【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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しっくりこないまま終わった決勝戦。どうにもこうにもシマリが悪い。


気分変えて親睦会的なやつやろうぜ!ってことで強引に行われる大宴会!


互いに健闘をたたえ合い、ノンアルで乾杯してバカ騒ぎして――――


翌朝目を覚ますとベッドの上で、記憶がないが隣にはスヤスヤ眠るダージリンが―――


(嘘です)



【ダージリンファイルズ IF②異聞 derFilm ①】

 

「茶柱が立ったわ―――イギリスのこんな言い伝えを知ってる?―――“茶柱が立つと、素敵な訪問者が現れる”―――」

「―――もう現れてますよ。素敵かどうかは、別ですけど―――」

 

優雅に紅茶を嗜みつつ知を披露するダージリンに、呆れた調子でため息を吐きながら、それでも応じるオレンジペコ。そのすぐ隣のマチルダに搭乗している俺のところまで、その声は届いている―――

 

 

 ―――というか、この展開、知ってるようで全く知らないんだけど―――!?

 

 

「―――ダージリンさん。聞こえますか?こちらⅣ号。あんこうチーム臨時車長、西住みほです」

「―――ええ、聞こえましてよ。みほさん、そちらは?」

「丘を越えるのにちょっと苦労してます―――高台にJS-2が1輛―――多分ノンナさんです」

 

通信機の向こうから聞こえるのはみぽりんの声。その周囲では着弾音や爆音が響いており、戦闘の激しさを思わせる。

 

「―――結構。そのまま重戦車の相手を幾分か引き付けて置いてね?状況が好転したら挟撃に移れるように準備は怠らないように」

「―――はい!其方も頑張ってください!」

 

 

 

 

―――現状を確認しよう。状況は極めて『ガールズアンドパンツァー劇場版』に近い。限りなく近い―――ダージリンの乗るチャーチルと、俺の乗り込んだマチルダは互いにゴルフ場のバンカーにハマっていて、抜け出せない。盆地になっているくぼんだ地形のおかげで下部の薄い装甲の部分を隠すことができるので被弾から即撃破の可能性は減った。ただ逃げることもできない。詰んでる(確信)

 

 ここまでなら劇場版だったのだ―――。問題は、エキシビションマッチの内容にある。

 

本来は全15輛同士のフラッグ戦。

 

こちら―――大洗・聖グロリアーナ連合

フラッグはチャーチル。ダージリン・ペコ・アッサムのシスターズが搭乗

Ⅳ号戦車にあんこうチーム+みぽりん(本来のあんこうと言える)

マチルダにモブ車長を載せた俺、ルクリリ

クロムウェルMkⅢがニルギリ クルセイダーにローズヒップ

八九式中戦車、アヒルさん以下大洗の車輛8輛。

残る1輛だが―――優勝校と準優勝校のチームなので14輛で相手取ることになっている。

 

対してあちら―――“仏露連合()”

プラウダから かーべーたん(KV-2)、JS-2、T-34/85。 ニーナ・アリーナにノンナ、クラーラ、そしてカチューシャの4輛に、モブプラウダ生徒を含め7輛

そして、準優勝校である聖グロと1回戦で戦った相手―――

BC自由学園から合計8輛。ARL44が4輛にソミュアS35が4輛―――。

 

 

―――エキシビションのチーム分けは「優勝校・準優勝校を含めた「ベスト4」の4校と、「準優勝チームと一回戦で当たってしまったチーム」に限られる。

 

このルールにより、「準優勝チーム」である聖グロリアーナと一回戦で戦った「BC自由学園」が選考されたわけだ。

 

―――原作だと黒森峰と一回戦で当たった知波単が選考され、大洗知波単連合とプラウダ聖グロ連合での戦いになった。確かこの組み合わせ考えたのダージリンだったはずなんだが―――。

 

 

「―――何で優勝校と準優勝校がタッグ組んでるんだって話だよねぇ」

 

呑気な声を上げているのは聖グロメンバーに交じってバンカーにはまり込んでいるカメさんチーム車長、角谷杏。先の大会では大洗廃校の重荷を誰にも話せず背負ったままだったが、決勝の試合直前・及び試合中の色々でその辺を吹っ切ったようで、原作通りの人を食ったような会長に元通りしている―――。

 

