【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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 エミに出会って、色々なお話をした。

 エミのこと、黒森峰のこと、大洗のこと

 私のこと、戦車道のこと、学校の授業のこと





 エミの人生は、戦車道のためにあった。


 その生き方は、まるで西住か島田のようだった。



 「何でそこまで頑張って戦車道ができるの?」

 私はそう尋ねたことがある。

 私は島田の後継者として、西住まほさんは西住の後継者として、
 互いに家のために戦車道をせざるを得なかったし、流派の後継者として拙い所作など見せられなかったという事情がある。けれどエミにはそれがない。
 私が訪ねると、エミは困ったような照れたような、感情が上手く読み取れない複雑な苦笑いにも似た表情で―――



 「―――どうしようもなく、戦車道が好きなんだよ」



 ―――そう、言った。

 羨ましいなぁ。と素直に思った。


「愛里寿にもあるだろ?―――これになら文字通り、命を懸けるくらい本気になれるものがさ」


 そう言われて自分を振り返ってみる。

 ―――ボコられ熊のボコだろうか?と、答えが浮かんだ。
 答えに窮している私に、エミは優しく頭を撫でてくれた。


 この時間が、私はたまらなく大好きだ―――。


 けれど、いつも時間は無常に過ぎる。お別れがやってくる。

「じゃあ愛里寿、また今度」
「……うん、また今度ね。エミ」


手を振って、別れた。



 **********



 島田の家で、島田千代は深く思案に耽っていた。

 天翔エミ。黒森峰を飛び出した少女で、愛里寿が最近楽しそうに語る少女。
問題は、彼女が元黒森峰の人間であるというだけではなく、あの西住流、西住まほの懐刀だったという点。

 西住流からの刺客ではないのか?という者もいる。

 逆に、西住流から出奔してきた有能な人材だ。という者もいる。

 賛否は両論で、取り入れるか、排除するかも二極化。

 現在に至っても、答えは出ていない。おりしも高校生大会が開かれるのだから、その結末を見てからでも答えは遅くはないだろう。千代はそう結論付けて、成り行きに任せることにした。島田は変幻自在の流派。状況に対して臨機応変に対応することが強みなのだから、今は静観の構えを崩さず、懐柔ならば西住流にもアクションが必要だし、排除ならば彼女に直接会う必要があると考えていた。




 なお、その決勝戦での西住まほの『もう一度やり直そう!黒森峰でともに歩もう!!私がエミを護ってみせる!!約束する!!』に島田流がめっちゃザワつくことになる未来を、島田千代はまだ知らない。





【 まほルート 第二十四話 (難易度が)インフィニティ 】

「母上、どうでしたか……?」

 

 戦車道高校生大会決勝の試合後、エミが倒れたという知らせを受けた私は湧き上がってきた感情を抑えきれずに表情を崩して涙をこぼしていた。あまりの豹変ぶりに傍で控えていた三人が狼狽えてオロオロと周囲をせわしなく歩き回るだけの徘徊者になってしまったほどに。

 そうして、感情を落ち着かせる間もなく焦った様子で母上に電話をかけた私は、兎に角エミの様子を知りたくて、「何でもするからエミの容態を調べてください」と母上に願っていた。

 

 

 

 その結果、知ることになったのだ。“エミがどれだけ酷使されていたのか”を

 

 

 

 子供ではあるが、エミの人となりは彼女と一緒にいる黒森峰の連中よりも理解している。加えて、エミから聞いたあの時の答えからもエミが好きで戦車道を続けていることも理解できている。

 

 けれどこれは理屈じゃない。彼女がここまで体を酷使しているのは黒森峰という環境のせいだ。それだけは変わらない。

 

 ただ愚直に戦車道を続けてきた少女の力に、西住流の少女も、黒森峰の少女たちも、皆一様に頼り集った。エミはその期待に応えようと必死に努力して、黒森峰をその小さな体に乗せたままずっとずっと支え続けて

 

 ―――そうして身を削って立ち続けたからこうなったんだ。

 

 

 

  何が『守って見せる』だ。白々しい!!

 

 

 心の奥で何かがグルグルと渦を巻いている。それを抑え込もうとするとより大きくグルグルと渦を巻いて、澱のように沈んで心の奥底に溜まっていく。

 

 ―――うまく眠れない日が続いた。

 

 

 

 

 “愛里寿にもあるだろ?―――これになら文字通り、命を懸けるくらい本気になれるものがさ”

 

 

 

 あの時のエミの言葉が―――耳から離れない。

 

 

 

 自分の命を懸けてでも本気になれるもの。それはきっと―――

 

 

 

 ********

 

 

 

 聖グロリアーナのダージリンが提案した『大饗宴』。それはエミの残り少ない炎の揺らめきを増し、同時に加速度的に短くしていく所業だった。

 エミがこの話を了承して、ダージリンにマッチングを任せたと聞かされた時に、私はエミが何を望んでいて、何を求めているのかを理解した。

 

