【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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 砲撃の音が林の木立を揺らす。衝撃は波になって木々を揺らし、そんな太くない幹くらいならぶっ飛ばしていく。


 アハトアハトの砲撃が空を揺らして地面を抉る。


「―――こんなことをして何になるというのだ!!!」

 いつもの西住節すらない西住まほの叫びに


「意味ならあるさ―――私と彼女たちにはね」



 そう言ってチューリップハットを揺らした少女はカンテレを爪弾いた。



【 まほルート 第二十八話 「そこにあるのが未来(みほエリ)だから 」  】

 

>> Emi

 

 

 

 「――何のつもりだ?*1

 

 

 

 

 静かにチリチリと闘志が立ち上っている感覚がある。というかまぽりんの背中から虎の形にオーラが立ち上っているように見えるだが?

 

 場所としては愛里寿が居ると思われていた山林方面へと続く野道。そこで俺とまぽりんが遭遇したのはカールを撃破した後姿を見かけなかったミカァ!と、序盤に早々にボッコボコのボコにのされて2輛だけで逃げ回っていたBC自由学園の押田ルカ・安藤レナの二人の三者三輛だった。

 

 

「―――これはバトルロイヤルだよ?風向きが変わるままに、こうしているだけさ」

「―――そういう意味だな?*2

 

 

 まぽりんの声にやや焦りの様子が感じ取れる。理由はおそらく愛里寿に関してだろう。ボコの詩無双が始まって大洗勢がほぼ壊滅している現状、みぽりんとエリカがぶつかり合ってるうちに愛里寿を倒すのが作戦の最も重要なポイントである以上こんな場所で手をこまねいている時間はないんだから当然だろう。っつーかミカァ!もそうだが押田安藤の二人は何でここにいるのん?(純粋な疑問)

 

 

「察しが悪くて済まんが、そっちの二人はなんでミカに付いてるんだ?」

 

 

 って言うか大同盟組んだ時にメンバーに入れてたけどこいつら合流すらしてなかったんだよなぁ……

 

 

「――私たちの目的は彼女とは別だ」

「おう!私らの狙いはお前の方だからな」

 

 

 

 

……なんで?(素)

 

 

 

 

 え?お前らと因縁何もなかったよね?なんで俺ロックオンされてんの?おかしくない?どういうこと?

 

「私、お前らに何かしたっけ?」

「逆だ。“何もなかったから”お前と戦うんだよ」

 

 

 

 意味が分からん(困惑)

 

 

 

 押田安藤の二人の言い分としては

 

・自分たちは天翔エミとあまり深い因縁はない

・なんだったら戦う理由とかもない

・マリー様の御意向で今回参加している

 

 

 

 

 いや、だから何?(素)

 

 

 

 

 

「―――つまり、我々はお前、天翔エミの身体的な寿命について聞かされたとしても特に何をしようというわけではないのだ」

「そうそう。こいつと意見が合うのはどうかと思うが私もこいつもお前がどうなろうとお前の自由だと思ってる。私らのせいでそうなったら多少悪いことをしたと思うだろうけどな」

 

 口々にそう言って苦笑染みた表情で揶揄うように笑って見せる二人。

 

 

 

……いやそれはわかったから、結論はよ(はよ)

 

 

 

 

 「まぁざっくり説明すると―――うちの先輩の命令が発端だ」

 

 

 

 

 

 あ、合点がいったわ(得心)なら最初から言えよ(おこ)

 

 

 押田と安藤、BC自由学園には三羽烏のうち先ほど撃破したアズミが在籍していた。つまるところ体育会系によくある縦社会の命令であっち側に付いた、ということなのだろう。

 長々と言い訳になってない説明を上げたのはせめても「あたしアンタには興味ないから裏切っただけで、アンタと仲良かったらこんなことしてなかったんだからね!」的な「俺は悪くねぇ!!悪くぬぇ!!」ムーブというところだろう。

 

 

 ―――いやまぁ、「だからなに?」なんだが(残当)

 

 

 上から命令されて立ちはだかってるんですよと説明されてもこっちとしては「あなた…覚悟してる人ですよね?(黄金の風感)」一択なんよ。まぽりんはその辺の事情なんざ全く考慮しねぇよ?もちろん俺もそんなもん考慮の予知なんぞないよ?蹂躙ぞ?オレサマオマエマルカジリですわぞ?お?(威圧)

 

「別に構やしないが……時間をかけてもいられないんでさっさと終わらせようか」

「――!!お前と西住まほののそういうとこマジ性格悪いからな!!」

 

 ブチギレ気味の安藤に怒鳴り返された。いや正直若干酷いこと言ってる自覚はある。が、こっちはみほエリが正に進展しようとしているシーンをおあずけされてる上に愛里寿とまぽりんがこれから死闘を繰り広げるのを目の当たりにせにゃならん苦行待ち状態なんで心の余裕なんぞないんだよわかれよオラァン!(圧)

 

「我々をただの踏み台かそれ以下だと言わんばかりの傲慢。後悔してもらおうか」

「そのふざけた調子の横っ面、絶対ぶっ飛ばしてやらぁ!!」

 

