《キリエライトさん達に一声かけてから行く》
《一人で行く》
……。
…………。
▶️《キリエライトさん達に一声かけてから行く》
「危ないし、声かけていこう」
たかがトイレだけど、何処から敵が来るか分からないこの街。
一人になったところを狙撃されて頭ぶち抜かれるなんてのもあり得なくない。
キャスニキにサーヴァントと話すよう言われたばかりとあるし、キリエライトさんについてきてもらうとしよう。
「そーなーんーでーすーかー!!!!」
「おぉう!?」
「……マシュ。今のはものの例えです。それにここは敵地ですよ、気づかれたらどうするのですか」
「す、すみません……」
で、教室入ろうしたらなんか叫んでた。ビックリしたぁ……鼓膜破れるかと思ったぞマジで。
「キリエライトさん、ちょっといいかな」
「……あっ、はい。なんでしょう先輩」
「……トイレ行きたいんだけど、ついてきてくれないかな」
さぁ言ったぞ。……やっぱ恥ずかしい。
「あ……分かりました。先輩の護衛につきますね」
「頼むわ」
「では、私はここで待機していますので。何かあれば直ぐに知らせて下さい」
アルトリアを残してキリエライトさんと教室を出る。
さっきキャスニキから伝えられていたそうで、この階の端にあるトイレの前まで案内してくれた。
用を足してる最中に狙撃でドカンとかはなくて一安心だった……。
で、教室へ戻る途中。
「……キリエライトさん。ちょっといい?」
「どうしましたか?」
当たり前だけどこっちを見返してくる。
やっぱり緊張する……失礼かもしれない、と躊躇う気持ちが出てくる。
でも話さないままでは……いけない。
言わなきゃ、伝わらないし、分からないから。
……よし、行くぞ。
「いきなりなんだけどさ……なんか、悩んでたりしてない?」
「えっ……。急にどうされたのですか。そんなことを聞いて」
「いやさっきキャスターに連れてかれた時さ、なんか言いたげだったから。何かあるのかなって」
「………………」
あ、あれ? 黙っちゃったぞ。
しまった……聞き方間違えたか?
それともタイミングが早すぎたとか!?
「いやゴメン! いきなり変だよねこんなこと言って、忘れてくれ……」
「……いえ。先輩の言うとおりです」
「えっ」
「アルトリアさんや、クー・フーリンさんに相談していたんです。宝具のことを」
手にしている十字盾。それは半英霊となった彼女の象徴であり、融合した英霊の宝具。
今のキリエライトさんには宝具が使えない。デミ・サーヴァントだから使えないと思っていたが、英霊にとって宝具というのは使えて当たり前。曰く、大声上げるものらしいbyクー・フーリン。教室入った時の大声ね。
「先程の戦いでも、アルトリアさんやクー・フーリンさんのように、上手く力になれなくて……。スキルや宝具が使えれば、先輩が捕まるのを阻止できたかもしれません」
「力になれてないのは……ないんじゃないか? ここに来るまで、相手の攻撃から僕を守ってくれたじゃないか」
「それでも……せめて宝具が使えないと、サーヴァントの意味がありません。……残る敵サーヴァントには、アルトリアさんと同じアーサー王もいるのですから。宝具も使えない、今の私ではアーサー王と渡り合えるとは思えないのです……」
そう言う彼女は肩が震えていた。
恐怖が見てる僕にも伝わってくる。……そりゃそうか、実際に戦ってるんだ、キリエライトさんは。
ゲームじゃない、本当の戦い。怖くない筈がない。
それでも、出来ることをやっている。
だから、僕が捕まったこと、サーヴァントとして未熟なことを悔いている。
気持ちは分からなくもない。しかもそれでこれから戦うのがアルトリアと同じ奴なんだから、そりゃ悩むわ……。
「……そう考えてたのか。キリエライトさん」
「はい……」
……なら、それを踏まえて。
「じゃあ。今度は僕が考えてることを話していいかな」
「どうぞ先輩」
「うん。最初に言うけど、キリエライトさんは力になれている」
「えっ……?」
「宝具は使えないかもだけど、足手まといじゃない。僕を助けてくれたじゃないか、土蔵で」
「でも、私は先輩が捕まるのを防ぐことが出来なくて……。一番側にいたのは、私なのに」
「だけどこうして僕は無事。それはそれでめっけもんだからいいんだよ」
反省しない訳じゃないよ? 死にかけてるし。
「寧ろ謝らなきゃいけないのは……僕だ」
「どうして、先輩が?」
「……あの時。土蔵で助けてもらった時、僕はキリエライトさんのことを怖いって思った。命の恩人なのに」
キャスニキに話すよう言われた時に、これを言うとは思ってなかった。
キリエライトさんの話を聞いて、僕も感じた内容を話さないと、と思っただけだ。
誇れる内容なんかじゃない、正直に言おうと僕が感じたのは恩人を傷つける最低の内容。……それでも、彼女が本当のことを話すなら、僕も本当のことを話そう。そう思っただけだ。
「先輩……」
「……ごめん。こんなこと考えた僕なんざ最低だ。――でも君は違う」
僕とは違う。それは言える。
「キリエライトさんは、サーヴァントとして役に立ってる。キチンと、シールダーのサーヴァントとして、力になってるよ。うん」
「……シールダー? あの、それは私のことでしょうか?」
「ん? …………あ゛」
何故かキョトンしたキリエライトさん、何故かと思い……盾を見て後悔。
シールダーってゲーム内でのクラスじゃねーか!
