【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

138 / 149

〇〇年 ――月
EUリーグにてドイツ優勝。
“西住の虎”の名前が欧州に広まる。

〇〇年 ――月
天翔エミ、渡独後初入院。

〇◇年 ――月
西住まほと天翔エミの激励に黒森峰メンバーと元フリューゲル隊が集まる。
『新旧フリューゲル隊対決』が勃発。『翼を支える者たち』が密かに結成される。

〇◇年 ――月
ダージリンと島田一派が英国戦車道を蹂躙する。
英国戦車道に「勝利主義」が目覚める。

〇◇年 ――月
ロシアにて「ペレストロイカが起きた」という報告が告げられる。
状況を把握しようと複数の組織が動く。

〇×年 ――月
EUリーグで歴史的大波乱が記録される。
天翔エミの「全部ダージリンのせいだ」が戦車道史に残る名言として記録される。

〇×年 ――月
EUリーグで英国が優勝を攫う。
西住まほ、「フラッグ戦でなければ勝っていた」とコメントを残して炎上。
天翔エミ、吐血により入院。内臓器官の消耗と診断される。

◇〇年 ――月
天翔エミ、普段使いに眼鏡をかけ始める。
チームメイトの質問に「イメチェン」とコメント。
何故かドイツのみならず日本・ロシア・フランス・フィンランド等で天翔エミの眼鏡姿を映したインスタがバズる。

◇〇年 ――月
西住まほ、プロリーグ日本チームに参加のため帰国要請を受ける。
天翔エミがドイツ戦車道協会と契約しており残留と知り、西住まほが帰国要請を拒否して立てこもる事件が発生。
約20時間及ぶ騒動の後、天翔エミの一時帰国条件で和解。
天翔エミ、帰国とともに心労がたたり入院。

◇◇年 ――月
世界戦車道プロリーグ開催。
日本チームに各国の戦車道を沸かせた代表選手が集う。

◇◇年 ――月
世界戦車道プロリーグにて日本代表と独逸代表が激突。
後に“西住まほ御乱心事件”と呼ばれる珍事が発生。
ダージリンが何かを拗らせる。

◇×年 ――月
天翔エミ、引退を宣言。
ダージリンと密談

◇×年 ――月
西住流師範西住まほ、「エミが引退したから」を理由に現役引退を宣言。
天翔エミに懇願され、安西千代美にお説教を喰らった翌日に宣言を撤回。


◇◇年 ――月


・・・





【 まほルート最終話・Aパート 「 I CALL YOUR NAME 」 】(ダージリン視点)

 

 

『……いつぞやの約束通り、引退前の最期の非公式試合だ。

 

  ―――“決着(ケリ)”、つけようぜ?ダージリン』

 

 

 ―――それはずっと待ち望んでいた“決着”の約束。

 

 そう―――待ち望んでいた……“はず”だった。

 

 

「……受けて立ちますわ ですが―――」

 

片手に通信機を、もう片方の手に紅茶のカップを持って、平静を装い声を淡々と紡ぐ。紡げている、と、思う―――。

 

「――ひとつだけ、一つだけ聞かせていただけますかしら……?」

 

言葉が、止まらない。

 

 「―――“わたくしで、本当にわたくしでいいの”?」

 

重くて黒い感情が止められない。彼女を差し置いて、私があの娘の―――天翔エミの最後の幕を引くことへの後ろめたさと、ほんの少しの拗れ。

 

 そんな私の中の複雑な思いもまとめて、通話の向こうの彼女は「はっ」と笑い飛ばした。

 

『お前が『約束を守る気があるのか』ってここ数年、毎回顔合わせるたびに言ってたことじゃねぇか。何を遠慮する必要があるんだよ?』

「―――貴女が本当に決着をつけたい相手は……他に居るのではなくて?」

 

思っていたことを隠すことなく口にしていた。これが最後の試合となる彼女にとって、彼女の―――“西住まほ”の存在以上に私が成っているという自信はどこにもないから。

 

