【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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「―――プラウダ高校フラッグ車、行動不能!黒森峰学園の勝利―――!!」

ワッと歓声が上がる。みほの乗るⅣ号の中でも歓声が沸き起こる。だがそれよりも―――!!
西住みほは搭乗ハッチを開き上半身を覗かせ、雨の降り続く崖下、濁流の方へと視線を投げる。


―――そこに、Ⅲ号J型から乗員を救い出した天翔エミの姿を発見した。

 エミもまたみほの姿に気づき、片手を上げ、グッと曲げて力こぶを作るようなポーズを見せた。そんなエミの様子に苦笑しながらみほは手を振り、叫ぶ。


「―――エミさーーーん!勝ったよーーー!!」



【 IF エミカス大勝利!希望の未来へレディゴー! 】

 【 装填騎兵エミカス IFルート 】

 

 『 それは理想の未来へと続く道だと信じていた 』

 

 

 

 

──月──日

 

運命の決勝戦―――。事故は―――起きた。

そして、俺はやり遂げた―――!みぽりんを守り切ることができた。赤星さんを含め乗員の皆を救うこともできた。俺は成し遂げたんだ―――!!!

おまけにみぽりんが健在のフラッグは生き残り、プラウダを下し10連覇を成し遂げたという―――完璧だウォルター、光栄の極み。俺のこれまでの人生は間違いなく報われたのだ―――!!!

 あとはみほエリを成し遂げるのみ……一番の懸念だったイベントをクリアできた。もう何も怖くない!

 

 

 

──月──日

 

一夜明けての祝賀会―――なのだが、俺は開幕お説教タイムであった。

まぽりんとしても隊長として、西住流の人間として、人命を尊ぶ一人として俺に対して一言釘をささなければならないらしく、叱咤の言葉を受け入れる俺を尻目に「祝いの席でこんな話をしてしまい申し訳ない」と謝罪して祝賀会開始。

 いや最初にドン引きするテンションダウンが起きた割には周りは浮かれまくっているのでまぁ良しとしたい。命綱をほどいて牽引ロープ代わりにしたのはやり過ぎだった気がするしなぁ……。

 

******

 

「何でエミさんが責められないといけないの……?エミさん、頑張ったんだよ?私の代わりにって―――」

「やめなさいってみほ。隊長の言ってることは間違ってないわ……ただまぁ、今この場で言うことだったかはどうかと思うけど―――」

 

 

 

──月──日

 

 サンダース大学付属高校との練習試合。まぽりんの電撃作戦のタイミングを計ったように放たれたファイアフライからの砲撃で黒森峰部隊の足が止まり、その隙をついてシャーマン大隊が乱戦モードに移行する。

 

 ―――混迷を極める状況を打破したのは、みぽりんだった。

 

自分が駆るⅣ号に指示を出し独立で動き、エリカに通信を送り「フラッグを守って」と命令。

これを受けて、『なぜか、指示されたルートの先に移動し始めたシャーマン2輛』を華麗にスルーして全く違うルートで移動したエリカのティーガーⅡが『敵フラッグへの有効射程内に移動』、砲撃に慌てたフラッグが移動を開始したタイミングで迂回したⅣ号が前に現れ、撃破―――。

 

 ―――ああ、アリサが盗聴して突入タイミング測ってたなこれ―――。

 

 そしてみぽりんは敵に通信が漏れてる可能性を考えて、黒森峰の縦式命令系統を強く順守するエリカにわざと「命令」した。当然副隊長が隊長をスルーしてのオーダーなどエリカは聞きはしない。同時にみほがそんなことしてもエリカが聞く耳持たないことを理解しているから「真意を読む」

 で、結果こうなった と。

―――素晴らしいじゃないか。みほエリはこうも見事なものか!!

