【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
何故日常生活を送っているのにふとした時に吐血するのか?
何故味覚や視覚が鈍くなっているのか!!その答えはァァ―――」
まほ「それ以上言うなー!!」
【覆面
うそです(AA略)
~『 私とみほ?よく似ているだろう?……姉妹だからな 』~
>> Emi
「―――天翔エミの戦車道生命も、生命そのものも、あと10年もせず尽きる」
な、ナンダッテー!?(AA略)
とまぁ内心でトマルとナワヤに叫ばせてみた。
俺の内心としては―――人生短すぎてワロタwwwwwww蝉かよマジ草生え過ぎて水田できるわー大豊作だわー。的なコメントしか浮かばない件。
いやしかし、俺の超絶パゥワー(巻き舌)が一体どこから湧いてくるのかまるで分らなくて「すごいね人体」って言葉で刹那で忘れちゃった!して目を背けていたが……よもや火事場のクソ力どころではなく我が身を削って(強制的に)パッシブ発動してたとは―――見抜けなかった!このエミハクの目をもってしても……!!
ともあれ、現状問題になるのは―――この話が愛里寿以外誰に周知されているのか、である。
何故って?こんな話が大洗のなんだかんだで人の好い戦車道メンバーに知られた日には戦車道の世界に俺の居場所なんぞ無くなってしまう。
だがそれはまぁ別にいいんだ、多少惜しいと思うところがあるだけでそれほど重要なことじゃない。大事なのはみぽりんとエリカ、この二人に情報が渡ってしまうのが最も不味い。
なんだかんだで俺との接点が多いあの二人に情報が渡るようなことになれば、大体が内向きにネガティブなみぽりんは自分のせいだと謎の自己嫌悪を発症するし、エリカの場合最悪ヘイトを西住家に向けてしまうかもしれない。そうなったらみほエリの成就という芽吹いたばかりの若草だらけの花畑の如き俺の
そんなもん世の中の誰も望んじゃいないだろうし俺も望まない。そう思うだろ?アンタも。
そんなこんなな内心をできる限り内側に隠しつつ、ティーガーにタンクデサントした状態のまま愛里寿に声をかけてみる。
「―――愛里寿。その話は、誰か他に言ったか?」
「ううん、言ってないよ。だってエミはそんなこと望んでないもの」
俺の言葉にさっきまで憎々し気にまぽりんを睨んでいた愛里寿がパッと目を輝かせて微笑みを見せる。恐ろしく早い変わり身、俺でなきゃ見逃しちゃうね。二重人格を疑うレベルの変質ではあるが、笑顔で天使な愛里寿を見ているとさっきまでのが幻覚か悪い夢だったと思えてきてしまうのだから始末が悪い。
すーはーと深呼吸を繰り返して、努めて平静に言葉を続ける。
「―――だったら話は簡単だ。その話は、ここだけの秘密ってことにしておいてくれ」
そう言ってハッチから上半身を覗かせているまぽりんの方へと視線を投げる。無表情な中にわずかに動揺が見える視線の揺れだけを見せて、まぽりんは視線を愛里寿から切らずに静かに頷いて見せた。
「そっか……それがエミの答えなんだね」
「言った私が言うのもなんだけど……愛里寿はそれでいいのか?」
どうして?と問うこともなく俺にそう返す愛里寿に逆に俺の方が戸惑いを隠せない。なんで?
「いいよ。もともとエミ以外に伝えるつもりはなかったから……そこの元凶を見ていたら我慢できなくなっちゃっただけ。そういう意味ではごめんなさい」
神妙に頭を下げる愛里寿。だがそれでもまぽりんから視線を切っていない辺りお互いに戦闘中という認識で居るのだと理解できた。
「エミ。単身で行かせることになるが、カチューシャたちの方へ向かってくれないか?
―――わたしはここでコレを足止めしておく」
修羅ガンギマリしてる目で愛里寿を睨みつけているまぽりんからそんな提案が飛び出てきたことに驚きしか感じ得ない。が、まぽりんがどうやら俺の命をさほど気にしていないようで若干俺の胃袋が平穏を取り戻してくれている。
「―――任せた」
「任せろ」
短いやり取りを残して、ティーガーの上からジャンプ一番樹の上に。そのままその場を後にした。背後では北斗練気闘座がBGMで流れそうな光景が広がってることだろう。
―――正直まぽりん単騎で愛里寿を足止めできるのかとなると若干不安が残る。
だが大丈夫だ。 だってまぽりんは、西住まほなのだから。
******** >> Emi → Maho
目の前の愛里寿から視線は切らない。エミを追うことがないのは【視線を切ったら討たれる】と理解しているからだろう。
油断をすれば食い破られる拮抗。
それが今の目の前の敵と自身の能力の差。互いに譲らない程度の力量差を埋めるのは―――覚悟と集中と経験の差。
「―――平然としているのね」
淡々と、責めるように声を上げる目の前の敵に―――
「―――当然だ。私は……“私たちはすでに知っていた”」
そう、返していた。
******
「……今、何と仰られたのですか?
