【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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こころがしにそうだったのです。

バカな話が書きたかったのです。

ゆるしてください!何でもはできませんけど努力しますから! (by竜胆路紬)


IFルート
【 IF ダージリンルート などない! 】


聖グロリアーナ学園艦の応接室に、三人の人物がソファに腰かけて相対していた。

 

かたや、大洗女子学園の制服、西住みほ。そしてその隣に黒森峰女学園の制服姿の逸見エリカ。

対するは聖グロリアーナの制服姿。元グロリアーナ隊長、ダージリン。

 

「ダージリンさん……その……その後、進展は……」

 

みほの言葉にダージリンは口に運びかけたカップを止め、再びソーサーの上に戻し、軽く俯いてかぶりを振った。

 

「―――ごめんなさいみほさん……グロリアーナの諜報部隊を駆使しているけれど……彼女の行方は……」

「そう、ですか……」

 

みほの表情が曇る。そんなみほの隣でエリカも苦渋の色に染まる貌を隠すこともせず俯いていた。

 

「―――黒森峰も同じよ……どこをどう探しても、あの娘の……エミの足取りがまるで掴めない―――!」

 

ダンッといら立ち紛れに膝を叩くエリカに、みほが肩に手を置いて止める。

 

 

―――天翔エミが失踪してから早くも1か月が経過していた。

 

 

 

  【 装填騎兵エミカス IFルート 】

  『これは絶対にダージリンルートではない』

 

 

 戦車道高校生大会のエキシビションマッチを終えた翌日。エミがどこにもいないことに気づいたみほがあんこうチームに連絡。武部沙織によるメール一斉送信により情報が大洗学園艦のみならず、主だった学園艦の隊長格に流出。

 各学園艦が垣根を超えて結束し、学園艦連合を発足。一斉捜索が行われたが一向に姿を見せることがなかった―――。余談ではあるが、ちょうどその日、大洗学園艦を接収、封鎖していた文科省の役人、辻何某がタイミングが良すぎる封鎖劇に連合に捕縛・拘留された結果、大洗学園艦の廃艦の話は有耶無耶のうちに無期限延期されたが、そのあたりは些末なことだろう。

 

 

暫くして、合同関係を維持・継続することは不可能と判断され、各学園艦連合体制は一先ず解散、それぞれが諜報を行い、情報を共有する形で今も捜索を続けている。

 

「―――ウチの赤星なんか鬼気迫るってのがしっくりくるわ。昔を思い出してるんでしょうよ」

「え、エリカさん……あの時は、何て言うかごめんなさい―――」

 

 あの時、とは 黒森峰からみほとエミがそろって突然に消息不明になってしまったことを意味してるのだろう。確か、エリカもエミも何も教えられておらず、エミは通信機器も逆探知などの可能性を避けるため処分されたのだったか……?とダージリンは記憶の糸を手繰り寄せて補完する。

 

「―――いずれにしても、調査は続行させます。報告書もきちんとあげさせましょう」

「はい……ありがとうございます」

 

ダージリンが立ち上がるとみほも立ち上がり、頭を下げる。と、何かに気づいたようにすんすんと鼻を鳴らした。

 

「ダージリンさん、何か、付けてます?独特の香りがするんですけど」

「……ええ、最近眠りが浅くて、香道の実習生から心を落ち着かせる香木を取り寄せて、部屋で焚いておりますの」

 

 カップとソーサーを両手で支えたままそう答えて、ダージリンはカップの紅茶を呷る。一息で飲み干すと、後輩に茶器を預けてカーテシーのポーズをとった。

 

「では、次の定期情報交換会まで、ごきげんよう」

「―――そうね、次に会う時までに手がかりだけでも手に入れなくちゃ―――」

 

険しい表情のエリカに対して、みほは何かをずっと思案する物憂げな表情のままで、学園艦に戻る間も、ずっと考えを巡らせていた―――。

 

