【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
――月――日
秋山殿がサンダース戦を前に潜入調査に入る前準備をしている。
ほぼ間違いなく近日中に配達バイトに紛れてサンダース学園艦に乗り込むのだろう。
原作通りならば途中で露見して必死に逃走することになるだろうが……ちょっと今のサンダース相手にそれは悪手ではないか?と思う俺である。
―――いややらかしたのはチョビだけど、そもそもの原因が誰かとなったら俺(とまぽりん)である。責任を取るべきと考えて当然の話だと言えよう。
……でもなんか秋山殿の距離感がエグいので後ろからこっそりついていくことにする。恐らくは、ぼっちで過ごした経験のあるみぽりんと違って孤高の先輩まぽりんでは、秋山殿はどう接していいのかわからないのだろう。その結果、まだ接しやすい俺に対象がシフトしたのだと思われる。が、これはよろしくない。みほエリが正義だと考えている俺ではあるが、その他のCPもおろそかにしてはならない。そこに余計なフラグが立つ余地を作ってしまえば、今後の秋山殿のCPが絶望的になりえる。
なので隠密に備えて装備をしっかりと用意していくことにする。ついでに自動車部に無理言って作ってもらった装備の試運転と行こう。
――月――日
秋山殿が緊張した面持ちでバイト衣装に身を包み、配達用の小型艇の乗り場に向かって行った。それを追いかけようとした俺であったが、そこに立ちはだかる影がひとつ。
「やはり偵察か。これから向かうのか?勿論私も同行する」
西住院!!いやまぽりんの知名度で隠れ潜むのは無理があるだろ!!
とはいえ、まぽりんをなだめようと本人が行く気満々ならば勝手に後ろから付いてくるに違いない。その場合、まぽりんがサンダースに捕らえられて最悪の事態を招きかねない。致し方なく同行を赦すしかなかった。
――月――日
ま、マホォーーーー!!!!!!
>> Others
―――サンダース学園艦。サンダース大学と、その付属高校が同時に存在している巨大学園艦であり、艦内に、シャーマンを始めとした多数のアメリカ戦車を有する、戦車道でも最大の車輛保有学園艦である。
ごくりと喉を鳴らし、帽子の唾をつまんで深くかぶり直して秋山優花里は配達の品をカートで運び込む。幸いにして、大洗戦車道の生徒たちの情報は、新参者のため広まっていないため、門番の警備はほぼスルー状態ですり抜けられた。
ひとつ息を吐いて、荷物を届けた後「トイレをお借りしたいのですが」と艦内のトイレに案内してもらい、そこで予め用意してきたサンダース大付属の戦車道科の制服に着替える。潜入記録用のカメラを自分の方に向けていることに途中で気づいてカメラを下げて、着替えを続け―――5分ほどでサンダース大付属の生徒に変装を完了した。
「さて―――ここからが本番ですね……」
ぐっと拳を握りしめ、優花里は足早にトイレから出て生徒に紛れ、作戦会議が行われている講堂に歩みを進めた。
******** >> Others to Emi
―――それは、一瞬の出来事だった。
学園艦搭乗口でゲート前に立っているサンダース大付属の生徒たち。
それを華麗にスルーする形で、全身ラバースーツ状態のアクアラングで身を包み、小型艇が到着する少し前に静かに着水。防水仕様のバッグから取り出した自動車部謹製のマル秘アイテム、「射出式フック付きロープ」を使って甲板上の手すりにフックをひっかけ、ロープを使って登攀し、ゲート横の空間に潜り込んだ黒い影。
―――そう、俺(とまぽりん)だ。
当初、真正面から堂々と乗り込もうとしていたまぽりんをなんとか押しとどめて、二人で潜入と相成ったわけだが……なんでまぽりんは“眼鏡とつけぼくろ”だけで誤魔化せると思っていたのか……?
