【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
風邪+腱鞘炎のダブルパンチで冬休みの今現在進行形で苦しんでいます()
今年最後の更新です。良いお年を()
【前書き注意】
今回のお話は天翔エミ視点でお送りします。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ―――
―――走っている。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ―――
―――農道のオフロードをザクザクと踏みしめて、はぁはぁと吐く息荒く、乙女たちが走っている。
「―――歩調!!」
最前列の声に「いっちにー、いっちにー」と覇気の緩い声が返る。
そんな中―――
「バレー部復活 すーるーぞー!!」
『バレー部復活 すーるーぞー!!』
「目指すは東京 たいいくかーん!!」
『目指すは東京 たいいくかーん!!』
体操服にブルマ姿の四人が、ミリタリーケイデンス*1の曲調に乗せてジョギング速度で駆けていた。
「レシーブ!」『レシーブ!』
「ブロック!」『ブロック!』
「バックトス!」『バックトス!』
「スパーイク!!」『スパーイク!!』
『「フォローヨシ!バックヨシ!セットヨシ!』」
バレーの動きを取り入れながら他のランニングメンバーと同等の速度で走っていた。流れる汗も気に留めず、声を張り上げ楽しそうに駆ける姿が朝日に映えていた―――。
―――なおその後ろでハートマン軍曹仕込みのアレを歌いながら走っていた歴女4人は、原語で歌っていたので周囲の一般女子たちにはどういう意味の歌詞かわからなかったらしく、「そういうもの」だと映ったのか一団でご唱和しつつランニングしていた。ええんか……?
後日、意味を調べた一部の女子が悲鳴を上げることになるんだろうなぁとか思った俺こと天翔エミは……
「はいはーい。自分のペースでいいぞー」
「「「……は、ひへぇぇ……」」」
歩く方が早いんじゃねーかと思える速度でへろへろになりながら進む一団。
【ウサギさんチーム】を半モモ上げで微速前進しながら並走コーチングしていた。
―――ちゃうねん。まぽりんズブートキャンプとか初期の「なんでも諦め癖がある一年ズ」には劇薬過ぎて速攻諦めて辞めかねないから仕方ないんや……。
*******
「―――間引きを行う」
そんな風に、生徒会長に向けてまぽりんが切り出した。
「一応聞くけど、間引きって?」
「戦車の数が足りない」
「……かーしま?」
「―――天翔」「はい」
問い返した会長に一言でさっくり返したまぽりんの圧縮言語に、秒で白旗を挙げて桃ちゃんに解説を丸投げする会長。そしてそれをまぽりんと一緒に生徒会室にやって来ていた俺にトスする桃ちゃん。受け取る俺の構図これ今後の流れになりそうだな、と達観してみる。
「えー……『現状、在学生徒の大部分が戦車道を専攻していますが、発見された「戦車の」車輛が少なく、「足りない」状態です。戦車道大会までの猶予期間を考えても、レギュラーメンバーを絞って練度を上げなければ強豪校相手に立ち回ることは不可能。なので受講生徒数を制限するための足切り、悪く言えば「間引きを行う」べきだと提案します』 だと思います」
だよな?という意味を込めて視線をまぽりんに向けると「そうだぞ」とばかりに満足げな表情で口角を上げていた。微妙にわんこの尻尾が幻視されて思わず眼球を抉りそうになる。
(俺が翻訳した)まぽりんの提案を聞いた会長は「むむむ」と唸る。
―――生徒会(と原作知識のある俺)だけに開示されている情報。『学園艦廃艦通告』。
これを阻止するためと、学園で過ごす全校生徒が笑って過ごせるようにという願いを原動力に戦車道を始めた会長が、生徒たちの優劣をもとに戦車道専攻の人数を絞る審査側に回る。生徒会として戦車道を専攻した生徒へのサポートモリモリマッチョマンしてしまった経緯があるため、専攻から漏れた生徒たちから恨まれることは間違いないし、会長としても候補外になって泣く生徒を見るのは心が痛いに違いない。
が、まぽりんが提案する以上、「これを放置していると優勝どころか戦車道大会で苦戦レベルにも満たない大惨事を引き起こす可能性がある」という意図は察してくれたらしい。
そんな会長の苦悩を察したのか、まぽりんは姿勢を正して言った。
「問題ない。『篩掛け』は万事私とエミに任せてくれ」
そう言って頭を下げた。
*******
―――そして話は冒頭に戻る。
戦車道の最強豪、黒森峰女学園でも使われた筋トレ、体力トレを淡々とこなさせる。そしてついていけなくなった生徒が自分から転向を申し出る。という古典的なスポコンものにおける足切り特訓会の開催により、みるみる減っていく生徒たち。
その上で、「見込みのありそうな生徒にはエミから声を掛けてやってくれ」というお墨付きが付いている。さすまほ!と言わんばかりの対応と、歴史の修正力と言ったところだろうか。
そんなわけでロールプレイのためにある程度の訓練はやっている歴女チームと、バレー部復活のためならどこまでも頑張れるバレー部はともかく、原作で初手の模擬戦と聖グロ戦では形勢不利になった瞬間戦車捨てて逃げを打った諦め癖の強い一年生ズは早々に諦めて逃げる可能性があったため、俺が全力でサポートに回っているのだ。
ウサギさんチームは初期こそアレだが、後に超成長して駆逐戦車エレファントを【駆逐してやる!】する首狩り兎に変貌を遂げる有望株。当然みほエリのための重要な原作班である。
