へっぽこマスターが物申す   作:剣聖龍

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6話

「ちょっと、それってどういうこと!? 敵のセイバーも、アーサー王だっていうの!?」

 

「アーサー王が二人……。そんなことが、あり得るのでしょうか……?」

 

 

 キャスニキから敵セイバーがアーサー王だと聞いて、どういうことなんだと驚いている所長達。

 

 うん、まぁそうなるわな。

 

 ゲームだとサポートで鯖ダブったり、アルトリアと

アルトリア・オルタ、みたいに同じ英雄が並んだりしてもスルーされてるけど、現実になればどういうこっちゃねんって話。

 

 ……ちょい待ち、まさかアーサー王繋がりでプロトとかないよね?

 

 

「キャスターのクー・フーリンさん、そのアーサー王ってどんな奴なのさ」

 

「なんだその呼び方。まあいいが……。見た目は、こっちのセイバーに似てるな。ただ鎧とか服とかと剣が黒くなってたぜ。斬撃なんかとんでもねぇ力だよ」

 

 

 はいオルタ。

 

 良かった、プロトとかじゃなくて良かった。アルトリア来てたから他も変わったとかなかった……。

 

 

「……その黒い騎士なのですが、心当たりがあります」

 

『本当ですか!?』

 

「はい。恐らく以前召喚された私が、汚染され変質した姿。それが黒いアーサー王の正体でしょう」

 

「アルトリアさんが、変質した姿……」

 

「要はあれだ、別側面って奴だろ。さっきも言ったが、俺もキャスタークラスじゃねぇ時もあったしな」

 

 

 まるで杖を槍のようにして振り回すキャスニキ、分かりやすいですハイ。

 

 で、今いるアルトリアはHFは通ってる訳だ。他は分からんけど、アーチャーの反応からしてSNもしくはUBWも経験しているかもしれないな。

 

 ただ。

 

 

「そんな、敵もアーサー王だなんて……」

 

 

 敵にもアーサー王がいると知って、所長達が絶望してる……。

 

 そりゃアルトリアと同じ存在が敵なんだ、頼もしい味方と同じのが敵なんて厄介この上ない。

 

 何? よくあること? 言うなし。

 

 

「言い出しっぺの俺が言うのもなんだが、ともかくここでじっとしてたって仕方ねえ。移動するぞ。案内はしてやる」

 

 

 一先ずキャスニキの言う通り、その場から動くことに。

 

 廃墟の中を警戒しながら進んでいく。

 

 

「はぁぁっ!」

 

「これで、倒れてっ!」

 

「Ansuz」

 

 

 途中でスケルトンや亡霊エネミーに遭遇するも、所長が援護しつつ、サーヴァント三人がずばん、ばこん、どかんと蹴散らしていった。流石サーヴァント、強くてありがたい。

 

 僕? ……出せるところで簡単に指示して、落ちたQPやら素材やら石を回収してました。

 

 恥ずかしい話、僕にはそれくらいしかできない。

 

 魔術も戦闘も力もない、一般人でしかないから。

 

 敵を排除しながら廃墟を進む。ぐちゃぐちゃになったりバラバラになった“人だったモノ”が転がっている街中を、進む。

 

 

「よーし見えてきた、もうちっとで着くぞ」

 

「え、あそこ?」

 

 

 前を歩くキャスニキが杖で指したのは坂道の上の建物。

 

 学校じゃんあれ。

 

 

「このまま大聖杯に乗り込むのは簡単だが、まず一息入れようや」

 

 

 名前は、確かえーと……穂群原学園。衛宮士郎や遠坂凛が通ってるとこ。アルトリアも見覚えがあるようでここはって呟いてたし。

 

 街と同じように学園もボロボロだけど、中はそんなに壊れてない。休むくらいは出来そうだ。

 

 とある教室に入る。まだ壊れてない机と椅子が何個かあって、セットにして座ると一息ついた。

 

 ……この教室2ーCだったけどキャスニキ分かってやってる?

