【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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「―――じゃあな、天翔」

 確かにそう告げられたはずだった。

要するにそれは「また後でな」的な意味合いであって、「ああ、それじゃまた」みたいな感じで返事を返したのであるわけで―――


「―――さぁて天翔(ひこくにん)、言い訳を聞こうか」


―――俺は今、両脇をガッチリとみほエリに抑えられ、テーブルを挟んで真正面にはドゥーチェことアンチョビがドリルテールをゆらゆらと揺らしながらこちらを見下ろしている。

「エミさん。正直に答えて?」
「先輩、諦めてください。こうなった隊長はしつこいですよ?」

両側から挟まれて交互にみほエリから詰められる俺氏。やめてください死んでしまいます(不夜キャス感)



幕間 【 現在(いま)あの日(むかし)のあの時と、ほんの少し先の話 】

 

 ――― 数分後。俺は全てをゲロっていた。せやかて工藤、しゃあないやん……みほエリに両側挟みこまれて逃げられない状態でアンチョビに詰められて耐えられるか?俺は無理だね(迫真)

当然ながら転生だのみほエリだののについてはノータッチ。俺の個人的な事情とか誰も知りたくもないだろうし、そも「TS転生ガルパンおじさん」とか普通に生活してたら聞くことがない単語とか唐突に言い出したら普通に精神異常者という判定が出るだろJK。

 

 

「―――とまぁ、こういう経緯でね。まほの内心や思惑なんかはあるだろうけど、まぁ……成り行きでこうなった感じ」

 

俺の言葉を聞いている間、みぽりんは絶句してるわ、エリカは顔を塞いでるわ、

そんでもってアンチョビ隊長殿は……

 

 

「っはぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

 

クソデカ溜息で呆れを表していた。残当()

 

「報告連絡相談を確りしろって言ったよな?私」

 

そしてギンッ!と強めの圧を孕んだ眼力で睨みつけてくるチョビを前に、両隣から小さく「ひっ」という声が響き、ギュッと両腕に添えられた手が強く腕を握ってきてる件。そろそろ真面目に死ぞ?我死ぞ?

 せやかて工藤……しゃあないやん?

俺はそもそも一人で大洗に向かう予定だったのだ。

それが「突然居なくなったらまぽりんがどういう行動に出るかわからん」という理由でしぽりんに話を通そうとした結果―――

 

 

 

 ―――何故か「同じタイミングで学園艦から出奔しようとしてたまぽりん」とブッキングしてしまい、ふたりで学園艦を飛び出すことになってしまったのだ。なんでや???(河内感)

 

 

 

 

 そんでもって肝心の「黒森峰への通達」はしぽりんを経由してその場に立ち会う形で存在したまぽりんによってチョビにもたらされるはずであり―――

 

 

 

 ―――「相棒として隣にいた存在の消失」というイベントにより喪失感を得るまぽりんを支えるアンチョビという構図が、後々まほチョビというCPのエッセンスとなるはずだったのだ。

 

 

 

 

 残された黒森峰の生徒に関してはそこまで心配はしていなかった。

だってみぽりんもエリカも残っていて、そこにドゥーチェ・アンチョビが居るのだからそれでどうとでもなるはずなのだ。

 

「……全く。私もお前たちを探して黒森峰学園艦を飛び出すとか考えなかったのか?」

「いんや、全く。これはまほも多分同じだと思う」

 

ドゥーチェモードから素の顔で嘆息するアンチョビの言葉に即答する俺。少し面食らった表情の三人に囲まれた構図のまま、目の前のアンチョビを見る。

 

 

「だって、“残された黒森峰(したのれんちゅう)を放り出して行く”とかできないだろ?お前さんは」

 

 

 原作―――ガルパン正史において安斎千代美は愛知県豊田市で生まれ、陸の学校に通っていた。成績も優秀で、アンツィオの衰退した戦車道を復興させるために直々にスカウトされ学園艦にやってきた経緯を持つ。

 好戦的で「負けない」「勝つ」と言った語録が多く勝利にこだわる印象が強いが、二回戦で大洗に敗北したにもかかわらず大洗を食事会に招待してみんなでメシ食って騒いでるくらい優しい性格をしている。

 

 あのノリの勢いで何処までも突っ走るアンツィオの面々をして「それがあいつらのいいところ」と言ってのけ、作戦のミスを怒鳴ることはするが作戦失敗に対して叱責はせず、次の作戦に切り替える軍師脳の持ち主。