みほとエリカが互いに互いの性質を理解して、それを信じあっているからこそできるコンビネーションに、俺もはや興奮で動悸がすごい状態である(語彙激減)

 

 

 ただ一人、隊長だけが難しい顔で勝利に酔う黒森峰チームを俯瞰していた。

 

 

 

──月──日

 

 トレーニングの最中にみぽりんとまぽりんの戦術論が真っ向から反目した。

まぽりんの「撃てば必中、守りは堅く、進む姿に乱れ無し」という西住流の体現たる一糸乱れぬ行軍に対してみぽりんのそれは稚拙ながら臨機応変に分岐する隊列で、相手の突撃に対して散り散りになり、各個集結からの包囲、ないしは迂回からの挟撃など多彩にわたる技術の応用によるゲリラ戦術。

あくまで王道に拘り王道を往くまぽりんに対しみぽりんのそれは奇策上等な喧嘩戦術ともいえるアウトローな戦術で―――。

 

 盤面演習はまぽりんの勝利で終わったが、みぽりんもかなり食らいついたいい試合だった。

 

―――でも何故だろうか……?なんだかとても嫌な予感がしたのだ。

 

 これまでも、この時も、俺はいつだって現実を見ず状況を見ず、自分の中の考えだけで完結していたのだと、後になって知ることになる―――

 

 

 

──月──日

 

 学内の空気がおかしい―――。最初に異変に気付いたのはエリカだった。

「なんだかみんな雰囲気がおかしい」と相談を受ける。この時みぽりんがいないことに違和感を感じなかったことがすべての失敗だったのだろう。

 

放課後になって、俺のところに赤星さんがやってきた。

赤星さんに連れられるままに歩くと、下級生と一部の上級生が集まってひしめき合う教室に案内され―――

 

「ようこそ、西住流西住みほ派の会合へ―――」

 

 ―――俺は罠にかけられたことに、その時になって初めて気が付いた―――。

 

 

 

*****

 

 

 

 西住まほを頂点とした縦社会。鉄の規律と鋼の精神。

そりゃあ歪みも生まれるだろうが、相手が西住流の名を体現する以上表立って文句など言えるはずもない。

 だが、ここに例外が存在した。西住まほと同じ西住の姓を持つ、まほの妹。西住みほ―――

ただこれまではみほの内向的な性格と姉の影から出てこない立ち回りから注目もされていなかった。だが先の10連覇を成し遂げた大会でのフラッグ車車長としての立ち居振る舞い、先日のまぽりんと拮抗し、かつ真っ向から反目する戦術性を見て、造反分子の評価は高まりまくっているというわけだ―――

 

 ―――そしてここにきて、俺、天翔エミという西住みほが絶大な信頼を置く鬼札が出てくる―――

 

今この会合に顔を出してしまった俺と赤星さんの様子はおそらく写真などの媒体で記録され、みぽりんを神輿に引き込むための材料にされる。みぽりんは大会での俺の行動を自分の負い目に感じている部分がある。造反分子の連中と一緒に綱紀粛正の対象になり処罰される可能性を考えれば、協力する以外の選択肢が残るかどうか正直怪しいと言えた。

 

 ―――ああ、迂闊すぎる俺に反吐が出る―――いっそこのままこの世からピロシキすべきではなかろうか?

 

 気分が悪くなったのでと赤星さんを連れて外に出て、十分な距離を歩いた後でおもむろに窓ガラスを素手で叩き割り、ガラス片を握りしめると指に裂傷が走る手前で赤星さんにしがみつかれたので手を緩める。

 推測だがと前置きしたうえで状況を説明してやると赤星さんはやはり利用されただけだったのか真っ青な顔をしていた。そんなつもりじゃなかったと涙ながらに訴える赤星さんを宥めて、一先ずあの連中と関わらないように言い含め―――

 

 

 ―――覚悟を決めた。

 

 

 

──月──日

 

 西住家を訪れる。手の包帯を適当に巻きすぎて若干痺れてるが利き手じゃないので問題にはならないだろう。

真正面から対峙するのは初めてだが、プレッシャーハンパないッスねしほさん(舎弟感)

まず開幕土下座からの謝罪から入る。迂闊な行動により西住流が真っ二つに割れかねない状況を生み出した俺の責任は重い。そのうえで、ことここに至ってはどうしようもないのだ。

 

 【みぽりんかまぽりん、どちらかが黒森峰を去るしか、この状況を収められない】

 

 しほさんの返答としては「そうなった場合、みほを放逐する他はない」とのこと。予想通りの回答である。まぽりんは幼いころから西住流次期後継として躾けられ、体現者と言っても過言ではない。これを放逐することにメリットなどない。