ともあれ、ゲート横の空間でアクアラングをしまい込み、いつもの服装に戻った俺は、ゲート前の門番をスルーして入っていく秋山殿を見送り、どうにかゲート前の監視体制を崩して滑り込むかを考えていた。いたのだが……
―――“ピーーュゥィッ♪”
口元に手を当てたまぽりんが軽く息を吸い込み、口笛を吹いていた。
何やってんねんと焦って壁に身体を張り付けるように隠れる俺と、同じように壁に身を張り付けるまぽりんのすぐ横を、ゲートの監視をしていた生徒の一人が横切った瞬間―――
「――――かっ!?」
蛇が絡みつくようにヌルリと首回りにまぽりんの腕が回り、監視していた生徒を締めあげる。声を挙げようにもいきなりの衝撃でパニックになった生徒は喉を押さえ込まれ、さらにもう片方の手を脇の下から通して腕の自由を奪いつつ、口元を手で押さえると同時に人差し指と中指で舌を挟んで引っ張ることで完全に声を封じて居た。必死にじたばたと手足を動かして逃れようとするも、後方に体重をかけて引き倒されたその胴体にまぽりんの両脚が絡みつき、胴締めスリーパーホールドが完成していた。
ほどなくして、抵抗が徐々に緩くなっていき、完全にオチた様子の生徒から身を離し、まぽりんは手慣れた手つきで倒れた生徒の手を掴み、物陰の向こうのもう一人の監視生徒の視線が通るタイミングで手を振って見せた。
「ん?……どうした?何かあった?」
声を掛けた瞬間にするっと物陰に引いていく手に、もう一人の生徒が様子を確認するために近づいて手を伸ばしたその瞬間に、まぽりんはその手を取って引き込みながら引きずり倒し、声を挙げられないように、先ほど海を泳いでやってきたときにたっぷりと海水を吸ったハンドタオルを鼻と口がふさがるように押し当てながら体勢を入れ替え、三角締めで締め落としていた。
「これで二人分の制服と身分証が手に入った」
ま、マホーーーーーーーー!!!!?(まぽりん何やってんだこの阿呆ー!!の略)
目の前で1分にも満たない間に行われた慣れた動きのCQCに開いた口が塞がらない。っていうか妙に手馴れている。
「まほ……流石にやりすぎじゃないか……?」
どうにかこうにかそう言うと、「そうだろうか?」とまぽりんが返す。嘘だと言ってよバーニィ……
「どこの学園艦でも、基本的に潜入してきた間諜―――スパイに対しては無慈悲なものだぞ?黒森峰学園艦で間諜が発見されれば軽戦車による追跡部隊が存在するし、学園艦内で捕縛されれば間違いなく学園地下の秘密警察(ゲシュタポ)の餌食だろう」
マジかよ。俺あそこで5年近く生きて来たけど何も知らんかったんだけど!?
これまで過ごしてきた学園艦の唐突な情報に二の句が告げられない俺氏、黙っている間にまぽりんは二人の監視兵()を下着姿に毛布を巻いた状態で簀巻きにして、ゲートより内側の、学園艦の端から滑落しない場所に命綱を付けて転がしていた。
「エミも。そのための二着目だ」*1
まぽりんに促されるまま着替えを受けとる。しかし何と言うか……
「まほ……言い難いんだが……なんだ。私のサイズにピッタリ合う生徒の制服は……ないんじゃないかな?」
できる限り言葉を選んだが、まぽりんは視線を制服と俺に向けて交互に何度か往復し―――やがて(´・ω・`)の顔になっていた。
―――結局、制服はその場にきちんと畳んでその場に転がされてる簀巻きの横に並べて置き
まぽりんがサンダース生徒に扮してスニーキング。俺は物陰から物陰に隠れながら進むスニーキングというダブルスニーキングスタイルとなった―――。
****** 《 それから……おおよそ30分後 》 ******
「―――それで?ウチの制服をウチの生徒から奪って、その服装で、サンダース大付属に何の御用なのかしら?西住まほさぁん……?」
「―――何故バレたんだ……?」
「今時眼鏡と帽子と服装だけで!!戦車道広報にデカデカと!!10年も!!載ってる!!アンタの顔が!!誤魔化せるわけ!!ないでしょうがッッッッ!!!!」
サンダース大付属生徒であるアリサの絶叫じみた怒号が周囲に響き渡っていた。
学園艦の艦内部の一室。殺風景な部屋で、パイプ椅子に後ろ手に縛られた状態で拘束されたまぽりんと、アリサが対面している状態。部屋の外には見張りがひとり
―――そして、天井裏(通風孔)に俺がいる。
まぽりんをサポートする感じで動く者としてね?制服で変装できないから通風孔を進みながら下にまぽりんを確認しつつ進んでいたらあのザマであった。
まぽりんはまぽりんで、こっちの様子を確認したら目線から気づかれる可能性を警戒してかこちらに視線を上げようとしていない。結果としてディスコミュニケーションが発生、救出か放置かで悩む盤面が出来上がっていた。
「――それで?わざわざ学園艦に潜入調査ぁ?さっすが元黒森峰のエースプレイヤー。余裕ってわけ?ド素人連中のためにこっちの情報を集めて特訓ですかぁ?」
煽りまくるアリサの言葉にも繭一つ動かさないまぽりん。イライラが半端なく上昇してるのかどんどん不機嫌になり、声が大きくなるアリサ。それでも無反応のまぽりん。 そのやりとりが―――
「ほんっっっっとに!!もうすぐ廃校になる学園のために良い御身分よねぇ!!」
たった一言の暴露が、全てをぶち壊しにした。
「―――詳しく、聞かせてもらおうか」