 

  ―――エミは“己の身命を賭して戦う強敵”に飢えている。

 

 

 黒森峰との決勝戦。決着はつかなかった。西住まほも燃焼不足だったようだが、エミと語り合ったこと自体には満足しているらしい。「語るべきは語りつくした」と言っていた。と、エミから聞いた。

 

 でもエミはまだ満足していないんだ。

 

 西住まほと語り合って、ぶつかり合って、ダージリンの要請で各校を転々として様々な相手と即席チームで練習試合をして――

 

 

 

 

 

 ―――それでもまだ“足りていない”。

 

 

 

 

 

 ―――「だから、私が満足させてあげる。エミリ」

 

 

 

 

 天翔エミの“飢え”を全て受け止めて、そうして彼女だけが持っている不安。“自分が居なくなった後の戦車道”に対する答えも解消させる。

 

 

 

 天翔エミを縛っている強迫観念はきっと―――“先を征く者だけが持つ焦燥”だ。

 

 

 歩を進める皆への渇望。強くなる相手への敬意と感謝。それを食らいつくしてもまだ消えない“飢え”―――

 自分という存在が黒森峰の中核であり規範の根源であるという自覚から来る『自分という目標点の存在確認』―――

 

 

 エミは恐れている。『自分という目標を失った後の皆の迷走』を。

 

 

 エミは求めている。『自分を打ち破って新しい皆の目標となる人物』を。

 

 

 

 

 だから、私が代わりにそうなってみせる。

 

 

 

 

 エミの代わりに私がエミを打倒して、みんなも叩き潰して、そして皆が挑んでくる相手としてみんなの上に立つ。

 そうしたらきっとエミは安心できるはずだ。自分が居なくなった後のことなんか考えなくてすむし、もうこれ以上頑張らなくたっていいはずなんだ。

 

 

 

 ―――母上と約束をした。 “エミを島田に迎え入れる”という約束。

 

 

 

 西住よりも島田の戦術に合致するエミの偵察向けの身体能力に以前から目を付けていた分家の連中も、未だ真実を知らない分乗り気で居る。私という後継を補強する柱の一人としてエミを迎え入れる準備もできていた。

 

 エミの寿命という結末が出て来さえしなければ―――!!

 

 

 

『―――やーらーれーたーぁ!!?』『後ろに目でもついてるのかこのお子様はぁ!?』

 

“大洗女子! ヘッツァー、走行不能!! ”

 

 

 

 思考の合間にこちらに狙いをつけていたヘッツァーの砲撃を躱して、返す刀で沈黙させる。信地旋回と旋回移動を組み合わせて独楽のようにくるくると躍るセンチュリオンの上で、思考は夢想に至りつつも、周囲の索敵はしっかり。

 

 

『西住隊長!!こちらアヒルさんチーム!!敵はセンチュリオン!!みんなと合流を――』

 

“大洗女子! 八九式中戦車、走行不能!!”

 

 

 とはいえ大洗の練度は比較的緩い。この程度ならば片手間に殲滅できる。

 

 

 

 

 

 でも目的は大洗の殲滅じゃない。私の目的は別にある。

 

 

 

 

 『何なのよ!!何なのよこいつゥ!!!』

 

 

 足を止めて砲撃してくるルノーを視界に納めながら、逆方向で急旋回するチヌを射界に納める。

 

 

 

 『に゛ゃぁ゛ーーー!?』『ぞなぁーーーー!!?』

 

“大洗女子! 三式中戦車 走行不能!!”

 

 

 『無視すんじゃな―――――――』

 

“大洗女子! ルノーB1bis 走行不能!!”

 

 

 

 周囲の敵を掃討して、改めて周囲を見渡す。しんと静まり返った森の中、戦車から這い出してきた大洗の学生たちが悔しそうな瞳を向けているのが見えた。

 瞳に映るのは恐怖ではなく、“次は負けない”“負けてたまるか”という気概を込めた決意の色。やっぱりエミが褒めてた子たちはみんなすごい。エミと一緒でどんなに絶望的な状況でも絶対に諦めないで食らいついてくる。

 

 

 

   ――だからこそ、“良い”

 

 

 

 移動することもなく佇んでいる私のところに、無限軌道の音を響かせてやってきたのは

 

 

 

「―――来るのはあなただと思ってたよ。大事なお話、しようか」

 

 

 

********  Alice → Emi

 

 

 

“大洗女子! ヘッツァー、走行不能!! ”

“大洗女子! 八九式中戦車、走行不能!!”

 

 

 立て続けに響く撃破報告。さらにカチューシャたちを襲っているバミューダ三姉妹(姉妹じゃないが)。この状況から導き出される答えはひとつ。

 

 

 

 ―――“ボコの詩”無双、始まったでこれ(絶望)

 

 

 

 原作(劇場版)通りならこの愛里寿の単騎無双とバミューダアタックによってみぽりんとまぽりん以外の全員が狩り取られてしまう。が、現在の状況はあの大学選抜戦ではないし、何よりあの時のシチュエーションよりも生きのこっている車輛が多く状況は有利である。

 よって―――!!

