【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
~カナダ出身の女優メアリー・ピックフォードの言葉~
―――Side Emi
─月─日
ぼくは いま
おおあらいにいます
みぽりんとるーむしぇあです
なんで?????????
********
―――朝5時手前。トレーニングに出るかどうかという時刻。まだ眠っていた俺の部屋のドアが微かにノックされた。
「―――エミさん。今、いいかな?」
こんな朝っぱらにわざわざやって来る理由が全く思いつかない。が、みぽりんの最近の精神状態は俺を気にしてマイナス方面に吹っ切れてるところがあるように思える。とりあえずカウンセリングの真似事で話を聞いておこうと、ドアまで行って内鍵を開けた。
「―――鍵は開いてる。入ってきていいよ」
一先ずパジャマの上から上着を羽織るだけのラフな格好でみぽりんをお出迎え
―――??
「―――おはようエミさん。単刀直入に言うね。
―――駆け落ちしよう!」
――――――はい?(右京さん感)
スゴイ=ガタイノイイ=オトナを連れて現れたみぽりんがそう言って俺を躱して部屋の中へ。そしててきぱきと持って来た段ボール箱と新聞紙を広げて部屋の中のものを梱包して詰めていく―――
―――え?何で?(困惑)
どういうことなの……(困惑倍増)
わけがわからないよ状態の俺を他所に、もともと荷物の少なかった俺の部屋はさっぱりと片付き、荷物はすべて荷造りされて運び出されていた。
呆然とする俺の肩に手を置いてから、みぽりんが急かすように手を引っ張って俺を連れて外へ―――
―――何で?(二度目)
外にはやったらゴツい感じのトレーラーが横付けしていた。コンテナの中は居住スペースと荷台になっていて、荷台部分に俺の部屋から運び出された荷物が積み込まれている。
「―――みほ、急げ」
「うん。わかったよお父さん」
―――今お父さんって言った?言ったよね?あなた恒夫=サン!?恒夫サンナンデ!?(困惑上限) 事態は俺を完全に置き去りにして進み、もう何がなんだかわからない状態でただただ状況に流されるだけだった俺は―――
―――みぽりんに手を引かれるまま、黎明の時刻に熊本の地を後にし、遥か東の果て茨城県大洗町へとトレーラーの荷台の中で揺られていくのだった。
―――【何やってんだよミホぉぉぉぉぉ!!!】と叫ばなかっただけ、自分自身の忍耐をほめてやりたいと思った(現実逃避)
「俺はただみほエリが見たかっただけなのに 三次 」
【 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ・急の章 】
―――Side Darjeeling
―――聖グロリアーナ女学院。英国淑女たれ、かくあれかしと教養と気品、礼節にて育成されるいと麗しき淑女たち―――
―――しかし今、彼女たちの表情はやや精彩を欠いていた。理由はただ一つ
「―――ダージリン様は、今日もお出でになられませんの?」
「お労しい……あの方に一体何があったというのでしょう……?」
紅茶の園の扉の向こうは、一般生徒たちは立ち入ることができない。彼女たちは想像を膨らませることしかできない―――
聖グロリアーナ現筆頭ダージリンが、紅茶の園の分厚い扉の向こうから出て来なくなって……もう早くも半月が経過しようとしていた―――。
*******
「―――ダージリン様。紅茶が入りました」
オレンジペコの言葉に、のろのろと身を起こす。今は何時何分で、あれからどのくらいの時間が流れてしまったのか―――もう、ヨクワカラナイ。
ゴールデン・ルールで淹れられた紅茶は、カップの中でふわりと香りを膨らませ、私の気持ちを幾分かだけでも和らげてくれる。
―――けれど、私の気持ちは深く沈んだまま―――
―――泥の中に沈み込んでいくように、重くて、辛くて、身体が持ち上がらない。
「―――気分を変えてみましょうか!今日は良い天気ですし、日差しを入れるのもいいかもしれません」
