【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
――月――日
生徒会長のとこに出向いてまぽりんと二人で『大洗学園艦廃艦騒動』についての詳細を聞くことになった。
「エミは最初から知っていたのか?」とかまぽりんが聞いてくるから「そんなわけないじゃーん」と返しつつ、『状況証拠を突き詰めた結果多分そういうことじゃないのかという推測があった』という感じのことをいい感じに説明しておく。
「原作で読んだから知ってました」とか言えるわけもない。信じられるはずもないからまぁ残当の話と言えよう。
まぽりんはなんか考え込んでいたが「しばらく留守にする」と言って学園艦を離れた。
――月――日
まぽりんが何かを生徒会長に渡していた。
生徒会長は宇宙猫になっていた。
何をやったんだまぽりんよ……?(戦慄)
――月――日
まぽりんがサンダース側にも何かやったらしい。サンダースのおケイさんから連絡を受けた会長が、なんか不思議な、味わい深い表情をしていた。
だから何をやったんだまぽりんよ……?(戦慄)
>> Maho
サンダース大付属校に潜入調査を秘密裏に行う秋山優花里をサポートするというエミに同道して、変装の甲斐もなく発見され、拘束される。
寧ろこの拘束は僥倖でもある。潜入調査に来た者が捕縛されたとなれば、一旦尋問に切り替え、複数の経路からの潜入を警戒するだろうが、その場合は“同一パターンの潜入”は考慮の順位として低く置かれる場合が多い。ならば同じように変装して潜入している秋山優花里は疑われることなく調査を続行できるだろう。
そんな風に考えていた私を―――
「ほんっっっっとに!!もうすぐ廃校になる学園のために言い御身分よねぇ!!」
たった一言の言葉が打ちのめしていた。
―――廃校になる。とは、どういうことなのか?
考えるよりも先に身体が動いていた。目の前にいる“情報源”から直接聞きだせば最も早いと、即座に手首の関節を外して手首を縛っていたロープに隙間を作りそのまま腕を引き抜きその場にロープを落として立ち上がる。
多少無理やりになったので少々手首の腱を痛めた可能性を考え、外した方の手首を握力で拡げて元の状態に差し戻した。脱臼を嵌め直すことで腱を伸ばした分の痛みが残ったため少々顔を顰めたところ、何故か目の前のサンダースの生徒は「ひっ」と小さく悲鳴を上げて後ずさっていた。なんとも失礼なことだ。
問い詰めるために歩を進めたところで背後から通風孔の蓋が床面に叩きつけられる音が響いた。通風孔丈夫に潜んだままだったエミが蓋を蹴破ってこちらに顔をのぞかせていた。逆さまに顔だけを出しているエミの、その長い黒髪がだらりと垂れ下がる様子は少々……いやかなり恐怖映像だった様で、振り返ってエミを見ていた私の背後で「ひぅっ」と小さな悲鳴とともに扉に寄り掛かるようにして少女が気を失って崩れ落ちていた。
尋問をする側とされる側が逆転した状況で、一先ず自身がさっきまでされていた形に縛り上げたうえで“活”を入れることで気絶から覚醒させる。勿論、先ほどの「廃校」に関する情報を得るためなのだが、それを手で制してきたのはエミだった。
「次の試合の情報を得る方が先決だし、今秋山さんがひとり潜入している状況でどうなっているのかわからない。何より、廃校に関してはここで聞かなくても生徒会のメンバーが知らないはずがないから、そっちから聞いた方が確実だ」
エミの理屈としては正しく、ここで尋問して情報を得たとしてもそれは学園艦に戻ってからの答え合わせでしかないとなれば確かにここで彼女を尋問する意味は薄かった。が、それは気絶から回復させる前に語っても良かったのではないだろうか?このままでは無駄に叫ばれて発見されるリスクが上がるだけだと思ったのだが、エミが縛られたままの少女の耳元で何かをひそひそと囁くと、青い顔をしたままブルブルと震え首を縦に振っていた。
「このまま自分が見つかるまでは黙って縛られたままでいてくれるってさ」
そう語るエミに「いったい何を言ったのか?」と疑問が生じるのは当然の話だろう。そしてそれを尋ねずにはいられなかった。尋ねられたエミは少しだけ考える様子で黙り込み、どう説明したものかと首をひねっていた様子だったが、こちらに顔を向けて、少しだけ、小首をかしげるような仕草で口元に人差し指を当てて
「 ひ み つ ってことで、駄目かな?」
――――反則が過ぎる。何も言えなくなって顔を背けてしまった私の様子にそれを肯定と判断したのか堂々と部屋の内鍵を外して外に出ていくエミを、表情の崩れてしまった顔を必死に手で抑え込んで整えながら慌てて追いかけた。
結果として、外に出て間もなく秋山優花里が逃走しているところに遭遇し、やむなくエミと二手に分かれて逃走手段を確保し、皆で揃って脱出することになった。
