神聖杯戦争   作:瀬羅89

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始まりの日、終わる平穏

始まりの日、終わる平穏

 

 

 

「君は、聖杯戦争を知っているか?」

 

満月が差し込んでくるとある教会に、私達はいた。問いかけてきた神父に私は首を振る。

神父は息を吐く。自分の無知さを嘆いたのかと思ったが、彼の口元は少しだけ笑みを浮かべていた。

 

「7人のマスターとサーヴァントと呼ばれる英霊達による、聖杯の奪い合いだ」

 

懐かしむように、神父は言葉を紡ぐ。

まるでその聖杯戦争をずっと見てきたかのように。だが彼がそんなものに参加したというのは聞いたことがない。戸惑う私に構わず話を続ける。

 

「聖杯は勝者の願いを叶える願望器。魔術師達は殺し合いに身を投じ命懸けで聖杯を手に入れようとするだろう」

 

……残酷な、欲望に駆られた醜い戦争。ということは分かった気がした。そして悪寒がする。彼はそんな戦争に高揚感を感じていた。

興奮し、光のない目で私を見る。

震える私の肩に手を置き、最悪な言葉を告げた。

 

「……君には、第6次聖杯戦争に参加してもらう。教会の魔術師として。そして……私たちの名誉のために」

 

その手は、首筋に絞めるように触れる。

羨ましい、妬ましい、憎い、楽しみ。

歪んた感情がそこにはあった。

彼はそれほどまでに聖杯戦争に執着しているようだ。私は神父を睨みつける。

 

「そう警戒するな。安心していい。此度の聖杯戦争のために最高の触媒を用意したのだから。お前が間違いを侵さなければ確実に勝てるだろう」

 

首を締める力が強まる。

最高の触媒……?彼は何かを持っている様子はない。周りも、何か特別なものが用意されているということはないように見える。

……強いて言うなら、私たちが相対している場所に、何かの魔法陣があることくらいだ。

 

「触媒が気になるか?ならば教えよう」

 

締めている手が少し緩む。愛しいものを、壊れ物を扱うように優しく触れてくる。

悪寒がする。この男は狂っている。本能が危険信号を発している。神父は私の耳元で囁くように、触媒の名を口にする。

 

「……君が大事に、大事にしている。そのペンダントの中身だよ。神崎梨音」

……!!

父に譲り受けた、私の宝物。中身は青みを帯びた石だ。

微かに魔力を感じるが、それくらいだと思っていた。

「君はただ、私に従っていればいい」

ニヤリと、口元をゆがませて神父は言う。

……私など、ただの道具に過ぎない。

そういわれているような気がした。

だが……私はそもそも、殺し合いをする理由がない。

「理由?理由が必要かね。では……一ついいことを教えてやろう」

……なぜか、とても嫌な予感がする。

だいたいこの神父が〝いいこと″を言うときは、悪いことの前触れなのだ。

彼が私から離れると、彼は指を鳴らす。

そうすると、目の前にモニターらしきものが現れる。

彼が得意とする空間魔法の一種で、通信媒体に使われることが多い。

リアルタイムで遠くの地の映像を生成できるというものだ。

そこに映っていたのは……私の家族だった。

母は悲鳴を上げる。

父は激怒している。

手足は縛られ、銃を突きつけられている。

――――

「聖杯戦争を無事生き残れたら、解放させてやろう。……どうだ?もっともらしい理由ができただろう?」

―――――、なんて、ことをするんだろうか。

「では、契約の時だ」

私の感情をお構いなしに、彼は空を仰ぎその時を待っていた。

――――やらなければ、家族が死ぬ。

……死ぬことになっても、家族は守りたい。

愛してくれた家族のために。

魔法陣に進む。

手を掲げる。

口を紡ぐ。

 

 

素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

祖には我が大師「エレス=ティノア」

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

 