ガルパン(コミカライズ版)では勝利絶対主義みたいな感じで描かれていて、みぽりんがフラッグから飛び出した原作の一件についてすごくキツい当たり方をしているが、こっちでは黒森峰学園艦で同じ釜の飯を食ってある程度付き合って人となりを見る機会があった。その上でこの安斎千代美にそんな感じの片鱗は無かった。なのでアニメ版ドゥーチェなのだろう(推理)

 

 ―――そんな安斎千代美(ドゥーチェ・アンチョビ)が、黒森峰の生徒をほっぽり出してまぽりんと俺を追いかける? ないね、ないない。

 

 ……いや冷静に考えると俺とまぽりん最悪じゃね?

 

第三者視点から見ると、「こいつは自分たちが出てっても責任感で全部抱えて頑張ってくれる」って確信犯で全部放り投げて、自分らがスカウトしたそいつ一人だけ残してさっさと古巣を抜け出して、新天地でフリーダムに戦車道やってるクソ野郎どもじゃね???

 

 あれれ~?おかしいぞぉ~?(メガネボウズ感) そう考えたら途端に俺もまぽりんもただの我儘なダメ人間に見えて来た……これ、黒森峰に戻っても生徒全員から一発ずつ本気でぶん殴られるくらいのKAKUGOが要るヤツなんじゃない……?

 

両隣のみぽりんとエリカが絶句して拘束が緩んだ隙に膝から力を抜き、脱力に任せて両膝を折る。ロリ体型低身長の俺はそのまま椅子の上で尻を滑らせ体重移動だけでスルリとテーブルの下に潜り込むように消え、「あっ」と声を上げたみぽりんとエリカ、アンチョビの視界から一瞬消えて

 

 

 ―――テーブルの真下で平身低頭覇(DOGEZA)の体勢を取っていた。

 

 

 ******* 《 Episode of 安斎千代美 ② 》

 

 

―――居心地の悪さというものはあった。

 

考えてみれば当然の話だと思う。だって黒森峰の連中は所謂「エリート」で、努力して今の場に進学してきた。

“西住まほと天翔エミに目を掛けられてスカウトされた”私に、妙な色眼鏡があるのは理解してる。それに【嫉妬】が混じっているのもまぁ、わからなくもない。

 

 ―――正直、どうにか歩み寄れないか と思ったこともある。

 

 とはいえ、それはそれとして【気に入らない】と思っている自分がいる。

 

 だってそうだろ?

 

 私はある意味で【価値を示している】のだ。西住まほと天翔エミという黒森峰の上澄みに認められるという結果を見せた私に対して『何も成していないお前たちが何を嫉妬するというのか』という拗れがあるのも事実だった。

 

「どうにかならないかなぁ?」

 

なんて、目の前の天翔に相談してみると、天翔も少し悩んで考え込んでいる様子だったが

 

「こんな格言を知ってるかい?『日本人は形から入るものだ』ってな」

 

ニッと口元を横に広げて少しだけ悪戯小僧のように笑う天翔に、ほんの少し自分の行動を後悔もした。

 

まぁ、杞憂に終わったが。

 

 

 *******

 

 

「~~~♪♪♪」

 

 気分は上機嫌だった。最初は違和感を感じていた黒森峰の制服やPJの着こなしにも慣れてきて、西住流の戦車道というものがどういうモノであるかも理解できてきて、順調に高校生活が捗っていた。気の持ちようでこんなにも変わるものか。と、思わずにいられない。

 風が舞い、“ふわり”と髪が踊るたび、皆の視線を奪っていく。

自分に向けられる好奇の視線にフフンと鼻を鳴らして歩く。

 

 

「西住ぃ!及び諸君!!おはよぉー!!」

「ああ、おはよう――――千代――――――み?」

 

 

 私の声に振り返った状態で西住が固まった。元々基本的に無表情なその顔が微妙に呆けた様な表情を浮かべている。周りの生徒たちも同様にぽかんと口を開けていた。全員の視線は一点に集約している。

 

 ―――安斎千代美(わたし)の普段はストレートで淑やかに真っ直ぐな髪が、グルングルンと渦を巻くドリルカールに変貌しているという一点に―――

 

「―――ち、千代美?その髪は?」

 