 

 

「はぁぁぁ~……」

 

 

 大きく伸びをして机に突っ伏す。埃や灰が積もってるけどはらえば大丈夫。そらにちょっと前まで学生だったから机と椅子の組み合わせは精神的にも落ち着ける。

 

 何はともあれなんだか帰ってきたみたいな感覚で、これで少しは回復できそうだ……。

 

 

「これが学校のデスクと椅子……実物は初めて見ました」

 

「フォーウ」

 

「ロマニ、聞こえる? カルデアの状況だけど――」

 

「ではキャスター、私は廊下で待っています。何かあれば報告を。マスターも何かあれば直ぐに呼んでください」

 

「おう。お前も油断すんなよ、セイバー」

 

 

 キリエライトさんは初めて見る学校の机と椅子を興味深く眺めている。フォウ君は僕の机で鳴いていて、所長はドクターと通信して情報を整理中。アルトリアは見張りに行くことをキャスニキとやり取りしていた。

 

 皆、しばしの間、各々で休憩。

 

 

「……さっき襲ってきたサーヴァント」

 

 

 机に伏せながら襲ってきた黒いサーヴァントについて思い出す。

 

 多分、僕を捕まえたのはライダーのブーディカさん。もう一体は特徴からアサシンの百貌さんだろう。

 

 でもだ。

 

 ゲームでもアニメでも、ライダーとアサシンに襲われることはなかった。そもそもサーヴァントが違う、ゲームではランサーが武蔵坊弁慶、ライダーはメドゥーサ、アサシンが呪腕のハサン。アニメだとランサーがメドゥーサで、ライダーはダレイオス3世、アサシンが同じ呪腕先生。

 

 でもさっきの通り、展開は違うしサーヴァントも違う。

 

 思い返せば、ゲームと違う点はちょくちょくあった。

 

 カルデア制服ではなく魔術協会の制服。

 

 キリエライトさんの傷の負い方。

 

 召喚したのが本来呼べない筈のアルトリア。

 

 ゲームという原作とは違うことが起きている……不安だ。不安しかない。不安しかわかないぞ。

 

 

「………………」

 

 

 せめてゲーム知識が役立てばと思ったけど、こうも違うことが起きていると、どうすればいいか分からない。

 

 かといって下手に動いてヘマするのもダメ。それにFGOとはいえFate世界、何処に危険があるか分からないマジで。

 

 ……どうすればいい。

 

 

「あの……先輩」

 

 

 僕は、どうすればいいのか。

 

 ……大体なんで僕、管制室にいたんだろうか。なんで急に行こうと思ったのか……。

 

 

「……すみません、せんぱ――」

 

「おーい坊主。ちょっと付き合え、話がある」

 

「あ……」

 

「わりぃな嬢ちゃん、ちょいとコイツを借りるぜ」

 

 

 考え込んでいたところにキャスニキについてくるよう言われ、いい案も思いつかなかったからついていく。

 

 行くときにキリエライトさんに謝っていたけど何だろ?

 

 

「セイバー、見張り交代だ。お前も少しは休め。

 

「分かりました。では頼みます」

 

 

 アルトリアと見張りを代わると、廊下にどかっと胡座をかくキャスニキ。その正面に座るよう言われて、とりあえず座る。

 

 話ってなんだろうか。

 

 

「なぁ坊主。お前が今、マスターなのは分かってるよな」

 

「……まぁ、一応は」

 

「いい加減な返事だなオイ。……それを踏まえて聞くぜ。お前さん、セイバーや嬢ちゃんと話をしたか?」

 

「話? 会話ならしたことあるけど」

 

「そのまんまじゃねぇよ。“マスター”と“サーヴァント”として、って意味だ」

 

「……と言うと?」

 

「そう聞くってこたぁ、話してねえんだなおめぇ……」

 

 

 「ダメだこりゃ」とおでこに手を当て呆れるキャスニキ。変なこと言った?

 

 少しの間そうしているとこっちに向き直る。

 

 ただし、キャスニキの表情からいつも浮かべている笑みが消えていた。引き締まった物凄く真剣な顔、思わず僕もぞくりとなり、背筋を伸ばしてしまった。

 

 

「坊主。この際だから一度言っとくぜ。まず坊主はマスター。嬢ちゃんとセイバーはサーヴァント。そんで二人と契約している。ここまではいいな?」

 

「はい」

 

「俺達サーヴァントってのは、言っちまえば“武器”だ。普通じゃ出来ねえことが出来る。人じゃ壊せねえ物も壊せる。そして、簡単に殺せねえものも殺せる。それが俺達(サーヴァント)

 

 

 「だがな」とそこで一旦区切るキャスニキ。

 