*******
サンダース大付属で聞いた話の真偽を確かめるために、エミを連れて生徒会室に向かった。歓迎されてお茶まで出して貰いながらも、本題に即切り込むことにする。その結果、最初は河嶋さんが大声で何とか誤魔化そうとしていたが、角谷生徒会長の声に瞬時に鎮まって座り込み、それを尻目に生徒会長が語り始めた。
公式の訪問を以て『今年いっぱいでの学園艦の廃艦』を告げられたということ。
「戦車道を随分前に辞めてしまった学園艦だから」という理由で選ばれた。という理由に「なら戦車道始めようか」と返したこと。
「優勝したら流石に廃校にはできないでしょう?」と正面から喧嘩を売ったこと。
―――そして、「黒森峰を破って優勝するようならば廃校を撤回しよう」と笑いながら返事をもらったこと。
私はそれを―――どんな顔で聞いていたのか。
部屋に戻り、俯いて一人で考える。黒森峰が快勝を続けているその裏で、様々な歪みが生まれていた。それは私や黒森峰の責任問題ではない。責任はないが、感情の落としどころに迷っている。
罪悪感があるとか、そんな大それたことを考えてはいない。
ただ―――居心地が悪い。そう、居心地が悪いのだ。
だがしかし、方法が浮かばない。何ともいえないこの気持ちを払拭できる、“贖罪”とも言えない、何とも気持ちの悪い蟠りを解消する方法を。
―――廃艦問題。プロリーグ誘致。黒森峰。戦車道……必要な単語が脳に浮かんで溜まっていく。それらを繋ぎ合わせて、一つの『解』へとたどり着く―――
「―――これだ」
小さく呟いて、私は帰宅したエミに「次に寄港したときに暫く陸に上がる」と言伝をして、生徒会長の杏さんにも説明をして、
―――次の補給用の寄港に合わせて、学園艦を降りた。
*******
―――熊本県 西住家。
西住流から破門、実家からは放逐という沙汰を受けた身分で、再びこの地を踏むことになるとは思わなかった。だが、それでも目的のためにはこの行動が必要だった。
勝手知ったる家の中を、よく知っている背中に続いて、客間で、久しぶりというには少々早い再会を果たす。
「何故、と聞いても?*1」
底冷えのする声、のように聞こえるのは私の中にある恐怖心だ。
深呼吸を、数度。心を落ち着けて―――瞳を閉じる。瞼の裏に、角谷さんと、生徒会の面々。大洗の戦車道履修生たち。学園艦で過ごしている戦車道と全く関係のない生徒たち。
―――心は、決まった。
「―――お母様がご存知であったかどうかで、お話は変わって来るのですが……」
******** >> Maho → Others
―――文科省役員、
戦車道プロリーグ化による利権。そのための予算形成。予算を絞り出すための学園艦統廃合計画。複数の「ただ海の上を回遊しているだけで意味のない学園艦」を潰して統合、又は廃棄することで維持費と運営費を削る計画。これを上層部から受け取り実行していた時の、ほんの口約束。
「もしも本当に戦車道の大会で優勝できたのなら、廃校は撤回しましょう」
そのすぐ後だった。あの学園艦に『黒森峰のダブルエース』が転校してきたのは。
想定外も良いところだ。しかも片方はプロリーグ誘致のためのアドバイザーに協力を請うている西住流の師範の愛娘である。
一体どういうことなのかと西住本家に連絡をしても「娘が決めたこと」と梨のつぶて。仕方なく直接出向いて事情を尋ねると出て来たのは【大人の事情】だった。
『このままでは日本のプロリーグが立ち行かなくなる』
そんな言葉が出て来た時にはきっと顔色は真っ青になっていたことだろう。プロリーグの誘致は巨大利権が動く肝煎りの案件だ。上層部が今必死に海外と調整を重ねていて、そのために学園艦統廃合計画を進めて来たというのにそれではこの学園艦を廃艦にする意味がない。これまでの統廃合も意味を失う。
たまらず、ソファに深く腰掛けて、あとの説明を聞いていた。
ただ一つ、希望があるとしたら「勝利は度外視している」というもの。
黒森峰の一強を盤石にした結果、パワーバランスが崩れ、他の学園のやる気が失われた。だから【どうしようもない強敵】にならない程度にするために、エースを二枚落とす。脳が拒否したくなるような発想だが、それを言いだしたのが当の【どうしようもない強敵】の方なのだから余計に困惑する。
「正気ですか?」と思わず聞いたほどだ。その時目の前で座っていた無表情な少女は眉根をしかめて「心外だな」とでも言いそうな表情を見せた。同時に彼女が隣の少女とともに語った内容はこれまで以上に無茶苦茶な内容だった。
【大洗で築き上げた戦車道で、大会に参加し、決勝で黒森峰と戦う】
週刊連載の漫画のストーリーでも最近の時代の流れならもう少し控えめなところで手を打つだろう。だが、そこで二人ともが口にしたのは「勝てるかどうかは問題ではない」というもの。
要は「西住流の体現である黒森峰と、西住流の後継が率いる大洗。西住流同士の対決を決勝で行えばどちらが勝とうと西住流が覇権を得ている構図は崩れない」ということだ。それならば―――こちらの目的も果たせる可能性がある。
