【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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何故市街地戦闘にする必要があるのか?

それは「大洗車輛が多すぎて、ネームドが増えすぎて、車輛の統一がままならない」ためである。


要は「マチルダもチャーチルも数がそろわない」ので、ダージリンお得意の浸透強襲戦術が取れない。

必然的にみぽりんが得意とするゲリラ戦術に持ち込むしかないわけだ。


―――そういう建前でみぽりんの見せ場を演出したかった俺がいるのもまた事実だ。


みぽりんが活躍しなきゃエリカの評価も上がらないからな!(信念)



【ダージリンファイルズ IF②異聞 derFilm ②】

「こちらBC自由学園リーダー押田。受験組のせいで部隊が半壊、現在私と金魚の糞の2輛が撤退中」

「―――だ、そうです」

とはノンナの弁。

 

「こちらBC自由学園リーダーの安藤だ。エスカレーター組のせいで部隊がほぼ壊滅。今は隊長車のソミュアと運良く生き残ったARLの合計2輛で撤退中」

「―――Это причина.(だ、そうです)」

とは、クラーラの弁。

 

 

「アンタら馬鹿じゃないの!?そもそもどっちがリーダーなのかはっきりしなさいよ!それと報告は主観を交えず的確にしなさい!

 

 ―――あとクラーラ!日本語ぉ!!」

 

 

 主観まるだしでのほぼ同じ報告が、自称リーダーから届いたカチューシャは、盛大にツッコミまくっていた。

 

「ああもう―――作戦が台無しじゃないの……」

 

丘の上に陣取っていた状態から後退しつつ反転、ゴルフ場のフラッグ―――チャーチルを目指して進みながら、上部から身を乗り出したままカチューシャはヘルメットの上からガシガシと髪をかきむしるような動作を見せる。

 

「Должен ли я поменяться ролями с ними?(やはり我々と担当を入れ替えるべきだったのでは?)」

「В таком случае, вы думаете, они могут стать щитом?(その場合、彼女らを盾として信用できますか?)」

「Это будет невозможно(それは……無理ですね)」

「ノンナ!クラーラ!日本語で話しなさいよ!!」

 

 移動中のJS-2とT-34/85から顔を覗かせる車長の二人、ノンナとクラーラの会話にカチューシャが文句の声を上げる。二人の会話はとても流暢なロシア語で行われており、カチューシャには理解できない言語であるからだ―――。

 

「クラーラは私たちが攻勢(オフェンス)に回り、彼女たちを防衛(ディフェンス)に置くべきだったのでは?と具申していたのです」

 

ノンナの言葉にカチューシャは「ハッ」と鼻で笑って見せた。

 

「馬鹿ね。いつ壊れるかわからない中戦車や重戦車の部隊を防衛に置けるはずがないじゃない」

 

カチューシャがそう言ってふんぞり返って見せる。フランスの戦車は当時のフランスの懐事情と開発技術の乏しさから、サスペンションやギア、ブレーキに至るまで全く信用できないレベルの信頼性だったとされる。そのことを言っているのだろう―――と、ノンナは結論付けた。 が―――

 

 

「―――ンー。確カ、後の開発計画で、大部分は改善されたデハ、なかったデスカ?」

 

クラーラの言葉にカチューシャが「えっ?」と振り返る。

 

「アー、デスが、砲塔部分が90mmを支えられる大きさがナイので、溶接していると、聞きまシた。確かニ、危ないデス」

「――――そうよね!」

 

ホッと胸をなでおろし、カチューシャは再び前を向く。「やっぱりカチューシャの判断に間違いはなかったのよ!偉大なるカチューシャ様だからね!」と胸を張り。

 

「―――Как далеко это правда?(それは本当の話なの?)」

「Это было не ужасно плохо(言うほどひどいものでもありませんよ)」

「だから日本語で話しなさいよぉ!!」

 

 

カチューシャの怒鳴り声がゴルフ場の林の中にこだました―――。

 

 

 

******

 

 

 

 市街地に向かう俺たちですが―――追いつかれそうです(迫真)

 

そら(マチルダやチャーチルなんて鈍足の戦車で逃げ切れるかっていったら)そう(なるだろう)よ―――。

 

俺としては満足できる部分もいくつかはあった。―――正直バンカーに突っ込んだチャーチルが動けなくなったタイミングで一緒にハマって動けなくなったのは半分くらいわざとである―――

 

 

 ―――いや、経験してみたいやん!?原作(劇場版)のワンシーンやぞ!?(ガルおじ感)

 

 

―――なお、現在進行形で俺は人生の岐路に立たされていた。

俺の乗るマチルダⅡは背後からじりじりと距離を保ったまま追いかけて来るJS-2に捕捉されつつある。今は逃げ込む路地が多い下町周辺を走っているからそうでもないが、そこを抜けた先はまっすぐで開けた複車線道路に出る。要は詰んでるという事だ。

とはいえ、『これ』をやれというのは無茶ぶりが過ぎないか?俺に何のうらみがあるというのかあのブリカスは――――

 

 

「―――天翔エミ?何をしてるの。早くなさい。時間がないわよ」

 

 

 急かすような声が前を往くチャーチルから響く。うるさいなわかってるよそのくらい!チャーチルのための壁になっているマチルダがやられたら次はフラッグが狙撃されゲームオーバー。完全に市街地に逃げ込む前に終わる。回り込んで待ち伏せとして合流予定のみぽりんの出番もナシ。

 

 

みぽりんが活躍できない→エリカの評価が下がる→みほエリの歩みが遅くなる→ガルおじ全ての夢が潰える

 

 

 それを俺の一存で迎えるわけにはいかない……たとえ一時の恥を晒すとしても、それは成しえなければならない世界の選択であるから―――!!!

