【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
私は所謂「憧れ」で戦車道を始めたクチだった。
重厚な戦車を一糸乱れぬ動きで行軍させる西住流に、黒森峰の門戸を叩くために必死で努力して、そうして中等部に入学して
―――現実の厳しさを目の当たりにした。
ゆるく「戦車道を楽しもう」と言う私の言葉は、黒森峰のエリートさんたちには受け入れられない言葉だったらしい。練習初日の厳しさもあって、私は即座に「使えないやつ」のレッテルを貼られて他の「集団から弾かれた底辺」と一緒に上を見上げるだけの存在になった。
なったはずだった。
「できるだけ大きくて硬い戦車を用意してやったから、精々時間を稼いで」
そう言われて用意されたのはヤークトティーガー。人数も足りない。おずおずと上申をしてみても「こちらも人数はぎりぎりだから、どうせロクに仕事がないのだから通信手か車長が装填手も兼任すればいいでしょ」と言ってけんもほろろに放り出された。涙が出てきそうだ。
「―――やってやろうじゃん……」
小学生と見間違えるほど小さな少女が一人、強く意気巻いていた。強い闘志のようなものを感じさせる瞳と態度に、小さな体躯だというのに私よりも大きな姿に見えた。
「―――砲手の人ぉ!いいかぁ、狙いなんかいちいちつけなくていい。照準内にティーガーが入ってると思ったらトリッガーを引けばいい。相手は西住まほだ、当てようと思うな。フッ飛ばせばいい!」
「は、はいっっ!!」
無茶を言う子だと思った。ヤークトの砲撃がどんなにとんでもない威力だとしても、連射の利かない車輛の砲撃なんか、一発外したらすぐに迫ってこられておしまいだ。慎重に狙撃しなきゃ意味がないのに……
「―――次弾のこと、考えてるね?」
「え?あ、は、はい……」
すみませんと謝る私の肩をぽんぽんと叩いて、その子は笑顔を見せた。
「安心していいよ―――私は
子供のような姿でそんな風に豪語するその子が―――彼女が言っていたことが真実であったのだとわかったのは、その後決着がつくまで西住まほをその場に釘付けにしていたことをはっきりと脳が理解した後だった―――。
―――天翔エミさん。小さな身体に見合わぬすごい力の持ち主で、
「天翔さんすごい!すごいよ!西住まほさんたちに勝っちゃったなんて!」
「何言ってんのさ、私は装填しかしてないよ。相手を足止めしたのは、砲手の腕だろ?」
―――私に自信をくれた人。
天翔さんはすごい人だ。いつもそう思う。
二人がかりで装填するはずのヤークトティーガーの砲弾をたった一人で、速度を落とすことなく、平均3秒で装填を終える。
私がどれだけ砲撃を失敗しても「大丈夫大丈夫。ほら、すぐ撃てる」と言って笑っている。
誰とでも打ち解けるし、まほ隊長とも仲良くしている。
そんな人と同じ戦車に乗っていることが誇らしい。
―――だから私は、黒森峰で一番の狙撃手になろうと決めた。
『 ~
私は人づきあいが苦手な方だった。他人とうまく会話ができない。だからなるべく会話をしなくてもいいポジションとして、操縦手を選んだ。
―――それがどれほど甘い覚悟だったかを知った時には後の祭りで……
矢継ぎ早に繰り返される旋回指示、高速で振り回される車体を安定させたまま旋回するための速度調整、停車、砲撃、から即座の転進へと移る判断。
目まぐるしく移り変わる戦況に対応もできずただ流され流され流され―――どうにもならないと『素質無し』のレッテルを受けた。
当然一緒に組んでくれる人なんかいなかったし、だから私は新人戦を機にこのまま戦車道を辞めて普通科に移るのもいいかもしれないと思うようになっていた。
「人数が足りないから、このチームに入って。操縦手だったでしょ?」
そんな風に言われて引き合わされた子たちはみんな、周囲から弾かれた子たちばっかりで……
―――ただ一人、装填手の子だけが腐るわけでもなくただただ燃え盛っていた。
