【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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 〇月×日

黒森峰との合同訓練。戦車一輛同士の模擬試合が始まる。
勿論、忌まわしき天翔エミのチームを指名。前回はマチルダで挑み、速度の差で接近を許されず敗北した。
 ならば速度。MkⅧハリー・ホプキンスで相手の疲労を待ち、至近弾で装甲の薄い部分を狙い仕留める。Ⅳ号の装甲ならば至近弾で的確に狙えばQF2ポンド砲でも貫通させることができる……はず!

 なんと完璧な作戦―――蝶のように舞い、蜂のように刺す。グロリアーナの優美な流儀にふさわしき作戦。「カーテシーに潜む薔薇」とでも名付けようかしら?


                 ~ ダージリンの手記 より ~



【 破の章 『疾風 意地と見栄と恐慌の円舞曲』 】

  「俺はただみほエリが見たかっただけなのに 三次 」

 

  【 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ・破 】

 

 

―――― Side Darjeeling

 

 

 

 

 

 

―――ゴゥン!!

 

快速で疾走するハリーホプキンスのごくごく至近距離で、砲弾が炸裂する。

 

 

「ヒィィィィィ!!!!?」

「もう嫌ぁーー!!」

「ナンデ!?連射ナンデ!?アイエエエエエエエ!!!?」

 

 

轟音に軽戦車であるハリー・ホプキンスが揺れる。衝撃でガタンゴトンと車体が弾み、私以外の全員が半ば発狂に近い状況に陥っている。一部発狂している子もいるかもしれない―――。

 

 かくいう私も実のところ多分に漏れず、内心では今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。誰なのこんな作戦を考えたのは!?

 そうね、私ね!みんなごめんなさい―――!!

 

 

―――だってだって、あんなの反則過ぎるでしょう!?

 

 

 

 

  ―――試合開始から5分が経過しているのに、「装填速度が全く落ちていない」なんて―――何なのあの娘は!!?

 

 

 

 

試合開始とともに全速で逃げ回るハリー・ホプキンスに対し、Ⅳ号戦車は砲撃を当てられず、戦況は逃げる者とそれを狙う者という構図にまとまっていた。

 私の狙いはもちろんスタミナ切れ。装填3秒未満というスピードであろうと、生物である限り必ず息切れを起こす。あの子の矮躯で砲弾を装填し続けるのならば猶更スタミナは浪費される。

 

 あとはじわじわと蛇のように食らいつけばいいだけの話―――いえ、訂正。今のは英国淑女としていけない例えだった。

 

 じわじわと―――じわじわと……そう、真綿で首を絞めるように。相手が自滅するのを待つだけで良い。

直撃弾を食らえば一撃でアウトというリスクを伴う戦いではあるが、それでも逃げ回る時間はそう必要ない。

さて、天翔エミ。貴女はどのくらい保つのかしら……?30秒?1分?それとも、2分かしら?

 

 

 私は内心で勝ち誇り、操縦手に的確に指示を出しながら快速で駆け回り続けた。

 

 

 

 

―――私が『一体どれだけの常識外れ(アウトサイダー)』を相手にしているのか、その時は知りもしなかった―――。

 

 

 

 

―――開始から1分。

逃げ回り続けながら余裕で紅茶を嗜んでいた。

 

 

 

 

―――開始から2分

通信手からわずかな不安が見え隠れし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――開始から3分。

全く衰えず、平均3秒間隔で打ち出される砲弾の衝撃に悲鳴が生まれ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――開始から5分と30秒

 

 

 

『―――Ⅳ号戦車、残弾数ゼロ。よってこの試合、審議の末、引き分け―――!!』

 

 

 

「お―――おわった……の?」

 

 這う這うの体で呟いて、ぐったりと車長の席でグロッキー状態の私よりも、目下の光景は悲惨に尽きた。淑女として色々あってはいけないものが漏れていて、PJも涙だの唾液だの【漏れてはいけないもの】だのでもう酷い有様だ。

 