 

 

「―――エミ様!!JS-2、砲塔がこちらを向きました!!捕捉されています!!」

 

 

車長からの報告。どちらにせよもはや猶予はない―――覚悟を決めた俺は

 

 

 

  ――――――――ダージリンとみぽりんから預かった『それ』を取り出した。

 

 

 

 

********

 

 

 

 

―――~~~♪

 

 

砲手席で照準を合わせながら、ノンナは鼻歌を口ずさんでいた。曲名は「カチューシャの一週間」演奏は『楽団カチューシャ』、なお申し訳ないが歌詞などは利権関係がややこしいので載らない。

 

「―――捉まえた」

 

シュトリヒを計算し、確実に相手を捕らえられる距離を保ちながら追跡していたJS-2の照準に、マチルダⅡの姿を捕らえる。次の曲がり角を曲がった先、そこを狙い一撃で仕留める――――。

 

 

 JS-2が角を曲がり、照準を覗いた先に―――戦車の上に乗る人影が一つ。

 

 

 風に流される黒い髪の上にフワフワと揺れる猫の耳、短いスカートの下、黒のタイツと同化したようにお尻から伸びて風に揺れる猫の尻尾。揺れる戦車にしがみつく関係上、ポーズはまるで女豹のポーズ―――若干死んだ目をしてるが、黒い子猫のような姿のそれが

 

「――――にゃぁん」

 

 

     一声、鳴いた。

 

 

 

********

 

 

 

 

「―――ノンナさん?」

 

砲手席でトリガーを引くだけだったノンナの反応が消えた。一向にトリガーを引く気配がなく、そのまま追い続けることに怪訝そうな顔になるJS-2の車内に―――底冷えのするような声が響く。

 

「―――あのマチルダを追いなさい」

「は、はいっ!?でも―――」

 

操縦手が逡巡する。マチルダはフラッグ車であるチャーチルから離れ別の道に入っていった。フラッグだけを追い詰めるのがカチューシャ隊長からの命令であったはずで―――

 

「――――――Запустите его мгновенно(可及的速やかに)!!!」

「―――ひぃぃぃ!!わかりましたぁ!!!」

 

戦列を離れマチルダを追いかけるJS-2。追いかけられるマチルダⅡの上で死んだ目でポーズをとっている俺は、内心で血を吐きながら叫んでいた。

 

 

 

―――戦車道しろよぉぉぉぉ!!!お前らぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 

「―――クッ――――クッフwwwwwwww

 ―――失礼。よくやってくれたわ天翔エミwwwww流石ねwwww」

 

 

 何笑ってんだ口に珈琲豆詰め込むぞお前覚えてろよこの腐れブリカスが!しかもよく見たらこれカチューシャから貰った猫耳と微妙に違う別物じゃねぇか!どこで手に入れたんだよ!?どこで買ってきたんだよ!?そしてみぽりんは何のためにこれを持ってたんだよ!!

 

 

色々と内心でのツッコミが多すぎて儘ならないまま、俺は力なくがっくりとうなだれる。JS-2はなんか加速していて、できる限り距離を保って確実な撃破を狙っていた時とは違うノリでこちらを追走している。

 

―――とはいえ、どうにか勝負は市街地戦に持ち込まれることになりそうだった―――。

 

 

 

 

 

――――ちなみにその後試合はノンナを俺が、クラーラをみぽりんが抑えている間にダージリンとカチューシャの勝負に持ち込まれ―――

 

 

 

頼りになる両翼を無くしたカチューシャは、ダージリンに誘い込まれ、P虎の狙撃を食らって戦闘は終了した。

 

 

 

 

―――余談だが、押田と安藤はあの後プラウダと合流する前に仲間割れしたうえ、互いに撃ち合って仲良くダブルノックアウトしたらしい。何やってんのあいつら(素)

 

 どうでもいいが原作から乖離しすぎた勝負になったけれど『勝者は原作通りダージリン』だったわけだ―――この辺りは修正力というヤツだろうか?

 

 

 

 

 

―――俺の見通しが甘いのはいつものことではあるが、この時も俺は楽観視していた。『状況は大きく変わろうと、未来は変わることがない』なんて、楽観的に俯瞰していたのだ―――。

 

 

 

 

――――試合終了後、車内に点々と残っていた血痕に、ノンナを叱責しようとしていたカチューシャはノンナの怪我を心配したという。

 

 

―――なおノンナは自分を心配するカチューシャの様子に本気で罪悪感を感じていたらしく、終始申し訳なさそうな様子だったそうな―――。

 

 

あとJS-2内の乗員には緘口令が敷かれ、真実を口にするものはいなかった。

 

 

全ての歴史は影に葬られる―――――――

 

 

 ―――が、黒歴史として何故か鮮明なショットで写された写真が残り、後々聖グロリアーナの紅茶の園でダージリンが残した私物としてや、一部生徒の持ち物から発見され―――俺の胃を大いに痛めることになるのだが―――

 

 

 

 

―――それはまた別の話だ。

 

 

 

 




ちょっと短め。

エキシビション戦終了(カット)


久しぶりに割とマシなエミカスが書けたような気がする()

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