オレンジペコは精一杯気を使って私を持ちなおそうとしてくれている。ありがとうオレンジペコ。
でもごめんなさい―――今の私は―――
よもや自分がここまで深刻なダメージを受けてしまうなんてことは、考えてもみなかった―――思えば当然の話だ。
私は今まで「求めたものを手に入れる為に全力で挑み、そして勝利してきた」。グロリアーナの名の如く栄光ありきの人生を歩んできた。初めて思い通りにならなかったのは彼女。天翔エミ―――!あの娘とあの娘が周囲に巻き起こす様々な弊害は、私にとって無視できないものであったけれど、何故か彼女には勝てなかった―――。
その彼女に敗北したままで、彼女はまるで最初から存在していなかったかのように消え失せてしまった―――その喪失感たるや……予想などしたことがない。
復讐を抱き続けるのも、執着を持ち続けるのも、全てエネルギーが必要になる。長い年月を過ごすうちに憎しみが薄れてしまうのも、エネルギーが足りなくなるからと言える
―――ああ、だとすれば私はきっと―――
―――私はきっと「忘れたくない」のだ。彼女のことを、天翔エミのことを、彼女に感じた感情を―――この命を身体を維持するエネルギーを代替えにしたとしても―――
私の消沈した無様な姿に、アールグレイ様は憤慨して席を立ち、去っていった。紅茶の園のOG会は混乱から静謐を取り戻し、再び活動を再開した―――
―――そうして私が無気力で在った間に、ほぼ掌握しかけていた盤面は、元の木阿弥に戻ってしまっていた―――。
**********
―――Side Free
「―――あんなダージリン様、見ていられませんわ」
「ローズヒップさん……それでも、ダージリン様は、ダージリン様です」
紅茶の園の扉の前で、一年生二人がそんな会話をしていたのを聞きとがめたのは―――
「―――ごめんなさいね、ローズヒップ。オレンジペコも」
『―――アッサム様!!?』
やや疲れた顔で、ここしばらく姿を見せなかったアッサムが、二人の前に顔を出していた―――。
「―――少し待っていてね。世話の焼ける同級生を―――叩き起こしてくるから」
そう言って二人を置き去りにしたアッサムは、紅茶の園の扉を開けて、中に入っていった。
重厚な扉が閉じ、内鍵が掛けられる。もはや中の様子は全く分からない。
二人は、これから中で何が起きるのか、どうなってしまうのか、ただ天に祈ることしかできなかった―――。
*******
「―――ダージリン」
「…………アッサム……?アッサムなの……?」
英国風のテーブルに備え付けらえた大きな背もたれの椅子に力なく座り、背をだらりと預けた姿勢でいたダージリンは、僅かに瞳を揺らしてアッサムの方へと顔を向ける。やややつれた様子の表情のところどころには疲労の跡が色濃く残っていて、幽鬼もかくやという生気の無さだった―――。
「―――ごめんなさいアッサム。こんなみっともない姿で……」
「―――そうね。殊更にみっともないわね」
さらりとそんな風にダージリンに嫌味を言える。それがアッサムとダージリンの関係の証左である。
アッサムは持って来た手提げ袋から魔法瓶を取り出し、カップになみなみと注いで、目を伏せて顔をそむけるダージリンに差し出した。
「―――ほら、これでも飲んで」
「―――ええ、そうね―――」
アッサムからティーカップを受け取ったダージリンは少し伏し目がちなままカップを傾け―――
「――――ッッッ
飲みかけていた『黒い液体』を盛大にテーブルの上にぶちまけた―――。
「―――あ、あっさむ……これ……なに……?」
「―――ご存知の通り――――――――珈琲ですけど?」
プルプルと震えるダージリンに、渾身のドヤ顔でふんぞり返るアッサム。
「あ、アッサムぅぅ……こ、紅茶の園の伝統と、格式を何だと思って―――」
「何が格式と伝統よ。そんなのただの建前で、自分がただお砂糖とミルクなしで珈琲が飲めないのが格好悪いだけでしょう?貴女」
未だ立ち上がることもできないでいるダージリンに、言いたい放題に言葉を叩きつけるアッサム。両者の力関係は今、完全に逆転していた―――!!
