【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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食う者(攻め) ×(と) 食われるもの(受け)

ただみほエリを求めるもの

牙を持たねば生きてはいけぬ戦車道の町

あらゆるカップリングの可能性が呼応する 

ここは、西住流が産み落とした 熊本西住のシュバルツバルト(黒森峰)

エミの身体に染みついた珈琲の臭いに惹かれて 英国淑女(危険な奴ら)が集まってくる


今回『出会い』

エミカスが飲む、学園艦の珈琲は、苦い





【 序章 『邂逅 許しがたき好敵手』 】

  「俺はただみほエリが見たかっただけなのに 二次(三次?)」

   【 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】

 

 

 

 

―――― Side Darjeeling

 

 

 

 彼女とわたくしの因縁は、それこそはるかに昔。黒森峰女学園に彼女が在籍していたころまでさかのぼる。

 

 聖グロリアーナ中等部に入学したわたくしは、当時からその才覚を如何なく発揮し、他の生徒と切磋琢磨し、紅茶の園に入室する資格を得て、SNを戴くのを待つ身となっていた。

 

 一方で、天翔エミは当時まだ無名の生徒であった。

 

 だが、それも当然と言えば当然。戦車道において最も注目を集めるのは全体の指揮を執る車長であり、次いで敵を葬る砲手、車両を駆る操縦手であり、通信主や装填手といったポジションは、最も日陰で裏方のイメージであり、「適性の無かった者が選ぶみそっかす」という印象が大衆的であり、当時のわたくしも類に漏れず、車長としての適性を発揮した自身への羨望に有頂天になっていたのだ。

 

 その鼻っ柱を盛大にへし折ってくれた存在こそが、前述の彼女、天翔エミだったわけなのだが―――

 

 

 当時を振り返っても、あの日初めて遠目で見た彼女の印象は「ありえない」だった。だってそうでしょう?

おおよそ戦車道をするに値しない体躯。子供が紛れ込んだかのような小柄な少女が、Ⅳ号戦車にひょいひょいと乗り込んでいるのを見て、「部外者の子供が立ち入っている」と最初は思うだろうし、「新人を戦力外として思い出作りでもさせているのか?」と考えたとしても、誰も不思議には思わなかっただろう。

 そうこうしているうちに試合が始まり、わたくしが搭乗したマチルダはあくまで優雅に前進を続け、そして荒地の一角で彼女が乗った戦車に鉢合わせたのだった。

 

「砲撃開始」

 

ただ静かに命令を下す。衝撃とともに砲弾がはじき出される。わずかなズレもあってか、攻撃は反れてしまった。だが目的は着弾ではない。

 

『撃てッ!!』

 

 敵車輛からも砲弾が吐き出される。その前に急ぎ軸移動を行ったマチルダはその着弾を避け、軽く回り込む様にしてⅣ号戦車に近づいていく。いかにマチルダの車輛行進速度といえど、不整地であればⅣ号の速度よりもこちらの方が早い。相手の次弾装填までに十分に撃破可能距離に近づくことができる。逃げるようならばそのまま逃がすなり、通信して挟撃、包囲するなりまな板の上だ。キューポラから車内に頭を下げてお気に入りの紅茶とカップを手に、私は勝利を確信していた。

 

 

 

  ――――――この僅か二秒後までは

 

 

 

『撃てッ!!』

―――ガォンッッ!!!

 

 耳を劈く程の強烈な爆音と、身を揺らす衝撃に、わたくしの意識は数秒間彼方へとトんでしまっていた。何が起きたのか全く分からないわたくしが、同車輛内の誰よりも早く意識を取り戻すと、わたくしの乗るマチルダは、その胴体のど真ん中に砲弾の直撃痕を残しているだけでなく、気を失っていたわずか数秒間でさらに2発の砲弾を食らい、履帯は吹き飛び正面装甲がひしゃげた無残な姿を晒して黒煙を上げていた。車体上部から白旗が上がり撃破判定が告げられる。

 

「――なにが、起こったというの……?」

 

発射してからわずかに3秒未満。たったそれだけの時間で次弾を装填したⅣ号戦車は、回避行動から立て直して真っ直ぐ向かってくるマチルダをカモとして、正面から砲弾を叩きこんだ。ただそれだけの話なのだ。話なのだが……

 

「ありえません。あっていいはずがありませんわ―――」

 

 そうだ、あってはならない事象がそこにある。静止状態での単装填で3秒未満。それは上から数えたほうが早い部類に入る世界的な装填速度に至っている。そんな化物みたいな存在が、あっていいはずがない―――!!