 普段の圧縮した言語も忘れて震える声で尋ねる西住に向かって、私はニィっと痛快な笑顔を向ける。

 

「ああ!すごいだろーこれ。

 

 ―――天翔がな!『すごく似合う』って言って、やってくれたんだ!」

 

 上機嫌で西住にそう告げる。西住が驚いて目を見開いているのがわかる。

 

基本的に天翔エミは、同じ戦車道を志す黒森峰の生徒たちに平等に助け船を出すし、西住まほのフォローを献身的にこなす。他の生徒隊に比べての西住への献身的にも思えるフォローと、お互いに最高のパートナー然とした振る舞いにより一段格上の存在なのだというアピールになっていた。

 

 そこにこうして『天翔エミが手ずから髪をスタイリングした私』が現れ存在をアピールした。

 

これは嫌でも周囲が理解させ(わからせ)られるだろう。

 

【安斎千代美は天翔エミと西住まほと同等の立場にあるのだ】と。

 

天翔の考えた作戦とは【論より証拠を突き付けて皆に理解させよう】というものだったのだろう。と、私は理解した。実際に効果は覿面、誰も何も言えないまま、西住の言葉を待っている。

 

 西住はわずかに口角を持ち上げるように、微笑みのような苦笑のような、そんな表情で

 

「―――ああ、千代美に良く似合っていると思う。」

 

そう答えた。周囲にどよめきが起こるかと思ったが、思いのほか静かなもので

 

 ―――とはいえ、【格付け】が完了したということは雰囲気で理解できた私は、悪戯が成功したときの子供の様な笑顔を西住にだけ見えるようにして微笑んで見せた。

 

「―――すまないが、少し用事が出来た。しばらく外すので、千代美がカリキュラムを回しておいてくれ」

「……!!わかった!この私に任せろ!!何しろ今の私は限りなく無敵に近いぞ!!」

 

 天翔の意図を理解して意を汲んでくれたらしい西住が、指導の立場を私に譲って席を外すようだった。ゆっくりと、静かな重圧から解放された様子の黒森峰生徒たちへと私は視線を戻し―――

 

「―――それじゃあ不肖ながらこの私、“安斎千代美”が代理としてお前たちを指導するぞ」

 

 にっこりとほほ笑んだはずなのに周囲から「ひっ」と短い悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

 ******* >> Others

 

 

―――空気が止まった。いや、停滞したように感じられる程に『重く』なった。と言うべきだろうか?

 

 少なくとも、背面しか見ることができない黒森峰生徒は自分たちに圧し掛かるその重圧の正体を、気づいていながら指摘できないでいた。

 

「でなー!でなー!天翔がなー!絶対似合うからってなー!!」

 

 とても嬉しそうに話す安斎千代美にまでは重圧が届いていない。というか千代美から放たれる幸せのオーラというのか……そういう感じのそれが、重圧を真っ向から跳ねのけていた。

 

「―――ああ、千代美に良く似合っていると思う。

 ―――すまないが、少し用事が出来た。しばらく外すので、千代美がカリキュラムを回しておいてくれ」

「ん?そうか?わかった!この私に任せろ!!何しろ今の私は限りなく無敵に近いぞ!!」

 

 太陽を浴びた向日葵のようにキラキラとした笑顔の千代美がまほからファイルを受け取り、黒森峰生徒たちの下へ、代わりにまほがミーティングルームを出て行き―――

 

「―――それじゃあ不肖ながらこの私、“安斎千代美”が代理としてお前たちを指導するぞ」

 

 一部の黒森峰生徒たちは、千代美の背後から部屋を出ていく直前に千代美の背中越しに視線を送っているまほの眼光に今にも泡を吹きそうなほど恐怖していた。

 

 

 [ えみにっき ]

 

 ――月――日

 

 チョビにはやっぱりツインテドリルが似合うとぉ……思うんですよぉ?(ねっとり)じゃけんツインドリルにしましょうねぇ~?

 という感じでチョビに交渉したら「そんなのやったことない」というのでね?マキマキー(Not Mrカーメン)したのです。

「お客様よくお似合いですよォ」と出来上がりにコメントするとすごいいい笑顔してくれまして、「ああ、いい仕事したなぁ」と達成感に満ち足りていたのです。

 

 数分後、なんか不機嫌そうなまぽりんがきました。

 

曰く、ね?「狡い」と。「自分もやれ」と。

 

 せやかて工藤。髪ないやん。まぽりんめっちゃショートやん?