―――もう一度仰って下さい、お母様!!」
後半、声を荒げてしまった自分が居る。ぎゅっと握って和室の畳の上についた手がそのまま畳にめり込みそうなほどに力が体重がこもっている。その反面、血の気は失せていってまるで幽鬼のようだ。
―――だってそうだろう?
―――母は今何と言ったのだ?
「―――天翔エミの余命は、長くてもあと15年。これは医師の方の診断によるもので、診断書も出ています。疑う余地がありません」
―――こんなこと、あっていいわけがないじゃない。
「療養は―――できないのですか?」
もしもこの時「できる」と答えが返って来ていたら、私はエミのいかなる弁明も無視して万難排して彼女を監禁に近い状態で無理やりにでも療養させていただろう。
「―――無理よ。死因は……老衰なのだから」
「馬鹿な……!!」
詳しい診断書に書かれていた情報すら断片的で、予想の域を出ないものであった。そのエミの身体能力は専門家の目をして一言で「ありえない」というもので、そしてその代償が【その命を削っている】という説明に膝から崩れ落ちそうな自身を支えることで精いっぱいだった。
先日の戦車道高校生大会決勝戦。その後の西住家の話し合いの場に同席したエミの突然の吐血騒動。その醜聞を隠すためとはいえ、西住家の影響力の及ぶ範囲の病院にエミを運んだのは僥倖だったのかもしれない。唐突な吐血に不審に思った母がエミの身体について詳細に診察させたことも、その結果この診断結果が手元に来たことも。そこに計り知れない運命というものを感じる。
『天翔エミの細胞における分裂速度は常人のそれを上回っており、それが傷の回復を早めている要因であり、筋力などの底上げにもつながっている。反面、細胞増殖の限界に達する速度も速く、常人の三倍ほどの速度で成長・老化している。齢30を数える頃には常人で言うところの90歳。そこまで生きずして限界を迎えて老衰で死亡する。』
その診断書の淡々とした文章に心がへし折れてしまいそうだった。
「みほには―――どう伝えるのですか?」
ようやく絞り出した私の言葉。ただそれだけがやけに億劫だった。
母はしばらく考えるように沈黙して、やがて口を開いた。
「―――あの子は、今は西住ではありません。この意味がわかりますね?」*1
―――つまり、【伝えない】ということなのだろう。
みほは優しすぎる。その心根は大切なものだが、エミのことになると致命的になりかねないから、母の判断は妥当だと言えた。もしもみほがこの事実を知ったとしたら―――エミを有無を言わさずにやんわりと拘束し、軟禁に近しい状態で【保護】を強弁しかねない。
否。仮に私がみほと同じ立場に立たされ、結果みほと同じようにエミに助けられていたのならそうするだろう。
そして“それはエミが望んでいる答えではないのだと確信ができているからこそ、みほには黙ったままでいるべきだ”と、私の心が背中を押した。
かくて、私は何一つみほに伝えることはなかった。同じようにみほと情報を共有する可能性のある対象である逸見エリカ、赤星小梅を含んだみほと同期のメンバーにも口をつぐみ、信頼できるティーガー1の車輛メンバーにだけ、緘口令を敷いたうえで真実を打ち明けた。
はじめは皆驚き、そして同時に酷く嘆きを見せた。そして「エミをこれからどうすべきなのか」という相談を始めるに至った。
そのタイミングで提案されたのが天翔エミの各学園艦傭兵記録と、そこから派生した【大饗宴】である。
間が悪いと言ったものではないと最初は思った。だが“副賞”の話を聞き、ダージリンの真意を問い正した時、私の中に確かな火がともった。天翔エミの今後を左右するこれこそが、エミ自身に未来を選ばせることができる分岐点なのだと。
すべての情報が出そろった翌日、私は黒森峰の生徒たちを集めた。そして彼女たちの協力を仰いだ。
「天翔エミの未来は、天翔エミが決めるべきものだ。だから私はエミの未来を決める権利を得て、その権利でエミ自身に未来を選択させたい」*2
私の言葉に、皆賛同を示してくれた。
ダージリンとの同盟目的も、“勝者となってエミを助けるため”に置き換わった。周囲を騙す形になったとしても、最悪の場合は後ろからダージリンを討つ覚悟すら決めていた。その決意が無駄になったことにほっとしている己も確かにいる。
******
「―――だったら何故エミを殺そうとするの?戦車道を続けている限り、エミはじわじわと死んでいくのに」
「―――わからないだろうな。お前には」
