【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
ライスちゃん育成せな……()
久しぶりのリハビリなのに全く登場しない主人公がいるらしい()
【 西住みほの葛藤 】
>> Miho
隊の再編成が終わった。
カチューシャさんのところにノンナさんクラーラさんのT-34、ニーナさんのKV-2に加えてポルシェティーガーのレオポンさん。
ケイさん、ナオミさん、アリサさんのシャーマン軍団にウサギさんチームのM3リー。
アンチョビさん、ペパロニさん、カルパッチョさんのアンツィオ軍団にカバさんチームの三突。
黒森峰はエリカさんと赤星さんを筆頭にした1チーム。
わたしたち……大洗はカメさんを筆頭に、カモさん、アヒルさん、アリクイさん
あんこうチームは全体のバランスをとるために中継点に。
チームメイクを辞退した継続高校と、整備を終えたばかりのダージリンさんたち聖グロリアーナは後方待機をしている。
そして独立小隊としてお姉ちゃんとエミさんとフリューゲル隊のみなさんが遊撃に回ることでチームアップを図る。
小隊規模に別れた面々が散開して動き、ぶつかった場所から敵陣形を割り出して遊撃隊や付近の味方が合流して撃滅する。出会い頭に戦闘が起こるから、『こっつん作戦』。
島田流を相手にするには心もとない作戦かもしれない。けれどカール自走臼砲がある限り、陣形をまとめて攻めあがることはできない。少数精鋭による小隊編成でぶつかって、カールの位置を割り出して真っ先に撃破しなければ、勝機も見出せない。
その件のカール自走臼砲は今のところ沈黙している。意味もなく連発すれば位置を特定されてしまうからだと思う。
でも、それにしたって―――
「静かすぎる……」
口元に手を当てて、スロートマイクが誤起動しないように思案する。
静かすぎるんだ。あまりにも……
じりじりと自分たちがまるで追い詰められているような感覚。本当にこの作戦で対抗できているのか?そんな風に考えてしまう。
【自分に自信が持てない】 それが私の最大の欠点。
自分が出した結論で、自分が考えた判断で、私はいつも失敗を繰り返している。
―――そしてその失敗は、いつだって他人を危険に晒す。
黒森峰での失敗。エミさんの言うことを無視して赤星さんを危険に晒し、黒森峰も壊れかけた。お姉ちゃんはエミさんを失って、エリカさんとお姉ちゃんで必死に繋いで黒森峰の崩壊を食い止めた。
聖グロリアーナとの練習試合。練度の足りない部隊を率いての戦いで、あと一歩届かなかった。途中、路地の果てに追い詰められたときに会長が、エミさんが助けてくれなかったらそこで終わっていた。
戦車道高校生大会、二回戦。
アンツィオ高校を相手に、アンチョビさんの作戦にハマって大苦戦を展開した。
エミさんとカバさんチームが居なかったら―――。
準決勝。因縁のプラウダ戦。
周囲の意見を跳ねのけきれず速攻を行った結果、包囲殲滅の危機に晒された。敗北=廃校・廃艦という話を聞いていただけに本当に今すぐ消えてしまいたい程に自責の念を感じた。
優花里さんが、麻子さんが、エルヴィンさんが、園さんが、みんながいなかったら―――きっと―――……
決勝戦。黒森峰の戦術は頭に叩き込んでいた。
お姉ちゃんの性格はわかっていた―――はずだった。想定通りにお姉ちゃんをエミさんがひきつけて抑え込み、作戦通りに市街地を決戦場に仕込み、そうして袋小路にフラッグを引きずり込んで―――
―――私の戦術は読み切られていた。
追い込んだはずの私は追い込まれていて―――カメさんのヘッツァーが救援に来てくれなかったら私は二正面作戦を余儀なくされて討ち取られてしまっていたに“違いない”。
―――私は間違えてばかりで、そのたびにみんなに助けられて今こうして立っている。
そんな私が、他の学園艦の戦車道メンバーを代表して采配をとっている現実に、押しつぶされそうになる―――
私なんかより……お姉ちゃんのほうが―――
『―――ぇる!?