 

とその辺をゆっくり噛み砕いて説明した結果―――

 

 

 ―――椅子に座って黙ってまぽりんに髪を弄られる俺がココニイマス(スパガ感)

 

 

 これ、ピロシキ案件?案件じゃない?と思ったのでまぽりんがひとしきり弄り終えて満足して帰った後でセルフ指ペキを敢行。利き腕の指じゃないしまだセーフ。だと思う。

 

 

  ******* 《 戦車道高校生大会 決勝戦 》

 

 

「―――してやられた。と言ったところか」

 

 ぎり、と歯を軋ませてまほが短く呟いた。

目の前にはティーガーを圧し包むように展開されたプラウダの車輛たち。

後方に目をやれば、ティーガーⅠに追従するように突出したヤークトティーガーを包囲するプラウダの戦車たち。

 

 ヤークトティーガーがティーガーを守護しようとすればヤークトの包囲が狭まり、ティーガーⅠがヤークトを守護しようとすれば、ティーガー側の包囲が狭まる。囲魏救趙の構図に、まほもフリューゲル小隊もおいそれと動けなくなっていた。

 突出したティーガーとヤークト。西住まほと天翔エミに対し、本来残された部隊を纏める役目だったはずの安斎千代美はまほとエミを追いかけていたためその場には居ない。そのため、急遽代理として西住みほが抜擢され、残された部隊車輛をまとめたみほは、二人の救助に向かうため、敢えて桟道を通って逆包囲に持ち込もうとしていた。

 

    しかし―――

 

『―――駄目だ!!そっちに行っちゃいけない!戻れ!戻るんだみほッッ!!』

 

 通信機を通じて届いた叫ぶようなエミの声に一瞬逡巡する黒森峰部隊。

しかしそれでも、みほたちの背後からの機銃射撃に、敵部隊に背中を取られているのだと嫌でも理解させられていた。

 

「―――ごめんなさい、エミさん。敵の別動隊から攻撃を受けてます。罠だとしても、桟道以外の道はきっと伏兵がいます。でもぎりぎりの幅しかない桟道なら、伏兵を警戒せずに済みますから……」

 

 みほはそう答えると通信を一度切って、殿を務める車輛を数輛展開させて防衛陣を敷き、桟道を進むために静かに前進を―――

 

『おーいおいおいおい!なぁ~に“負け犬”の思考に呑まれてるんだぁ?』

 

機銃掃射の弾幕とともに現れるT-34の合間を縫うように飛び込んだ一輛の戦車。黒森峰のエンブレムが煌くパンターG型がそのまま駆け抜け、黒森峰の防衛陣の横に華麗にドリフトターンで停車する。

 

バンッとハッチを蹴り上げて戦車の上から足先だけを跳び出させたその人物は、ブリッジのような背を逸らせたポーズで足から腰、胸元、首と逆再生するようにハッチからゆっくり迫り出して―――

 

 ―――顔を前に向けると同時に、“トレードマークの銀色のドリルテール”を靡かせた。

 

「単純な計算問題だぞ?ティーガーとヤークトの二輛を追い込むのに10輛くらい使ってる。なら残った車輛は?ここで攻撃して着てる理由はなんだ?しかも砲撃ですらなく機銃?桟道に追い込んで前後で挟もうってのが丸わかりだろ」

 

 はんっと鼻で笑って見せて、銀髪の少女―――安斎千代美は黒森峰車輛すべてに通るように、オープンチャンネルで声を張り上げた。

 

『おいお前たちぃ!!――――“お前たちは、何だッッ”!!』

 

 こめかみに血管が浮かびかねない程に強く、咆哮という言葉がふさわしい様子の千代美の声に、その場で殿を務めるために防衛陣の隊列を組んでいた戦車の上部ハッチを開き、車長たちが身を乗り出し―――

 

 

『―――――黒森峰女学園です!!!』

 

 

 統制の取れた返答を響かせた。

 

 

 

「―――お前たちのすべきは、何だッッッ!!!」

『―――勝利(Sieg)!!勝利(Sieg)!!勝利(Sieg)!!』

 

 

 

 

