【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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 ―――心の中に、澱のように溜まっていた。


“どうせ学園艦を持ってる人たちの道楽”


 ―――ソレはどんどんと、降り積もっていた。


“結局強い戦車が揃ってる方が強いパワーゲーム”


 ―――胸の裡に降り積もったソレが、疼いていた。


“ならさぁ―――やるだけ意味なくない?”


 ―――「やってみなきゃ、わからないだろが」





第0話 『Episode of 安斎千代美 ①』

 

 

 ―――A知県T田市。陸の学校で、最初に【それ】を行動に移した。

 

 

「―――我と思わんものは、私のところに集えー!!!」

 

 声を張り上げると「おお!」と声が返って来る。

陸の学校?それがなんだ。戦車の性能?それがどうした。

 

 “そんなものはひっくりかえせる程度の要素でしかない!!”

 

 

 それはこれまでの練習試合が証明していた。近場の陸の学校との対外試合は連戦連勝。自走砲で構成された我が校の戦車たちは見事に敵軍団を作戦で蹂躙せしめた。

 自走砲は他の戦車と違い、軽戦車並みのお値段で手に入り、砲を真正面にしか撃てない代わりに大口径の砲を積んでいるため中戦車でも距離次第で打倒できる。勝利は自信につながり、皆が鼓舞される。

 

「―――いいか!次の相手は因縁と言って良い!なにせ、【公式では無敗】の怪物相手だ!!」

 

非公式の試合では敗北もあるようだが、公式戦、要するに「大会」では負けなしの学園。それが今度の相手、【黒森峰女学園】。

 

「相手は言ってみれば【最強】だ!だがなぁ……

 

 

 ――― だ か ら ど う し た !! ―――

 

 

  応!! と声が唱和する。

 

 どんな相手でもかかって来いと、自分たちが絶対勝てないなんてことはないと、

 

これまで積み重ねた勝利が背を押し、担ぎ上げ、胸を焦がす熱量が全身に力を与えていた。

 

 

 

 ―――そんなもの、“本物”には通用しない。それを思い知った。

 

 

 

 いつも通りに試合開始と同時に前線を上げて、最小限の人数で軽戦車を使って展開。書き割りの戦車の絵を立てかけて偵察の兵を惑わせて進行ルートを厳選して、所謂『殺し間』を作って誘導し、一網打尽にする。

 必勝ルートと言うべき作戦も数回繰り返せば慣れて動きが早くなる。展開力も増して、擬態もスムーズになる。

 

 勝利を確信しながら後続の自走砲を待っていた軽戦車部隊の目の前で、書き割りが吹き飛び、重厚な音を立てながら歩み寄ってくる重駆逐戦車(ヤークトティーガー)に恐慌と狂乱が場を支配した。悲鳴じみた声が通信機越しに届き、救援のために全速力で飛び込んだ私が目にしたのは―――

 

 

 ―――蹂躙の跡だった。

 

 

 

 *******

 

 

 

「三年かけてせっせと作ったんだがなぁ……“墨俣作戦”が破られるとは思わなかったぞ」

「あぁ……墨俣の一夜城か。そりゃこの辺の地方に良く似合ってる作戦だな」

 

 お通夜みたいな自軍の空気に耐えられず、さりとてどこに向かうでもなくてフラフラとしていた私に声を掛けてきたのは小学生みたいな見た目の女の子だった。

 何でここに小学生が?と思うこともなくすとんと腑に落ちていたのは、私が月間戦車道を読んでその正体を理解していたからに他ならない。

 

 

 ―――天翔エミ。子供の様な体格で、ヤークトティーガーの装填手を一人で務めている怪物で、“あの”西住まほの相棒として【虎の翼】と呼ばれている少女。

 

 

「良い作戦だった。相手が黒森峰(うち)じゃなきゃ引っかかってやられてただろうさ」

「だが黒森峰には通じなかった―――それが全てだよ」

 

 愚痴をこぼしている自覚はある。それまでの成功体験に胡坐をかいていたわけではない。常に作戦をブラッシュアップして、仮に失敗したとしてもそれを巻き返すための作戦は複数あった。

 

 ―――ただただ、『強すぎた』それに尽きる。

 

 目の前に広がった蹂躙劇の跡と、転がった戦車たちと、それを避けながらゆっくりと前進してくる重戦車の強大さに、リカバリーのための作戦を考えるよりも前に乗員たちの心が根底から圧し折れていた。

 各個撃破 と、試合結果には書かれるだろう。実際は戦いにすらなっていない。ただただ、恐怖に逃げ惑う者や、戦車を捨てて逃げ出した連中の置き土産になった空の戦車を掃討していっただけの闘いだ。それをそのまま書き連ねると弱い者いじめの現場にしかならないから、こちらの顔を立てるわけでは決してなく、流派としてのメンツの問題で比較的やわらかい表現に落とし込んだだけ。

 

 

 

 ―――心の底に、澱が堪っていく。

 

 

 ドウセ、カテッコナイジャナイ

 

 

 ―――やってみないとわからない

 

 

 ヤッタケッカガ コレ デショウ?

