【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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―――それはまだ、俺が無茶した結果入院していたころのこと。


「さぁ天翔エミ!!私と貴女の運命の日を決めておきましょうか!
 ―――それで?いつになさいます?大安吉日?それとも仏滅かしら?」

「待て待て待て待て近い近い近い近い」

 お見舞いと称して鉢植えをチラ見せした上でさっさとローズヒップ(わんこ)に下げさせておいてススッとスケジュール手帳を取り出し満面の笑みでグイグイと詰め寄りしてくるブリカスを手で制しつつ声を上げる俺。ちょっと他と違うところがあるとすれば転生してTSしたガルパンおじさんってことカナー?名前は天翔エミ

「その話なんだが……」
「……よもやと思いますが私との約束を反故にするとでも?……貴女、高校戦車道を引退するつもりでしょう?―――いえ、例え貴女にそのつもりがなかったとしても世間が、状況が、他の人々がそれを“許さない”」

訥々と、淡々と事実を告げていくダージリン。それを黙って聞いている俺。
ただ静かな病室で、ダージリンの言葉だけが響く。

「使わないままなら身体は衰えていく一方。……貴方がベストのコンディション、ベストの能力の時に雌雄を決することが私の願い。そこは決して誰にも譲れませんのよ?そのために聖グロリアーナとしての勝利を捨てて、西住まほと交渉したのですから」

 一歩下がった上でベッドに寝っ転がる俺を見下ろしてそう言い放つダージリン。
微妙に目のハイライトが薄れてる感がすごい(語彙減少)。流石ブリカス、約束事を自分から合理的に反故にすることはあっても相手がそうすることは許さないクソ仕様が如実に見て取れる。

 ふぅと一息ついて、俺は


「―――わかったよ。考えとく」


根負けしたようにそう答えた。



【 まほルート 第三十六話 「未来はオンナ(みほエリ)のためにある!(強弁) 」 】

>> Emi → Maho

 

 ―――空港で、たくさんの人が見送りを行ってくれた。特に黒森峰だけでなく大洗学園艦が熊本に寄港して見送りに来てくれたことに驚いた。

 

 それでも、そこにやはりエミの姿はなかった。退院した後に大洗学園艦を降りた、と聞いている。その後の身の振り方やあれこれに忙殺されているのだろう。

 

 

 それでも見送りに来てもらいたかった。と望んでしまうのは浅ましい願いだろうか?

 

 

 ―――止めよう。エミにはエミの生き方が在って、私とともにあるためにそれを捻じ曲げてくれていた。だが、それももうできない。ただそれだけの話なのだ。

 

 

 

 見送りに来た黒森峰の生徒、大洗の生徒たちに背を向けて飛行機の前に立つ。搭乗口から乗り込む前に、隣を見てしまう。

 

 

 

―――そこに、誰もいないことを確認して     理解して

 

 

 

  シートに背を預けて―――つぅ、と、涙が零れた。

 

 

 

 

 

 ―――そうしてたどり着いた独逸の地で

 

 

 

「―――日本(ヤーパン)にはニンジャーが居るってGróßvaterが言ってたがありゃマジだったんだなぁ」

「いやいやいやいや、それは流石に過大評価だぜ。私はどこにでもいるモブだよ」

「嘘吐くな。お前みたいなのが日本人(ヤーパニッシュ)の一般人だったら今頃アジア圏は日本が覇権取ってるだろうぜ」

 

 

―――いるはずのない存在を、そこで見た。

 

 

 

「―――エ、ミ……?」

 

 震える声でそう呟き、よろよろと覚束ない足取りで近づいていく。

幻を見ているのだろう。私はきっと幻覚を見ているのだ。

 

 

 あと5m 周囲の声が気にならない。私の様子は幽鬼の様だったのか、この時周囲は私の様子を恐れていた らしい。

 

 

 

 あと3m 足音と気配に気づいたのか、傍らの独逸人の様子から察したのか、彼女がこちらに気づいた。

 

 

「あ、まほ。久しぶ―――」

 

 

 残り2m強。一歩で詰め寄っていた。無言で至近距離に詰め寄られたことで面食らったのか、それとも私の様子に驚いたのか、一歩下がろうとするエミを

 

 

 

 ―――跪くように態勢を落としてぎゅっと、抱きしめていた。

 

 

 

「エミ……!!」

 

 