 

*******

 

 

 学園艦の廊下を気持ち速足で歩くダージリン。行く先は紅茶の園、グロリアーナの生徒会の中心部であり、グロリアーナだけに伝わる階級制度におけるハイソサイエティの身が許される空間である。

 重厚感を感じさせる木製の扉を開き、室内に入ったダージリンは

 

 

―――まずは厳重に施錠を行った。

 

 

 内部からの施錠が完璧にできていることを確認した後、懐から何かを取り出し、部屋の四隅を念入りにぐるぐると周り、アンテナを伸ばしたものを 振り回し何かを探し続けているようだった。

 

 一連の動作が終わったダージリンは、紅茶の園の赤絨毯の端を掴み、持ち上げる。

 捲れた赤絨毯の下に、持ち上げ式のハッチが現れた。 そのままハッチを開き、

最後に周囲を確認して、赤絨毯の端に引っ掛けたテグスを引き、絨毯を戻しながらハッチを閉じる。

 

 後には、誰もいない密室だけがのこされた―――。

 

 

*******

 

 

カンカンと梯子を下りると、下には隠し部屋があった。グロリアーナに似つかわしくない鉄製のハンドルノブ付きの扉を開くと、

 

「―――おかえり」

「お帰り、じゃありませんわ!本当に……」

 

黒森峰のノンアルビールを片手に、部屋の真ん中に備え付けたアルコールランプでビーフジャーキーを炙って一杯やってる件の女生徒、天翔エミが居た―――。

 

 彼女がここにきて早一か月。ダージリンの精神的な疲労度は日に日に増していた。はじめてエミが訪れた時、彼女は吐血するほどに体調を崩し、震える声で「しばらく匿ってほしい。誰にも知られないように」と訴えていた。

 今やそんな酷い体調だったころなど嘘であったかのようだが―――

 

「捜索隊が結成されて二週間―――この場所はまだ見つかっておりませんが、私もグロリアーナ諜報局へ根回しして報告を遅らせる裏工作をしている身分です。こんなことがあの二人に知れたらどのような目に遇うか―――」

「すまない。でもこれは、必要なことなんだ―――」

 

 頭を下げるエミの様子に、ダージリンはそれ以上文句を言うことを躊躇った。

代わりに尋ねずにはいられない。

 

「エミさん。貴女は一体、何をしたくてこんな真似をしているのですか?」

 

ダージリンの問いに、エミはダージリンをまっすぐに見返して、告げた

 

「―――みほとエリカが先へ進むために、私が居ては邪魔なんだ」

 

 ダージリンは理解する。この目の前の少女はどこまでも彼女たちのために敢えて離れることを臨み、そして自身もそのために心を痛めているのだ と。

 エミの左手の小指に痛々しく巻かれた包帯。それはこちらに匿われてしばらくして捜索隊が結成され、みほとエリカが心を痛めているとダージリンからの報告を聞いたエミが、翌日「変な角度で転んでしまった」と語る傷跡だ。

人為的に起こった傷でしかなく、ダージリンはエミに「自罰的自傷行為によるストレス軽減癖」を見た。何処までも友達を想い、そのために力を尽くし、心を尽くし、その痛みを与えた自分への罰を行う。

 見捨てられるはずがない。例えその結果自分が後に誰に咎められ様とも。

 

「―――ええ、ええ。わかりました。覚悟を決めて上げますわ。

 これより貴女と一蓮托生。共犯者になってあげますとも―――」

 

ダージリンの言葉にエミは「そっか」と短く呟き。炙ったジャーキーにガブリと噛みついた。

 

「あぁでも、あまり香りの強い食べ物や飲み物を増やさないよう、今もそのジャーキーの野卑極まりない香りを消すために香木を使っておりますので、ええ、バレないために」

「―――コーヒーミルを持ち込むことを検討してたんだが―――」

「この聖グロリアーナにそのようなものは存在しません」

 

