決められた。

 

 

「……つまり、まだまだ帰れないか」

 

「……先輩?」

 

「なんでもねーです」

 

『まずは拠点が必要だ。そこから少し移動した地点に霊脈のターミナルがある。そこなら通信と安定するだろう』

 

「了解」

 

 

 通信を切るとドクターの指示されたポイントへ移動する。

 

 魔力が収束する場所をまず探し、ベースキャンプを作らねば。そうしないと通信は安定しないし、向こうの助けも届かない。

 

 

「ここね。マシュ、貴女の盾を地面に置いて。宝具を触媒に召喚サークルを設置するから」

 

「分かりました」

 

 

 盾を寝かせて置くと金色の光が放たれ、周りの光景が変わった。

 

 青い光がいくつも走り、光っている“あの場所”。

 

 FGOプレイヤーなら知らぬ者はいない。希望(神引き)絶望(爆死)と欲望にまみれた召喚場である……。

 

 

『シーキュー、シーキュー。よーし通信が安定したぞ。皆ご苦労様。これで通信も出来るようになったし、補給物資も送れる』

 

 

 さっそく送るね、サークルが光り送られてきたのは……。

 

 

「……うっ!?」

 

 

 とげとげで。

 

 虹色に輝く。

 

 “例の石”だった。

 

 ……その瞬間、脳裏に甦るこれまでの召喚惨劇。

 

 

『聖晶石だ。これを3つ使えばサーヴァントを召喚できるってどうしたの藤丸君!?』

 

「爆死……100連……吐き気が……オェェェァ

 

「キャァァァ!? ちょっとこんなとこで吐くんじゃないわよーっ!!」

 

「先輩しっかりしてください! 聖晶石は爆発なんかしませんから!」

 

 

 

 

 

「あー……腹ん中全部吐いたわ……」

 

「はぁ~……全く。なんでアンタなんかがマスターになれたのか……。世の中ままならないったらありゃしないわ」

 

 

 一度サークルから出て吐けるだけ吐いてから再入室。

 

 送られてきたのは石は5個。1回分の召喚が可能でこれが星4鯖確定ガチャになる、と思う。

 

 となると候補は10体。

 

 デオン、ジークフリート、エミヤ、エリザベート、マリー、マルタ、ステンノ、カーミラ、タマモキャット、ヘラクレスの内どれか。

 

 個人的に唯一のアーチャーのエミヤか、タフなヘラクレスが来てほしい。……魔力食い尽くされて死ぬかもだが。

 

 

『やり方は、サークルの上で聖晶石を3つ砕いて、召喚の詠唱をするんだ』

 

「こちらが詠唱です、先輩」

 

「……あっ、俺がやるのか」

 

「当たり前でしょう。何を聞いてたの貴方は」

 

 

 ……やるしかないか。

 

 召喚されるサーヴァントは、用意した触媒や、召喚する人間と似ている者とか、その時の思考で左右されるけど、ガチ一般人の僕の場合どうなるんだ。闇鍋?

 

 石は軽く力を入れるだけで砂の塊みたいに割れる。3つ砕いてばらまくと、右手はサークルにかざし、左手はシールダーが渡してくれた詠唱のメモを読み上げる変な格好だがなりふり構ってられない。

 

 ……さぁ大仕事だ。この召喚は、これからを大きく左右する。

 

 体が熱くなってくる。汗が流れ心臓の鼓動が早くなってくる。

 

 ……一応言っとくが僕は本番にすこぶる弱い。いつも準備に準備をしても必ず大一番で何かしらやらかす。今回もどうなるのか非常に、非常に心配だ。結果次第では召喚したサーヴァントが従わず、殺される可能性もあり、もしかしたら本当に死ぬかもしれない。

 

 

「はぁー……はぁー……っ!」

 

 

 だがまあ、こうしていてもしょうがない。やるしかないのだ。でなければどうにもならない。

 

 ……意を決して。

 

 

(こんなとこで、訳の分かんないまま死にたくない。どんなことしたって、僕は元の世界に帰ってやる。帰って……飯を食うんだ)

 

 

 ――詠唱を、開始する。

 

 

「素に銀と鉄。

 

礎に石と契約の大公。

 

降り立つ風には壁を。

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度(ごたび)

 

ただ、満たされる刻を破却する

 

―――告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に。

 

我は常世総ての善と成る者、

 

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

 

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 カッ……!

 

 触媒となっている盾の真ん中からいくつもの光が出てきて回転を始める。

 

 緊張の一瞬。

 

 ゲームだとここで金色とか虹色に光ると、星4、5の鯖が出たりする。

 

 だが今回は確定だろうから普通に回転して『おぉ、すごい魔力反応だ!!』

 

 いきなりドクターが興奮したように叫んだ。

 

 なんだよ、そんなに驚ろ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ?」

 

「どんどん魔力が上昇しているわ……!」

 

「これは、相当に強力なサーヴァントが召喚されます!」

 

 

 え、え、え。

 

 待てや。確定召喚だろコレ、それで虹回転とかあんの? ないだろ。

 

 何が来るんだ、マジで何が来るんだオイ!?

 

 普段なら喜ぶところの、今は不安と不穏しか感じさせない虹色の光から金色のカードが現れる。

 

 剣を構えた騎士。

 

 最有とうたわれるセイバーのカード。

 

 そこに描かれ、具現化して、こちらに視線を返してくるのは。

 

 金色の髪とアホ毛。

 

 綺麗な緑の瞳。

 

 黄色い縁取りの青いドレスのような服。

 

 右手には見えない何かを持つ男性にも見える少女。

 

 

「――問おう。貴方が私のマスターか」

 

「なんでじゃ!!!!!!!!」

 

 

 かのアーサー王にして青王。腹ペコ王。メインヒロイン。

 

 アルトリア・ペンドラゴン、ここに召喚。

 

 ……マジでなんで?

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