「―――こんな言葉をご存知?“悪貨は良貨を駆逐する”」

「16世紀イギリスの財務官、トーマス=グレシャムの提言する『グレシャムの法則』におけるキャッチコピーですね」

 

ダージリンの言葉に即座にペコっているペコりん。流石と言わざるを得ない。

 

―――まぁ端的に言うと、「大洗戦車道の評判、悪すぎてやばい」というわけだ。

完璧な奇襲でいいとこなしにボコられたカチューシャはヘソを曲げてしまい「何で大洗と組まなきゃいけないのよ!」とそっぽを向くわ、戦ったことのないBC自由学園ですら、この戦闘に参加していない代表、マリー曰く「戦場で信用できない味方なんかと組むのは愚か者のすることよ」と言って、プラウダと組んでしまったのだ。結果、こうしてパワーバランスが著しくおかしな配置での試合が運ばれたわけだが―――戦力差の割にかなりピンチに陥っている。

 バンカーにはまり込んだフラッグであるチャーチルがスタックを起こして停止。それを護るようにマチルダが密集しており、正面からはBC軍団。背後から回り込んで救援しようとする大洗のサメさん、レオポン、あんこうがカチューシャ率いるプラウダ部隊と戦ってる(

 カメさん、ウサギさんは先行してやってきて盾になっており、アリクイさんは林の中でアンブッシュ。アヒルさんは敵を引き付けられないか陽動の真似事をしている―――。

 

―――改めて考える―――うん、これもう俺の知ってる劇場版からズレ過ぎてもう(試合の結末が)わかんねぇな(確信)

 

 

「前方10時の方向よりソミュアS35、4輛!」

「同じく前方2時の方向!ARL44、4輛!」

 

アヒルチームとカモチームの鳥コンビから報告が届く。どうやらBC自由は全車輛で確実にこちらを沈めにやってきたようだった―――。

 

 

「―――チャーチルの機動力65%、砲塔角度の問題から火力は44%まで低下してます。どうするんですか?ダージリン」

 

アッサムの報告を聞き、ダージリンはあわてず騒がず紅茶を一杯。

 

「―――天翔エミ―――」

 

俺の名前を呼ぶ。それに「応」と答えると、冷静に、一言。

 

 

 

「――――――砂地を掘り進んでここを戦車が隠れられる縦穴式塹壕にしなさい」

「私を無茶ぶりしたらそれに応えるやつみたいな風評被害流してんじゃねぇよ」

 

 

人を何だと思っているのか――――そんなもん、エキシビションの試合時間内にできるはずねぇだろ。

 

 

そんな掛け合いをしている間に、バンカーを中心にしたキルゾーンの設営が終わったようだ。左右から十字砲火の形に展開した二つの陣。ARL44重戦車の砲台陣と、ソミュアS35騎兵(中)戦車の突撃陣。

 

 

「―――敵布陣完成しました。データ上、ARL44重戦車は90mm、当たり所を問わずこちらの装甲では耐えきれません」

「これは拙いかもしれませんね―――」

 

流石に焦った声のアッサムと、同じく弱気が前に出てきているペコりんに対し、いまだに余裕のまま紅茶を傾けるダージリン。

 

「―――ピンチとチャンスは同じコインの表と裏なの。

 

  ―――コイントスをする勇気のない人間には、常に同じ目しか見えないのよ」

 

 そんな言葉を通信で寄越す紅茶キチの顔は見えないが、きっと渾身のどや顔をキメて見せているんだろう。

 

―――そして、砲撃の雨が降ってきた―――!!

 

 

******

 

 

 至近弾の衝撃で車体が揺れる。轟音が車内に反響し、周囲に悲鳴が溢れる。

阿鼻叫喚ってのはまさにこのことだろう。幸いにして、相手の砲撃精度は高くないのか、地面を削るばかりでこちらへの直撃はない、ソミュアの砲撃が掠る程度はあるが、マチルダの装甲厚ならば致命的なダメージにはなっていない。

 とはいえ、このままだと地味に詰んでる。みぽりんたちが攻め上がろうにもプラウダが邪魔しているらしいし、劇場版の展開みたいに大洗車輛を押しのけて突破するカチューシャ軍団の真似事ができるとは思えない。

―――いや、確かノンナが「素直に迂回すれば」と言ってたからP虎あたりで釘付けにして残りが迂回とかはできるかもしれないな。

 

「どどどどうすればいいのーー!?」

 