咎めるような憎しみの瞳を、嘲笑で返す。自分でも驚いているほどに、胸の奥底でグルグルと螺旋を描く黒い感情が止まらない。
「―――エミにとって戦車道はこれまでの人生すべてだ。己の命を懸けて挑んできたものだ。私にとっての西住流と同等、それ以上のものだ。
それを取り上げておいて“自由に生きろ”と告げるお前の方こそふざけている。エミをじわじわと殺している?それはお前の方だ―――偽善者が」
中学生ほどの少女に向ける感情としてはやりすぎかもしれない。けれどこの感情の抑えどころを、今の私は知らなかった。
何故なら目の前の化け物はそれと同じかより強い憎悪を宿して私にぶつけてきているのだから―――。
「―――キモチワルイ 自分が正しいと欠片も疑っていない 酷い女」
「―――お互い様だ」
言ってからするりと自分の中に合点がいった。
―――目の前のこの少女は私だ。
―――エミに出会うことなく、名家の重圧を苦にしていなかったころの私だ。
―――そしてエミに出会って、エミを失った直後の私であり
――― エ ミ が 他 人 の 物 に な っ て い た 場 合 の ―――
「――――ははっ」
小さく吐き出されたのは自嘲の声。
成程こんなにも目の前の存在が憎いわけだ。
こんなにも目の前の存在が醜く映るわけだ。
ならば彼女が間違えていると諭すのも、正すのも、倒すのも―――
「すまない。私はどうやら勘違いをしていたようだ。
―――お前を倒すのは、私の義務だ。それ以上でもそれ以下でもない」
目前の敵を見据え、瞬きすら忘れたように視線を集中させる。
合図を今か今かと待っている操縦手に向けて―――“踏”をひとつ
―――そうして、決戦が幕を開けた。
>> Maho → Others
「―――ここまで、ですか」
カチューシャのT-34を護る盾としてその身体で守りを固めていたノンナが小さく呟いた。JS-2の装甲にはいたるところに被弾痕を残し中破状態。その後ろでT-34の隣に立ち砲撃しているKv-2が次の役目を引き継ぐつもりで一歩前に出た。
『―――カチューシャ、私とニーナが殿を務めます。サンダースを連れて撤退してください』
「何言ってるのノンナ!!犬死にするつもり!?」
通信機から響く声をカチューシャのけたたましい声が被さって打ち消した。
『状況を正しく認識してください。我々は詰みに近い―――わかりますか?【詰みではない】のです。
カチューシャ。貴女はこの戦いになくてはならない存在です。ウラル山脈より高い理想とバイカル湖よりも深い思慮を秘めている!!貴女と“彼女”ならばきっと―――』
通信を遮るように、炸裂音が通信機から響く、間をおかず衝撃を浴びて車体が揺らぐ。JS-2の履帯が片側破損し、もう動けなくなっていた。
『―――命ある限り、仕留めてみせます。あとは任せましたよ、カチューシャ』
覚悟を決めたノンナの遺言めいた言葉に、カチューシャの目から零れ落ちた涙。
「撤退よ」そうカチューシャが声を上げようとした、その時―――
「―――すまん。ちょっと、遅れた」
ぽつぽつと、降り始めた雨の中、空を割いて―――“鴉”が舞い降りた。
鴉は悠々と空を駆けるように舞い、そのままJS-2の上に両足で着地する。
ハッチを開いた黒い姿が転がるように車内に入り込み、装填席の後ろにそのままぽすんと収まった。
「―――何故来たのですか?来るなと言っていたでしょう」
咎めるようなノンナの言葉に
「ノンナはカチューシャを見捨てろって言われて諦めるのかい?」
揶揄うようにそう返して、装填手と交代した鴉―――天翔エミはニヤリと笑って見せた。
「―――無理です」
「じゃあ自分が無理なことを人に言うのやめよう、な!?」
勢いで押し切られる形になったノンナはひとつ溜息を吐いた。そうしてカチューシャに通信をひとつ。
「カチューシャ―――すみません、状況が変わりました。周囲を掃討するためにも、部隊に指示をお願いします。
―――それと、
『―――さっさと終わらせなさい!!試合が終わったらラーゲリ送りでお説教なんだからね!!エミーシャ!貴女もよッッ!!!』
涙声を上書きするような怒鳴り声に、エミが「なんで?」と呟く。
「ご愁傷さまです」と返して、ノンナはクスリと笑って照準を覗き込んだ。
「―――では、“
「了解。装填は任せろ!!」
全弾を吐き出す覚悟を決めた以上、照準をしっかり狙う必要はない。
次弾に懸念する要素もない。
ノンナは照準の向こうに映るヨーグルト学園の戦車たちの冥福を、ほんの少しだけ祈って、カチューシャを怖がらせた罪と相殺したうえで秒で忘れて引き金を引いた。