へっぽこマスターが物申す   作:剣聖龍

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※2019年1月26日、戦闘描写を追加しました。


5話

 敵に背を向けて逃走するシャドウランサーことメドゥーサ。

 

 それを追いかけるアルトリアと僕達、罠の可能性もあるので相手とは近づきすぎず、離れすぎずで追いかける。

 

 

「食らいなさい!」

 

 

 空中で突然メドゥーサが反転。いくつもの鎖をアルトリアへ放ってくる。

 

 アルトリアは自分へ飛来した鎖を不可視の剣で弾き、こちらを狙ったものはシールダーが盾でガード。事なきを得た。

 

 

「フフフ……」

 

「遊んでいるの、あのサーヴァント!?」

 

「まともに戦闘すると言うわけではなく、かといって本気で逃走するわけでもない……。何が目的なんでしょうか」

 

(ランサーがメドゥーサ……これは変わってないか)

 

 

 メドゥーサが何がやりたいのか分からず、所長とシールダーが訝しむ。僕は頭の中でFGOと今の状況を照らし合わせていた。

 

 

(だがアイツ、何がしたいんだ? アニメだとそのままキャスニキと戦っていたし……)

 

 

 大きな変化はない。

 

 ただメドゥーサは時折こちらを攻撃しながら真っ直ぐ逃走していく。

 

 ……分からない。相手の目的が。

 

 考えながら走っていると、段々と周りに建物が多くなってきた。都市部に近づいてきたのか。

 

 

「はぁっ!」

 

「同じ手を……!」

 

 

 メドゥーサが放つは同じ鎖攻撃。一度受けたアルトリアには見切られていて鎖を剣で次々と弾いた。

 

 けどそこで、新たな動き。

 

 

「何!?」

 

 

 弾かれた鎖が歩道や近くの電灯や石橋に突き刺さったり絡み付いて、アルトリアとメドゥーサの周りを囲む。

 

 鎖による即席の檻、アルトリアと僕らは分断されてしまったのだ。

 

 

「……やりなさい」

 

「貴様、何を――」

 

 

 アルトリアが言おうとしたところで。

 

 ガッ、と。

 

 首に物凄い力が感じた、と思ったら一気に締め上げれる。

 

 

「えっ……がぁぁぁぁっ!?」

 

「マスター!?」

 

 

 凄まじい力で首を絞められ、息が出来なくなる。

 

 気道が塞がれて息が、酸素が取り込めない。

 

 痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!

 

 締め上げる手を外そうと抵抗するも、力が違いすぎる。相手の腕を握り外そうとしても全く動かない。

 

 

「がっ、はっ、あっ……おまえ、は……」

 

「………………」

 

 

 なんとか思考だけでも動かして相手だけでも見る。

 

 相手は……やたら露出の多い女性。バックラーとロングソードを装備している。

 

 ……ブーディカさん、か?

 

 なんで彼女が冬木に。そこまで思ったところで。

 

 ぶぉんと浮遊感。

 

 ――直後、背中に激痛。

 

 

「がはっっっっっ!!!?」

 

 

 体が砕けるんじゃないか、という位の衝撃が一気に全身を駆け抜けて。

 

 そこで、意識が途切れた。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「先輩っ!!」

 

『不味い! 藤丸君の意識が消失した、気を失ったんだ! マシュ、藤丸君の救助を早く!!』

 

「了解ですドクター『待って!! 急速に近づく反応、新たに三つ!』キャア!?」

 

 

 背後からの奇襲。

 

 黒く染まったサーヴァント複数は一捷らの後方、建物の中から現れて襲いかかった。

 

 マスターたる一捷を道に叩きつけ行動不能にしたのはロングソートとバックラーで武装した女――シャドウライダー。意識を失っている一捷を肩に抱える。

 

 

「……シッ!」

 

「ウォォォッ」

 

「ぐっ……先輩!」

 

 

 救助へ向かおうとしたマシュへ横から襲ったの、ナイフ二刀流を操る長身の男と斧を携えた大男の分身ハサン二体。マシュが助けに向かえないよう連携して攻撃しまくる。

 

 

「い、イヤァァァァッ!?」

 

「……大人しく、しろ」

 

 

 残るオルガマリーを捕らえたのは分身ハサンの本体たるシャドウアサシン。オルガマリーの口をおさえ首へは短刀を突きつけ人質として確保。

 

 一瞬にして、カルデア側は大ピンチに陥ってしまった。

 