「ならばお前たちはどうすべきだッッッ!!!」

『―――闘争(Kampf)!!闘争(Kampf)!!闘争(Kampf)!!』

 

 

 

 

「―――ならば―――それをやれぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!」

『―――了解(Jawohl)!!!!!!』

 

 

 

 千代美の声に熱が伝播する。その熱は黒森峰全体を包み、染め上げ、崩れかけた統制を立て直した。千代美の声に後押しされ、桟道を背に反転したみほたちフラッグ車小隊に追従していた護衛車輛が周囲に集まり密集防御陣形を取る。茂みの向こうから散発的に機銃掃射や副砲砲撃での攻勢を行っていた推定的車輛群が茂みを越えて姿を現す。集まったプラウダのまばらな数の追撃部隊が、逆算するまでもなく桟道の向こうに伏兵がいたことを如実に示していた。

 

 声を張り上げた生徒たちのうち、密集陣形の外側、殿部隊の少女たちは車上からスッと戦車内部に戻り、すとんと車長の席に腰を落とした。

そうして放心したような、どこか虚ろな様子で宙を眺めて―――

 

 

 ―――きゅっと拳を握った腕を、歓喜の武者震いを起こす腕を、もう一つの腕で抑え込む。紅潮して上気した頬に震える手を添えて、

 

 

 

「総員、全力で守って―――全力で敵を撃破せよ!!」

 

『―――了解(Jawohl)!!!!!!』

 

 

 

 

戦車の中で、一葉に同じ叫びが響いていた。

 

 

 

「―――天翔ぉ!!西住ぃ!!こっちはもたせて見せるッッ!!

 

 ―――いいかぁ!きっちり片付けて、間に合わせて見せろ!王子様諸君ッッ!!!」

 

 

通信機を片手に車上でハッチに片足をかけた海賊のようなポーズで宣言する千代美に、通信機の向こうから『応』と返って来た。

 

 

 

 *******

 

 

 

 『―――いいかぁ!きっちり片付けて、間に合わせて見せろ!王子様諸君ッッ!!!』

「応!!」

 

 そう返したのはヤークトティーガーの車長だった。

 

『―――聞こえたか?エミ』

「ああ、取り乱してすまなかった」

 

 通信機から聞こえてくるまほの声に、静かに深呼吸してそう返事をするエミ。

ヤークトティーガーの中では全員が肉食獣のようにギラギラと瞳を光らせていた。

 

 

 

―――千代美からの通信に熱を受けたのは黒森峰全体である。

 

 

 

 周囲を包囲されてなお、闘志に燃える操縦手。照準の先にターゲットを映して「まだか?」「まだか?」と催促するようにトリガーに指を添える砲手。包囲の向こうで別に包囲されている隊長のティーガーⅠから目線を外さず通信機を手にする通信手に、ギラギラと野生の獣のような瞳で砲弾を手にする少女―――天翔エミ。

 

 ティーガーの上部から半身をのぞかせて、攻撃的に瞳をギラギラに光らせている西住まほの様子に、二重包囲しているのはプラウダ側のはずなのに、逆にプラウダが追い詰められているような感覚を受けているほどだった。

 

「―――援護は任せる!!」

「任しんしゃい!!」

 

まほの言葉に代わりに応えたのはヤークトの車長だった。

 

 

 

 

―――そしてその日、戦略面で完全に敗北していたはずの試合を、戦術的勝利でひっくり返すという大逆転劇を演じた黒森峰は、見事10連覇を成し遂げたのだった。

 

 

 





[ えみにっき ]

 ――月――日

 十連覇達成!みほエリを護ることができた!
俺はやった!やり遂げたぞ!!勝ったッッ!!第三部完ッッ!!
祝賀会でノンアル掲げて『乾杯ッッ!!』も今日は格別と言えた。


 ――月――日

 対外練習試合を何度か行ってきたが……どうにも様子がおかしい。
相手のチームの……なんつーか、やる気?そういうものが薄い。

―――嫌な気分だ。


 ――月――日

 「強者に弱者の気持ちなど理解できませんわ」
そんな風にバッサリと切って捨てられた。
ダージリンならばと恥を忍んで頭を下げたというのに全く分からない回答を返された件。「黒森峰と他の学園のことをもっとよく比べてごらんなさい」と言われて帰された。何もかもわかってるなら答えを寄越せと言いたい。


 ――月――日

―――そういうことか。



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