 

 

 ―――煩い。

 

 

 ホントウハ、ワカッテイルクセニ……

 

 

 ――― 黙 れ !!

 

 

 

 

 沈んでいく意識、落ち込んでいく心。近くで何か話している天翔エミの声もどこか遠くから聞こえてくるように思える。私の胸の裡で私を苛むナニカの声に、視線は下に、意識は自分の胸の裡側に向いていく。

 

 

 

 「―――ここに居たのか。エミ」

 

 

 そんな声が、すぐ近くから聞こえた。

 

 私の肩越しに天翔エミに声を掛けたその人物は、下を向く私の横をスルリと抜けて天翔エミの隣に立った。

 そのままあくまで私の存在を放置したまま、天翔エミに飲み物のカップを渡して、そこで漸く気が付いたように私の方へ視線を向ける。

 

 

「―――あぁ、この娘は対戦相手のリーダーだった子」

「―――そうか*1

 

 

 慌てて紹介する天翔エミに短く返して、そこからは無言。じっとこちらを見つめるだけで、何も言わないまま。こっちとしても視線を上げることもできず、まるで気分はメドゥーサに対峙してしまった一般人だ。

 ヒリついた肌から嫌な汗がじんわりとにじみだして居る感覚に、『もう何でもいいから話すべきじゃないか?』とか『天翔エミも何で何も言わないんだ?*2』とかそんな考えがぐるぐると脳を支配しているさなかに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――胸が重いのか?」

 

「…………はぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 人呼んで【黒森峰の虎】【西住の体現者】【規格外の怪物】、そんな風に揶揄される化け物は、そんなことを唐突に口走らせたのだった。

 

 

 

 ―――正直、その後のことはあんまり誰かに語る事でもない。

 

 

 

「貴女は、貴方達は自分たちを誇りなさい。黒森峰(われわれ)と戦い、一時でも圧倒したと誇ればいい。私たちは常勝黒森峰、不退転の西住流。この名この身に自負がある以上、私たちを圧倒した貴女を認めよう。その強さを称えよう」

 

 

 

 ―――それは私だけの胸にしまっておけばいい思い出だからだ。

 

 

 

「次は負けない!――いや、次は私が勝つ!!」

「いいや、次も私が勝つ」

 

 スンッと真顔に戻ってそんな風に短く「当然だろう」といった風に告げる西住まほの姿に、心の澱が粉塵爆発を起こしたように、感情がこみあげて憤慨していた。

 

 

 

 ―――そうしてなんかスッキリした後で、告げられた。

 

 

 

 

「あのさ……安斎さえよければ、黒森峰に来ないか?」

 

「安斎千代美―――私たちと未来を作らないか?」

 

 

 

 

 安っぽい言葉に踊らされる女じゃあないつもりだ。

メリットもデメリットも、全部呑み込んだうえで、どうしようもなく惹かれた。

 

 その後、結局たった一度の負けで心から圧し折れてしまった連中を立て直すこともできないまま(と言うよりもしてやる義理を感じられなかったので、しないまま)時は流れそのまま卒業という事になり―――

 

 

「―――天翔ー!、西住ー!!来てやったぞ―――!!」

 

 

 学園艦に乗り込んで、精一杯声を張り上げ虚勢を張った姿で女学園の門をくぐった先で―――

 

 

「―――歓迎しよう。安斎千代美」

「ようこそ、黒森峰へ。選んでくれたことを後悔させないように頑張るよ」

 

 

 

 ―――並び立って私を出迎える二人の少女に、同じ制服で心から笑顔を向けて

 

 

 

 

「―――これから三年間、よろしくな!!」

 

 

 

そんな風に挨拶をしたんだ。

 

 

*1
「『そうか』、この娘があの奇策を現実に落とし込み黒森峰をあわや総崩れとなりかねない状況を作りだそうとした娘か。大したものだ」

*2
カス「まほチョビのファーストコンタクトの間に挟まるとか許されざる蛮行ゆえ(戒め)」





アンチョビ過去話 もう少しお付き合いください()

なおこのあと(以下略)


お年玉(体験版パッチ) どんなお話になるかは匙加減次第(ぇ)

  • 聖グロ
  • 黒森峰
  • 継続
  • プラウダ
  • 楯無
  • BC自由
  • ボンプル
  • 西グロ
  • きのこる
  • 二人のダージリン
  • サンダース
  • 大学選抜
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