【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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――月――日

もうこの日記を書くことはないと思っていた。
けれどもう一度書き記しておこうと思う。

この記録は、そう―――愚かな俺という生き物が、いかに罪深い存在かの証明となるだろう―――。

       天翔エミ



「エミさんが―――!!エミさんが―――ッッ!!」
「落ち着きなさい。英国淑女はいかなる時も狼狽えないのよ(カタカタ」
「だ、ダージリン様!零れてます!小刻みに震えすぎて紅茶が零れてます!!」

~ 何食わぬ顔でエミが「ただいまー」する5分前 ~



【ダージリンファイルズ IF②異聞 derFilm 幕間】

――月――日

 

ボコミュージアムで島田愛里寿とはじめましてした。モンブラン色のフワフワしてそうな綺麗な髪と人見知り気味の態度に保護欲が刺激されすぎてやばいことになりそうだ。

これはミミミが壊れるのもわかる(わかる)。

ボコのショーを(距離は離れてるが)一緒に見て、一緒にボコを応援して、ボコボコになるのを眺めて、それでもあきらめないボコにキラキラした瞳を向けている。

 

―――この子は本当にボコが好きなんやなぁ(確信)

 

 原作ではもう少し後で偶然ボコミュを発見したみぽりんが出会い、レアボコグッズの最後のひとつを取り合うことになる。が、今の時点ではまだそれは起きていない。閑散としたボコミュ内をウロウロ歩き回ってグッズ売り場でボコグッズを買う。

―――随分と懐が寂しくなるな……バイトしなきゃ(使命感)

どちらを買うかで悩んで居た俺を少し距離を置いてじっと見つめている愛里寿の姿。右の手をさりげなく左右に揺らすと視線がそれに沿って動く。ははーん、コレがレアなボコか(確信)

 悩んだ挙句に左手のボコを選んだように見せて、右のボコをこっちの様子を伺っていた愛里寿に差し出す。「いいの?」という顔をしている愛里寿に「私はこっちに決めたから」と言って会計を済ませて帰ろうとする背中に「ありがとう」と声がかかった。

 

「大丈夫、私は(もうこないかもしれないけど、みぽりんが)また来るから」―――。

 

 

――月――日

 

戻ってきたらすべてがやばい方向に吹っ切れていた。

どうしてこうなった!?なぜこうなるまで放っておいたんだ!?

色々と言いたいことがたくさんあるが、泣きじゃくり嗚咽交じりで抱き着いてくるみぽりんとかやめてくれよ―――腕一本くらい等価交換しておきたくなるじゃないか……

 

 ―――ちょっと待ってくれ。聞いてないんだけど!?(焦り)

 

大洗学園艦が廃艦となり、昨日一日かけて学園内の資料などを根こそぎ持ちだして、学園艦を見送ったらしい

 

 ―――見送ったらしい。

 

 

 

―――え!?戦車は!?(素)

 

 

 

大洗が決勝までコマを進めるためには相当にダーティーな手段を必要とした。それはまぁ前に聞いていたが、喉元過ぎたら全部忘れてるようなアンツィオ以外にそこまで嫌われてるとは思わなかったというか……比較的話が通じるおケイさんとも交流が無いから協力も頼めないとかでサンダースが来なかった=スーパーギャラクシーによる空輸もない。

 

―――詰んでないか?これ―――

 

 戦車ナシでこの状況を覆すのは無理。無理無理無理無理カタツムリって状態だ。

とはいえ、もはや学園艦はおそらく文科省の預かりとして、ドックに預けられ、解体待ちとなっているだろう。辻とか言う役人のうすら笑いが浮かぶようだ。

 自分がやってきた努力も、学園のためにと心を殺してやってきたことも全部無駄だったことで会長とかもう盛大に凹んでいた。

「天翔ちゃんにも無理させて、あんなに迷惑かけて結局こんなことになって、ごめん」とかすごいしおらしい態度で言われても、その、困る―――。

 

 そもそもの廃艦理由は、大洗の戦い方に問題がある ということと、決勝戦での聖グロの露骨な舐めプが問題視されたというのがあっちの言い分だった。

決勝戦で対戦相手の同情を誘い、相手に仏心を出してもらっておいて、やったことはフラッグが一騎打ちしてたとこに横合いからの不意打ちによる勝利。戦車道が健全な育成を目的としたスポーツの一種であるという理から見ればあんな勝利は認めてはいけないらしい。

 正論過ぎてぐぅの音も出ないと言える―――が、聖グロの行動が舐めプだと言われると黙っていられない英国淑女がウチにはいる。俺はその場にいなかったが、ダージリンがわざわざ文科省の件の役人のとこに電凸までして猛烈に噛みついたそうだ。『英国の騎士道精神を重んじる聖グロリアーナの校風を馬鹿にしているのか?』と。

 結果で言うなら、いかにダージリンでも文科省の役人相手に条件を付きつけて後のイベントを端折って大学選抜との試合条件を勝ち取る。なんてアクロバット交渉はできなかった。そもそもそう言うつもりで電話したのではなく、聖グロとしての面子の問題だったらしいし―――。

 

 

――月――日

 

 みぽりんの闇が深すぎてやばい。やばすぎるレベルに達しようとしている(確信)

今回の大洗廃校事件によりさおりんたちがみんなバラバラになると聞いて、もともと依存傾向が強かったみぽりんの依存心が天元突破。加えて先日の書置き失踪事件から、俺も不意に自分の元からいなくなるのでは?という漠然とした不安感からカルガモの子供かとツッコミが入るレベルで俺について回って離れない。

 一人では眠れなくなったと言って俺の部屋にやってきて一緒に眠るようになった。やばすぎる―――このままでは死ぬ。俺が(迫真)

この状況でみほエリ?無理に決まってるだろいい加減にしろ!