 車輛底面部のハッチを開いて全部垂れ流しにしたい気分だが、それを誰かに見られようモノならこの娘たちの将来が危うい。

 

 “美しき白鳥も水面下では醜く水面を掻いている”の言葉にありき

 

私一人で外に出て、ご挨拶の後にホプキンスを移動させるとしよう―――。

 

 

 

 

―――

 

 

〇月―日

 

チームメンバーに強烈なPTSDの発症が確認された。

主に砲弾の着弾音に対するパニック症候群だが、通常の症状はそれほどひどいものではない。

「連続着弾の音に過敏に反応する」タイプのPTSDだ。

 

―――おのれ天翔エミ―――絶対に許しませんわ……!!

 

追記

「カーテシーに潜む薔薇」作戦の永久凍結を決意。

もう二度と御免よ。

 

 

                   ~ダージリンの手記より~

 

 

 

―――

 

 

 

 

――――――Side Emi

 

 

 

 今日は聖グロリアーナとの合同訓練だ。

 

この間の一件からしばらく、ダージリン(仮)という「共通の敵」を通じて多少なりとエリカとみほの関係が柔らかな方向へ流れて行っている……気がする。

 そう考えるとダージリン(仮)というエッセンスを加えることで、水と油の二人の境界線を曖昧にすることで、みほエリの構築に一気に近づけるのではないだろうか?

 

 

 クォレハァ……来ちゃったんじゃないかな?みほエリの時代……!!

 

 

 

ダージリン(仮)を生贄にしてアドバンス召喚!みほエリ降臨せよ!!

 

 とかできるのであれば苦労などしない。みほエリの道は一日にしてならず。一日一歩。着実に歩を進めるのが一番の近道なのだ―――。

 

 

 

その先にきっとみほエリはあるぞぉ……だから、止まるんじゃねぇぞ―――!!

 

 

 

「―――天翔エミさん。ごきげんよう」

 

物思いにふけっていたら接近するダージリン(仮)に気が付かなかった。少しびっくりした表情の俺の前でダージリン(仮)が背筋を伸ばしたまま両手を軽く広げてお辞儀をする。 確か、カーテシーだったっけ?

 挨拶を返そうとして、

 

  ―――その時、エミに電流走る―――ッ!!

 

―――俺、ダージリン(仮)の名前、聞いたことねぇ という事に―――!!

 

やばいよ、ダージリンとか確かまだSN貰う前だし、その名前で呼ぶのはまずい。そもそも何でこいつ俺に名乗ってもないのにさも「知ってて当然でしょう?」という顔で挨拶に来てるの?ふざけてるの?

 

 まずい、何がまずいって英国式の挨拶してるタイミングで挨拶を返さずに沈黙でいるのがマナー的にアウツ。全アウツ……何かないか……?何か、何か……

 

 

悩んだ末に光明一筋。「私、貴女にまだ名前を教えてもらってない」と言うと、少し考える様子を見せて、教えてないことに思い当たったようだ。

よし、「なまえをよんで」作戦成功。持ってるわ―――。

 

 

「―――私の名前は―――『次!グロリアーナの7番!相手を選べ!』―――失礼。順番が来たようです」

 

 

間が悪いというかなんというか、ダージリン(仮)の名前は教官の声に遮られてしまった。残念!!

 そしたら目の前のダージリン(仮)が俺に向かって手を出した

 

「では天翔エミさん。私と一局(面)、踊っていただけるかしら?」

 

 

 なんと、やせいのダージリン(仮)がとびだしてきた(にげる不可

 

 

他のメンバーと相談してからと言ってチームメンバーを引っ張ってきたのだが、とにかくダージリン(仮)とエリカの仲が悪い。再び始まる言葉のドッジボールに、「またまほ隊長が来るぞ」と止めに入り、なんだかんだで試合開始。

 

 

こちらはおなじみⅣ号戦車F型。対する相手は―――

 

「あれは……ホプキンス?舐めてくれるじゃない」

 

エリカが怒りの限界を超えたのか、なんかイイ笑顔で不敵に笑っている。

みぽりんはみぽりんで静かな表情の背後に炎のオーラが見える。このままスーパー西住人に進化してしまうくらい燃え滾っている。

 

 

 いったいダージリン(仮)はこの二人に何をしたと言うんだろうか……?