『
だからこうして武部殿と五十鈴殿(と秋山殿)を巻き込み一年ズと一緒に飲みニケーションを行うのは正しいことなのだ(理論武装)
それはそれとして原作キャラに近すぎるのでセルフピロシキとして右小指をコキャッと脱臼させ自戒する。
―――翌日、目ざとく小指の怪我に気づいて丸山さんにじっと見つめられた結果、「沙紀?」とやってきた他の一年ズに代わる代わる「大丈夫ですか!?」「平気なんですか!?」と心配され胃痛でちょっと吐血しかけた件。
大洗を出るまでは
*******
――月――日
「戦車道の教官(かっこいいおとなのきょうかん)に出会うため」を目的に武部殿が間引きトレーニングを生きのこった。人の欲望ってすげぇ。
五十鈴殿は悩みが晴れないようだが、その辺の事情を知るのは聖グロとの練習試合の後だから今は何も手が出せない。
冷泉殿?本来のメンバー加入は最初の教導からの模擬戦で途中から乗り込んで来るというものなんだが……ファーストコンタクトがアレだったからかまぽりんが冷泉殿のことを割と心配していて何かとコンタクトを取っていた。
どうも冷泉殿を色々とお世話している武部殿という構図にかつてあった姉妹の関係を思い起こしてしまったらしく、冷泉殿にみぽりんを重ねてしまったっぽい。
そうしてまぽりんが姉力を全力で発揮した結果。家まで毎朝起こしに行って、毎日着替えなどを行いーの、朝ご飯を一緒に食べーのをしていた。同じ部屋で寝泊まりしている都合上俺も一緒に行動しているので胃痛がヤバい。そしてそんな上げ膳据え膳でお世話されて戦車で送り迎えされる冷泉殿の様子にヤークトのメンバーもティーガーのメンバーも「あのお子様は何者なのか」という視線を向けている件。
そんでそれはそれとして弊害も出ている。おうお前だよ王大河。
冷泉殿に固執してるからってまぽりんにロリコン疑惑が掛けられてるの風評被害すぎるだろ。インタビューに対して全力で壁ドン(物理)して目力で黙らせてしまったのは悪いとは思ったけどそれはそれとして新聞記事は握り潰(物理)した。
――月――日
親方ぁ!空から戦車が!! で颯爽登場蝶野教官。
始めましての御挨拶の間も初手からずっとまぽりんをガン見している件。そらみぽりん以上に存在感放ってるから初手で気づくよね。
ご挨拶の後フレンドリーに話しかけられたり「あの人から最近の様子を聞いてきてほしいって言われてて」なんて世間話に花を咲かせてる間……
俺はすべてに絶望してダークサイドに落ちた武部殿を必死に宥めていた。
―――そしていまぼくはよんごうせんしゃにのっています。そうてんしゅで()
…………?????なんで???
*******
車長が武部殿で砲手が秋山殿、操縦手は五十鈴殿で……???
あれぇ?どこ?冷泉殿どこー?
いや待てビークールビークール。確かどっかで昼寝してて近く通った時に乗り込んできたよな……?と原作知識を思い出しながらひっひっふーと深呼吸。
「……す、すみませぇん……天翔殿のお手を煩わせてしまうとは……」
「え?あ、いや、大丈夫だよ。ちょっと予想外だっただけ」
秋山殿の申し訳なさそうな声にどうにかこうにか返事を返して心を落ち着かせる。
―――そう、考えてみれば当然の話ではある。
原作ではみぽりんがⅣ号の装填手枠に乗り込み戦車の操作方法を指示しつつ全体のレクチャーをしていた。という事は少なくとも誰か経験者が居ないとⅣ号を動かすのは無理無理無理無理カタツムリ。ついでに言うと経験者であり西住流であるみぽりんが居ない状態だとカバさんとかの「まずは経験者のいるⅣ号を叩くぞ」という全員から狙われるシチュになることもない。
そう考えるとまぽりんの方が適役ではあるが……まぽりんが俺というサポート抜きで対話が成立するかとなると無理無理無理無理カタツムリである。では俺とまぽりんが乗り込むか?
そんなもん戦場に赤兎馬に騎乗した呂布が居るんでモブ兵士で集まって倒せと言うのと同義である。他の連中の空気がお通夜一直線。路地裏でひっそりと息を引き取る羽目になる。
というわけでまぽりんは全体の動きを見て反省点などを洗い出す係。装填手という入っても問題ないモブの俺が経験者という枠で入ることになった。
大分原作から乖離してきた感じがするが、まだ原作まだ原作。
とはいえみぽりんやまぽりんと違ってただの一介の装填手である俺が入っただけのド素人集団が原作通り狙われるかって話ではある。心配が尽きない……。
「まずはⅣ号を叩く―――」
Ⅲ号突撃砲の車長席でエルヴィンが静かに告げた。
「……その心は?」
「経験者という点もあるが、高校戦車道屈指の装填手であるという点が無視できない」
エルヴィンの頬に冷や汗が伝う。
「秒間3秒の装填術と記事に書かれていたのが大げさだとしても、そんな速度の連射砲撃、ガトリングガンと変わらない。正面から1対1で対峙すれば南北戦争を蹂躙したガトリングガンの脅威を味わうことになる」
「いや、長篠の三弾撃ちに近しいかもしれん」
「戊辰戦争で長岡藩が新政府に打撃を与えた時の衝撃ぜよ」
「「「それだ!!!」」」
ある種和気あいあいとしたやり取りが行われるⅢ突の通信機の向こう側、
「……つまり天翔先輩という
「そういう話じゃなかったですよキャプテン!?」
―――八九式中戦車の中で、車長兼装填手の磯部典子が対抗心に燃えていた。
「あ、でも天翔先輩は三年生ですけど、夏の戦車道大会が終わった後でバレー部にスカウトしたらすごい戦力になりそうですよね!」
「それだぁ!!」