 マチルダの前に行ったり後ろに言ったり右往左往してるM3リーから悲鳴が上がっている。みぽりんズブートキャンプ未経験の一年生たちに覚悟ガンギマリの首狩りウサギになるだけの経験はまだないらしい。

 ここでルクリリのマチルダがARLの砲撃を履帯に食らったらしく、撃破判定を受けた。白旗が上がり、撃破したARL44から乗員が身を乗り出し歓声を上げる。

 

「も、申し訳ございませんダージリン様―――」

「―――大丈夫よルクリリ、むしろよくやったわ」

 

 ダージリンがそう答えるのと、砲撃の雨が止んだのはほぼ同時だった。

 

 

*********

 

 

 ルクリリの乗るマチルダⅡを撃破したARL44の乗員がハッチから身を乗り出し、「やったぁ!」とガッツポーズをとる。周囲の2輛のARLの車長も身を乗り出し、拍手で彼女を称える。リーダーエンブレムを掲げたARL44のハッチから勝ち誇った顔で登場した押田が、逆サイドのソミュアを見下すように胸を反らせた。

 

「―――どうだね?これが我々の実力だ!聖グロリアーナの車輛を見事撃破して見せたぞ!やはり我々に任せておけば我が学園は安泰なのだよ!」

 

押田の勝ち誇った声に反応して、ソミュアS35の搭乗口から憤懣を隠そうともしない表情の安藤が顔を覗かせる。

 

「ふざけんな!今のは我々が狙ってたマチルダを先に撃破できただけじゃないか!人の獲物を横からかっさらっただけのハゲタカが偉そうなことを言うな!」

「ハゲタカだと!貴様ぁ!!外様の分際で身の程を弁えず言うに事欠いて我々をハゲタカと罵るか!!そう言う貴様らこそ我らの獲物にかぶりつくドブネズミではないか!!」

 

 安藤の物言いに激昂した押田が言い返すとそこから大舌戦が始まった。互いに罵り合い、貶め合い、憎み合い、そして―――

 

「穴ぼこで撃破を待つ車輛たちなどいつでも狩れる!貴様らを先に始末してやる!」

「やれるものならやってみろ温室育ちの青モヤシどもぉ!!」

 

 

―――目の前で砲撃戦が始まった。

 

 

 

 

 

―――なんで?(定期)

 

何でこいつら獲物を前に仲間割れしてんの?こいつらの仲が悪いのただの演技じゃなかったっけ?(最終章話)

 

 

 

「―――あらあら。桃太郎がいないから、犬と猿が喧嘩を始めたわ」

 

 

クスクスと嗤う声が通信で届く。ダージリンの全てを見抜いてる感じの態度に他の車輛からも尊敬を感じさせる感嘆の声が響いている。

 

 

―――思い付きでバンカーに突っ込んでハマったのコイツのせいなんだけどな!

 

 

「天翔エミ。今のうちにスタックした履帯部分を砂地から持ち上げなさい」

 

 

 

 

平然と無茶ぶりをするダージリン。いやそのくらいならできるけども―――

 

 

 

―――ともあれ、被害をルクリリ隊だけにとどめた序盤戦は、バンカーを抜け出したダージリンが率いる連合車輛が互いにつぶし合いをしてるソミュアとARLを半壊させて終了した。

 

 

「―――お前のせいで部隊が壊滅しただろうが!!」

「先に我々を罵って砲撃してきたのはキミの方だ!!」

 

這う這うの体で逃げ出すソミュア1輛とARL1輛から顔を出した二人が罵り合い、車体をぶつけ合いながら撤退していく。本来なら追撃でボコるのが定石なんだが―――

 

 

「―――すみません!プラウダの一団、後退していきます!おそらく皆さんを背後から強襲しようとしています!」

 

 

みぽりんからの報告に、さっさと逃げるに方針を切り替え、市街地戦闘に場面は移るのだった―――。

 

 

 

 

――――なおダージリンはBCの連中の仲間割れとその後の逃げてる最中の漫才染みた一連の行動を見て口元を抑えて身体をくの字に折り曲げていたらしい。

 

―――そういえばダージリンって笑い上戸って設定あったっけ……。

 




劇場版プロローグ的なそれ()


多分ところどころぶっ飛ばしてダイジェスト感あふれる感じに仕上がります。

時間軸も立場も違うし本家様と状況がかぶることはない!―――きっと!

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