その試合が、私にとっての初勝利であり、操縦手としてのスタートだった。
その後何度目かの試合を終えた後、皆で打ち上げ気分で乾杯する中装填手の少女―――天翔エミさんに「もう辞めようと思っていた」と零してしまった。
だってそれだけ彼女が眩しかったから。どうしようもなく遠くに感じたから
きっと彼女もこんな私に呆れてしまって、厳しい言葉を向けるだろうと思っていた。
「―――そっかぁ……それは、幸運だったなぁ」
「―――えっ?」
予想外の答えだった。理由を尋ねたくて彼女の方を見る私に笑顔を見せる天翔さん。
「戦車道が好きなのに辞めなきゃいけない子を、こうして一人止めることができた」
私は、ただただ絶句していた。
黒森峰で戦車道を続ける自信がない。けれど、戦車道が嫌いか?と問われれば、答えは「NO」だった。私は戦車道が好きで、黒森峰に憧れて、だからここにやってきたんだ。
「―――辞められると、少し困るな」
「ま、まほ隊長?!」
スッと唐突に天翔さんの後ろから現れたのは西住まほ隊長だった。少しだけ不機嫌そうに眉根を歪めているのは、天翔さんの隣が空いていないからなのかと思って席を譲るように腰を浮かせると、「そのままでいい」という様に手で制される。
「―――私はまだ、天翔と決着を付けていない。今辞められてしまうとヤークトティーガーの操縦手がいなくなるでしょう?」
「そんなの―――誰でもいいじゃないですか」
真っ直ぐにじっと見つめて来るまほ隊長に、思わず俯いてそんな言葉をこぼしてしまう。
そんな私に、天翔さんとまほ隊長の二人は、顔を見合わせる。
「え?嫌だよ。折角いい感じにまとまってるチームなんだし」
「そうね―――私は天翔を加えたヤークトティーガー、あなたたちに勝ちたいの。操縦手が変わってしまったら今のチームではなくなってしまうでしょう?」
「そんな無茶苦茶な……」
無茶苦茶すぎて言葉もない。代わりになんだか笑えてきた。
ああなんだ。私が悩んでいたことってこんなどうでもいいことだったのか。
そう思えたらなんだかおかしくて笑っていた。
今思い返してもあの時が私の原点なのだ。私が『
********
「「「
試合後の食堂で軽快な音が響き、木製のジョッキに注がれたノンアルビールを傾ける姿がそこかしこにある。
もう名物になってしまったと言っても過言ではない、黒森峰の練習後の風景だ。
「みんなー!おつかれさーーーん!!!」
これを私たちのルーチンワークにしてしまった人物は、音頭を取るようにして円の真ん中で笑っている。規律を厳に、鋼の精神、強き意志が誉れたれと語られた黒森峰は一体どうなってしまったのかと悔やまれる限りである。
すべてはあの女、天翔エミが原因だ。
ヤークトティーガーの通信手として乗員の枠を得てはいる。が、天翔エミに劣等感を感じずにはいられない。
まほ隊長からの指示は時折要点を省略しすぎていて元がどういう命令なのかの判断がつかない時がある。とはいえそれで部隊の動きが鈍くなってしまっては本末転倒なのだ。
「―――さん。今のまほの命令はこうだ」
そんな場面で唯一まほ隊長の言葉を“読み取る”ことができる天翔エミが間に立つことで、まほ隊長の命令を要約してチームの行動をサポートしてきた。
ほどなくして隊長直通の
こうして私は通信手とは名ばかりの役職でヤークトティーガーに搭乗して、天翔エミが翻訳した内容を周囲に通達する中間管理職に甘んじている。
じくじくと心が傷んでいく―――腐っていく。どうしようもない。周囲の目が全て自分を責めている様にすら感じる―――居心地が悪い―――。
「こんなのが通信手の仕事といえますか!?」
「―――っていうか……まほの言うことを理解したいんなら教えるから、学べ」
ある日突然爆発して八つ当たりをした私にそんな風にさっくりと返した天翔エミは、その日からまほ隊長と一緒に彼女の部屋でレクチャーを受けることを強制してきた。