 夢では、無かった。腕の中に伝わっている温かさがそれを理解させてくれた。

堪えきれない思いのまま強く強く抱きしめて、涙を流していた。

抱きしめる手を強く噛みしめるほどに涙が止め処なく溢れ出る。ぽんぽんと、あやすように何度も背中の辺りを優しく叩かれている。嗚呼……エミだ。間違いなく、夢などではなく――――目の前に一番会いたかった人が居た。

 

 

 

 

 

 

「――――ぃ、おい!!聞いてんのかお前!!タップだタップ!!手ぇどけて離れろ!!!」

 

 

 

 耳元に怒鳴りつけるような声とともに引きはがされ、青い顔で息も絶え絶えなエミの姿に、理性を失っていた自分を恥じ入ることになったのは、余談である。

 

 

 

 ******* >>Maho → Emi

 

 

 

「―――な、なぁ……天翔?こんなところまで私を連れてきて、どういうつもりなんだ?」

「ま、ま、悪いことにはなりませんから。ね?」

 

 

 ―――あの夜の事件から一夜明けた翌朝

 

 

 俺は何も聞かなかったことにしてみぽりんとエリカを見送り

 

 

 

   ―――しめやかに洗面所で吐血していた。

 

 

 

 

 その後まぁ、色々あって*1今―――俺は会長に相談したうえで桃ちゃんをお借りして陸路を使って、

 

 

 

  こうして、“熊本県某所に存在する西住家”へとやってきていたりする。

 

 

 なお、海路を使って沖合を大回りで進んでいるまぽりんたち黒森峰より早く到着したのはこの後の俺の目的のためであり―――しぽりんへ無茶ぶりするための布石だったりする。

 

 

 

「―――数日ぶりですね」

「……先日は試合中の出来事とはいえ、失礼を致しました」

 

 居間に通されお茶とお茶請けを用意され、しぽりんの前でまず初手土下座から入る俺。ちなみに桃ちゃんはキャパオーバーにより正座したまま白目剥いて失神しているが、このままの方が話がしやすいので結論まで放置しておくことにした(無慈悲)

 

「……それで?」

「本日単身参りましたのは――――」

 

 

 俺の言葉を静かに聞いていたしぽりんの表情がだんだんと険しくなっていき、同時にチリチリと背筋を襲う寒気と重圧が増していく感覚を感じながら、頭を下げたまま言葉を続けていく。途中桃ちゃんが重圧に覚醒して、その後無事再度失神したりしたが、まぁ多分コラテラルダメージということで済むと思う(希望的観測)

 

 

「――それを、私が承服すると?」

「……成りませんか?」

 

顔を上げてしぽりんを見る。見下ろしている瞳が微妙に揺れてるのは俺の提案に思案している表れなのかもしれない。同時になんか哀れみみたいなものを感じるのは多分気のせいだろう。

 

 

 ―――そのまま静かに時間が過ぎて……庭の鹿威しが“かこーん”と音を立て

 

 

「―――はひゅ

 

 復活した桃ちゃんが再び座ったままカクンと首をひん曲げて失神した。

 

 

「……はぁ……」

 

 そしてしぽりんが先に折れた。

 

「貴女の体調を慮ればその提案は承服しかねます」

 

絞り出すように言った言葉に嘘はないのだろう。こっちを純粋に心配している瞳をしていた。本当は怒鳴りつけたいんだろう、叫び出したいんだろう。わかるよ(水柱感)

 

 でもねこれは俺も譲れないのよ。ごめんねしぽりん申し訳ないねしぽりん胃痛の種になってる自覚はあるんよほんまにごめんねしぽりん俺落ち着いたら改めてピロシキするからね(使命感)

 

 

「一つだけ聞かせて頂戴。何が貴女をそこまで駆り立てるの?」

 

 

 しぽりんの目は真っ直ぐに俺を見つめていた。チャラけた回答なんぞでは許さないという凄みを感じる。ここにきて本音トークと申したか。ならば抜かねば不作法というもの……とはいえマジで本音として「みぽりんとエリカのフラグをへし折りつつ原作(最終章)のためのフラグを申し分程度立てて後始末したいんです」とも言えないので多少足りない頭をフル稼働させて言い訳を捻りだしていく。

 

 

 

「――――――――――」

 

 

 

 そうして、その答えはまぁ、しぽりんのお気に召した回答だったようだ。とだけ記しておく。

 

 

 

「それはそれとしてそこの気絶している娘は?」

「あ、そうでした」

 

