【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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もしも私が再びこの人生をくり返さねばならないとしたら、私のすごしてきた生活を再びすごしたい。過去を悔まず、未来を怖れもしないから。

モンテーニュ 「随想録」


【 急の章 『後悔と激昂と喪失の三重奏(トリオ)~メイン 』 】

―――― Side Emi

 

 

──月──日

 

しほさん

 

こわい

 

 

  「俺はただみほエリが見たかっただけなのに 三次 」

 

  【 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ・急の章 】

 

 

―――― Side Darjeeling

 

 

 

 アッサムは諜報部にも顔が利くらしい。情報が集まりやすいのは良いことだ。

アールグレイ様は私のためというよりも彼女のため―――能力を活かせないままで腐っていく環境そのものに対する嫌悪感から力を貸して下さるようだ。

OG会を掣肘する役割としてアールグレイ様。紅茶の園での目を集める存在は新たに紅茶の園に参加するオレンジペコに任せ、私はアッサムからの報告を待つ間、チャーチル会・マチルダ会両方に末端から接触し、影響力を浸透させていく。 

 

 

 ―――それでも、足踏みばかりの現状はどうにももどかしい。

 

 

―――Side ■■■

 

 

―月―日

 

「これまでに散々問われたとは思いますが今一度聞きます、あなたは自分のしでかしたことを理解していますか?」

「自分なりには、ですが。 私の勝手な行動で黒森峰の看板に泥を塗ったことは理解しています」

 

西住しほ―――西住流師範の詰問ともとれる静かな、しかし確かな圧を伴って発される言葉を正面から受けて、それでもエミはやや怯んだ程度の様子で向かい合い、頭を下げる。

 

「そして黒森峰と繋がりの深い西住流の名にも、ね。 師範代たちはひどく怒ってらっしゃいました。 ことはあなたが考えるよりはるかに重大です」

「はい。 謝って済む問題ではないとはわかっています。 お詫びの言葉もございません」

「まって、あれは私が──『みほ』―――」

 

ただ頭を下げる友人の様子にたまりかねたように、それまで身をすくませるだけだった西住みほが弾かれたように飛び出しエミの前に出る。

 

 

 ―――それを遮ったのはエミだった。

 

 

目を見開き潤ませるみほを宥めながら下がらせて、しほへと向き合う。

 

「私がやったことは、言い逃れのしようもない愚行でした。 多くの方々にご迷惑をおかけしまして、西住流本家の方にまでご足労をかけてしまい……」

「あなたはわかっていたはずよ、あの場であのような行動をとることがどれだけのリスクを伴うか。 あなたの経歴は調べさせてもらったわ。 幼少の頃より戦車道にいそしみ、なかなかの成果もあげていました。 あなたにわからないはずはなかった、なのに、なぜ?」

 

しほの追及にエミは少しだけ目を伏せ、やや考えるような仕草を見せる。

 

 そして、強い決意を宿らせた瞳でしほの目を正面から見据えて口を開く。

 

「―――友を見捨ててまで勝ちを拾いに行くなど、私の望む戦車道(もの)ではない、そう思ったからです」

 

 

 

******

 

 

 

―――― Side Darjeeling

 

 

「―――だ、ダージリンさま……?あ、あの……」

 

怯えたような声のオレンジペコの声がする。鏡を見てああ、と納得する。

 

 ―――どうやら私は報告を聞いて笑っていたらしい。オレンジペコは初めて見るようだから怯えてしまったのね。いえ、二度目だったかしら?―――まぁ、どうでもいいけれど―――

 

 アッサムは私とオレンジペコの様子を見て肩をすくめてソファに腰かけ、サーブされた紅茶を嗜んでいる。

 

「―――ご機嫌ね」

「ええ、とっても―――」

 

アッサムの言葉に“いつもの”笑顔で返し、報告書をまとめて重厚な造りの執務机のファイルに仕舞う。

 

 

 

 ―――あと少し―――あと少しでチャーチル会もマチルダ会も互いのけん制に躍起になり、周囲に目を向けることができなくなる―――

 

 

 この時の私は手が届く位置にある目標に目掛け、真っ直ぐに進んでいた―――。

 

 

常々アールグレイ様から言われていた

『一つのことに注視しすぎて全体が疎かになるきらいがある』

それを、私は見落としていた―――。

 

 

 

*******

 

 

 

―――― Side ■■■

 

「―――いや、本当……まいったね」

 

今月……いや、今週ですら何度目になるかわからない言葉をつぶやくエミを、エリカが心配そうな目で見ている。

 エミは上下ジャージ姿で、黒森峰の制服を着ていない。そしてその髪はしっとりと濡れていた。

エミが学園を出て帰宅する際、靴がなくなっていた。靴自体は近場の植え込みに放り投げられていたが、それを取りに向かった際に上から水が【落ちてきた。】

 

 

 ―――嫌がらせは遂にイジメに発展を始めていた―――。

 

 

 流石のエミにも疲労の跡が見える。エリカは何度も「しばらく学園に来ない方がいい」と言い続けていたが、エミは首を縦に振らなかった。

だがもう限界だ。エリカは無理にでもエミを押し込めて登校拒否の処置を取るつもりでいた。

 それは、その矢先でエミから切り出されたものだった―――。

 

 

「―――エリカ。みほのことを、頼む」

「……どういう意味よ?」

 

 

 聞き返すエリカに、エミは微笑みを返す。その微笑みも力のないものになっていた……。

 

 

「もうね。わからなくなってしまったんだ―――何が正しくて、何を悪とするのか……戦車道における善悪の概念ってなんなんだろう……とかね」

「それは―――」

 

 

エミの言葉にエリカは反論をしようとした。だが、今の黒森峰に蔓延している空気、OGからの、西住流からの叱責・罵倒という名の圧力。

 それらエミを取り巻くすべてが、エリカの反論を一蹴しうるもので、それ以上の言葉を続けられなくなるエリカに、エミは先ほどと同じように微笑み、

 

 

「―――だから、しばらく黒森峰(ここ)を離れようと思う」

 

 

 

―――訣別の言葉を、口にした。

 

 

 

******

 

 

 

―――― Side Darjeeling

 

 

 

 激しく机を殴打した勢いでカップが倒れ、紅茶が机に広がった。ジンと傷みが手首を走る。手首を痛めてしまったかもしれない―――。

 

 

 ―――あと一歩なんだ。チャーチル会、マチルダ会は動けなくなった。

 

 

ここから根回しを始めて、今からやっと―――

 

 

 

「―――アッサム。天翔エミと、接触を図りましょう。

  彼女を聖グロリアーナに引き込むだけの価値が―――」

 

 

―――Rrrrrr……

 

 

アッサムの直通通信(ホットライン)がけたたましく鳴り響く。通話を始めたアッサムの顔がみるみる強張っていく。信じられないものを聞いているような―――

 

 

 

「―――内部に潜らせた諜報員からの報告で―――

 

   ―――天翔エミの消息が、途絶えた。って―――」

 

 

 

 ―――その日、私の好敵手は、まるで最初からいなかったかのように、姿を消してしまった―――

 

 

 

*********

 

 

 

――――Side Emi

 

 

─月─日

 

ぼくは いま

 

おおあらいにいます

 

みぽりんとるーむしぇあです

 

 

 

なんで?????????

 

 




かなり短くなってしまったので多少追加して編集しなおすかもしれません(

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