【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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書いてて滂沱の如く涙が溢れた。

エミの章のエミカスはきれいなエミカスだけど、そうじゃないエミカスはピロシキすべきというアーマードコア氏の気持ち、ちょっとわかりました(




時系列的には終章『 』の少し前で、後編でみほ及びあんこうチームの協力を得た後くらいの時間軸になります


【 エミの章 幕間 元黒森峰組 】

 

「―――何ですって?」

 

その連絡を受け取った逸見エリカは、最初何かの聞き間違いだと思った。

 

 

 

  【 幕間 『 どうしようもない現実に 』 】

 

 

 

「隊長。もう一度、おねがいします」

 

 

険しい表情のエリカの言葉に、西住まほはいつもよりやや強張った無表情で頷く

 

 

「―――天翔エミは、もう戦車道を続けられる身体ではない。そして、身体が動く間に、元聖グロリアーナ隊長、ダージリンと決着をつけるために、西住みほ及び元大洗あんこうチームに協力を依頼した。エリカには悪いことをしてしまったから伝えておいてほしい、と。みほから連絡を受けた」

「―――~~~~~!!!!馬鹿にして……ッッ!!」

 

 

湧き上がる衝動を抑えきれないまま、エリカはブリーフィングルームから飛び出そうとした。それを制したのはまほである。

 

 

「―――どこへ行く?」

「隊長!行かせてください!!あの子はいつもいつも私ばかり……ああもう!

 何でいつも私だけ―――ッ!!!」

 

 

溢れた感情は激昂を煽り、感情のままに言葉を吐く。エリカの中にずっとずっと、澱のように積み重なったモノが、今吐き出されていた。

 

 

 

 出会い、初めて声をかけてくれた日のこと。

姉の贔屓目で抜擢されたようにしか見えなかったみほのこと。

間を取り持ち常に気をかけてくれていたおせっかい焼きのこと。

 

三人で共に駆けた学園での戦車道のこと。

車長適正を見出され離れ離れになった日のこと。

疎遠を気にして気を使い続けてくれた少女のこと

 

 

 そして、全てが捻じ曲がったあの日のこと。

 

 

どうしようもない現実に押しつぶされそうな友人のこと。

みほのことを託され消えることを告げられたあの日のこと。

 

 

 そして、唐突に目の前から消えてしまった二人のこと。

 

 

再会して変わりのなかった友人のこと。

互いの主張を張って怒鳴りあった日のこと。

戦車道を通じて再び語り合える喜びのこと。

 

 そして、一人過ごす日々の寂しさを訴えたあの日のこと。

 

 

 

 

 

―――天翔エミというかけがえない親友のこと―――

 

 

 

 

 

 黒森峰を卒業して、まほに誘われ同じ大学戦車道チームに所属し、まほの補佐を行う副隊長として、一緒に行動し、寄港のたびにみほやエミと一緒に過ごした。

秋山優花里とのことを相談され、惚気に付き合いきれないと席を立った日のことも

その後みほと一緒にエミについて語り合ったことも

思い出そうと思えばいくらでも思い出されて来る。エリカにとってみほもエミも親友だ。かけがえないものだ―――

 

 

 

 

 

   ―――なのに何で私はいつも独りなの―――?

 

 

    ―――何で貴女は私を頼ってはくれないの―――?

 

 

 

 

 

 

「―――隊長。お願いです……行かせてください―――!!」

 

 

血を吐く様な想いで紡がれた懇願の言葉は

 

 

「―――許可はできない。明日は、大切な試合の日だ」

 

 

まほによって一蹴された。今やプロリーグに名を連ねるチームに所属しているまほたちは、明日の試合に登録されている。今ここで離れることはできなかった。

 

 

『―――隊長!!私からもお願いします!!』

 

 

ブリーフィングルームのドアの向こうから声が響き、ドアを開けて一人の女性が現れた。

彼女の名は赤星小梅。かつて黒森峰のⅢ号J型の乗員を務め、あの忌まわしい大会決勝で滑落し、エミに命を救われた人間の一人でもあった―――。

 

 

『お願いします!!私は……私が戦車道を続けてきたのはいつかこんな日が来た時のためなんです!!』

「駄目だ―――許可は、できない。隊長として、お前たちが居なくなって、もしもチームが敗北することがあれば……―――」

 

 

まほが最後まで言葉を続けることはできなかった。エリカが最後まで聞くことなくまほに掴み掛り、その身体をブリーフィングルームの壁に叩きつけたからだ。

 

 

「いい加減にしてよ!!チームの勝敗なんかどうでもいい!

  私は、エミのところに行かなきゃいけないんだ―――ッッッ!!!」

 

 

まほの胸倉を掴み上げるエリカの手を、まほの手が掴む。強い握力でその手を外し、まほは初めて深い怒気を孕んだ声で、それでも淡々と告げた――。

 

 

「いい加減にするのはお前の方だ。

 

 

 ―――お前たちは、また繰り返すのか?あの日と同じことを繰り返すのか?

 

 

 ―――あの日の天翔エミになったお前たちを、天翔エミがどう思うのかを、考えたことがあるのか―――?」

 

 

 

 

 

 エリカの身体から、急速に熱が引いていく―――。

 

あの日、人道に臨み、自分の意志で自分の正義を為した少女は、全てに裏切られて世界から孤立した。

彼女自身はそれを気にした風にしていなかったが、自分たちはとても苦しかった。

辛かった。何もできない自分が歯がゆくて仕方がなかった。

 

 

 

 自分たちがそうなったとしたら、その原因となったエミはどう思うのか―――

 

 

 

 

力なくその場に崩れ落ちたエリカは、ただ涙を流した。

あの日から強くなろうとしたのに、結局は何の力にもなれない自分の身が悔しくて、ただ、泣いた―――。

 赤星小梅もまた、その場に膝を突き立ち上がることができなくなっていた。自身の無力が恨めしくて、苦しくて、辛かった。

 

 二人の様子を見て、まほはゆっくりとその場を離れる。ブリーフィングルームを出て、自室に戻り、明かりもつけることなくただ立ち尽くす。

 

 

 

「―――撃てば必中、守りは固く、進む姿に乱れ無し―――

 

 ―――鋼の心―――西住流―――

 

 ―――撃てば必中、守りは固く、進む姿に乱れ無し―――……」

 

 

 

何度も何度も繰り返すまほの呟きは夜の闇に消えていく。固く固く握りしめた拳からは血が滲み、ポタポタと床の上に滴が後を残す。

 

 

 まるで血の涙を流すかのように―――。

 

 

 




連続で書いていくと心が死ぬので次は馬鹿な話を書きたい(

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