【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
「下手に戦うとこっちがやられるし、勝ち過ぎたら落しちゃうしね。『撃破してはダメ』とか、隊長も難題を出してくれるわ……」
M26パーシング2輛が後退を始めると、撤退支援のためにヨーグルト学園のチャーフィーとT-34が前に出て盾になった。次の瞬間そのチャーフィーを駆るヨーグルト学園の名もなきモブはIS-2に狙撃され白旗を挙げる。その直後懸かるに3秒、照準移動に僅か2秒の5秒程度で次の魔弾が放たれ、チャーフィーに続いてT-34が軽くノックバックしながら白旗を挙げた。
「―――本当。反則過ぎるわ、連射が利く重戦車って―――」
メグミが肩をすくめてそう呟き車内にもぐりこんだ。そのまま逃げに徹する3輛のパーシングは被弾することなく華麗に逃走を成し遂げた。
> Others
「―――状況、終了。追撃よりも撤退を具申します」
「間違いなく撤退支援も含めてカールの狙撃が来るだろうしなぁ」
ノンナの報告とエミの呟きを、カチューシャは仏頂面で聞いていた。IS-2から自分のT-34/85に乗り込んできたエミからぷいと顔を背け、クラーラのT-34/85に乗り込むノンナも無言で見送っていた。
「あー……その……ごめんね?」
「何でカチューシャが謝ってもらわなきゃいけないの!?勝手に突撃して、勝手にボコボコにされたのはカチューシャの方でしょ!!」
おずおずと問いかけるように声をかけたエミに逆切れを決め、再びそっぽを向くカチューシャ。取り付く島もない様子のカチューシャに、エミは少しだけ考え込む様子を見せたが―――
「それでもごめんと言わせてくれ。今の状況は私のせいなんだから」
「……何なのよもぉ……」
エミはそういって深々と頭を下げる。こうなるとまるで自分が意固地で聞き分けのない子供のように感じられてしまうカチューシャは小さく悪態をつくことしかできない。素直に失言を撤回したくとも、自分のちっぽけなプライドに邪魔されて言葉に詰まってしまう。
そんなカチューシャの様子を尻目に、エミはやや考え込む様子をみせた。
「―――どうあれ、下がってみんなと合流して欲しい。できれば……いや、まほの救助は多分できないから急いで合流しよう」
「マホーシャの援護が必要じゃないの?」
意外そうな声を上げるカチューシャに、やや答え辛そうにあらぬ方向を向くエミ。
言葉を選ぶようにして、ぽつりぽつりと説明していく。
「……正直、まほの相手―――島田愛里寿は化け物だ。それも状況によってはまほ以上のね。疲弊した戦車、それも間に合わせの寄せ集め部隊で突撃してもいいカモにしかならない。最悪まほがこっちをフォローしようとして撃破される可能性がある」
「……そこまでなの?」
ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる。カチューシャは知っている。西住まほがいかに“規格外の化け物”なのか。そして目の前の少女がベクトルこそ違えど同じくらい在り得ない規格外だということを。その彼女をして【化け物】と言わしめる見た目通りの幼さの少女は一体どれほど在り得ない高みに居ると言うのか……?