 

「―――何なのよ、あのⅣ号戦車は……ッ!!」

 

手に持っていたティーセットは着弾の衝撃で手を離れて足元で無惨に砕けていた。

「いついかなる時も紅茶をこぼさないグロリアーナの流儀」に泥を塗った憎い相手を睨みつけ、わたくしはその時、唇の端が切れて血をにじませるほどに強く歯噛みしていた。

 

 それが彼女、天翔エミとの初めての因縁であり、以後延々と続く、彼女との戦いのスタートラインだった―――。

 

 

 

 

――

 

 

 *月×日 

 

非常識にも程がある!!

聖グロリアーナとして、伝統と格式ある紅茶の園の一員として!認めた相手に紅茶を贈った。

わたしを撃破した戦車の装填手であるあのありえない程の小柄な小娘に。

だのに何であの小娘はよりにもよって、その紅茶用のカップ(ティーポット・ソーサー付き一式で税込み-78,200)にグロリアーナでは禁忌に当たる黒豆汁を注いでわたしに差し出してきているの!?

信じられません!おのれ天翔エミ!名前は憶えましてよ!!

 

コノウラミ、ハラサデオクベキカ……!!!!

                             ―ダージリンの手記―

 

――

 

 

 

 

 

 

 

――― Side Emi

 

 

 

「―――すこし、よろしくて?」

 

 ひょいっと戦車の車体に乗せた手を支点に自分の身体を持ち上げてSAS●KEのアトラクションとかで生前みたような動きを再現してたらそんな声が後ろから聞こえた。思わずバランス崩しそうになって車体にちょこんと腰を下ろして振り返ると聖グロの制服着たへんなのがこっちを見上げている。

 え?初対面の相手に変なのはないって?いやいやないから、いかに相手が聖グロ、紅茶の国の学園だからって常にカップとソーサ―を両手で持って移動とかないから。とここまで脳内で考えてはたと思い当たる。

 

 父さん……これ、ダージリンです(推定)

 

で、推定ダージリンの言うことをよくよく聞いて見ると

・これからここで試合が始まります

・この戦車はその試合で使う車輛です

・その戦車は玩具ではありません

 

 

以上の会話内容を総合すると―――あれ?俺もしかして選手だと思われてない?黒森峰のPJ着とるんやで?おかしくね?

 

「いやいや私は黒森峰の選手でこの戦車の装填手です」

→「ハハハガール、大人をからかっちゃいけないよぉ(米男」

なやり取りを繰り広げてるとみぽりんとエリカが騒ぎに気付いてやってきて……

 

 そこからはうん、gdgdの押し問答、言葉のドッジボールだった。

 

エリカはもともと攻撃的なとこもあってダージリン(仮)に噛みつくしダージリン(仮)はブリカスムーブでのらくら煙に撒きながら「あんな子供に装填手が~」とか煽り入れて来るし、みぽりんは普段の大人しい様子のまま、なんか俺を護るように前に出てどいてくれないし。

そうこうしてるうちにまほ隊長がやってきて、あーだこーだ会話したかと思うとあちらもこちらもとりあえず沈静化。さすまほ!

 お互いに熱くなっていた部分もありました。申し訳ありませんでしたー ってことでこの場は収まり、一先ず試合は始まった。

 

 みぽりんが副隊長として初陣を飾る戦車はⅣ号F型。初陣ということもあってヤベー顔色をしていたはずのみぽりんなのだが、装填席に座って見上げるとなんか眼がヤベーレベルで燃え上がっている。エリカも何か燃え上がっている。声をかけるのが忍びねぇな。大人しくしとこ……。

 

 そうこうしている間に試合が始まった。

 

フラッグ車の通信手から通信を受け、偵察としてパンツァー・フォー!