「―――私、貴女がそんなザマなせいで今ね、すごく、すごく大変だったの。
わかる?諜報局の仕事をこなしながら、紅茶の園のお歴々相手にオレンジペコのフォローに回って、下級生が貴女を心配しているのを宥めて回って―――
―――ええ、大変だったわ。これまでそんな大変なことを片手間に済ませてきた貴女の大きさを改めて理解できた」
ダージリンはまだ立ち上がることができない。長く無気力で居た反動は、本人の思った以上に体を蝕んでいた。そんなダージリンの様子を一瞥して、アッサムは言葉を続ける。
「―――貴女が今までそうあれたのが貴女の心の在り様だったのは今までの有様で理解できた。だからこそ―――
立ちなさいなダージリン。その
*******
―――Side Darjeeling
「 立ちなさいなダージリン。その
―――心が震えた。今まで私のことを上に据えて、一歩下がっていた彼女に、どこか同級生として、紅茶の園に入ったばかりのころと違った立ち位置のような、線引きを感じていた―――それがまるで壁のように感じていた。
―――トップに立つとはそういうものだと思っていた。
―――だからだろうか?私を『フッド』と呼び、私の立場など何処吹く風で対等に接してくれる彼女と居るのが心地よかったのは―――
慕ってくれる人たちは多い。尊敬する上級生も多くいる。
でも、私の立場を気にせずに、対等に接する常識なしは、彼女しかいなかった。
―――それを理解したために、目の前の友人は己の矜持を押し曲げて、対等の立場に立って私を叱咤してくれている―――!!
―――動け、私の身体―――過去に縋りついて無様に蹲るなんて―――
―――――
―――よろよろと、生まれたての小鹿か何かのような足取りで立ち上がる。テーブルに手を付き、暫く最低限にしか動かしていなかった身体が老人の様にギシギシと軋みを上げていた。
立ち上がり、真っ直ぐにアッサムの目を見返す。力強い生気の宿った瞳で。
「―――ごめんなさいねアッサム―――、本当に、本当に迷惑を懸けてしまって……」
「―――構いませんわダージリン『様』、それが私の務めですから」
テーブルの上に残った真っ黒い液体が半分以上入ったままのカップを手に取り、思い切りぐいと飲み干す。
苦みの走った中に、不思議と優しく深みのある暖かい味わいに―――
「―――美味しい―――」
そう、口に出して、思わず手で口元を抑えていた。
私の様子にアッサムはクスクスと笑っていて、なんだかバツが悪い私は、誤魔化すように「どこかの名のあるメーカーのものなのかしら?」と言うと、
「―――その珈琲のレシピはね、もぬけの殻になってた天翔エミの部屋で見つけたのよ。彼女のオリジナルブレンドみたい」
そう言って、また笑って見せる。
私が動けなくなるほどの痛みを与えて置いて、しれっと私を復活させる。いなくなっても本当に自分勝手な猫のような娘だこと―――。
―――ええ、感謝しておいてあげますわ、天翔エミ。貴女にも、
私をもう一度立ち上がらせてくれたアッサムにも、私の快気を待ち続けてくれたオレンジペコにも、私を見捨てないで居てくれたローズヒップにも
―――私を
さて、まず最初の一歩目ね―――。
「なまった身体を、鍛え直さないと―――アッサム。オレンジペコとローズヒップを呼んできてちょうだい」
「ええ。仰せのままに―――」
部屋を出ていくアッサムを尻目に、カーテンを開けて窓から差し込む陽光を仰ぎ見る。疲労の濃い体にはそれだけでも毒なのか、やや眩しすぎて痛いほどだが―――
気合を入れなおすにはちょうどいい―――!!
―――待っていてあげますわ。天翔エミ!
何を一人で完結して悲劇のヒロインの様に蹲っていたのか、彼女が逃げ出してそのまま消えていくような無様な負け犬の【はずがない】!!
たとえひととき戦車道から背を向けても、きっと貴女は捨てきれない。戦車道と向かい合い、再び立ち上がり駆けあがってくる―――!!その時にこそ、
もう一度!心から語り合いましょう!!
貴女に言いたいことがある。伝えたかった想いがある。だから、帰っていらっしゃい。私に倒されるために―――!!
**********
―――Side Emi
──月──日
みんなでショッピングだ!大洗たのちぃぃぃぃ!!!!
お互いの立場も内心も、わかるはずはない。
とはいえ客観的に見たらこの状況のエミカスは殴りたい(お目目ぐるぐる)
あ、ダージリンが珈琲は砂糖とミルクがどっぷり入ったカフェオレオレ()しか飲めないのは中の人の妄想です。悪しからず()