まほ隊長の手短な物言いは、高等部に上がるまでに洗練の極みがかかっており、その言語に余分なものどころか、ポロポロと大切な部分も省いてしまっているため、意訳が多岐にわたるものが多い。そのすべてを「なんとなく」というニュアンスだけで把握してしまうあたりに天翔エミと西住まほの関係性を連想させる。長い付き合いにおける暗黙の了解というか、そういうものの存在を感じさせて、絶望的に感じられたものだ。
「そこまで難しく考える必要はないよ。私だって、まほの言ってること全部理解できているってわけじゃあない」
そんな風に苦笑する彼女に「私はエミがいてくれて非常に助かっているぞ」と言わんばかりに抗議の意味を揉めて眉根を寄せて不機嫌そうな表情をしているまほ隊長。その雰囲気を見ていると成程、天翔エミの言わんとしている「空気を読む」「雰囲気を読む」「行間を類推する」の意味が分かって来るように思えた。
高等部一年目の夏。これまでの時間は何だったのかと思うくらいに充実していた。私は何をしていたのだろうか?抱えてきた苦しみが一瞬で霧散し、後には後悔と未来が残った。意地を張り続けていた自分を殴り飛ばしたい。
―――そして私のこれまでの遅れを本当に後悔する出来事が、この後にやって来る。
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―――お飾りでもいいから。
最初に、そう言われた。ヤークトティーガーの車長として抜擢されたわけではなく、『寄せ集めのお飾り』に据えられただけだ。
たとえ『寄せ集め』でも、てっぺんにそこそこの才能があれば、十全とは言えなくてもせめて3か4くらいは動かせるだろう。というチームの判断だった。
理想と現実の違いに折れている砲手、自分の才能を過剰評価してる通信手、根底から圧し折れて抜け殻の操縦手に、人数の足りない上に子供のような装填手。これを「戦力にしろ」と言うのは無理があると思う。どうかしている。
「―――砲手はそっちで、操縦手がこっち……じゃあ、アンタが車長かな?」
「え?ああ、うん」
周囲を見回して一人ずつポジションを確認していく装填手がこっちを向いた。思わず頷いてしまう。
「天翔エミです。よろしく」
ニッと笑う瞳に強い好戦的な光を感じて、一瞬怯んでしまった。
その感覚に間違いはなく、私たち『寄せ集めチーム』は西住まほを足止めしてチームを勝利へ導くという大戦果を挙げたのだった。
~~~
「右方向から来てる!2時!―――いや、相手は西住さんよ!狙いをつけるなら1時方向を狙って!撃て!!」
私の指示に砲手が応えてトリッガーを引く。轟音と衝撃とともに放たれた砲弾は、やはり西住さんを捉えることはなく地面へ着弾した。
「次!行ける?」
「問題ない!もう終わった!!」
声をかけると即座にそんな返事が返って来るのは装填席。砲撃が終わり排莢を終えたばかりなのに、二人がかりで持ち上げる砲弾をたった一人で持ち上げて、即座に装填を終えている。相変わらずの化け物ぶりが非常に頼もしい。
それでも私たちと西住さんの決着は付かず、今回はフラッグ部隊の殴り合いで決着がついて、穴だらけの戦場でお互い停車・降車して握手を交わす。
「―――次は勝つ」
「次も釘付けにしてやるさ」
試合が終わればノーサイド。食堂で全員で器をカチ鳴らして大騒ぎする番だ。
「「「
大学行ってもこのチームで行きたいね。なんて、冗談めかして語り合う。本当にそうだねって笑い合う。砲手の子も熱を上げて練度を上げている。操縦手も日夜頑張ってる。通信手の子は、なんだか少し思い悩んでいる部分はあるけれど、連帯感の強い、良いチームに育った。
「私がフラッグだったら私の勝ちだった」
「いやいや、そんなこと言い出したらきりがねぇじゃん」
ふと見たら、天翔さんが西住さんに絡まれていた。なんていうか本当にご苦労様なことだなと思う。あんな風に実力者に目を付けられて生きるなんて、きっと生きた心地がしない事だろう。大変だなぁ、お疲れさまだなぁと心の中で合掌を送った。
