【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
【 注意書き 】
今作は前ルート「装填騎兵エミカスF」を軸としたIFルートであり、
拙作である【 一周年記念リク 】である
『 まほルートIF:その時歴史が動いた ~ 黒き森の覇王 ~』
がベースとなっております。
ルート分岐が決定したのは 【 まほルート第3話 】 のアンチョビとの会話から。
なので前ルートと一周年記念リク作品を読んでから本編をお読みいただくと、
米ビーバーの拙い時系列が多少はわかりやすくなるかもしれませぬ(しめやかに土下座)
プロローグ『 The びぎにんぐ 』
「―――お姉……ちゃん……?」
空気が凍るとはこのことだろうか?
目の前に並んだ色とりどりのケーキも、思い思いに頼んだ湯気を立てる温かい飲み物たちも、全員……もとい、我関せずといった様子でフォークを動かしている冷泉殿以外がその場の空気に一歩も動けない様子を見せていた。
「隊長。……いえ、“元”隊長でしたね」
先ほどの声とは別の声が響く。声の主は、先ほどの声の主の奥。
心情を読み取ることができない複雑な表情の目の前の人物とうってかわって、こちらはわかりやすく敵意と悪意に満ちていた。
けれど声をかけられている西住まほは表情を崩すことなく変わらない。
二人の少女は俺にとっても、西住まほにとっても見知った相手だったから。
西住みほと、逸見エリカ。
あの日、置き去りにしてしまった俺と西住まほの後輩であり、自分たちの後釜と言って良い存在だった者たち。
―――そして
「―――見つからないわけだ」
二人の少女の後ろから、さらに小柄な少女が現れた。
銀色のドリルテールを揺らして、いかにも悪そうな表情を満面に浮かべてにやりと笑って。
「こぉーんな僻地の無名校でこそこそ隠れてたなんてなぁ」
テーブルの上に手をかけて腰かける。まほを見下ろす少女の目はいじめっ子やいたずらっ子が被害者を見ているときのそれであり、周囲から見ればそれは「西住まほを圧力で黙らせている」ように見えるものだろう。
―――だが違う。これはまぽりんの反応を見て愉しんでいるいたずらっ子ドゥーチェである。俺は詳しいんだ (後方腕組み訳知りファン面)
「―――!!」
「……っ」
まぽりんをかばうために行動を起こそうと椅子から腰を浮かせようとしていた武部殿を、寸での所でその手に自分の手を重ねて押さえることで「動かないでくれ」という意思を見せる*1。一瞬はっとした様子で俺の目を見た武部殿がどうにかアイコンタクトが通じてくれたのか、神妙な表情で座り直した。すぐ隣で同じように立ち上がりかけていた五十鈴殿も空気を察して目を伏せて“見”に徹してくれた。
そんな俺の様子を横目にちらりと見てから、アンチョビはまぽりんに視線を向ける。
「……何か言えよ。西住ィ?」
じっとりと、圧をかけているドゥーチェモードのアンチョビ。表情を崩すことなく真っ直ぐに、なんか視線が微妙に我関せずでケーキを頬張る冷泉殿を見ている気がするまぽりんは、しばらく無言のまま―――やっと口を開く。
「―――行儀が悪い *2」
「エリカさん!おさえて!?」
唐突に何を言い出すのかと激高したエリカが思わず拳を振り上げ詰め寄ろうとしてみぽりんに止められていた。様子を見ていた武部殿と五十鈴殿も絶句してドン引きしている。圧縮言語ェ……
―――それはそれとしてエリカとみぽりんの距離感が近い!これはみほエリ進展してますねぇ!!
俺の内心での吐露を余所にアンチョビはまぽりんに「おまえそういうとこだぞー?」とゆらゆらと首を揺らしながらまぽりんの顔を下からねめつける様にのぞき込む。が、唐突にスンッと真顔に戻って居住まいを正した。
「―――まぁいいや。最初の相手はサンダース大付属だったよな?決勝でぶつかり合うんだから負けたりしたら生涯煽ってやるからなー?」
「……あなたたちも、不甲斐ない戦いを見せたら許さないんだから!」
アンチョビはまぽりんに笑いかけてテーブルから降りると、状況がわからず困惑している店員に「すまないな。案内よろしく」と声をかけ促した。
対してエリカの矛先は――――なんか武部殿たちの方に向かっていた。あれ?このシーンって、エリカに責められてたのはみぽりんじゃなかったっけ?いや、大洗のみんなに言ってた様な気がするし問題ない…か…?
「―――じゃあな、天翔」
最後にポンと俺の肩を叩いてニッと口の端っこだけを釣り上げて笑うと、アンチョビは店員の後ろについて店の奥の方へ誘導されていった。
残されたのは状況が見えないままぽかんとしている武部殿、五十鈴殿、秋山殿と我関せずで自分の分のケーキを完食して俺が差し出したケーキ皿に目を輝かせている冷泉殿。あと何を考えているのか表情が動かないままのまぽりんと、まほチョビ成分の摂取によりお腹いっぱいですよもっとちょうだいなぁ!……な俺。
「……何なのあれぇ……?」
「……さ、さぁ……?」
ドン引きで困惑しきりの武部殿、五十鈴殿に秋山殿が(ほぼ)原作通りに「黒森峰は絶対王者と呼ばれていて、実際に10連覇していて……」と説明を始め、俺の分のケーキを食べ切りそうな冷泉殿を横目に「追加であと2~3個注文するか」とか考えてる俺。対してのまぽりんはというと少しだけ顔をしかめて黙考している様子だった。
******* >> Side Change
「―――全く、変わらないなぁあいつらは」
心から面白そうに笑う安西千代美に、疲れたような表情で溜息を吐いたのは西住みほだった。
「隊長は!……いえ、“元”隊長は言葉が足らなさ過ぎます」
「その辺含めて面白いやつだよ。西住まほは」
店員に勧められて向かった最奥のテーブルにどっかりと腰かけて、むふふと思い出し笑いをしていた千代美だったが、そのにやけ顔を鎮めると、同じテーブルに座している二人、西住みほと逸見エリカに向き直る。
「―――で、どう見る?」
千代美の言葉に最初に答えたのはエリカだった。
「行動が早すぎます。大洗学園艦は戦車道を長い間やっていなかった形だけの学園艦。戦車道を始めるにしても戦車の数を揃えるだけで精いっぱい。兵の練度まで手が回るどころか、同好会からスタートしていてもおかしくない」
エリカの言葉を引き継ぐように、思案していたみほがぽつりぽつりと自分の思考を口に出し始める。
「……多分。エミさんが事前に黒森峰以外の学園艦でめぼしい場所を探していた―――んだと、思います。けどエミさんはエミさんでそんなに自由な時間があるわけじゃない。でも、そこに協力者がいたなら話は変わってくる……」
みほとエリカの言葉を受け止めて軽く目を閉じていた千代美は、考えをまとめたのか瞳を開いて二人を見やる。
「―――位置的に考えて、知波単の西さんかも……でも―――」
「―――違うだろうな」
みほの推測を遮って口を挟んだ千代美は、今できる推論から導き出された結論を言葉にした。
「―――――ダージリンだ。今回の一件、多少離れているとはいえ関東にも顔が利く以上あいつが絶対に絡んでいる」
ダージリン「根も葉もない冤罪ですわ。徹底抗戦も辞さないつもりですが?」