「まほも状況は理解してるはずだ。時間を稼ぐことを念頭に置いて、ダメージを避けて戦ってると思う。その間に本体と合流して全員で救助に向かえば、愛里寿は本体と合流するなり本隊を別動隊としてこっちにぶつけようとするなりするはず。その間にまほが逃げる隙が生まれるはずだよ」
「―――よく見てるのね」
戦術眼と戦力を図る眼。その目から見た全員の戦力の図に明確な差を感じて、カチューシャは面白くなかった。自分の手の中におさめようとした宝石が、はなから自分を見ておらず、お決まりの場所しか見ていないような錯覚。
これまで自分がやってきたことが独り相撲で益体のないものに感じられてしまう。
「―――なんかもう、なんだろ……」
「カチューシャとみほが組み合わされば、多分愛里寿を封殺できる戦術が組める……と、思う。みほのあきらめない戦術と、カチューシャの包囲戦術ならきっと」
ぼそりと呟くカチューシャの言葉も届いていないのか、エミはかつてないほど饒舌に作戦について語っている。まるで焦りをごまかしているかのように。
―――否。焦っているのだ。
戦友の危機に、これ以上ないほど焦っている。表情もやや硬い程度で見透かせない程の薄さではあるが、エミの様子の違和感をカチューシャはそう結論付けた。
彼女と西住まほは比翼の鳥だ。そう誰かが言った。
比翼連理とは、互いのどちらが欠けても成り立たない。けれどダージリンは証明した。
―――天翔エミが殆どの相手にとっても【比翼】に足りえると。
そんなエミを己の翼として羽ばたきたい戦車乙女たちがこぞって参加したのがこの大饗宴、だというのにその件の【翼】はただ一人しか見ていなかったことになる。この状況はどうだ。これでは自分はただのピエロではないか。
「……
カチューシャはぼそりと呟いて、ノンナ・クラーラが乗るT-34/85へと通信を繋げる
「ノンナ!クラーラ!あなたたちはマホーシャの援護に向かいなさい!マホーシャを援護して可能なら即撤収!いいわね!これで貸し借り無しにしてきなさい!!」
『『Арахора Сассер!!』』
「だから本当その掛け声何なの!?」
声を揃えて駆けていく戦車を怒鳴り声で見送るカチューシャは、手がかかってしょうがない子供を見送る母親のような表情をしていた。
―――と、天翔エミはのちに語った。(戦車道広報より)
******* Others → Emi
逃げるやつぁ大学選抜兵だぁ!逃げないやつぁよく訓練された大学選抜兵だぁ!
本当に戦車道は地獄だぜぇー!!フゥーハハハァァァァァ!!!!
―――とか、そんな感じの素敵な夢だったのさ……(夢想感)
愛里寿のショッキングな宣言だとか、知波単の「この命を懸ける!」とか、この短期間で起きた色々な精神的なもにょもにょするフラストレーションを全力でYA☆TSU☆A☆TA☆RI☆ミした結果、IS-2の残弾と引き換えに敵戦力は潰走。パーシングのミミミは初手全力で逃走したんでどうにもできなかったが、代わりに攻めてきたチャーフィーとT-34は撃破できた。敵部隊は合計で20輛なので残りは18輛。対してこちらはカチューシャ、クラーラ、ニーナたちの3輛とアリサナオミおケイさんの3輛の6輛+黒森峰赤星隊5輛のうち3輛が生きのこったことになるので9輛。みぽりんたちの部隊と合わせると35輛。一応まだギリギリ倍の兵力差がある。
―――が、ちぃーーっとも安心できなくなってきた件。ええい!島田の戦車道娘は化け物か!!
そんなこんなな内心の叫びを押し殺しつつカチューシャの戦車に乗り込んでみれば、「私不機嫌ですけど」オーラが周囲に垂れ流されて車内の空気が御通夜ってレベルじゃねーぞ!な世界がこんにちわである。
察しの悪い転生主人公とかは「何で?」って思うだろうし口に出すだろう。だが、このガルおじ道〇〇年。転生してもまだガルおじ道の俺、天翔エミは一味違うのだ。この程度の不機嫌、何が原因か一発で理解できると言えよう。
―――ごめんねカチューシャ!そらそうよね。
俺などというモブが乗り込むよりノンナがこっち乗ったほうが良かったよね!!ノンカチュ的に考えて!!
死を賭して盾になろうって決めたノンナの劇場版屈指のかっけぇシーンから奇跡の生還!これは感動的なノンカチュてぇてぇですわぁ……になるべきはずのタイミングでめっちゃ無粋に邪魔してしまったよね本当申し訳ない!これは責任問題として定義すべき議題と言えよう……!!本来ならノンナが乗り込んできて感動的に抱き合ったりするとこだよなぁ……そう思うだろうアンタも?
―――とりあえず「(ノンナじゃなくて)ごめんね?」と謝ってみた。
不機嫌オーラが倍増した。
これアカンやつや節子。いやごめんね!マジごめんね!今俺なんぞよりノンナと顔逢わせてお互いの無事を称えたいよね!本当にごめんね!?全部終わったらケジメるから許して!!