 

「武器は使い手がいなきゃ意味がねえ。サーヴァントにはマスターが必要だ。二つが揃って、連携することで、初めて真価を発揮できる」

 

 

 マスターとサーヴァントの一つの理想とも言える形。

 

 Fateだとそうじゃない場合も多い気がするけど。

 

 

「坊主なんかすげぇ失礼なコト考えてるだろ」

 

「マスター。何故か私が呼ばれた気が」

 

「いえ! なにも!!」

 

 

 やべぇ心臓止まるかと思った……。クー・フーリンだけじゃなくアルトリア出てこないで。説得力違いすぎるから。

 

 

「まぁ俺が言いたいのはつまりだ。サーヴァントとはちゃんと話しとけ、ってことさ。ここに来るまでに、セイバーはともかくとして、嬢ちゃんが思い詰めてた顔してたの、知ってるか?」

 

「えっ、そうなの」

 

「バカかおめぇは」

 

 

 ゴヅッ

 

 

 杖の先いたぁ!? 

 

 魔法の杖なのに打撃武器なの!? すげぇ痛いよそれ!?

 

 

「お前さんだって、急にマスターなんざになったんだろうから、いっぱいいっぱいだろうさ。……けどな」

 

 

 ビッと鋭く指を突きつけられる。

 

 

「自分のサーヴァントのことくらい、キチッと把握しとけ。それがマスターとしての最低限。まずは相手の話聞いて、励ますなり、フォローするなりしてやれ」

 

「は、はい……」

 

「ちなみに嬢ちゃんはさっきお前に何か言いたそうだったぜ。坊主は考えこんでて気づいてなかったみてぇだけどよ」

 

 

 えっ、ウソ!?

 

 

『……あの、せんぱ――』

 

 

 ……あ、もしかして何か言いたげだったのはそれか……。

 

 声かけられてたのはマジで気づかなかった。どうすりゃいいかで頭いっぱいだったからな……。

 

 

「よっし。じゃあ俺からは以上! 俺の言ったこと、忘れんなよ? 心配すんなって、なんか不味ってもあの嬢ちゃんなら盾でぶっ飛ばされるくらい。もしセイバーなら……坊主の財布が跡形もなく吹っ飛ぶくらいで済むだろ」

 

「それはそれで怖いよ!!!?」

 

「キャスター。ちょっといいかしら」

 

「おーなんだ?」

 

 

 物騒で有り得る、いや! かなり有り得る未来を言い残しキャスニキは去っていく。頑張れよーとひらひら手を振って、魔術の相談立と所長と何処かへ行ってしまった。

 

 一人廊下に残された僕。

 

 ………………。

 

 

「サーヴァントと話……か」

 

 

 正直その考えはなかった。考えていたのは早く戻りたい。帰りたい。その為に無事でいたい。そんな内容ばっかが頭の中でぐるぐる回っていた。自分のことだけで精一杯だったから。

 

 それに多分。まだ僕はサーヴァントという存在をまだ受けいられていない……と思う。

 

 土蔵でハサンをなぎ倒したシールダーことキリエライトの姿。人間離れした凄まじい力だった。

 

 救ってくれたのに失礼極まりないがもし自分にあれが向いたら? と恐くなった。サーヴァントなんて僕の世界にいなくて初めてその力を直に見たから。

 

 だからか?

 

 無意識に僕はキリエライトや同じサーヴァントのアルトリアを避けていた……のかもしれない。余計に自分のことを考えていた。後はまだ僕が現実を、マスターだというのを受け入れきれてないから。頭が追い付いてない。

 

 ホントにどうして管制室に行ったんだろう……。

 

 ……ただ、とりあえず。 

 

 今やるべきことは、キャスニキに言われた通り、キリエライトさんと話すことだろう。それしかない。後は話してから考えよう。うん。

 

 

「戻るか……」

 

 

 で、早速合同しようとしたら。

 

 何故か、催してきた。

 

 緊張感ねぇな僕……。

 

 

「トイレ……何処だろう」 

 

 

 学校だから大体つくりは同じようなもん。一つの階に一つトイレがあるだろう。端から端までを探せばどっかにある筈。

 

 ……で、行くとして、どうするか?

 

 

《キリエライトさん達に一声かけてから行く》

 

《一人で行く》

 

 

 

 

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