 

「伏兵!? くっ!」

 

『アルトリア王! そちらから援護は可能ですか!?』

 

「分かっています、今すぐマスターを――」

 

 

 救援へ向かおうとしたアルトリアへうねりながら向かってくる鎖の大群。

 

 剣で弾き、かわした所に鎌での縦一閃が降ってくる。

 

 

「私のお相手をしてくれるのではないのですか。セイバー?」

 

 

 相手のシャドウランサーがすんなり行かせてくれる訳がなく。鎖と鎌、時おり瞳でアルトリアを翻弄する。

 

 シャドウランサーの目的は時間稼ぎ。いかに強力なサーヴァントと言えど、現世に留まるには魔力を送るマスターが必要だ。マスターさえどうにかしてしまえばいずれ魔力が切れ消滅する。

 

 既にシャドウライダーがマスターを確保して人質も手に入った。盾の女(サーヴァントもどき)はハサン二体が抑え込んでいる。

 

 あとはマスターを『処理』するのみ。王手寸前。

 

 

「くっ……このままでは、マスターが!」

 

 

 アルトリアも相手側の考えは察していた。サーヴァント戦においてマスターを狙うのは聖杯戦争において上手く立ち回る作戦の一つ。早くマスターを、一捷を奪い返さなければならない。

 

 

(……ここは、一気に仕掛けるしかない)

 

 

 不可視の剣を構える。構えは両手での下段。

 

 次に相手の攻撃をしのいだら反転、鎖を切り裂いて一捷達の救出に向かう。相手に背中を向けるのは騎士として恥、だが迷っている暇はない。一刻を争う以上、早くマスターを助けなければ。

 

 シャドウランサーが身を屈める。

 

 

(来るか!)

 

 

 ――Berkana(ベルカナ)

 

 

《おいそこのセイバー。後ろの二匹は任せとけ》

 

 

 突然。耳に届く男の声。

 

 

《取り敢えず今は何も言うな。目の前の奴だけに集中しろ》

 

 

 不思議とアルトリアにとって、その声は信じていいものたと思えた。

 

 ……ならば、それにしたがうだけのこと。

 

 

「――Ansuz(アンサズ)

 

 

 ゴォッッッ!!!!

 

 

「がっ!!!?」

 

 

 後方、突然上がった火柱がシャドウライダーを飲み込む!

 

 器用にも炎はシャドウライダーだけを焼き付くし、一捷は無傷だ。

 

 

『更に新しい魔力反応!? この魔力は……!』

 

「何っ……!?」

 

《聞こえるかアンタ? 直ぐにそいつから離れろ》

 

「……このっ!」

 

「ぐぁ!?」

 

 

 オルガマリーにも届く男の声。何かは分からないがとにかく従い、シャドウライダーかやられたのに気を取られたシャドウアサシンから、魔術で逃れるオルガマリー。

 

 彼女が一捷を抱え離れた所で。

 

 “それ”は、解放される。

 

 

「――我が魔術は炎の檻」

 

 

 一捷を取り替えそうとしたシャドウアサシンの足下、突き上げるように生えた太い腕がシャドウアサシンを掴む。

 

 

「茨の如き緑の巨人」 

 

「ぐ、あぁぁ……!」

 

 

 握りしめられ、メキメキとシャドウアサシンの体が軋んで、苦悶の声が漏れる。

 

 

「因果応報。人事の厄を清める(もり)―――」

 

 

 現れたのは木で出来た巨大な巨人。これは魔術、男のその魔術は、通常の魔術を遥かに上回る『大魔術』なのだ。

 

 こんな芸当は普通の魔術師には不可能。可能なのは『一騎』のみ。

 

 巨人が、炎を纏う。

 

 

「焼き尽くせ木々の巨人―――“灼き尽くす炎の檻 (ウィッカーマン)”!」

 

「ぎ、あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「がはぁ!?」

 

「ぐぉぉぉあぁぁぁ!!」

 

 

 炎となった巨人にシャドウアサシンは巨人ごと焼かれ分身ハサン二体も巻き込む。

 

 シャドウライダーとシャドウアサシン&敵性生物二体、撃破。マスター藤丸一捷と所長オルガマリー・アニムスフィア、救出成功。及びシールダー、マシュ・キリエライトの救援成功。

 

 

「あの魔術、まさか奴が……!」

 

 

 一気に状況を覆されたことに驚きを隠せないシャドウランサー。やったのは間違いなく『あのサーヴァント』、頭の中には唯一泥に染まってない最後の一騎の姿が浮かんでいた。

 