聞こえてんのミホーシャ!!敵車輛発見よ!!』
「は、はいっ!!」
思考を打ち切る鋭い声に身をすくませて返事をしていた。少し声が上ずってしまったのか、通信の向こう側のカチューシャさんの声がやや苛立っている。
『ボーッとしてんじゃないわよミホーシャ!!敵・車・輛・発・見!!』
「―――すいません。敵車輛の判別をお願いします」
思考を切り替える。雑念を一度振り払って集中を高めると、通信機の向こうでもやや落ち着いた様に見えた。
『
通信機の向こうでは砲撃の音がやや大人しいが響いている。小規模なぶつかり合いによる戦闘行動で頭の中のマップを更新する。広げた地図のポイントに敵車輛の種類と、数と、自分たちの陣営を書き記していく。
「―――敵車輛の数が少ないのが気になります。伏兵に注意してください」
『そんなのミホーシャに言われるまでもないわ!こちとらプラウダの指導者、無敵のカチューシャ様よ!!』
『大船に乗った気で任せておきなさい!』と自信満々に言ってのけるカチューシャさんが、少しだけ羨ましくて、そして自分の自信のなさが再びむくむくと鎌首をもたげてくるような感覚に、私は小さくかぶりを振った。
「みぽりん!サンダースの皆の方からも通信!!」
カチューシャさんが通信を終了すると同時に、沙織さんから報告が入る。同時に通信機から砲撃音。
「ケイさん!!アリサさん!!ナオミさん!応答を!!」
『オフコース、ミーホ!今のところ問題はないわ!ただちょーっと、ジリジリ押し込まれてるの。―――ポイントはヒトヨンヒトマル!敵車輛は2輛!どっちもM26!!』
ケイさんから通信が届く、と同時に砲撃の音が響き、それにかき消されないようにかケイさんがやや声を張り上げるようにして通信を飛ばしている。
M26パーシング―――アメリカが第二次世界大戦末期にドイツ戦車ティーガー1に対抗するために造りあげた中戦車*1。機動力と装甲、十分な火力を持つ、最強ではないけれど十分すぎる優秀な車輛。
『今はとりあえずしのいでるけど、残念ながらスペックの差がありすぎてこっちからも手が出せないの。M3リーを護るので精一杯。』
『ああもぉ!!こっちはM4なのよぉ!!なんで上位互換と戦わなきゃいけないの!レギュレーション考えなさいよぉ!!草野球にマーくん連れてくんなぁ!!!』
ケイさんの回線に割り込むようにアリサさんの悲鳴染みた喚き声が響く。M4シャーマンの発展形であるパーシング相手では、流石のケイさんたちでも苦戦しているようだった。
『――距離はそこそこあるけど、こいつらぶちのめしたら合流できるわ!ミホーシャ!エミーシャをよこしなさい!三人がかりで3方から砲撃すればマチルダの盾なんか意味ないわ!瞬殺よ!』
『ふっざけんなぁ!!そんなことするくらいなら最初からこっちに天翔エミを寄越しなさいよぉ!!それならヤークトが来てくれるまで耐えしのげばいいだけのミッションになるじゃないのぉーー!!』
意気揚々と声を上げるカチューシャさんと、それに反論するアリサさん。二人の言い分はどちらも真っ当で、どちらを片付けるのが先かの問題に過ぎない。カチューシャさんたちもケイさんたちもどちらも攻めあぐねているだけ……。
でも、それはとてもたくさんの負担をエミさんにだけ強いることになる―――。
カチューシャさんたちには余裕がある、ケイさんたちには余裕がない。
でも、エミさんを迂闊に動かすことが相手の戦術だったら……?