「お前さんとの約束を反故にするつもりはないし、“お前さんとの決着は、私が人生でやり遂げなきゃいけない事柄のひとつだ”。それに何より……」

 

 その言葉は最後まで続くことはなく、「まぁそれはいいだろ」と切り上げられた。

 

 けれどわかっている。彼女の言葉の続き

 

 

 【何より―――西住まほはプロリーグの世界大会に出場しなきゃいけないだろ】

 

 

西住まほはドイツでのプロリーグの試合を控えており、そのための選抜試合を終えて、予定された日には渡欧して最初のリーグ戦となっていた。西住家としても見逃すことはできない。

 

 通信が切れたことを確認して、通信機を戻す。湯気を立てる温かい紅茶だというのに、まるで風味が飛んでしまったかのように味も香りも感じない。

 

 彼女が私との約束を守ろうとしていることは明らかで

 

 彼女が西住まほとの戦いを望んでいることも、それが叶わないことも、それらすべてを踏まえた上で

 

 

 

 

 

 

 

 「―――――――舐められたものですわね」

 

 

 実に【くだらないことだ】と、薄く笑っていた。

 

 

 ******

 

 

 後進の育成に費やしていた時間を自分のために充てる。同時に、オレンジペコ、アッサム、ローズヒップたち現役のころの腕前で活動できているメンバーを集めて、鍛え直し始めた。その対応、互いの息を合わせるマッチングをこなしながら“別の件”を進めて行く。

 

 そうして、時が流れ―――

 

 

 あっと言う間に、当日を迎えることになった。

 

 

 

 ******* > Darjilling → Others

 

 

 

 西住家がプロリーグ選手のトレーニング用に保有している練習場。競技場も兼ねているそこで、ヤークトティーガーと一緒に待っている天翔エミの下に、ダージリンは見知った面々と一緒に、チャーチル歩兵戦車で現れた。

 

「おいおい……センチュリオンじゃないのかよ」

 

 舐められたもんだな と軽口を叩く天翔エミに対して、涼しい顔のダージリンは紅茶を一口。

 

「乗り慣れた戦車が一番でしょう?それに……あの時の“決着”ならば、チャーチルで勝負するのが当然でしょう?」

「……いやまぁお前がそれでいいならいいけどさぁ……」

 

釈然としない表情のエミに、ダージリンは涼しい顔で紅茶を一口。

 

「……チャーチルで勝てると思ってんのか?」

「こんな言葉を知ってる?【戦車の性能が戦力の決定的な差ではない】。T-29を撃破したのは間違いなくチャーチルでしてよ?」

「ねぇよそんな格言」

 

ドヤ顔でかつての偉業を語るダージリンにそんな風にツッコんだエミをも意に介さず、「それに」と告げるダージリン。

 

 

「―――それに、私に意識を割いていられるのも今の間だけでしょうから」

 

 

ダージリンの言葉にエミが怪訝な表情を浮かべ、聞き返す前に

 

 

 

―――履帯の音が、静かに競技場内に響いた。

 

 

 

 重厚な駆動音と、地面を噛みしめ踏みしめる履帯の音とともに現れたのは、エミがこれまでの人生で最も身近で見続けてきた戦車だった。

 

 

 

「―――西住本家と家元……お母様からの許可は貰った。ダージリンにも、恥も外聞も捨てた」

 

 

 淡々と、いつものように感情の薄い表情のまま、普段の様子そのままに

 

 

「―――君と……戦うために……様々なしがらみを捨てるのはとても苦労したよ」

 

 

 

 ―――西住まほが、そこに居た。

 

 

 

「―――お前の仕込みか?」

 

 睨みつけるような表情のエミにも素知らぬ顔でチャーチルの上で紅茶を傾けるダージリン。

 

「彼女の土下座は一生の思い出になるでしょうね」

 

ダージリンの言葉に責めるような視線が強まった。「お前にとってその程度だったのか?」という感情を読み取って、ダージリンは紅茶を傍らでトレイを携えたままのオレンジペコに返してエミの方へと顔を向ける。

 

 

「誤解なきよう。貴女との勝負、軽いものではなくてよ?」

 