 俺の思考の間も時間は流れていて、ぼーっと間抜けな顔で見ていた俺の様子に、ブチギレ金剛で息巻いて炎がメラメラメララと燃え盛ってる二人と対照的に、飄々とした様子でまぽりんと対峙しているミカァ!の方は、どちらかと言うとまぽりんの方が熱くなっている様子ではある。なんかあっちはあっちで会話していたのかまぽりんの表情が戦闘モードになってるから多分納得がいったのだろう。

 

 

「―――ミカ。君の事情は分かった。だが私には関係ない」

「あるのさ。君にも、彼女にも、愛里寿にも―――ね」

 

 

 ミカァ!がまぽりんの耳に口元を寄せる。

 

 

 何事か囁いて――――まぽりんの目の色がはっきりと変わった。

 

 

「―――付いてきなよ。話の続きはそこでしよう」

「待て!!お前は――――――!!!」

 

 

 BT-42に戻ろうとするミカァ!をまぽりんが捕まえようと手を伸ばすも、それをするりとすりぬけて、カンテレをひとつ爪弾いて踊るように乗り込んで発進した。まぽりんには珍しく急いでティーガーⅠに乗り込むとこちらを見ることもなく追走し始めた。

 

 

「あっちはあっちでやるから、こっちはこっちで決着を付けよう。という話だ」

「覚悟しな!西住まほのいないお前らにそうそう簡単に討ち取れる相手じゃねぇぞ私らはな!!」

 

 

 口々にそう言ってソミュアとARLに乗り込んでいく押安の二人に対して、俺氏―――めっちゃ置いてけぼりなんですが……我装填手ぞ?そういうの車長とすべき話じゃないん??我モブぞ?装填手のモブぞ??

 

 

 

 

「―――上等ォじゃぁ……。うちたちば隊長ん付属品っち言うあたたちば絶対ェ許しゃん。こん手でぶちんめす―――!!!」*3

 

 

 

 

 なお車長は静かにブチギレ金剛していた。これは……血を見ますねぇ……(確信)

 

 

 

 ********

 

 

 

 両者静かにブチギレ金剛していた状況とはうってかわって、戦況は膠着状態を辿っていた。

 

 

 ゴルフコースの林道を駆け抜けて広い場所に出るや否や押田と安藤は二手に別れ、片方を狙おうとするともう片方が背面に回るそぶりを見せ、強制的にこちらの砲撃を封じる作戦を展開。お前ら仲悪かったんじゃないんか?と思わずツッコミを入れたくなるコンビネーションを展開しつつこちらの攻め手を封殺。

 それでも、あちらにもどの角度から狙ってもこっちの装甲を問答無用で一撃粉砕☆玉砕☆大喝采!する火力があるわけでもない。ARL44の90mm砲は厄介な火力を持つ反面射撃姿勢を取る必要があるため移動しながらの射撃に対してリスクが高い。とはいっても、本来ならば普通の相手が対象の場合そのリスクは相手も負うのだからあってないようなものだ。

 

 

 ―――俺が相手でさえなければ。

 

 

 装填手の能力の差は次弾装填による行動の再起動までの時間に直結する。移動しながら装填もできなくはないが止まってる状態のそれと比べると圧倒的に速度が落ちる。必然、姿勢制御のために止まって砲撃、装填して移動が高校生大会における主な攻撃手段である。大学選抜戦で大学側が使ってきたしみぽりん含めた上澄みの大連合がやってたので行進間射撃が容易いと思ってる同志ガルパンスキーもいるだろうが、そんなナイーブな妄想は捨てろ(禿感)

 ガルパンにおけるフィニッシュブロウも基本的には静止して射撃体勢を整えてからスナイプしてる点を鑑みても、行進間射撃というのは効率的ではない射撃方法なのだ。―――つまり自衛隊の練度はおかしい(確信)10式の性能の差もあるんだろうがスラロームしながら全弾命中ってなんだよ……

 

 

 まぁその辺の戯言はさておき、俺の装填力―――3秒以内に次弾装填完了というのは一般論で『圧倒的な差』となりえる。お互いに砲撃を外したら、相手は【俺が次弾装填する前に逃げに入らないと反撃でぶっ飛ばされるのが脳に刻まれるレベルでやべぇ】と相手に認識されているくらいにはありえない装填手なのだ。言うて所詮は装填手なんで砲手の腕前依存なんだけども。

 

 

 地面の上を跳ねるようにしてあぜ道を駆け抜けるヤークトティーガーと、数秒遅れてあぜ道を飛び越えて地面をバウンドしてドリフトを決めるソミュアと、同じように駆け抜けて追従するARL44。二輛の戦車の行動は“圧をかける”だけ。攻め入るわけでもなく、ヤークトティーガーの動きを制限するように駆け回り、有効射程距離の外を保つようにしてまるで包囲でもするかのように立ち回っていた。

 

 

 

「―――聞こえているか!天翔!!」

 

 

 

 駆け回りながら、ARL44の車上から上半身を乗り出して声を張り上げる押田。オープンチャンネルの通信なんていう無粋なモノは使わずに肉声で無限軌道の音に対抗している。