 

 「みほを黒森峰から放逐するとして、あの子が唯々諾々と従うと思いますか?」というしほさんの問いに「陰腹を切る準備はできています」と答えたら面食らっていた。貴重なびっくり顔ではなかろうか?(思案)

 

 

 

──月──日

 

みぽりんはさらっと納得してくれた。「一人では行かせない。私の責任だから私もついていく」という俺の決意が通じたようだ。

エリカには申し訳ないことをしたと謝ったが、本気で怒られみぽりんと二人して正座でお説教コースを食らう羽目になった。

 小一時間のお説教の後に「隊長と一緒にめんどくさい連中全部排除して、また一緒に戦車道できるようにして見せるから、それまで待ってなさい」とデレを見せてくれたりもした。尊い(確信)

 

 赤星さんから「いない間のことは私が逸見さんをお手伝いします!」と強い意気込みの決意を貰った。張り切ってるなぁ……無理もないが

 

 

 

──月──日

 

 結局原作の流れには逆らえないという事なのだろうか?俺とみぽりんは戦車道の無い学校、大洗女子に転校という形で黒森峰を去る―――。

 

 だが、みほエリの火は消えていない。みほエリは確かにここにあったんだ―――!!

 

 

 

 この日、黒森峰から西住みほ、天翔エミの二人の生徒が姿を消した。

 

 

 

 

******

 

 

 

~~~大洗女子

 

「天翔ちゃんと西住ちゃんさぁ……選択必修科目、戦車道取ってよ」

 

―――来た。と思った。原作通りの展開。だが、みぽりんを取り巻く環境は原作の状況とは違う。ここは毅然とした態度で―――

 

 

「―――やります」

「――――――――――え?」

 

 

即答したみぽりんににかっと笑顔で「そっかそっかー!ありがとねー」と手を振り去っていく生徒会長。

 

 

何だこれは?どういうことだ?何が起きたんだ??

 

 

 

「―――みほ?どういうことだ?」

「―――エミさん。私ね、ずっと納得できないことがあったんだ」

 

 

力強い決意の光を宿したみぽりんの目。これは見た覚えがある。

これは、覚醒後の……軍神西住みほの―――

 

 

「―――お姉ちゃんはさ、隊列は一つの生物であるべき、フラッグが心臓で他は体であり、手足である。心臓があるかぎり死なないのだから手足は心臓の代わりに盾となり剣となり戦うべし って、それが西住流だって言ってた

 

 ―――でも私はそうは思わない」

 

 

みぽりんの目に宿る決意がより強く輝く。

 

 

「みんな同じだよ。犠牲を強いる戦いなんかしたくない。みんなで協力して、だから戦車道は楽しいんだもの。

 エミさんが教えてくれたんだよ?私、戦車道やっててすごく楽しかった。エリカさんがいて、エミさんがいて、赤星さんやお姉ちゃんがいて―――

 

―――そんな仲間を踏み台にして得るものなんかに、きっと価値なんてない」

 

 

―――今、理解した。

 俺がみぽりんを覚醒させてしまったのだ と。

 

 

「―――だからお姉ちゃんにも教えなくちゃいけない。これが私の戦車道だよ?間違ってるのならお互いの戦車道でぶつかり合って決めようよ って

 

 ―――そうしないときっと、お姉ちゃんとわかりあう事なんかできない」

 

 

 俺は天を仰ぎ息を吐く。そうして首を振って考えを追い出すと、みぽりんの肩を両手でがっしりと掴んだ。

 

 

「―――オーケイ、みほ。後でエリカが怒鳴ってくるだろうが、付き合ってあげるよ」

「!!―――ありがとう!エミさん!!」

 

 

満面の笑みで抱き着いてくるみぽりんを受け止めつつ「このシチュエーションはダメだろ。ピロシキで言うと3ピロシキくらい行くレベルでアウトだろ」と内心で考えながら、俺は天を仰ぎつつ思わずにはいられなかった。

 

 

 

―――どうしてこうなった? と

 

 

 

 




奇人男氏の活動報告で書かれてた「エミカスが考える結果が割と成功した未来」を見て

自分的に考えた結果「こんな感じになりました」



あ、タイトルは見てわかる通り、嘘です(爆)

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