エミの返答を封殺するように言葉を続けていく。

 

「先のお電話、大変嬉しかったのよ?でも貴女は私の言葉に「仕方ない」と言った様子を見せた」

 

グッと、片手でチャーチルの上部装甲版にかけた手を握りしめるように力を籠める。その程度で装甲が曲がることなどないが、スキンケアを怠らない英国淑女たるダージリンの白磁の様な手の甲にうっすらと血管が浮かんで見えるほどに力が込められていた。

 

 

「―――許せると思って?このわたくしが、よりにもよって“代替品”扱いなのよ?でしたら“本物”を用意してあげましょう。という一種の意趣返しよ。そうして残りの短い一生、わたくしとの勝負ができなかったことを引きずって生きるといいわ」

「―――性格悪ぅ……」

 

 

 半分は嘘である。これはダージリンなりの意地に過ぎない。

 

“自分との約束を優先して、己の本当の欲望に蓋をして、本当に戦いたい相手に言い訳をして妥協して自分と戦おうとする”

 

そんなエミの最後の相手を自分が勤める。そのことに一抹の喜びがないとは言わない。けれど、そんな最期をエミが迎えてよいと思ってもいない。

 

 

 だから動いた。

 

 

 西住がそれを良しとしないならばそこでお終いの話だった。

西住まほにもそのプライドをへし折るくらいのペナルティを提示した。

お膳立てをした上でそれが跳ねのけられるならばダージリンとしても遺恨はなくなるからこそ、条件は緩めることなく厳しい条件を提示した。

 

 

 

 けれどそれを、西住まほは受け入れた。

 

 

 

 

 地の上に座して頭を付けるとも粛々と受け入れ、懇願も厭わなかった。

 

 

 

 

 

 どうしてそこまで?とは言わなかった。何故なら同じ条件で立場が逆であったならば、ダージリンは例え全てのプライドを投げ捨ててでもエミとの決着を望んだだろうと自分で答えを出しているから。

 つまるところ

 

 

 ―――今こここの場面。“自分に向けて土下座でエミとの約束の反故を乞う西住まほ”を見下ろした時点で、ダージリンは西住まほを『自分と同種で、同格の立場の相手』だと認めたから権利を譲り渡したのだ。

 

 

 それに、天翔エミもきっとそれを望んでいる。

 

 

 その、『天翔エミの理解者である』という言い訳もまた、ダージリンの支えであった。そんなダージリンの様子を嘆息とともに吹き飛ばして、エミは天を仰いだ。燦燦と輝く太陽に向けて目を細めて手を伸ばすように手を掲げる。細くて小さい身体はそのまま溶けて消えてしまいそうに見えて、ダージリンは思わず手を伸ばしそうになっていた自分を律して制する。 

 

 

 

「―――本当に勝手なことしてくれるなお前さんは。ドイツの予選どうすんだよ」

「みほさんと逸見さんに協力を要請したわ。二人とも日本強化選手枠として練習していたけれど、快くオーケーしてくださったわ。今頃ドイツで西住まほの代わりに戦ってくださっているでしょうね」

 

 ダージリンの言葉に、エミは遠くを見るように天を仰いでいた視線を少しだけ下げて目を細めた。

 

 

 

「―――あぁ……そりゃあ……失敗だったなぁ」

 

 

 

 ぽつりと漏らしたエミの言葉に、ハッと目をエミに向けるダージリン。そんなダージリンの様子を見ることなく背中を向けたまま、まほと対峙しているヤークトの方にゆっくりと歩いていくエミ。その背中に、手を伸ばそうとしていた自身に気づいて、ダージリンは思わず逆手でその手を掴んで抑えていた。

 

 

 その手に支えていたカップとソーサーが地面に落ちてガシャンと音を立てる直前

 

 

 

「―――全く……身体が二つあったらって後悔する日がくるなんてな」

 

 

 

 そんな風に後悔と自責の混じった言葉を漏らしたエミに、かける言葉を失ったダージリンはその背を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 ******* > Others → Darjilling

 