星脈の使い手、我が告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 

手が熱い。

魔法陣は光り、ペンダントの石が光る。

風が吹き荒れ、中心に光が現れる。

「おお!!!素晴らしい!!聖杯戦争は今ここに!!!開幕だ!!!!」

神父は笑う。待ち望んでいたといわんばかりに。

私は、現れた〝その人″に目を向ける。

金髪の長い髪が揺れ、何色ともいえぬ瞳で私も見据えている。

「問おう、君が俺を呼んだ人間か?」

息を呑む。

心臓がうるさい。

答えなければ。

私が、貴方を呼んだと――

「……良いだろう。これより俺は、君のサーヴァントとして振舞おう」

真名は――

「ああ……!!これでそろった!!!私が、用意したこの地で、異端の聖杯戦争を!!ふははは!!!」

「……マスター。伏せろ」

―――え?

私のサーヴァントとなった人は、急に私を抱え魔法陣から離れる。

直後、凄まじい濁流が押し寄せる。

「なっ……!!」

神父は何が起こったのか理解できず、ただ濁流にのまれまいと抵抗していた。

私たちは空に浮かび、有様を眺めていた。

濁流が静まると神父は敵を探していた。

「どこだ!?私は監督役だぞ?!ルール違反だ!!!」

神父は喚く。

今までの余裕はなく、必死に辺りを見回している。

「ルール違反?……はっ、いいじゃねぇか?俺はそういうの好きだし。何よりマスターの指示だしなぁ?」

知らない声が響く。

私を抱えているサーヴァントがつぶやいた。

「……なるほど。そういうハナシか。此度の戦争は」

―――?

理解した、とうなずく彼は、敵と思われる人影を睨む。

「マスターの指示だと?!ふざけるな!!ルール違反には罰が下される!!それでもいいのか?!」

「知らねえな」

「?!」

水を帯びた槍が現れる。

当たり前の動作だというように。

彼は神父に向け、突き刺した。

血が出る。あふれ出る。

「……見るな。今の君には酷なことだろう」

頭を抱えられる。

神父の断末魔が聞こえる。

「私は……!!!!この、聖杯戦争の……!!」

「失せろ」

とどめの一撃が神父に突き刺さる。

神父の声が、聞こえなくなった。

ゆっくりと、私たちは地に足をつく。

月の光が、血を浴びた敵を照らす。

「……よぉ、ここでは〝アーチャー″って言った方がいいか?」

「ふん、お前が呼ばれるとはな。〝ライダー″」

ライダー……やはりあれは、敵のサーヴァント……!

「ま、今日はご挨拶に来たってだけだ。まぁうるさい奴がいたもんでマスターに聞いたら「クズも殺しておけ」だってさ!!いやーうちのマスターもおもしれえよな!!」

「お前もうるさいがな」

「……」

睨み合いが凄まじい……

敵のサーヴァントの、金色の目は。人間のものではない気がした。

「さて。マスターも俺の帰還を待ってるらしいから帰るわ。……次に会ったときは殺し合いか!楽しみだぜ、お前と戦ったことがないから余計な!」

「去れ」

ニッとライダー口を歪ませ、この場から消えた。

私は力んだ身体を支えることができず、その場に座り込んでしまった。

「大丈夫か?マスター」

――たぶん。

心配そうに私を見る彼を見て、少しだけ安心感を覚える。

「そうか。……家はどこだ?抱きかかえてやるから」

そういうや否や、彼はもう一度私を抱きかかえる。

「……そうだな、一つ、君に従うにあたり要求があるんだが」

――?

「その、……この時代の、プリンを用意してほしい」

―――――はい?

「こほん。……早く言え。夜は冷えるんだろう?」

あ、は、はい

 

そして私たちの、異端ともいえる聖杯戦争が始まってしまったのである。

 




個人で制作してる創作キャラで聖杯戦争したらどうなるか
というテーマで書いたものです

全てオリジナルキャラクターです

続きは気まぐれに、書きたいと思った時に書こうと思ってます
更新は今のところ未定ですが、気長に待って頂けたらと思います。

ここまで読んで下さりありがとうございました。
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