【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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>> Miho


 ―――戦場を駆ける。

 戦うためではなく、逃げるために―――。

 『西住流に逃げるという言葉はない』
あの日のお姉ちゃんの言葉がノイズのように耳に響いている。

「―――みほ?どっちに向かう?」

 Ⅳ号と並走して走るヤークトティーガーの上部から顔をのぞかせているエミさんの言葉に雑念を振り払って、必死に思考を巡らせる。


―――プラウダと戦っているアンツィオは論外。カチューシャさんがこちらの言い分を聞いてくれるかどうかもわからない。

―――大洗の残りのメンバーは今サンダースと戦うことで練度を鍛えている状態。サンダースにも少なからず被害が出ている。合流したとしてそこに追いつかれた場合……

 ―――だから。選択肢はもうないようなもので―――


「―――黒森峰と……エリカさんとお姉ちゃんたちのところに向かいます。共闘を持ちかけても話を聞いてくれる可能性がありますから。沙織さんは、大洗の皆さんに通信を。戦闘を一旦中止してバラバラに逃げてって伝えてください。合流のポイントは後で指示します」
「任せて!電波飛ばすよ~」

 沙織さんにお願いして大洗の他の皆に通信を飛ばしてもらって、後方を確認する。西さんたちはああ言っていたけれど、あの娘が逃げる暇なんかを与えるはずがないし逃げ切れるとも思えない。
 改めて西さんたち知波単の皆さんの献身に感謝して、それを決意を固める材料に変えた。


 ―――独特なエンジン音とクリスティー式の駆動音がすぐそばのブッシュの向こう側から響いて来たのはそんなタイミングだった。


「華さん!砲塔旋回40度!」

 一瞬で意識を切り替えて華さんに指示を飛ばして、続けて麻子さんにスタンプを送る。減速するⅣ号に合わせて追いかけるようにヤークトが慌てて減速し、足を緩めたところに横合いから“それ”は飛び出してきた。


―――BT-42。車体に刻まれたエンブレムは継続高校のもの。


「……間に合ったかな?どうやらまだ撃破されていなかったようだ」

 上部から顔を覗かせるのはチューリップハットを目深にかぶった女の子。
あまり見たことのない楽器を爪弾きながら、片目を瞑った左右非対称の表情でこちらを上目使いで見るように、俯き加減で帽子の下から覗き込んできた。

「―――わたしは継続高校の隊長の『名無し』だよ。みんなからは『ミカ』って呼ばれてる。すまないが今回はただのメッセンジャーなんだ、私のことは気にしないでほしい。
 単刀直入に言うからよく聞いて。―――私たちが知らないチームが参加している。そいつらはヨーグルト学園を配下に従えて、今戦場で戦闘を続けているすべてのチームへ向けてその刃を向けている。わたしに伝言を託したダージリンからのお願いはひとつだけ。“残りの参加チームの残存勢力を合流・統合したうえで敵勢力を打倒したい”という打診だよ」



【 まほルート 第十八話 「 BIG BANG!! 」 】

*******

 

 

>> Emi

 

 

―――なぜこんなことになってしまったんだ!?(マン感)

 

 

 唐突にやってきたミカァ!の言葉によると愛里寿の参加はダージリンが認めたもので問題はない。が、本来愛里寿たちは「シークレットチーム」としての参加、かつ「どこかのチームが脱落したタイミングで追加」というものだった。が、愛里寿はこれを“ヨーグルト学園に短期転校手続き”という方法でクリアーしつつ、本来のシークレットチームは温存。島田の後押しでそれなりに強化されたヨーグルト学園の戦力で防御陣を形成中の聖グロを襲撃。半壊させて悠々と去って行った、らしい。

 

 

 

 

 Q:―――なぜ全滅させなかったのか?

 

それはシークレットチームが参加するルールに抵触するから。

 

 

 

 

 Q:―――なぜシークレットチームの参加を遅らせる必要があったのか?