―――あのね天翔さん。西住さんが心配だったのは分かるの。でも説明して?行動を起こす前に一度だけでいいから説明をしておいて?いきなり上級生にカチコミかけることになった時の私たちの心境わかる?わかるよね?天翔さんは人の心がわかるやさしい人だものね?だったら私の言いたいこともわかるよね?わかるでしょ?わかるって言ってくれるって私信じてる。西住さん一人でどうにかなる相手だとは思ってないよ?西住さんがボコボコにされて嬉しい人なんか同級生にそうそういないよ?私だって悲しいよ?みんな悲しいよ?でもカチコミかけるならかけるで相談して?やらないわけじゃないの、心の準備が欲しいだけなの。わかって?わかるよね?わかるでしょ?わかってよ!!あれぇおかしいなぁどこ行くの天翔さん?今日は私の愚痴に付き合うって言ってくれたよね?約束したよね?ここ奢るから好きなだけやっていいって言ったの西住さんだよね?天翔さんも最後まで付き合うって言ったよね?言ったよね?何で逃げようとしてたの?ねぇ?……(以下略)
―――今思い返すと良い思い出だと思う(思い出補正)
高等部に昇級して、高校の戦車道のレベルの高さに驚いて、それでも誰一人心が折れるなんてことはなくて―――通信手の子も憑き物が落ちたみたいになっていた。
このチームでなら、西住隊長と天翔さんなら、10連覇なんてケチ臭いことは言わない。在学中は連覇するし、彼女たちが続けるのなら、大学で戦車道を続けてもいいなぁ……なんて思ったりもしていた。
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『―――エミ!!何処へ行くんだ!?戻れ!!エミッッ!!!』
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装填手を欠いたヤークトティーガーに新しい装填手が加わった。
けれどどの子もすぐに自信を無くして移動を申し出る。
「―――装填が遅すぎる。狙いをつけているのに砲撃ができない。ありえない」
砲手の子の言葉だ。正論ではある、彼女の言う『自分に合わせた装填速度』を満たすことができる装填手が黒森峰のどこを探してもいないことを除けば。
ヤークトティーガーを降りることになって、砲手の子と操縦手の子が普通科への転科を願い出た。
「私はこの車輛以外を操縦する気はないです。この車輛で、あの人が一番やりやすいように操縦したかったから今まで続けてきただけなので」
「私がいたら装填手の方々の迷惑になりそうですので」
さっぱりとした去り方だった。もう未練は何処にも無いような、そんな去り方だった。
結局私は別の車輛で車長を続けている。通信手の子も同じように。時折何かのノートとにらめっこして、必死に難解な数式を解くかのように頭をひねっているが、どうにもうまくいっていない様だった。
あの日から、うまく笑えていない。
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「―――
誰もいない食堂で一人、木製ジョッキを掲げる。遠い昔のように思えるあの日の残影が、私の掲げたジョッキに重なって、まぼろしの音を響かせる。
西住流としての指導を受けて、皆を集めて語って見せた西住隊長は、私の知っている西住隊長ではなくなっていたように思えた。
黒森峰は規律に厳しくなり、西住流の理念の下に統制を重視した戦いを主として生まれ変わった。
そこにかつての黒森峰にあった食堂での大騒ぎなんかは「邪魔なものだ」と誰かが言った。だからなくなってしまった。
まるで黒森峰の全てが、彼女を否定しているようで―――
誰もいない食堂に、カァンと木製の器を叩きつける音が響いた。
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練習を終えた後、夜にひとりでに動いているらしい戦車の話。