 そして、相対する騎士は好機を逃さない。

 

 

「――はぁぁぁっ!!」

 

 

 声の通りシャドウランサーへ集中しているアルトリアが地面を蹴り、加速。

 

 一気に懐まで踏み込み、下段の構えから切り上げ一閃。鎌を持つシャドウランサーの右腕を切り飛ばす。

 

 

「き、貴様ぁっ! セイバー!!」

 

 

 武器をなくし、白兵戦まで持ち込まれたシャドウランサーが放つ最後の一撃。

 

 瞳より放つ『魔眼』。

 

 魔力が低いものは石化させ、高いものにも全てのランクを低下させる重圧をかける強力なスキル。

 

 高い魔力のアルトリアにも効果をもたらすそれは――発動する寸前、限界まで屈んだことでかわされた。

 

 

「なっ……!?」

 

「せぇぇあっ!!」

 

 

 アルトリアの持つスキル『直感』。常に自身にとって最適な展開を『感じ取る』能力だ。その中でもアルトリアのはAランク、未来予知に等しい力で、それでシャドウランサーの魔眼を見切っていた。

 

 低くなった姿勢から、上がる力を乗せて、右腰から左肩へ抜ける切り上げ。

 

 上がりきった所から、止めの大上段!

 

 

「が……はっ」

 

 

 脳天より叩き切られたシャドウランサーが消えていく。

 

 これで本当に撃破完了。

 

 どうにか、この場を乗り切ることが出来た。

 

 直ぐ様アルトリアはオルガマリー達と合流する。

 

 

「お前ら、無事かぁ?」

 

 

 戦闘が終わったが気を抜いてはいけない。

 

 近くの建物から降りてきた男に、臨戦態勢をとるアルトリアにマシュ。

 

 

「っ。貴方は……!」

 

「お。なんか似てると思ってたが、やっぱセイバーじゃねえか」

 

 

 警戒されているのに男はアルトリアへ話しかけてくる。

 

 この軽い態度はなんなのか?

 

 怪訝そうにしているオルガマリーとマシュを見て、男はニッと笑った。

 

 

「さんざん襲われて来たんだろうから警戒すんな……ってのは無理な話だろうが、まずは緊張を解す為に自己紹介といこうか」

 

 

 持っていた杖を首の後ろで両手で組む。

 

 青いフードの青い髪、赤目の男。

 

 

「俺ぁクー・フーリン。他と違って話の通じる、魔術師(キャスター)のサーヴァントだ」

 

「……魔術師(キャスター)?」

 

 

 

 

 

 

「……ほーう。んで、お前さん方はこの冬木(まち)にやって来たと」

 

 

 特異点の異変の解決。その為にまずは情報を少しでも集めるべく、オルガマリー達は魔術師クー・フーリンと情報を交換する。 

 

 一捷はまだ目を覚まさない。近くの木にもたれかけせ、フォウ君が足下にいる。

 

 

「私からいいだろうか。……キャスター」

 

 

 カルデア側の話が終わると、クー・フーリンもここ冬木での聖杯戦争と、生き残ったサーヴァントが自分だけだということ、大聖杯を守っているセイバーについてをかいつまんで説明したところで、アルトリアがクー・フーリンへ問う。

 

 

「何故、槍ではなく魔術を使っている? お前はランサーではなかったのか」

 

「おいおい。他人の前であんま言うなよソレ」

 

 

 口ではそう言いつつ、そんなに嫌がってない様子で、クー・フーリンは杖でコンッと道を叩いた。

 

 

「そういう風に()ばれたから、としか言えねえよ。お前の方は変わってねぇみたいだけどな」

 

「? アルトリアさんとクー・フーリンさんは、面識があるのですか?」

 

『“英霊の座”に登録されたサーヴァントは、現世での記憶を全て記録している。現界した時、鮮明ではなくとも、朧気には覚えている。お二人はもしや、こことは違う機会に召喚されて、そこで会っていたのでは?』

 

「……えぇ。一応は」

 

 

 他ならぬ、この冬木で行われた別の聖杯戦争でだ。

 

 セイバーのアルトリアと、お馴染みランサーのクー・フーリンとして。

 

 

「んで、セイバーが契約してるマスターが……あの坊主か」

 

「そうだが、何か?」

 

 

 魔術用の礼装を着て、右手には三画の令呪。この戦いに巻き込まれた人類最後の、新人マスター一捷。

 

 彼を少しの間じっと見る。

 

 キャスターのクー・フーリンは、一言だけ呟く。

 

 

「……こりゃ、何処までかかったのかねぇ」

 

「?」

 

 

 何か思う所があったのか。しかしクー・フーリンは「なんでもねえ」とそれ以上は語らず、一捷が目を覚ますまで周囲を警戒しながら待機していた。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

「……フォウ」

 

 

 ……なんか、くすぐったい。

 

 

「フォウフォウフォウ! フォフォー!!」

 

 

 モフモフする……そんで温かい。毛布かな?