 そう言って肩トントンして桃ちゃんを起こし、再びオーバーフローする前に一歩引いて座り直して桃ちゃんを前に出す形に移行した。

 

 

「―――将来の西住家家令候補ってことで推挙しにきました」

「天翔!?」

 

 

 ごめんねぇ桃ちゃん。君は良い友人だったが、君のお父上がいけないのだよ(実家の商売的な意味で)

 

 

「……考え方の違いですよぉ。いざという時に推薦だけで就職できるアテがあるならそれに越したことないでしょ?私が言うのもなんだけど、桃ちゃんの装填はなかなかのモンですよ」

「3秒で装填するお前に言われてもなぁ……」

 

 実際のところ桃ちゃんの推挙はついででしかない。最終章における桃ちゃんのモチベを減らすための俺のこすっからい仕込みに過ぎないのだ。

 

 最終章で桃ちゃんが大将で参加して戦う事になったのは何故か?

 

それは当然―――“進学と就活のため”である。浪人生活を回避するための戦車道推薦を得るための箔付けとして参加したのがガルパン最終章のモチベーションである。

 

 では、“桃ちゃんにそのモチベがなくなった場合、どうなるか?”

 

 

 

 そりゃあ当然……『西住みほが主人公として隊長で参加する』に決まってるよなぁ!?

 

 

 

 そうなったら当然―――【決勝で黒森峰VS大洗】

 

 

 

 

 つまり【みほエリ隊長一騎打ち対決】というわけだよなぁ!!!?

 

 

 

 

そのために桃ちゃんを俺の持てるコネクションで一番使えそうな枠として【西住家の紐付き】ポジを与えることで進学就職ともに有利を取れるように推挙という形を用意して見たのだ。

……ちなみに距離的な関係で島田の方が近かったのではあるが……ぶっちゃけ愛里寿とまぽりん相手の大立ち回りと好感度調整した手前、関係性が薄い島田の家に顔出しに行くとか無理ゲーだと思ったのでスルーして西住を選んだというのもある。(逃げ腰)

 

 

 最終章で桃ちゃん隊長での参加も別にいいんだ。それは作品として素晴らしいと思う。

 

 でもね、状況がそれを許さないの。俺に対する好感度がみほエリのそれを上回ってる以上、どっかでテコ入れしてみほエリ好感度爆上げMAX!狙わんといかんのよ(切実)

 

 戦車道大会決勝で、本来みぽりんとまぽりんがぶつかり合うはずだった原作を捻じ曲げ、まぽりんの相手を引き受けてみぽりんとエリカの対決をセッティングした結果、二人は和解してわかり合い今のポジションに落ち着いた。

 

 

 つまりもっかい同じ状況で分かり合えば倍率ドン!さらに倍!

 

 

 しかしその場を「俺が作り上げた」場合、その効果は半減してしまう。なので俺はその場に存在してはならず、あくまで状況に合わせた形で、自然にそうなってしまうのが望ましい。

 

 

 

 そのための、桃ちゃんです(碇ゲンドウ感)

 

 

 

 桃ちゃんのモチベのために参加したのが最終章の展開なら、桃ちゃんのモチベを減らしつつ、また【西住流の紐付き】としては大会に不参加などあってはならないから参加は必須要項。また【西住流家元の娘】であるみぽりんを立てないで隊長に座るなどありえない、あってはならないのでみぽりんが隊長に座ることになる。(忖度)

 

 我ながら完璧なお膳立てである。まるで(詰め)将棋だな。

 

 

 俺の熱烈な推しアピの甲斐も(きっと)あり、グラグラしつつも再度の失神は耐えきった桃ちゃんに対するしぽりんの反応は上々であり―――

 

 ―――帰りに飾り紐をあしらった短布を貰っていた。畳んだ布の内側には西住家の紋が入っているもので、衣服の腰や肩口、胸前あたりにさりげなく付けて置けるシロモノである。これは勝ち確ですわ(迫真)

 

 

 そんでもって帰る道中緊張の糸がブッチブチのブッチギリな桃ちゃんが完全に落ちてしまったので、放心状態のJKを担いで帰宅する幼女という世にも珍しい構図で街中を練り歩く羽目になったりした。

 

 

******

 

 

 

「―――と、言うわけで今私はここにいるってわけなんだ」

「……訳が分からない」

 

 