―――気分を変えるために思考を試合に切り替える。愛里寿はまぽりんが抑えている。二人ともまだ前哨戦なのだからそこまで無茶はしないだろう(希望的観測)
そのうえで、できればカールを無理くりにどうにかしておきたい。原作ではミカァ!の獅子奮迅の活躍と、会長とチョビの合わせ技でものすごい力技な倒し方で勝ったけれど、フィールドが違う現状、おなじ倒し方ができるとは考えにくい。だがカールの撃破方法なんぞどうすればいいのやらといった状態。頼みの綱になりそうなのはカチューシャ隊のかーべーたんとウチのヤークトでパワーで押し切るくらいしかない。幸い確かカールの装甲板って非装甲処理されたただの鋼板で、厚さも10mm程度のホントにただの鉄板みたいなものだったはずだし、128㎜なら悠々突き抜けて致命傷を与えられるはずだ。
―――頭使い過ぎて色々壊れそうだわ……のんびり静かにみほエリとかその他を生暖かく見つめて余生を過ごしてぇよなぁ俺もなぁ……。
あと10年くらいで燃え尽きるらしいけどな俺!(他人事感)
******* Emi → Miho
「―――隊を2つ、もしくは3つに分けましょう」
私の言葉に最初エリカさんは難色を示していた。
エミさんからの連絡で残存車輛は相手の約2倍の数だということは計上できた。けれど戦力の差や今後の方針を考えるうえでどうしても切り離せない問題が出る。
“将”が多すぎる。
大同盟と銘打って盟主として大洗が陣頭指揮を執っているけれど、お互いのスタンスと各陣営の被害の具合で指揮系統に乱れが生じる。ケイさん、カチューシャさん、エリカさんにお姉ちゃん、ダージリンさん。各陣営の隊長・副隊長の持つ自分たちの戦術眼ごとに各陣営への指示もバラバラになってしまう。その隙を許すほど甘い相手じゃない。それは島田愛里寿ちゃんの姿を見たあの時に肌で感じた。
「今のままだとお互いに作戦指揮がぶつかってまともに運用ができません。各陣営の小隊長以下へと指揮下に敷くことで隊を運用できると思います」
「……確かに、今のままだと隊が空中分解しかねないけど……」
数の上で勝っている状態から隊を分散せざるを得ない状態に、エリカさんの逡巡もわかる。今の状況は大軍を運用する将としては愚策も愚策と言える最悪の展開だから。
「―――もしもあちら側が部隊を各個撃破するために戦力を集中させるなら、フリーになった部隊にカール自走臼砲を撃破に向かってもらいます。相手が部隊を分けて当たってくれるなら、数の利を生かして戦いましょう」
「……そうね。今のままじゃそれ以上の作戦はない。か……」
最終的にはエリカさんも納得してくれたので部隊の振り分けに入る。
各隊長格の作戦能力と戦術を鑑みて、お互いの主張が重ならないように吟味しながら、空を見上げる。
曇天の空は雨になりそうでならない、嫌な空模様でまるで今の自分たちのよう。
「―――お姉ちゃん……エミさん……」
思わず口をついて出る言葉には、自分の弱さが外に出ているように感じられた。
******* > Miho → Others
――― 一方で、西住まほと島田愛里寿の方は
死闘 と呼ぶことすら生ぬるい激戦の様相を呈していた。
雑木林を駆け抜けるセンチュリオン。停車と発進を繰り返したチェンジオブペースで駆け抜け照準を定めさせない愛里寿を相手に、最小限の動きで狙撃を狙うまほ。お互いの車体には避弾経始で殺しきれなかった被弾痕が刻まれている。
互いにノーガードとは言わない。が、どちらも退くことはなく強い殺意を剥き出しにした二匹の獣が牙を突き立てようと接戦を繰り広げていた。
互いに考えていることはひとつ。
“ここでこいつの息の根を止める”
奇しくも一致したお互いの想いはお互いを殺す殺意に変貌し、互いに己のダメージを考慮しない殲滅戦へと転化した。お互いの搭乗員は隊長を信頼し心酔し、そして互いに「己の隊長こそ最強だ」という自負を持っているため止める人間などいない。どちらが先に潰れるかのチキンレース。デッドヒートは苛烈さを増していく。
そこへ―――
ドォンと空を裂く音が響き、二人の戦場の脇を抜けて立木のひとつにぶち当たり半ばから圧し折って見せた。