思考がグルグルと渦を巻く。時間は刻一刻と流れている。まんじりとしているだけじゃどちらも成り立たなくなる。けれど決めあぐねてしまう。自分の決める方向に自信が持てない。どうしたら―――
『―――よろしいかしら?』
不意に回線に割って入ってきたのは、ダージリンさんだった。
『少々、気づいたことがありますの。確証を得たいのでグロリアーナ隊は単独行動に出ます。つきましては、天翔エミをお借りしますわね』
『ちょ……何を勝手に―――』『ざっけんなぁ!!こっちは死活問題で―――』
「ダージリンさん?!」
声を荒げるカチューシャさんとアリサさん。二人と一緒に驚きの声を上げる私に全く我関せずで『ではごきげんよう』と一言残して、ダージリンさんは通信を打ち切ってしまった。
「ど、どーするのみぽりん!?」
「え、えっと……とにかく、カチューシャさんとケイさんたちの地点に、近くを哨戒してる他の皆さんに援護の通信をお願いします。それと、エミさんとダージリンさんに通信を―――」
ダージリンさんにすぐに連絡を取ろうにもカチューシャさんもケイさんアリサさんも見捨てられない。その分どうしても対応が遅れざるを得なくて……
―――その間にダージリンさんは、エミさん(と、お姉ちゃん)を連れて悠然と前へと抜け出していた。
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> others
ゴルフコースの間の森を抜けた先にある開けたフェアウェイの上。
そこに座して動かず、通信機を片手にチェス盤を戦車の上に載せて駒を弄んでいる女性が一人。
通信機からの報告を受けてにこやかな笑顔で駒を前進させる。
「……サンダース側かプラウダ側、どっちでもいいけど、もし天翔エミが現れたらもう片方にミミミを向かわせてね。それだけで
ニコニコと笑顔で、えげつない発言を通信機に雑談するようなテンポで語り掛ける女性は、近づいてくる車輛の音に反応して顔を上げる。
「―――ごきげんよう、アールグレイ様。お紅茶はいかが?」
「―――生憎と試合中なのよ。終わったら戴くわ」
お互いフェアウェイ上で、必中だが必倒ではない距離で立ち止まり、戦車の上から顔を覗かせる二人の淑女。ニコニコと笑顔を振りまきながら水面下ではバチバチと火花を散らしている。
「―――よもや言葉通りだとは……*2」
「あら?信用して付いて来たのだとばかり」
憮然とした表情のまほと、その言い様にショックを受けたような言葉をすまし顔でさらりと流すダージリン。
「―――陣形の展開、カチューシャとサンダース隊とも敵のぶつかり合い。聞いた時点で思いつきましたわ。貴女の得意な戦術でしたもの。
“ブランデー入りの紅茶”作戦―――でしたわね?」
「御名答」
したり顔でにやりと口元を歪めて見せたアールグレイは、自分の手に持ったティーカップの上にティースプーンを乗せて見せた。その上に角砂糖を置き、ブランデーをたらりと落して角砂糖をブランデーの色に染め上げる。
「ブランデーで作るティーロワイヤルはね。スプーンの上で作って紅茶に流し込むのよ。角砂糖は防衛陣。ブランデーはあなたたち」
火口箱から火元を取り出し角砂糖の上にそっと添えると、色鮮やかに角砂糖が燃え上がった。角砂糖にしみ込んだブランデーが発火し、熱量が角砂糖を溶かしてカラメル状に溶けた砂糖はそのままトロトロと紅茶の中に堕ちていく。
「勿論紅茶は私たちの本命。じわじわと時間をかけてる間に引きずり込まれ、後は美味しく飲み干すだけってね」
アルコールが飛ばされてブランデーの香りだけが仄かに香る紅茶をくっと飲み干して、にっこりと微笑むアールグレイにダージリンは微笑みを返す。
「ですが―――そうはなりませんわ。そのためにわたくしたちがここにおりますの」
「ええ。“想定済みよ”」
アールグレイはそう言い放って車内に“踏”を送る。ミーティアエンジンの音を響かせてクロムウェルが戦闘速度へと推移していく。
同時に、歌うように両手を広げた大仰な態度のアールグレイに呼応するように、重低音のハーモニーを響かせるもうひとつの無限軌道の音。
「角砂糖はわたし、ブランデーは貴女たち。そして“これ”が、
―――ド本命の紅茶というわけだ!!」
ゴロゴロと地に響く様な音を立てて現れたのは、パーシングと同じくドイツの重厚な超重戦車マウスを駆逐するために設計されたが、開発時期を逸したため試作機が2輛しか開発されず、その後の設計計画も頓挫したと言われている105mmm砲を備えた超重戦車―――
―――T-28重戦車だった。
> ???
地響きにも似た駆動音を響かせるT-28の車内。
学芸会の演劇で宇宙人役の子供がつけているような頭飾りを頭の上でフリフリと無邪気に揺らして首を楽し気に左右に振っていた女性は、車外の様子を車内で眺めながら―――
「―――フヒヒッ……驚いてるおっどろいてるぅ~~♪
さぁ、西住まほォ……天翔エミィィ……
あんときの延長戦、や・ろ・ぉ・ぜ―――!!」
心底愉しそうに、にたりと口元を歪ませたのだった。