 

 

 

「私はな―――後悔をしてるんだ!!!」

 

 

 

 ガリガリと地面を削る無限軌道の音が響く。でも俺今背後を取られまいと急旋回した拍子にめっちゃ内部が揺れて、装填席から吹き飛ばされかけて通信手の子に優しく抱き留められて瞬間的に吐血しかけて耳に入らんのよ。

 

「お前たちを前にこいつと―――安藤と下らない押し付け合いをしてあたら兵を失った!! 情けないことに私はお前たちと戦う心の準備ができてなかったんだ―――!!!」

「私だって同じだ!!!」

 

 押田の声に重ねるように安藤の声が上がる。ARLと並走するソミュアから上半身を乗り出して、押田がヤークトを睨むようにして声を張り上げた。

 

 

―――ごめん手ぇ放して通信手の子ぉ!?急旋回の繰り返しで俺がブンブン振り回されてるのはわかるの、でも台詞が入ってこないの。お願いだから離してマジで(ストレスUP)

 

 

「待ち構えてるお前らを見て、情けないが腰が引けていた!西住まほと肩を並べてたお前らにビビッて逃げ腰になっていた!!

 

 

  ―――そんな自分が、許せないんだよ!!!」

 

 

 血を吐くような切実な叫びに、安藤の目じりに一筋涙が浮かぶ。しかしそれは一瞬のことで、すぐさま風で流れて消えた。己の不甲斐なさに、悔しさと苛立ちで装甲板を叩いて叫んで、強い意志を以てヤークトティーガーをにらみつける。ARLとソミュア、二つの車輛から強い意志を持った二つの視線がヤークトに注がれていた。

 

 

「「だから天翔―――

 

 

    ――――私たちと戦え!!私たちの未来(これから)のために!!」」

 

 

押田と安藤の声が重なり、響き渡るそれに対して

 

 

 

 

 『うるせぇぇぇぇぇぇ!!!知るかぁそんなもん!!!』

 

 

 オープンチャンネルの爆音の叫びが答えを返した。

 

 

 

 *******  >Others

 

 

 

 『お前らの主義主張なんざどーーーーでもいい!!今の私には時間が無ぇんだよ!!挑みたいんならとっとと挑んで来いや!!』

 

 

 血を吐くような叫びだった。切羽詰まった天翔エミの声が戦場に響き、西住まほとミカにも響いたその声に思わず足を止める。

 

 

 『足を止めてる暇なんざねぇんだ!今しかできないことがあるんだ!!それを邪魔するってんなら誰だろうがぶちのめして、私は私の(ミライ)を行かせてもらうだけだっつってんだよォ!!』

 

 

 とてもとてもシンプルで、力強い宣言に―――

 

 

「―――ああ、わかったよ天翔」

「お前に全力で挑ませてもらうから」

 

 

ソミュアとARLの上で、押田と安藤が視線を交差させる。お互いの考えを確信して、二人同時に声を上げた。

 

 

 

 

 

 

「「よろしくお願いします!!!」」

 

 

 

 二輛の戦車が勢いよくヤークトティーガーへと向けて飛び出した。

 

 

 

*1
これは一体何のつもりなのか、答えてもらおうか?返答次第によっては実力行使も辞さない

*2
つまりは『我々を撃破するつもりで現れた。敵対者である』と、“そういう意味”ということでいいんだな?

*3
上等だよぉ……私たちを隊長の付属品扱いしたお前ら絶対イワしたるからな?




 「ここならもうエミの耳にも届かない」

ゴルフコースを抜けて、市街地へと続く山道方向へと向かう途中で足を止め、まほが声をかける。まほの声に反応したようにBT-42が停車し、上部からミカが顔をのぞかせた。

「―――先ほどの言葉は、どういう意味だ?」

 険しい表情を消すことなくミカを睨みつけるまほに、ミカは意味深に微笑んで見せる。



「そのままの意味さ。

 ―――あの娘と彼女の……“家族の問題”に水を差してはいけない」



 カンテレが独特の寂しい音を立てる。揶揄うようにクスリと微笑んで、ミカがまほに向き直った。


「それ以上を聞きたいのなら、私を倒して聞いてみるといい」
「―――理由がわからない。*1


まほの言葉にミカは応えることなく。代わりに砲撃で返事を返したのだった。



 *********

本日の(カスの)意訳

カス「お前らの主義主張なんざ(機会があったら最終章で聞いてやるから)どーーーでもいい!!今の私には(みほエリの確認に行きたいから)時間がねぇんだよ!!(早くしないと戦いが終わっちまうだろうが)挑みたいんならとっとと挑んで来いや!」

カス「(みほエリのために)足を止めてる暇なんざねぇんだ!(みほエリのために)今しかできないことがあるんだ!!それ(みほエリ到達)を邪魔するってんなら誰だろうがぶちのめして、私は私の(ガルおじの)道を行かせてもらうだけだっつってんだよォ!!』

*1
君と争う理由はそれでいいが君が私と争う理由になっていない、意味が分からない。どういう意味だ?


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