 

それは、“西住みほ”と“天翔エミ(おれ)”にシークレットチームの存在を知られないため―――だったのだろう。

 

 

 

 

 仮にみぽりんに存在がバレてしまった場合、その時点で何らかの対応策を考えるのは自明の理である。その対応を考える暇を与えないように……と考えるならわからないでもない。

 ―――だがそれでも腑に落ちない点がたくさんある。ありすぎる。

 みぽりんもそのあたりは考えが及んでいるのか思案し続けている様子で、その様子を見ていると俺の猿知恵など意味はないのかもしれない。

 

 

『応援に来たよ』

 

 

 愛里寿は確かにそう言っていた。その言葉に嘘がないと考えるのならば、愛里寿は『応援』に来たのだろう。そこに島田のちよきちさんの意図が含まれているだけで。

 

 

 

 

―――ならば“応援”とは何なのか?

 

 

 

 

 愛里寿が俺の真の目的(みほエリを成すこと)に気づいているとは思えない。ならば俺の目的を別のモノだと推理して、それを能動的にお手伝いしている可能性がある。

 とはいえその「目的」ってのが何なのかわからないのだが。本当何なんだろうなぁ……愛里寿の目的……。

 

 

 とはいえ新しい発見もあった。みぽりんが合流相手に「黒森峰」を指定したこと。そして頼れる姉のまぽりんよりも先にエリカを名前に挙げたこと。

 これはさぁ……進展、してるよねぇ?(ねっとり)

 決勝での一騎打ちからこっち、メールとか電話とかで何度か連絡取ってるのは見かけたことがあったんだが、遠恋ってすぐ破綻するイメージがあるから結構心配をしてた俺がいる。

 ―――だが、どうやら俺の杞憂であったようでとても安心した。これ以上俺が何かをするまでもなくみほエリの未来はすでに9分9厘完成していると言っていいだろう。

 

 

 

 

 

―――だから、今ここで俺がすべきことは……『ない』

 

 

 

 

 

 ―――割と真面目にもう手を出す必要がない。後は眺めているだけの簡単なお仕事ですありがとうございました。

 ひとまず心の余裕を取り戻せたので状況を再再度確認。

 事態は今の世界線では起きなかった原作における劇場版、大学選抜戦の流れと言ってもいい。学園艦の廃艦こそかかっていないが、相手は愛里寿とミミミの大学チームで、ヨーグルト学園の編成から見るに多分あっちのチームの乗員ごとそっくり入れ替えててもおかしくない。っていうかちよきちさんならやりかねん。

 大学選抜チーム5輛+ヨーグルト学園15輛の合計20輛。

対してこちらは大洗が9輛。サンダースがおケイさん、アリサ、ナオミ他シャーマン軍団の合計7輛。聖グロが履帯修理中のダージリン、ルクリリ、ニルギリ、ローズヒップ+1の合計5輛。継続高校が1輛。BC自由学園は押田安藤の2輛以外は状況不明。プラウダがカチューシャとノンナ、クラーラ、ニーナ含めたカチューシャ軍団総合計11輛。これにアンツィオが4輛。そして黒森峰が15輛で総合計は50輛である。数の上では圧倒的過ぎるな。

これは勝ち確ですわ。ガハハ勝ったな!ちょっと風呂入ってくる、試合中なんで無理だけどな!

 

 圧倒的過ぎる戦力差をもってすれば相手が愛里寿であろうと飽和攻撃で殲滅余裕と言えよう。劇場版で見せた島田流の避弾経始とか回転回避とかすごかったけど、ドット避けすらできない飽和弾幕の前には無意味である。

 

 

「―――エリカさん?ごめんなさい、ダージリンさんから通信は……うん。

 ……そう、エミさんを―――……うん、うん」

 

 エリカと通信をしているらしいみぽりんが神妙な面持ちからやや安堵した表情に変わる。どうやら話し合いは円満に終わったようだ。

 

「エリカさんたちは一応無事みたい。―――麻子さん。このまま右手の森を突っ切ってください。そのほうが早く合流できます」

 

 冷泉殿に合図を送って一息を吐くみぽりんに道すがら話を聞くことになったのだが―――おいちゃんはさぁ、距離感近い感じになってるエリカとの話のほうが気になるんだよなぁ……とは思ったがそこはそれ、さすがに言い出せなかった。

 

 

 

*******

 

 

 

「―――だから!効率を考えなさいよ効率を!!」

 

 エリカたちと合流したところ、通信機相手に絶賛論争中だった件。

合流したみぽりんが話を聞いた結果、どうしたらいいのかわからないといった表情で悩み始めた件(なんで?)