その戦車が「あの天翔エミの乗っていた」ヤークトティーガーだという話。
誰も乗らなくなって、予備の部品取り用に置いてあるだけの車輛が勝手に動いている。と言う話にみんなざわめいていた。
―――気づいてみれば誰にでもわかる答えだというのに。
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「プラウダに勝ったんだってさ」
「あんなポンコツだらけの戦車で勝つのもすごい話だよねぇ」
黒森峰の戦車道科の内部ではその噂でもちきりだった。
黒森峰から突如姿を消して逃げ出した天翔エミが、東の果てで放校処分になった西住みほとともに反逆の旗を掲げ、今まさに決勝戦まで勝ち上がってきた。
黒森峰から捨てられた逆恨みに負けてなるものか などと言う子だっている。
「ふざけるなよお前ら」と喉元まで出かかった声を抑え込む。
試合の映像を見て居ればわかる。
彼女は楽しんでいた。戦車道を楽しんでいた。
彼女の新しい仲間たちもみんな楽しんでいた。はじめての戦車道だろう、キラキラしていた。楽しそうに試合をしていた。
あんな目をした子たちが、復讐のためなんかでやってくるものか。
~~~
ガチャガチャと乱暴に金属を打ち鳴らす音が響く。
なんという浅はかなことだろうか。
両方とも、既に戦車道科を転科して普通科に去った子たちである。その二人が二人してやって来る理由など、ひとつしかない。
私は彼女たちの背後に忍び寄り、手に持ったモノを振り上げた。
「―――どきなさい。阿呆ども」
ガツンと強い衝撃が手に走り、登山部の部室からかってきた*1ピッケルがうなりを上げて叩き込まれ、錠前部分を叩き割った。
「ぬしゃらぁ阿呆か!?こぎゃんとばうっぱずすっとにぃ道具もかってこんとどぎゃんしようとや!?」*2
「声、声押さえて、あと言葉、方言出てるから」
ここのところのフラストレーションもあって怒鳴ってしまった私を何とか宥めようとする二人の様子にぜぇぜぇと肩で息をしながらテンションを戻していく。
「で、どうするの?全くのノープランなんでしょう?」
彼女たちの考えくらいわかる。ロクな戦車がないあの人のために、使われていないこの子を届けようとしたのだろう。言っておくが立派な窃盗事件だ。あの継続高校ですら『事前に届け出を出して車輛を盗んでいる』のだ。試合後に返却すら行っている。
ノープランで脊髄反射で動いただけらしい二人は顔を見合わせてどうしたものかと青くなっている。面倒な事に巻き込まれてしまったものだけれど、施錠をぶち壊してしまった以上、私も同罪だ。何とかしなければと考えている矢先に―――
コツコツと音を立てて、物陰から悠然とやって来る人影があった。
「―――ヤークトティーガーの廃棄申請、通しておいたわ。明日の朝に改竄に気付かれたらアウトだから、今夜中に高速艇で学園艦の外に運び出さないといけないけど」
「―――何で……?」
歩いてきたのは、通信手だったあの子だった。やれやれと呆れた顔でわたしたちを見ている。私の言葉に肩をすくめてかぶりを振った彼女はこう言った。
「勘違いしないで。私はあの人に文句を言いたいの。決勝戦じゃ言いたいことの1割も言えないし、だったら、言いたいこと全部ぶちまける機会があったから乗っただけ。―――それよりあなたこそいいの?そっちだって黒森峰のレギュラーでしょう?しかも車長」
睨みつける様な視線を受けて、私は―――
「せかぁしかぁ!!!」*3
色々とたまりかねていた感情が爆発していた。
―――黒森峰女学園から忽然と消え失せた一輛の戦車と数名の生徒たち。
その報告を聞いた西住まほはただ一言「そうか」と呟いたという。
みほ「おそらく相手戦車は―――ですが、これではあまりにも戦力の差が……」
ユズ「どこかで戦車のたたき売りでもしてませんかねぇ……?」
杏「色んなとこから義援金貰ってるけど、戦車は無理かなぁー」
―――大洗に鋼の救世主()が届くまで、あと数時間。