 

 

 ティーガーⅠとヤークトティーガーの戦いを最前線で見ている。聖グロリアーナメンバーの中で。

 

 回頭して射界におさめようとするヤークトと、それよりもはるかに鋭い動きで旋回、信地旋回を切り替えて射線を外しながら側面を狙って回り込むティーガー。

上部から身を乗り出して全てを余すところなく見続けている西住まほの視線が、

 

 

 

 

 ―――ほんの一瞬だけ、わたしを見た――――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――嗚呼。なんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて、無様なのか――――私とも在ろうものが

 

 

 

 

 

 

 この一戦を見ていたくない。 “だってそこに立っているのは私のはずだったから”

 

 

 

 この一線から目を離せない。 “私では彼女の最後を彩れないから”

 

 

 

 この場から消えてしまいたい。 “私の愚かな行いが彼女を迷わせたから”

 

 

 

 この場にずっとこうして居たい。 “この時間が永遠に続けばいいと思ってしまったから”

 

 

 

 

 

 

 ―――けれど世界というものはとても残酷で

 

 

 

 

 

「――――エミッ!!!」

 

 

 

 

ティーガーの上部から跳ね上がるように飛び出してヤークトティーガーに駆けよる西住まほと、ヤークトティーガーから涙でぐしゃぐしゃになったメンバーがぐったりとした天翔エミを皆で引っ張り出して

 

 

 

 

 私も駆けだしていた。

 

 

 

 回り道ももどかしいと観客席の前列に繋がる階段を蹴って地上に着地したローズヒップに向けて「ローズヒップ!!」と叫ぶような声で命令して、わたしも地を蹴った。ローズヒップほどの身体能力はない、跳躍が足りないのはわかっていたから、落下防止用の手すりを踏み台にもう一手飛び上がる。

 目下のローズヒップが両手を広げて待ち構えている場所に寸分の狂いなく飛び込んで、抱き留められながらその場で2回、3回と回転して、倒れるローズヒップを放り出して戦車の方へと駆け出した。

 

 

 

 ―――コヒュー、コヒューと、弱々しい息使いが聞こえる。

 

 

 膝の上に抱きかかえて、酸素吸入器を使っている西住まほの前に立って、天翔エミを見下ろしていた。もう動けないほどに疲弊して、弱々しく息をすることしかできない状態で―――満足とは程遠い顔で悔しさに涙を流すその表情に、

 

 

 

 その悔恨がまるで自分のことのように感じられて、とめどなく涙があふれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてこの日を境に、“天翔エミ”は戦車道の世界から完全に身を退いた。

 

 

 




「―――本当に勝手なことしてくれるなお前さんは。ドイツの予選どうすんだよ」
「みほさんと逸見さんに協力を要請したわ。二人とも日本強化選手枠として練習していたけれど、快くオーケーしてくださったわ。今頃ドイツで西住まほの代わりに戦ってくださっているでしょうね」

マジかよ。みほエリの鼓動が遠くドイツで完成されようとしてるんじゃねぇか!何やってんだよお前ダージリンお前!!それをなんで俺は目に焼き付けることができないんだよ!?

「―――あぁ……そりゃあ……失敗だったなぁ」

もしもそれがわかっていたならダージリンとの決着に全力使わなくても余力を残して戦う選択肢だってあっただろうに……まぽりん相手ではそれも出来そうにないんだが!?

「―――全く……身体が二つあったらって後悔する日がくるなんてな」

体が二つあったなら、もう一人がみほエリを心置きなく脳裏に網膜に焼き付けてくれただろうに……!!残念極まる……!!


以上、エミの内面(色々酷かったので透明)




 次回(本当に)エンディング。エミ視点でのエピローグ

次回作(新規ルート開拓)

  • シン・まほルート(活動報告のアレ)
  • 小梅ルートIF(リボンの武者)
  • サンダース異伝~すごいよ!おケイさん~
  • シンまほIF(活動報告のアレのIF
  • 記憶喪失ルート(活動報告のアレ)
  • その他(え?まだなんかあんの?)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。