みほエミ?誰に需要があるんだよそんなカプがよぉ!!(怒号)

このピロシキ案件不可避な状況を緩和するべく打開策を考えるが――――そのためにはやはり「大洗廃校回避」が絶対案件になるだろう。

 

―――因果というものは巡り巡るものだ。ちょっとしたきっかけが大事件につながる。俺が【観客】という立場でいるなら原作に介入すべきではなかったし、みほエリのために介入を決めて行動に移したのなら、その行動の結末、終局どうなるかまでを計算に入れた上で後始末も含めて行動すべきであった―――

 

 俺がみぽりんを救い、ダージリンが気を回したことでみぽりんが聖グロにやってきた。聖グロでみぽりんは救われたが、代わりに救われない人間が出てきた。

それを目の当たりにしなければ、目をつむって犠牲に気付かないふりをできただろう。だがそれももう意味の無い仮定だ。だって俺はもう見てしまっている。

ならば覚悟を決めるしかない―――とりあえず決意と自戒をこめた左手小指をセルフ指ペキ敢行。翌朝一緒に寝た自分のせいで指が折れたのかと盛大にみぽりんに凹まれた。あれ?これ無限ループ?

 

 

*******

 

 

「―――と、まぁ。後味が悪いので大洗の戦車道履修生だけでも聖グロで預かれないか?しばらくの間だけでいいんだが」

「私、貴女に最近無理難題を押し付けられてばかりな気がしますわ。どこかの青ダヌキと勘違いしてませんの?」

 

紅茶の園のテーブルをはさんでダージリンと向かい合ってそんな相談を提案する俺と、呆れ顔のダージリン。オレンジペコは給仕に徹しているし、ローズヒップは相談をしている間、みぽりんについてもらっている。

 

「大体にして、メリットがありません。グロリアーナの校風にそぐわない野卑な方々を招き入れ、学園の気品を下げる行為は承服しかねます」

 

優雅な仕草を崩さず、紅茶を嗜みながらそう突っぱねるダージリン。俺がメリットもなしに感情論だけで交渉を持ってきているわけではないことを知っているからこその応答である。

 

「―――格納倉庫の隅っこで動かないクロムウェル。チャーチル会やマチルダ会のせいで部品が手に入らずに放置されてるよな?

 

 ――――アレを直せる存在がいる。と言ったら?」

「―――詳しく」

 

優雅に紅茶を嗜むポーズのままだが体の周囲にオーラのようにそわそわした空気が溢れている。この辺り非常にわかりやすい奴だと思う。

 

 

**********

 

 

「これ(クロムウェル)の部品、結構足りないけど、ないの?」

「じゃ、旋盤で削り出してから修理だね」

「クロムウェルならドリフトできる?できる?」

「結構なスピード出るし、できるんじゃない?」

 

四人のツーカーな会話でクロムウェル(Mk-Ⅲ)がレストアされていくのを呆然と見ているダージリン。こいつがここまでぽかんとした顔をするの極めてレアではなかろうか?

 

「―――事実は小説よりも奇なり―――それを体現する存在がいるとは思いませんでしたわ」

「うん。実際目の当たりにするとそうなるよな。私もここまでとは思わなかったが」

 

『聞いた話でしかないが』と前置きして自動車部の話をしたところ、試合ごとにボロボロになる戦車を即座に修理して次の試合に出場できるようにしている大洗の修理担当の話は都市伝説レベルだったらしく、『実際に見てから決めましょう』という事になり―――自動車部のメンバーだけ聖グロに呼んで格納庫に連れてったところ―――御覧の有様である。

 

「来年で3人が卒業ですけど、ツチヤさんという方は残るのですよね?あの方、我が校に移籍しないかしら?個人的に親近感が湧きますし」

 

ダージリンが表情を戻し、優雅を取り繕ってそんな風に呟く。無理じゃね?大洗の生徒は大洗に愛着ある子ばっかだし。

 

「それで、お眼鏡にかなったかな?」

「―――ええ、存分に」

 

 

大洗女子戦車道履修生の一時受け入れ先が、山間の木造校舎から神奈川県の聖グロが保有する校舎になった。彼女たちの戦車が無い以上、最低でも代用で戦車に乗っていないと調子がくるってしまうだろうし、これで代用になってくれればいいが―――

 

 

―――しかし、戦車をどうするかな。本当に―――

 

 

*******

 

 

 でっぷりと太った大型のカモメが飛び交う湊を背に、小さな影が歩いていく。

街並みを抜けて、平凡な喫茶店のドアを開ける。

 

~~~♪♪♪

 

店内に響くカンテレの響きに、その主の下へ。

 

「―――やぁ、ご挨拶は初めてだね。こんなところまでよく来たね。と、言いたいんだけど―――何か私に用事かな?

 

 ―――――――大洗女子の生徒会長さん」

 

涼し気な表情でカンテレを爪弾く少女を前に、角谷杏はまっすぐに目を見て告げる。

 

「―――仕事を依頼したいんだ。仕事内容は―――わたしたちの戦車の奪還。

―――できるんでしょ?“名無し”さん」

 




ダージリン(キタエリ)とツチヤ(キタエリ)でオーバーレイ!!

(親近感云々は中の人ネタです)
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