 まぽりんに唐突に抱きしめられて距離感に「これアカンやつやないかい?」と必死にタップを繰り返していたが、逆によりグイグイ身体を押し付けるようなハグが続行され危うく意識が飛びかけた俺だった。しかし、どうにかこうにか色々押しとどめてこれまでの敬意を説明した。結果なんかまぽりんが微妙に宇宙猫状態になったわけだが。

 

「西住家にお願いして、あとダージリンに頭下げて戦車道連盟のお偉いさんに面会して、どうにかこうにか【独逸戦車道連盟】にねじ込んでもらった。日本ではもう活動できないからさ……こうする以外に戦車道続けられないからな」

「無茶をする……!!*2

 

 まぽりんの目が座っているが、俺の翻訳能力から察するにこれは心配の表れである。なので退くことなく笑って見せた。

 

 現状、俺の状況は背水の陣だが、まぽりんという砦を攻略すれば後はオートでゴールまでまっしぐらという状態。是が非でもまぽりんを説得しきらなければならない。そして、そのための切り札はもう手元にあった。

 

 

「なぁ、まほ。虎は何故強いと思う?」

「―――何を…?」

 

俺の言葉に戸惑ったまぽりんを他所に、俺はもったいぶったようにじっくりと間を開ける。

 

「虎はな、元々強いから強いんだよ」

「だから―――*3

「だからな?翼なんかなくたって虎は強いんだよ」

「―――――」

 

 まぽりんが息を飲んだことを確認して、最後に一歩詰め寄るようにして、間近からその目を見上げた。

 

「―――でもな?翼は背中に生えてるもので、単体じゃ生きていけないんだよ。虎は独りでもなんとかなるかもしれないけど、翼は虎が居ないとなにもできないんだよ」

「―――――ッ!!」

 

 完璧なクリティカルヒットだったようで、まぽりんが下を向いて何も言えなくなっていた。どうやらこの言葉が最も“刺さる”言葉だったようだ。ここまで徹底して『西住家の力がないと戦車道界で生きていけないんです』アピールをしておけば、強者の使命として弱者を護るまぽりんは見捨てていられない。

 

単身独逸の土地によるノスタルジックに負けて寂しさに感情爆発して抱き着いてきたときは「俺もう駄目かもしれない」と辞世の句を内心で詠む手前だったが、まぽりんの目がKAKUGOをキメた様子になったのを確認できたし、どうにかなったように思える。

 

 

まぁ、問題はこれから先の独逸での戦車道生活なんだがな……。

 

 

*1
その時、俺に電流走る―――ッ!とかやってた辺り

*2
西住だけでなく戦車道連盟まで……君も「無茶をする」……!どれだけ危ない橋を渡ったのかわかっているのか?何が君をそうさせたんだ

*3
「だから」何だと言うんだ!?質問に答えてくれ!





******


―――時間は渡独の前に遡る。


渡独のために日本戦車道連盟の偉い人に口利きしてもらうためにしぽりんに話を通したわけだが、一応ブリカスに話通しておかないとと思い直し、ダージリンに通話してみた。その結果、なんかダージリンも付き添って話を聞いていくとか言って一方的についてきたわけである。


「貴女がそんな非常識なお馬鹿だとは―――いえ、お馬鹿でしたね!」

とかなんとか人をクソ小馬鹿にしながらもなんかニッコニコなダージリン。なんやお前?馬鹿にしてんのか?

「仕方ないだろ。日本で活動できない以上、世界で活動しないと戦車道を続けられないんだから」
「言っていることはわかります。が、行動原理が理解できないと言っているんです」

 ああだこうだぎゃーのぎゃーのと言い合いながらも、その後の戦車道連盟会長との会談についてはかなりスムーズに事が運んだ。


「……ってなわけで、独逸で戦車道続けるから“あの約束”についてはもう少し先の話になるな」
「……待ちなさい。貴女私との勝負を有耶無耶にするために今回の話を考えたのではないでしょうね?」

厳しく鋭い目つきになったダージリンを鼻で笑って見せる。

「何言ってんだお前。【独逸戦車道でもっと強くなってやる】って言ってんだよ」

日本は戦車道後進国だからドイツで学ぶものが多い。だから西住まほは世界大会強化選手枠でドイツに渡ったのだ。だったらこの答えで問題ないだろ。


 その結果未来に何が起きたかを知っていたなら、俺はこの時こんな答え方をした俺をぶん殴ってでも止めていただろう。


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