『相手は不整地を得意とする英国戦車。だから不整地に陣取っているはず』

 という読みで動いており、偵察に回ったチームが敵主力部隊らしき姿を発見→まほ隊長が突貫。こっちも続くぞー!と意気込んで走っていくと、荒地の向こうからやってきたマチルダとはちあわせ。

 出会い頭で慌ててるみぽりんだったがそこはそれ、マチルダが先制砲撃すると大きく狙いがそれて着弾。弾着の爆音で正気に戻ったみぽりんは撃ち返しを選択。75mm砲が火を噴くも、マチルダは射撃後にすぐ回避行動をとっていたようで、砲弾はむなしく地面をえぐり取った。

 

「エミ!次弾装填!!」

 

車長のみぽりんよりも先にエリカが声を張り上げてることに苦笑しつつよっこいせと次弾をひょいっと装填。初めて見た時は仰天してたメンバーももはや慣れたもの、慌てることなく照準を―――

 

 

 

   ―――なんでマチルダ、真っ直ぐ突っ込んできてるのん?馬鹿なの?

 

 

 

「撃てッ!!」

 

 みぽりんの合図とともに射出された砲弾は、真っ直ぐ馬鹿正直に突っ込んできたマチルダに正面から激突、盛大に爆音を響かせた。たーまやー

土煙がもうもうと立ち込め、様子がわからないが、あの距離からの直撃弾なら……

 

「次弾装填!」

「エリカさん!?」

 

殺意マシマシで怒鳴るエリカにみぽりんが思わず声を上げた。

 

「マチルダの正面装甲のドコに当たったかわからない。まだ撃破判定が出てないんだからあと2~3発打ち込まなきゃ安心できないわよ!」

「えっと、その……」

 

エリカの強い調子に推され気味のみぽりん。そんな様子を装填を軽々と終えて見上げてる俺。エリカ強気責めみぽりんしどろもどろ受けいいですぞーコレェ。

 だが哀しいかな、俺エリみほよりみほエリなんだ……。

 

「ヘイエリカ。車長はみほだぜ?喧嘩はダメだ」

「なに言ってんの!あのマチルダ、十中八九あのふざけた女が乗ってるのよ!」

 

 

 

   ―――え?追撃の理由そこなの?

 

 

 

「―――わかりました。打ち方用意!エミさんは次弾装填用意!」

「……えっ?」

 

 

 

    なんで?(語彙消失

 

 

 

ケツイを込めた目で土煙の向こうを見るみぽりんの目には、再び闘志の炎がメラメラメララである。

 

 

  オイオイオイ、死んだわダージリン(仮)

 

 

 結局、追加で砲弾を2発叩き込んだところで白旗が上がったことが確認され、マチルダは撃破判定を受け退場。

だが俺たちもまた、無駄に追撃したために盛大に時間をロスしたこともあってまほ隊長が決着をつける主戦場には間に合わなかったのだった―――。

 

 試合の後でちょっとシャレオツなカフェでみぽりんとエリカを連れて打ち上げだー!してたら不意に「よろしいかしら?」とダージリン(仮)が近づいてきた。

試合の後はノーサイドってことで試合前のことを謝罪されたんで「謝ってもらうほどのことじゃない」と水に流す宣言したら、なんかティーセット一式を渡された。

 グロリアーナの伝統、中等部でも健在らしい。

試合の後でクタクタだったのもあってケーキセット頼んでたし、同席してるしでちょうどいいやってことで貰ったティーカップにこの店で一等気に入ってる珈琲ポットに入ってやってくる珈琲を注いでダージリン(仮)の前に置いたら卒倒された。

 

 

   ……何で?

 

 

気を失ったダージリン(仮)を抱えて後輩らしき生徒たちが下がっていくのを見送ると、微妙な顔で苦笑いするみぽりんがいて、エリカに至っては「えげつない返し方するわねアンタ」とドン引きしていた。解せぬ。

 

 

 

 後から知ったことだが、あれは京都で言うならば「笑顔でぶぶづけを顔面にシュー!」するレベルの暴挙だったらしい。

 

だがまぁ、みほエリの障害になるわけではないので、俺の記憶(ログ)には特に残らなかった。

 

 




序・破・何がQだよ!・急・終 の 5章予定です(

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