 グロリアーナの流儀に泥水をぶっかけようとする共犯者を笑顔で黙らせて、一先ずはこちらへ嫌疑を向けられないように隠蔽と防諜をより強化しなければ。と、意気込みを新たにするダージリンだった―――。

 

 

*********

 

 

 ―月―日 

 

あの日、みぽりんとエリカにサンドされてみほエミエリとなってしまった翌日。

 

 俺は血を吐いた。

 

 理想を追い求め、反吐が出る現実に邂逅し、精神性のショックで胃に穴が空いたようだ。そして頭に血が上っていた俺から適度に血の気が引いたことにより、灰色の脳細胞が新たな可能性を模索し、算出した―――。

 

 

 俺という存在が表舞台から姿を消すことで、みほエミエリからエミが消えてみほエリが完成するんじゃね? という方程式の完成である。

 

 

 とはいえ、黒森峰から大洗まで二人分の人間の痕跡を完全消去したみぽりんの身内の諜報能力を考えた場合、これは現実的ではない。

 

―――そう、俺一人ならば―――。

 

 方程式を脳内で構築した俺はすぐに計画を開始する。エキシビションマッチの夜、部屋にスマホなどの位置情報を特定できる電子機器の類を置き、穴の開いた胃のせいで吐血モードのままで聖グロの学園艦まで宵闇を駆けた―――。

 唯一の懸念点は、あのダージリンが俺のお願いを聞いてくれるかという点ではあったが、全力の土下座を敢行することでダージリンはこれを快諾。紅茶の園の奥にあるもしもの時の避難用の隠し部屋の奥に俺をかくまうことに成功した。

 

 

 こうして、俺の隠遁生活が始まったわけだが―――

 

 

 全学園艦合同での捜索隊とか、張り切りすぎじゃない?とダージリンに尋ねると

「御自分の身分と立場を考えてもう一度同じ質問をできるか考えてごらんなさい」と呆れた顔で言い返されたので、考えた末に同じことをもう一回質問したら呆れ顔が「何なのコイツ?」見たいな顔に変わって結局教えてくれなかった。解せぬ

 

 ともあれ、俺という存在が消えて、喪失感によりお互いを求めあうみほエリの未来があることを信じて、俺は隠遁生活を続けるぞージョジョォー!!

 

 それはそれとしてみぽりんとエリカを曇らせた責任として手始めに小指一本を指ぺキしたら翌日それに目ざとく気づいたダージリンに「今後そういうのはやめなさい。やめなかったらすべてを暴露して皆の前に突き出します」と脅された。

 

 まぁ、最終的に集計して行って、最後にまとめてピロシキすればいいか。

 

 これでみほエリがなされなかった場合、俺のやったことって許されることなのだろうか?いや、許されないだろう(反語表現)

 

 その時はこの世から潔くピロシキするまでだ―――。

 

 

 

 一か月が経過して、ダージリンが秘密裏に密輸()した黒森峰のノンアルを呑みながらアルコールランプでジャーキーを炙って一杯やってるとダージリンに「何故こんなことをしているのか?」と尋ねられた。

色々考えてはみたが、ここはダージリンへの義理もあるし、きちんというべきだろうと考えて、

「―――みほとエリカが(みほエリという)先へ進むために、私が居ては(カップリング的に)邪魔なんだ」と説明したところ、何やら感銘を受けたらしく、共犯者宣言してきた。

 

 ならコーヒーミル持ってきてくれ、と言ったら笑顔で拒否された。なんてやつだ

 

 

 

 そして今日も無理やり紅茶を飲ませようとしてくるダージリンをノンアルと炙りジャーキーで撃退する日々が始まる―――

 

 

 

 




みほ「―――うん。やっぱり違う。この香木の香りじゃない。微かに違う匂いが混じってる―――どういうことなのかな?ダージリンさん……何を隠してるんだろうね……?」




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