 

 もうすぐ一月だし、そろそろ布団を冬布団にしないとな。寒いし……。

 

 

「……んん?」

 

「フォーウ!!」

 

「おっ。やっと目ェ覚めたか坊主」

 

 

 目を開けていくと、家に居たときのようなぼんやりしていた思考は現実に戻され、ぼやけていた視界に何かが映ってくる。

 

 背が高くて青い髪、水色の格好をして手には杖を持った“あの人”が、僕のことを見ていた。

 

 

「……んっ!? キャスター!!!?」

 

「あ? お前に名乗った覚えはねえが、確かに俺はキャスターのサーヴァントだ」

 

 

 思わず飛び起きる。

 

 目の前にいるのはFateのアニキことクー・フーリン、そのキャスニキじゃないか!!

 

 初のキャスターサーヴァント、お世話になってました。

 

 

「……というか、どうなってるの今?」

 

『それはこっちから説明するよ、藤丸君』

 

 

 通信が繋がってドクターが説明してくれる。

 

 メドゥーサに分断された直後、新たに四体のサーヴァントが奇襲をかけてきた。内一体のアサシンと思われるサーヴァントが所長を人質に取り、もう一体のライダーらしきサーヴァントが僕を捕まえ、叩きつけた。

 

 そこで僕は気絶。

 

 アルトリアはメドゥーサの相手で、シールダーは分身ハサン二体に抑え込まれ手が出せずにいた。

 

 そこでキャスニキが現れ、ライダーをルーン魔術で撃破。アサシンがそれに気を取られた隙に魔術で所長が強引に離れ、キャスニキの宝具でアサシンと分身ハサンをまとめて倒した。

 

 残るメドゥーサはアルトリアが切り伏せ、キャスニキと合流して、お互いの状況を説明していた……のが今というわけだ。

 

 ちなみに背中は所長が魔術で治療してくれたそう。お礼と共に頭を下げた。

 

 

「別にいいわ。私達も襲われた時、何も出来なかったから……」

 

「……はい。アルトリアさんがいるということで、私も油断していました」

 

『それはこちらもだ。警告の一つも出来なかったのだから、サポート失格だよ……』

 

 

 キャスニキが来なかったら間違いなくやられていた。アルトリアに頼りきりだったと所長達は反省している。

 

 ……あっさり捕まって気絶した僕については何も言われなかった。

 

 気を失ったから、相手がサーヴァントだったから。そう言われたら、どうしようもなかったからそうなんだけど……。

 

 

「……僕は、もっとしっかりしてなきゃいけなかったのに」

 

 

 右手の令呪を見る。マスターの証。

 

 せめて指示の一つでも出来たら、という後悔がある。僕は人類最後のマスターなんだ。訳は分からないけど、そうみたいだから、やらないと……。

 

 

「……ふむ」

 

「どうしましたか? 先程もマスターを見てましたが」

 

「いや別に。まーお前ら、そう暗くなるな。次から気を付けりゃいいんだからよ」

 

 

 俯きつつあった皆を励ますと「そんでこれからのことだが」と話を切り替えるキャスニキ。

 

 

「セイバー……のマスターが目覚めたからもう一度説明するぞ。俺はキャスター、この聖杯戦争に参加していたサーヴァントの一騎だ」

 

 

 キャスニキが参加していた聖杯戦争はいつの間にか違うものにすり変わっていた。冬木の街は炎に包まれ、サーヴァントだけを残して人間は一人残らず消えた。

 

 そんな異常事態の中で、真っ先に聖杯戦争を再開したのがセイバー。水を得た魚のように暴れだしたセイバーは他のサーヴァントを次々と倒していき、やられたサーヴァントは黒い泥に汚染され、手駒にされた。

 

 倒されのはアーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、バーサーカー。残るキャスターのキャスニキをセイバーは狙っている。