クラーラの指揮するT-34/85が雑木林を抜けてゆっくりと現れる。 衝撃と新たな乱入者に動きを一度止めた二人の前にクラーラとノンナが顔をそろえて姿を見せた。
「―――貴女らしくもないですね、西住まほ。こちらの状況は終了しました」
「そうか。少し待っていてくれ」*1
変わらず戦闘を再開しようとするまほのティーガー1の至近距離に、T-34の砲弾が着弾する。
「―――何のつもりだ?」
「それはこちらのセリフです。カチューシャから『マホーシャを連れて帰れ』と言われています」
「……関係ない」*2
ただ目の前の
「貴女のその有様を見て、エミーシャはどう思うでしょうね?」
「……エミなら理解してくれる」
「そうやってエミーシャに寄り掛かっておんぶにだっこが貴女の真実ですか、そうですか本当に救いようがないですね」
冷ややかな瞳を向けるノンナとクラーラを尻目に戦いを続けようとするまほと愛里寿の後ろから
「姫様~?こっちも撤収してくださいってさー」
履帯の音を響かせて愛里寿の後ろから現れた新手が今度は愛里寿に声をかける。
無言でまほを睨みつけていた愛里寿がその声に反応し、やがてふいと視線をまほから切って踵を返した。
まほは動かない。愛里寿の後ろから現れた戦車が自分を狙っているから
「―――次は潰す」
呟くような宣言に、まほは視線のみで返した。
まほは、愛里寿ともう1輛の戦車が消えるまでその姿をじっと見つめていた。
「―――では戻りましょう。カールの砲撃が飛んでくるかもしれません」
「―――待て」
みほたちのところに合流するために旋回するT-34の上のノンナをまほが呼び止めた。訝し気な視線を返すノンナに、俯いた表情のままのまほは、しばらく黙ったまま……
どうにかこうにか、絞り出す様に言葉を捻り出す
「―――その……やはり、怒られるだろうか……?」
「―――私に聞かれても知りませんよ」
これが我々を真に恐れさせた“虎”なのか と、脱力感とともにクラクラとした眩暈を覚えるノンナだった……。
なお、まほのティーガー1の惨状を目の当たりにしたエミの様子に激レアも激レアな“狼狽え続ける西住まほ”の姿にただただ困惑し放心する西住みほの姿があった。
> Emi
なんで?(絶望)
なんでティーガーⅠボコボコのボコになってるん?これどうするの?まぽりんこれ戦えるの?ヤバない?ヤババない??まぽりんとみぽりんのタッグでどうにかこうにか愛里寿を撃破せんと勝ち目なくない?
あ、でも今回負けても俺の去就以外に問題はない……のか……??
> ???
林を抜けて、丘状に陣取る一団に合流する二つの車輛。
かたやダメージを引きずるセンチュリオン、島田愛里寿。
それなりにボロボロの様子のセンチュリオンを見て泡を吹いて卒倒しそうなほどのショックを受けた副官の三人に「しばらく休んでてくださいね!!」と強い調子で言われ、センチュリオンのメンテナンスと補給のために自陣にひっこむことになった愛里寿。
なお強い調子でお説教されしゅんとなる愛里寿に内心で庇護欲と忠誠心を噴き出しているのが副官ズである。
そんな様子を呆れたような表情で見遣るのは先導をしていたもう一つの車輛から顔を覗かせるもう一人の隊長格。
「それで?作戦は?」
その女性の声に副官の一人、ルミがコホンと咳ばらいを一つ。
「―――隊長が選んだ貴女を信頼して、ヨーグルト学園の部隊のうちひとつを預けます。隊長の読み通りなら、寄せ集めの烏合の衆になることを危惧して隊を幾つかに分けて運用するはず。各個撃破のために我々は3輛で動きます。任せましたよ?」
隊を預けると言われた方の女性はプラチナブロンドの髪を揺らして、
―――仰々しくお辞儀をして見せる
「お任せあれ。信頼に応えてこその―――英国淑女ですから」
漆黒のカラーリングを施されたクロムウェルに乗り込み、傍らのカップを手に取りくっと飲み干す。
「―――さて、お馬鹿な後輩たち。貴女の罪を暴きにいきましょう」
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ひ、ひさしぶりー?げんきだった?(震え声)
展開進まなくて本当申し訳ぬぇ……
でもあと多分3話くらいで(このルートは)終わる予定