まだ弱気でおどおどすることが多いみぽりんがこんだけメラメラしてるってよほどのことじゃなかろうか……?

 

 

―――試合が開始すると同時にハリー・ホプキンスは全速力で離脱行動を取り、黒森峰の練習場名物「黒の森」を利用し、木々の間を駆けまわりながら回避運動に専念していた。

 時折遠距離から砲弾が飛んで来るが、ホプキンスの主砲はQF2ポンド砲。距離が開きすぎてて回避も余裕だ。

 

 

 暫く砲撃しながら様子を見ているが、相手が近づいてくる様子が一向にない。

 

 

 

 

 

「―――もしかして……聖グロの車輛、装填手の疲労を待ってる……?」

 

 

 

みぽりんが小さく呟く。

なるほどなーと、すとんと腑に落ちた。アイツら逃げ回って装填速度が落ちたタイミングで接近、ゼロ距離射撃で装甲をぶち抜こうっていう魂胆だったかぁ―――

 

 

 だが、その作戦は失敗だ――――――なぜなら

 

 

 

 

 

 

「へぇ―――面白いじゃない」

 

 

 

誰よりもブチギレているエリカがここにいて、しかも悪いことを思いついたとき特有の残忍な笑みを浮かべておられるからだ(敬語)

あまりにあまりなエリカスマイルにみぽりんが完全にビビって尻尾丸めたわんこになってしまっている!!

 

 

 

「―――エミ。かまやしないわ!!!

 

 

 

 

 

 

      ――――とことんまでやんなさい!!」

 

 

 

 

 

   オイオイオイ、死んだわダージリン(仮)(二度目)

 

 

 

 

 

 

―――そこから先は、特筆すべきこともない。もともと試合開始から終了までペースを落とさずに装填することができる無尽蔵のスタミナと筋力のお陰で、こっちは早々にまほ隊長の車に移動させられかかったのだ。スタミナ勝負を挑むとかさぁ……

 

 

 

 

――――馬鹿でしょ?(烈海王感)

 

 

 

 

まぁ、「うぉぉぉん!」とばかりに人間スピードローダーと化した俺の高速装填からの乱れ射撃ちにより現場は大混乱。黒の森に次々とできるクレーターめいた着弾痕、必死で逃げるホプキンス。試合はシューティングゲームの様相を呈して来て……

 

 

 

―――うん。先に砲弾が尽きました(

 

 

 

 

勝負は引き分け。試合の後はノーサイドってことで挨拶に出向いたら、ダージリン(仮)だけが出てきてカーテシーでご挨拶。

そのまま「急いで反省会がありますので」と言ってそのままの体勢でバック走で逃げて行った。

 

 

―――あれ?名前……まぁ、俺の記憶(ログ)にはなにもないな

 

 

 

 

 

―――

 

 

〇月―日

 

今度はグロリアーナの艦上演習で聖グロリアーナとの模擬戦。

何故かダージリンの車輛が恐慌状態に落ち込んだため、砲撃、撃破した。

 

撃破した瞬間、エリカが喜んで手を掲げ、みぽりんと「はい☆彡たーっち!いぇい!」していた。

すぐに気づいてそっぽ向いて真っ赤になるエリカと嬉しそうなみぽりん。

 

 

 やばい。尊い。達する()

 

 

これは間違いないな。俺は確信した。

 

 

 

 ダージリン(仮)を倒せば、みほエリの仲が1段階進む!(確信)

 

 

 

―――

 

 




たまには、頭を空っぽにしてバカっぽい話にするのも悪くない(



いや、やりすぎた感がないわけではない(

だ、大丈夫。ストーリー的には終章につながってる。繋がってるから……(
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