 

 

「―――間一髪で間に合うとかそういう情緒なんか関係なく、間に合いさえすりゃあ救助に問題などないってことだ」

「天翔さん、たまにぽすとほうがもにゃぁこつば言うとね?」

 

 

 俺(フリューゲル小隊)とかなり満身創痍のまぽりんが黒森峰勢と合流する地点としてカチューシャのとこを指定して移動→一足先に到達→ミミミ、暴れるだけ暴れて撤退→被害はサンダース組のみ←いまここ

 

 原作と違い、現状レオポンとカチュノンが生き残っている。代わりに攻撃から逃がしつつ本隊に危機を知らせる役割としてウサギさんを送り出したので、M3とははぐれているが、状況はより良い方向のまま進んでいると言っていい。満身創痍なまぽりんの現状に若干以上の不安が付きまとっているが、それはまぽりんと全力でやりあった愛里寿もおそらくは同じ。対して、原作よりも戦力が残っているという事実がそれを補強してくれる。

 

 これは勝ち確ですわHAHAHA!!

 

 愛里寿には後できちんと何かしらフォローを入れるとして、みほエリのためにもこの戦いに負けてはいられない。

 

 

“大洗女子! 三式中戦車 走行不能!!”

“大洗女子! ルノーB1bis 走行不能!!”

 

 

 カメさんアヒルさんに続いてアリクイさんカモさんが撃破されたらしい。これで状況としては小隊編成した大洗組は残らず撃破されたことになる。今頃みぽりんが苦痛そうな表情を浮かべているだろうと思うと「辛いんだろう……叫び出したいんだろう……わかるよ……」とどっかの水柱ばりの心境と「だからエリカに全部ぶちまけて慰めとか激励とか貰って心の距離近づけて、どうぞ」と全力支援の呼吸に目覚めそうな期待感がある。

 

 

『こちらアンツィオ!!天翔!西住!!合流できるか!?』

 

 

 通信機から響くのはチョビの声。アンツィオは襲撃を受けていないらしくこちらへの合流を狙っているらしい。まぽりんが黒森峰組と合流することを伝えると其方に合流すると言うことで話はまとまった。

 

 

「ところで―――みほはどちらに向かったんだ?」

『西住妹は皆でカールを撃破した後、追撃を忌避して散開したから正直わからん。

 ――ただ、散開した後の大洗組が襲撃を受けていることを考えると、居場所を特定して救援に向かうべきかもしれない』

 

 

 チョビの言葉にやや重くなった空気を「みほなら大丈夫だ」とまぽりんが軽減する。この辺りの影響力はマジで流石まぽりんですわ。さすまほ!(確信)

 一先ずは黒森峰・アンツィオと合流した後でみぽりんとの合流を目指すという結論でまとまり、黒森峰メンバーの待つ地点へ。

 

 

 案の定、満身創痍のまぽりんを見てエリカ以下黒森峰メンバーが卒倒しそうになってた件(残当)

 

 

 何なら後からやってきたチョビですら「何やってんだ西住ぃ!!」って叫んでたからね。

 

 

 

そら(信じて送り出した親友が死にかけて戻ってきたら)

そう(いう反応になるだろう)

よ。

 

 

 

 なんなら「お前が付いてて何やってんだ天翔ぉ!」って一緒に怒られたからね。

俺?チョビのお説教とかある種ご褒美では?地べたに正座してOHANASHIされてました。横で神妙に小さくなってるまぽりんと一緒にお説教喰らってる俺の姿見て黒森峰勢がドン引きしてんの草だったわ。

 

 

 

 

 ―――後に、この現場に居合わせた黒森峰生徒たちから伝聞ゲームが始まり、“あの西住まほと天翔エミに土下座させた女”という風評被害とも伝説的偉業とも取れるはた迷惑な称号が付くことを、安斎千代美はまだ知らない――。 

 

 

 

 




 部隊の統合が終わり、みぽりんへの通信を何度も打診していたチョビが「おかしい。武部に通信が繋がらない」と不審に思っていたタイミングで、


『こちらウサギさんチーム!!みんなどこにいるんですか!?』


 その通信は、届いたのだった。


「こちらアンツィオ、アンチョビだ。どうした?何があった!?」

 チョビの声に安堵したようにワイワイと声を上げるウサギさんチームの一年生たち。口々に「やばいです」「激やばです」と言ってるだけで伝わらないのを澤ちゃんが押しとどめ、通信機越しに悲痛な声が響く。





『―――西住隊長とあんこうチームが―――大学選抜側に付きました―――!!!』




「―――――――――――はい?」


待って、待って、なにそれ?何この展開?どういうこと?


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