一縷の望みが残った話し合いを終えて、学園艦を離れてからどっと疲労がおし寄せてきたものだ。黒森峰の元エース、互いに比翼の相棒だったとはいえ、数の暴力には勝てまい。所詮残りは素人集団。
そんな元気は―――ひと月後に消し飛んだ。
聖グロリアーナ学園との模擬試合。大洗学園艦にあの二人がやってきたと聞いてからずっと張っていた『根』からの情報。
大洗学園艦の戦車道チームとの戦闘は、グロリアーナ勢の圧勝。
しかし、元黒森峰のあの二人の2輛とグロリアーナ戦車道総勢20輛の特別試合。
結果は――――元黒森峰組の勝利 とあった。
有り得ない。反則だろう。
報告書を読んで、この二組にさらに黒森峰の戦車たちが加わった去年の戦力を想像して―――他の学園艦の戦車道履修生の心が折れた理由に得心が行っていた。
同時に、心のどこかで楽観していた自分の心が圧し折れて下向きに沈んでいくのを感じていた。
そんなタイミングでの【黒森峰VS知波単】の一戦で行われた、黒森峰隊長安斎千代美による暴露と宣戦布告。
心の中でグッとガッツポーズもやむなきだろう。こちらが故意にあの二人の情報を流したのであればこちらの落ち度であり問題だが、黒森峰の方から正式に離反者への痛烈な皮肉であれば内ゲバに過ぎない。そしてそれは【自分たちを舐め腐っている】と判断するに十分な情報である。自然に、大洗は他の全てのチームに狙われる悪役に早変わりだ。他校のモチベーションが上がることが最大の目的であるあの二人にとっても喜ばしいことなのでこれを掣肘はしないだろう。八方ヨシ!である。
降ってわいた幸運に、沈み加減の心が上向きになった勢いで、上機嫌で祝杯を挙げた。
それから数日後――――
辻廉太は真っ青な顔で上質なソファに腰かけていた。高級な材質ノソファの座り心地など全く脳に入らない。目の前に座している女性の目力と全身に立ち上っているように見える謎のオーラめいた何かに圧倒されていた。
西住流師範、西住しほ。
それが何故か、娘であり現在は放逐状態のはずの西住まほを連れて文科省の応接室にやって来ていた。
「ご、ご用件は……?」
震える声で訊ねる辻に、しほはまなじりをさらに吊り上げて口火を切った。
「―――大洗女子学園における廃校問題。これに関する話を、「サンダース大付属の生徒」が知っていました」
しほの言葉に、まほが続く。
「当人は大洗学園艦に潜入調査の際に情報を手に入れたと言っていました。
そして、廃校を理由に、学園艦も廃艦となる。と」
「え、ええ。文科省からの命令を受けて、私が指揮を執っていますが……」
辻がそう答えると、しほは「で、あれば」と続ける。
「文科省が進めているプロジェクトの一環である学園艦の統廃合計画を、いち役人である貴方が「廃艦を取り消す」と答える権限が、あるのでしょうか?」
辻の背筋にゾクリと冷たいものが這った。答え方を誤ればこの場で首を切り落とされそうな謎の威圧感に舌が回らず、どうにかこうにか言葉を紡ぐ。
「に、20年以上前に廃れた戦車道を今更復活させたところで、十連覇を果たした黒森峰の牙城は揺るがないでしょう?積み重ねてきた年月が違う」
「積み上げた鍛錬は実力の裏打ち足り得ます。が、それだけが実力を示す全ての指標ではありません」
辻の言葉を遮りぴしゃりと言い捨てて、しほが続ける。
「もしも面白半分で、口から出まかせを語り、徒に大洗学園艦の女子生徒たちを煽り、希望を持たせるだけ持たせてひっくり返すつもりならば―――そのような二枚舌外交の人物と誼を持つことは躊躇われますね」
「い、いえいえいえいえいえ!!そんなことはありませんとも!!」
辻は焦った。戯れに吐いた言葉が、目の前の女性の不興を買い、プロリーグのアドバイザーを降りるなどという話になってしまうなら、責任問題どころの話ではない。プロリーグの設置に伴う戦車道チームの選別などは、餅は餅屋で任せるつもりで用意したものなのだ。慌てて必死に言いつくろう辻に、しほは一枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。
「結構。では―――こちらの念書に、ご署名いただけますね?」
しほが取り出した紙は
「黒森峰を破り全国戦車道大会で優勝した場合、自己の権限を使い『大洗女子学園の廃校、並びに大洗学園艦の廃艦を撤回させる』ことを了承致します」
と、流麗な字で書かれた念書だった。
辻はここにきて、進退が極まったことを理解し―――青天井で上がっていた心がまたべっきりと圧し折れて、真っ逆さまに下降していく幻覚を見ながら、死んだような瞳で念書にサインと認印を押印していた。
活動報告で「本物のそどまこをお見せしますよ」と言ったな!!
アレは今書いてる!!!(闇)
ちなみに役員の人のメンタルはまだ変動しまくる(予定)