【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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西暦20XX年()大洗学園艦は、英国淑女の波動に包まれた。

マスメディアは沈黙し、情報流通はストップした―――――かに見えた!




だが、新聞部は絶滅していなかった―――――!!!




注意:エミカス本編軸ともIF時空とも全く異なる時間軸です。気にしてはいけません。
エミカスはほぼ登場しません。あとドラッグはダメ、絶対。



【装填騎兵エミカスえくすとら 『密着!エミカス(ほぼ)24時(建前)』】

大洗女子学園―――戦車道が復活し、一度は廃校の決定が下されもしたがそれを潜り抜け存続が決定した学園。それなりに多くの女子生徒が通うありふれた学園である。その学園の片隅、『放送部/新聞部』というネームプレートが掲げられた一室では、散乱する書類の中、一人の女生徒がむむむと唸り声を上げていた―――。

 

―――彼女の名前は【王大河(おう・たいが)】、大洗女子放送部の突撃取材班であり、新聞部のコラム執筆者でもある―――生粋のブン屋である――――!!

 

「―――謎だわ―――」

 

頭を抱えながらも、大河は書類の束の中から一枚の個人情報メモをひったくるように抜き出し、コルクボードに貼り付ける。

 

―――天翔エミ 黒森峰女学園から大洗に転入。その後、選択必修科目で戦車道を選択。同じく転入組の西住みほとともに高校生大会を勝ち抜き、優勝の立役者となる――― と書かれている。

 

 

―――書かれているのだが―――あまりにも―――

 

「―――情報が少なすぎる……。何が隠されてるのか―――とても、興味深い、です―――」

 

 

 メガネの奥の瞳がキラリと光り、ブン屋のカンが脳内で特ダネの匂いを感じ取った。常日頃持ち歩いているメモ帳と、ハンディタイプのマイク式レコーダーを肩掛け鞄に放り込み、大きなリュックを背負って手にはカメラというスタイルで大河は部室を後にする。

 

「―――天翔エミさん―――貴女の全部、私に見せてくださいな♪」

 

 

 

【 EXTRA MISSON 『体当たり突撃取材致します!王大河です!!』 】

 

 

 

「―――はい!私王大河はですね!今回突撃取材という事で!話題の人、天翔エミさんに突撃をしたいと思い、時刻は早朝5時!タイムスケジュールに寄ればこの時刻、この近辺でトレーニング中のはずですが―――?」

 

 

空を見上げた大河の目に―――空を舞う一羽の鴉のような姿が映る。

 

 

「あぁーーーーっとぉ!あれは何だ!!?鳥か!?ヒコーキかぁ?!

 

 ―――いいえ違います!マンションの壁を蹴り黎明に舞うあの姿はまさしく!天翔エミさんだぁーーーーー!?そして今軽やかに着地ィーー!!」

 

 

 マンションの壁から民家の屋根へ、民家の屋根から別の屋根へと跳び移り、ブロック塀を飛び石代わりに地面に着地するまでをカメラに収めながら実況を開始する。

 

 

「よもや最近大洗で噂になっている【朝もやに紛れ空を翔ける幻影の怪人、ファントム】とは彼女のことだったのかー!?これは特ダネ!特ダネだわぁ!!!

 

 メモ帳に書きなぐるようにガリガリとペンを走らせる大河をスルーして、ウェイトランニングで家に戻るエミに気付かず、インタビューのタイミングを逃す大河だった―――。

 

 

 

******

 

 

 

「―――はい!こちら報道部、王大河です!時刻は正午を回ったあたり!お昼ご飯タイム後の天翔エミさんの行動を追ってみたいと思います!」

 

カメラを前に実況中継する大河。目標はⅣ号戦車を置いてあるガレージである。こそこそと接近してみると、中からエミが出て来るところだった。インタビューチャンス!大河はカメラとマイクを手にし、いつでも突撃できる体勢をとる。目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ―――

 

 

「―――天翔コーチ!!お昼が終わったなら、一緒にどうですか!?」

 

 

いましも突撃しようとしていた矢先に、エミのところに駆け込んできた人影に、大河は慌てて行動をストップし、状況を確認する。

 エミに声をかけたのは元バレー部のキャプテン、磯辺典子のようだ。

 

「―――前々から言ってるけど、私はコーチなんて呼ばれるガラじゃないよ」

「いいえ!コーチはコーチです!外国人のスパイカーのスパイクなんかものともしないレシーブを鍛えるためにも、天翔コーチの高高度高角度のハイジャンプスパイクが絶対必要なんです!!」

 

熱く語る典子に少し引き気味のエミ。大河は一連の状況を映しながらすっぱ抜き用のメモ帳に記録していく

 

「―――“バレー部大型増強!期待の新星は大洗の英雄!?バレー界に二度目の奇蹟を巻き起こすか?!”これは―――スクープだわ!特ダネだわ!!」

 