ミシリ と、物理的に空気が軋んだ音がした。同時に“ごきり”と重い音がして、ロープがぱさりと椅子の下に落ちる。後ろ手に縛られていたまぽりんが自身の手首の関節を外して即座に脱出したのだ。
手首の状態を確かめながら再び何でもないような態度で手首をはめ直して、まぽりんがアリサに詰め寄るように前に踏み出す。「ひっ」と小さな声を上げてアリサが後ずさり、ドアに背中をぶつけて立ち止まる。
どうにかドアを開けて逃げ出したいのだろうがドアには内鍵をアリサ自身が掛けているし、目を逸らした瞬間どうなるかわからないという恐怖がアリサからドアに向き直るという選択肢を奪っていた。涙目で、腰が引けた様子のまま後ろ手にドアの内鍵を外そうとガチャガチャと手探りで動かしている様子を見るとホラー映画で追い詰められて逃げようと必死になるけど結局被害者になってしまうタイプのモブのそれにしか見えない件。
―――とはいえ、このまんまだと埒が開かないので通風孔の蓋を蹴り抜いて、どっかの怪盗の三世のように逆さまに顔をのぞかせると、キャパオーバーになったアリサが白目をむいてぶっ倒れた。節子、これアカンやつと違うかな??(汗)
その後、まぽりんをどうにかこうにか説き伏せて「生徒会長に詳しい話を聞けばいい」と押し通して、とりあえずまぽりんを縛ってたロープでアリサを縛って置いた。猿轡するだけの余裕はなかったのでアリサが声を上げられないように、目を覚ましたアリサの耳元でこっそりと耳打ちする。
「……タカシくん、だっけ?いい子だよねぇあの男子。ところでウチの学園艦さぁ……運命の出会いに憧れてて彼氏欲しいってよく言ってる“胸が大きくて家庭的でコミュ力も高い女子力高めの女の子”が、居るんだけどぉ……ああそうそう、その子五十鈴華って子の親友なんだけどね。このまま誰かに見つけてもらうまで黙って座っていたらこちらからは“何もしない”けど……わかるね?」
原作知識的には五十鈴殿=あの子ってのは推論でしかない。ないけどアリサとしては「自分よりスタイルが上で、コミュ力が高くて、女子力が高くて、女として見てもらえる対象」が想い人の隣に突然現れる恐怖の方が現実としてアウトらしく、コクコクと何度も頷きつつもガタガタと青い顔で震えていた。
「何を言ったんだ?」とまぽりんに聞かれたけどこんなの言えるはずがないんで、精一杯の茶目っ気で口元に人差し指を当てる「ひ・み・つ」というムーブをしたところ、露骨に顔を背けられた。うん、これはピロシキだわ(確信)
―――そんなこんなで外に出たところ、にわかに学園艦内部が騒がしくなった。
と、思ったら「ひぇええええええええええ!!?」という叫び声とともに必死に逃げてくる秋山殿と、その後ろから某ハリウッド版ゾンビ映画に出てくる「走って来るゾンビ」のように秋山殿を追いかけてくるサンダース生徒。さすがのまぽりんも無表情ながらドン引きしている。
「―――撤退以外ないな」
「同感だ」
まぽりんが一足先に踵を返して艦内の通路を下って行き、俺は逃げる秋山殿に並走し、「天翔殿!?」とびっくりする秋山殿を抱きかかえてまぽりんとは逆に“上”に向かう。
階段を駆け上がり、道を塞いでる生徒を避けるために手すりを飛び越え、勢いのままに壁を蹴って元の廊下に戻る。甲板の上に飛び出して追い立てられるままに外縁部に到達した。
そのまま背後に迫るサンダース生徒たちに向けて大きく手を振って声を張り上げる。
「あーーばよーーーーーー!!」
そのまま手すりを飛び越えて、自由落下。耳元で響く「ひぃぇぇぇええええ!!」という悲鳴をBGMに自由な方の手で腰のフック付きロープを上方に向けてブン投げれば、甲板から張り出した手すりに引っかかり、そのままターザンのように振り子運動で空中を滑って行く。
海面を猛スピードでかっ飛ばしていく船影がひとつ。高速連絡船を奪取したまぽりんが海上を進んでこちらを迎えに来たそれに向けて、俺は腰の巻き取り装置のロックを外して中に残っているロープを伸ばし、大きくなる振り子運動に揺られながら船に向かって下降していった。
―――こうして俺(とまぽりん)の潜入ミッションはくそみそな結果に終わったわけだが……秋山殿が原作並みに情報を集めてくれたので結果オーライであった。
――月――日
秋山殿の家で録画した映像をみんなで見る。
これは……アカンやつやないか工藤?
ジャンボはおろかイージーエイトまで投入とかサンダース本気過ぎない?
10対10の少数による試合だからまぽりんを10輛で抑えられるはずがないから量で足りない分質を上げた?ごもっともなお話で。いやごもっともではないが(困惑)
――月――日
生徒会長のとこに出向いてまぽりんと二人で『大洗学園艦廃艦騒動』についての詳細を聞くことになった。
「エミは最初から知っていたのか?」とかまぽりんが聞いてくるから「そんなわけないじゃーん」と返しつつ、『状況証拠を突き詰めた結果多分そういうことじゃないのかという推測があった』という感じのことをいい感じに説明しておく。
「原作で読んだから知ってました」とか言えるわけもない。信じられるはずもないからまぁ残当の話と言えよう。
まぽりんはなんか考え込んでいたが「しばらく留守にする」と言って学園艦を離れた。
――月――日
何かサンダース側から連絡があり、まぽりんがなんかやってくれたのか生徒会長がとても微妙な顔をしていた。
何をやったんだまぽりんよ……?(戦慄)