あれ、でも途中から名乗ってたような……いつからだ? というかシールダーのクラスを正式に名乗るところなかったよな!?
アカン、口が滑って余計なことを言っちまった……!
これ、物語上大丈夫か?
「シールダー……シールド……盾」
「ゴメン今のはその」
「盾を持つサーヴァント、だからシールダーなのですね!」
「えっ。……うんそう」
な ん で 肯 定 し て ん だ 僕 !!!?
「先輩……ありがとうございます。話を聞いてくれただけでなく、デミ・サーヴァントである私のクラス名まで考えて下さって」
「いやいやそうじゃなくて! 僕は、助けてくれた君を怖いなんて思った奴なんだぞ!?」
「……確かに、それは正直ショックでした」
ほらね。「でも」……でも?
「そう思われても仕方ありません。先輩は一般枠の方ですし、サーヴァントが人ならざるのも事実です。それを踏まえて、私は、先輩のお役に立てていると分かって、嬉しいんです」
そう笑顔で語るキリエライトさん。
「だから、今は宝具が使えなくとも、必ず使えるようになります。この盾で必ず先輩を、この盾で守り抜けるように。シールダーのクラスに、相応しいサーヴァントになりますから!」
僅かに頬を赤らめて、めっちゃ笑顔でキリエライトさんは宣言しました。
……今の感想いっていい?
め っ さ か わ い い か っ た !!!!
「あ゛っ」
「大丈夫ですか先輩!?」
「へ、へーきへーき」
想像してちょ、後輩が上目遣いで頬少し赤らめて言ってくるんだぜ? ……鼻血出かけたぞ本気で。と言うか正直に言い合っただけで進み過ぎじゃね!? 話の内容。
僕そんなにコミュ力高くないんだが……。
「シールダー……。盾の英霊ね。アナタにしては意外といいクラス名考えるじゃない」
「はい! 先輩のお陰で良いクラス名を受け取ることが出来ました」
「良かったですねマシュ。そうなると、戦の場では私のこともセイバーとお呼びくださいマスター。真名は出来るだけ隠し通した方が良いですから」
「……うん。そうする」
「ははっ! やるじゃねぇか坊主よぉ。クラスまで考えてたとはなぁ」
『良かった~。マシュのメンタルも安定したし、お手柄だよ藤丸君』
で、教室に戻るとキリエライトさんがシールダーのクラス名をアルトリア達に話して、これに納得したり僕を誉めてくる所長達。
やめて! そんなに持ち上げないでいやマジで!!
ゲーム知識がたまたまうまく働いただけ、というか僕ぐだじゃねぇし、偽物だし……。なんでここまで誉められるよ、主人公補正?
「よーし。嬢ちゃんの悩みも解決したし、休憩も出来た。そろそろ移動すっぞ」
『いよいよ、残るサーヴァントの元へ乗り込むんだね』
「あぁ。とは言っても、出来る限り準備を――いや待て」
「どうしたの、キャスターさ――」
「全員、伏せて!!!!」
ガシャン! ガシャン!! ガシャァァァァン!!!
突然、アルトリアに突き飛ばされた瞬間。
窓ガラスが立て続けに割れ、鋭いナニかが、立て続けに飛来した。