 

 バーサーカーは僕らと会う前にキャスニキが倒し、ランサー、ライダー、アサシンは僕が気絶している間に撃破。

 

 残りはキャスターとセイバー、そしてアーチャーの三騎だ。

 

 

「では、キャスターさんがセイバーを倒せば」

 

「この街の聖杯戦争は終わるだろうな。その為に動いてたんだが戦力が足りなくてな。その途中で、坊主とお嬢ちゃん達に出会ったっつー訳だ」

 

「じゃあキャスター。貴方、私達に協力してくれるのかしら?」

 

 

 襲われたにも関わらず、所長は任務を続ける気でいる。元々、所長は特異点の異常を排除する為に動いていたんだ。その覚悟は僕なんかと比べ物にならないくらいに強い。

 

 

「私達の目的は、この特異点の異常を取り除いて正常な歴史に戻すこと。貴方の目的は、セイバーを倒すことでその為の戦力が欲しい。利害は一致しているわ」

 

『確かに。こちらにはアルトリア王がいるけど、この土地で戦っていたキャスターの貴方なら、土地にも詳しい。こちらの布陣を更に強化できます』

 

「言ったろ。俺は戦力を探してたんだ。こちらこそよろしく頼むぜ」

 

 

 こうしてキャスニキが仲間に加わった。

 

 良かった……ここは同じだ。アルトリアがいたりとゲームとは違うから、物語通りだと安心する。

 

 胸を撫で下ろしていると、こちらに歩いてくるキャスニキ。

 

 

「じゃあとりあえずこの戦いが終わるまでの仮契約だ。よろしくな、マスター」

 

「あっ……はい。よろしくお願いします……」

 

「おいおい、仮にもマスターがそんな弱気でどうすんだ。しっかりしろ、よっ!」

 

「うばぁ!?」

 

 

 バシン! と、背中を叩いてくるキャスニキ。励ましてくれるのはいい。嬉しいけど……痛い!!

 

 サーヴァントの力で、しかも叩いたの背中! 治ったばかりの背中!!

 

 ふらついて何度も咳き込んでしまう。ダメだダメだ。言われた通り、しっかりないと……。

 

 

「じゃあ残る敵性サーヴァントはセイバーとアーチャーね。居場所は分かってるの?」

 

「あぁ。(やっこ)さんはこの土地の心臓部、大聖杯にいる。特異点って奴になったのもそこだろう。あそこ以外に原因は考えられねえ。セイバーはそこから一歩も動いてねぇ筈だ。ただその前に、アーチャーをなんとかしねぇとな」

 

「残るアーチャーをですか?」

 

「奴ぁセイバーの信奉者だ。セイバーを討ちに行くなら、絶対に奴は出てくる。絶対にな」

 

『確信しているようですが、Mr.キャスター、貴方には敵の真名(しんめい)が分かっているのですか?』

 

「……まぁな」

 

 

 残るサーヴァントについて聞かれたキャスニキは表情を曇らせ、アルトリアを見る。

 

 ……そう。残るサーヴァントは、アルトリアにとって大きな意味がある存在なのだから。

 

 

「? なんですかキャスター。何故私を見るのです」

 

「一応言っとくぜ、セイバー。アーチャーの奴は、あの“いけ好かねえ弓兵”だ」

 

「……なんですって?」

 

 

 目の前のアルトリアが今までどの歴史に召喚されたかは分からない。

 

 でも、反応からしてアルトリアはそのアーチャーを知っているんだろう。

 

 赤い外套を纏い、弓だけでなく剣も使い、正規の英霊ではない皮肉屋の男を。

 

 

「まさか、彼が……」

 

 

 驚いているアルトリア。だけどセイバーの方は、アーチャー以上に驚く存在。

 

 

「セイバーの持つ宝具。アレをまともに受ける訳にはいかねぇ」

 

「……その英霊の真名は?」

 

「奴が持つのは、王を選定す岩の剣。その二振り目」

 

「ッ!?」

 

「そんな、まさか!?」

 

「そんなことが……!」

 

『まさか、敵のセイバーは……!』

 

 

 所長にシールダーにドクターが驚愕しアルトリアは絶句。

 

 それもその筈。

 

 この特異点に置けるセイバーとは“アーサー王”その人。

 

 黒く染まり、暴君となった騎士王。

 

 アルトリアであり、アルトリアではない存在。

 

 ――アルトリア・ペンドラゴン・オルタナティブなのだから。

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