で、話を聞いた結果なのだが。

 

 

―――カチューシャ及びプラウダ軍団とサンダース小隊が合流を拒否したらしい。なんでやねん工藤(困惑)

 

 

 

 

 おケイさん曰く

 

『50輛近い車輛で半分以下を蹂躙?ナンセンスね!戦いはフェアプレーで行かないと!』

 

 カチューシャ曰く

 

『あいつら蹴散らしたら試合再開なんでしょ?連合を組む必要なんかないわ!カチューシャ様とプラウダでぶっ飛ばしてやるわ!!』

 

 

 

 

 

 ―――うん。どっちも気質が悪い方向に出てるなぁ、としか言えんわ(迫真)

劇場版では戦力を同数に合わせることでサンダースの協力を取り付けたんであろうダージリンマジ有能だったことが証明されてしまったが、今の状況で車輛の数を減らすとか無理筋である。無理無理無理無理カタツムリであろう。

 みぽりんは思案するように顔を俯かせて何やら考え込んでいる。

 

「―――プラウダとサンダースの動きを遊軍代わりにしてこちらが呼吸を合わせて波状攻撃の形にしましょう。プラウダにこちらの部隊を1部隊随伴させて連絡を取り合う形で―――」

「それなら赤星に行かせてるわ。アンタの考えることくらい読めてるから」

 

 顔を上げたみぽりんの提示する作戦を先回りしてフォローしているエリカの姿にちょっとこみ上げてくるものがすごい(語彙現象)俺である。この二人、ホンマにツーカーな仲になって……と、思わずおかん的なしみじみ感あふれる感想が浮かんでくる。俺のやってきたことは無駄ではなかった。これからもみほエリは続いていくんだからよ―――止まるんじゃねぇぞ……!!

 

 脳内がほっこりして精神的に余裕ができたところで改めて盤面を更新してみる。

赤星さん率いる黒森峰分隊5輛がカチューシャ隊と合流。プラウダのカチューシャ隊とおケイさんたちで18輛に赤星さんたちを加えて23輛。数の上ではギリギリフェアプレーといえる。

 対してみぽりん+エリカの大洗黒森峰部隊。他のメンバーが合流するまでしばらくはかかるだろうけど大洗9輛と黒森峰主力部隊と合わせて24輛。部隊が真っ二つになってるレベルである。もしかしたら、これも愛里寿の策略なのかもしれないと考えてしまうのは流石に穿ちすぎだろうか……?

 

―――でも大軍団が部隊を二つに分けたとこで片方に攻撃を集中させて食い破るのって寡兵が大軍を斃す時のテンプレなんだよなぁ……大丈夫かこれ……?

 

みぽりんが戦力の逐次投入を許すはずがないのは当然として、この状況もまだ愛里寿の掌の上である可能性は否めない。だって島田だし、愛里寿だからなぁ……劇場版でみぽりんの策を見切って203高地に陣取った一団をカールでフッ飛ばしたのは伊達ではない。

 思えば劇場版前哨戦でカチューシャがカール相手に手痛いダメージを受けたのはカチューシャの慢心を抑え込むためだったのかもしれないなーとか思ったり――――――

 

 

「―――持ってきてない、よな……??」

「エミさん?」

 

 

 みぽりんの声も耳に入らない。え?持ってきてないとは言い切れないよな?この状況で、敵兵力を分断したうえで合流した一団は敵のいるであろう場所へまっすぐ向かってるとこで―――愛里寿が襲撃してきた位置は俺たちがいたゴルフ場で―――

 

 

 

「エリカ!!赤星さんに連絡!即時散開!カチューシャたちがヤバい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 俺がその結論にたどり着いてエリカに叫んだタイミングで

 

 

 

 

 

 

―――地を揺るがす衝撃と、空気を震わせる轟音が周囲を埋め尽くした。

 

 

 

 




 やっと戻ってきたぁ


 元気 ■■■■□□□□□□ 満

 やる気■■■■■■■■□□ 満
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