確固たる証拠はないし、バレー部だけが息巻いていて当のエミ本人にバレーをやる気があるわけでもない。が、そのあたりは燃え上がった大河には計算できないし、しようとも思わない。

 皆刺激を求めている。どこにでもある普通の学園、普通に進学するための普通科、特色がさほどあるわけでもない大洗の街。

それを一新したのが復活した戦車道の選択必修科目で、戦車道が起こした奇蹟が目下のところ生徒が求める刺激である―――大河の求めるものは「刺激を燃え上がらせるスパイス」である、常に人を突き動かす未知の刺激は人が成長するために必要な栄養素だと、大河自身が持論とするがゆえに。

 

「当人にやる気がないのならば外堀を埋めてしまえばいいのよ。そう、天翔エミさん、貴女がバレー界でどんな奇蹟を起こすのか―――興味深いです!!」

 

 

 キラリとメガネが輝く。大河は完全に目的を見失っていた―――。

 

 

 

********

 

 

 

「―――はい。申し訳ありません取り乱しました、私、王大河がお送りしております。時刻は現在夜の8時。晩御飯を終えてバスタイムに入る方も多いのではないでしょうか?」

 

号外としてバレー部員の記事をガリ版でテスト印刷して原本を作ったあたりで漸くトランス状態から復活した大河は、三度エミへの突撃取材を敢行しようとしていた。

 

「件の天翔エミさんですが、他の皆さまとお風呂に入ることがない。という情報が寄せられております。その件に関して当人にインタビューを試みたいと思います!一体つついた藪から何が飛び出すのか?!今から私、ドキドキしております!」

 

夜の8時、バイトを終えたエミが帰宅する途中に立ち寄る大洗学園艦の艦内の露天風呂。そこに大河は先んじて脱衣所に入り、スタンバイしていた。

 

「身体に傷があるのでは?という推測もされております―――もしそうならばそれはいつ誰によってつけられた傷なのか―――?黒森峰時代の上級生によるイジメ?孤児院の内部環境下での虐待?はたまた痴情のもつれ?―――くぅぅ~~~……実に興味深いッッッ!!」

 

カメラに向かって己の想いの猛りをぶつけることで興奮を抑え込んでいる大河の背後で扉が開く音がした。「あ゛~~」と年寄り臭い間の抜けた声を上げながら現れたエミは目ざとく大河を見つけて「あれ?先客?」と尋ねる。

 

「―――あ、いえ。私はもう上がるところなので」

 

一緒に入浴となると当人が逃げる可能性を考え、大河はすでに入浴を済ませ、さもマッサージを済ませてもう一度入るかどうか考えていた客を装っていた。カメラは脱衣所の衣服を入れた籠の中に起動状態で入っている。

 

 

犯罪である。もう一度言おう、犯罪である。盗撮、ダメ、絶対(強調)

 

 

 同席するのが気まずい客がそそくさと立ち去るような動きで脱衣所に立ち、自身の身体を壁にして脱衣籠を隠す。ややあって気にする必要がなくなったのか、エミも脱衣籠の前に立ち、服を脱ぎ始める。

バイトやトレーニングで使うためのどうでもいい衣服なのか、着脱のしやすい―――所謂ボタンなどの面倒なものが付いていないトレーナータイプのダボっとした上着とスウェットをぐるっと脱ぎ捨てる。雑に脱ぎ捨てている姿がどことなく自分のお父さんのようだと、盗み見ていた大河は思った。

 

「―――あの。何かあるの?」

 

チラチラとみていたのがばれたらしい。大河の心臓の鼓動が跳ね上がった。もしもカメラの存在がばれたらと考えると死ぬ。社会的にも生命的にも多分死ぬ。

努めて冷静に。心の中で強く何度も繰り返しつつ、震える手を抑えながら、大河は脱衣籠を指差した。

 

「い、いやぁ……雑に脱ぎ散らかしてるんで、服が痛んじゃうのになぁ―――って」

 

ひきつった顔でどうにか笑顔を繕うと、エミはそれ以上の追及はしなかった。「そっか。買い替えもバカにならないし、少し気を遣うかな」と言ってぐるっと残りの衣服を脱ぎ捨てて―――何故か水着を着こんで露天風呂の方へ歩いて行った。

 

「―――――――はぁぁぁぁぁ」

 

長い、長い溜息を吐く。危なかった。危なすぎた。生命的な危機を乗り越えた時の生の充足感は計り知れないと誰かが本に書いていたが、今まさに大河の心境はそんな状況だった。

 

「―――世の中から犯罪が減らない理由もこういうのだったりしたら嫌だなぁ―――」

 

己の行動を振り返り、大河は起動状態のカメラの電源をオフにし、着替えを済ませて上部甲板エリア―――地上に出る。

時刻は夜の9時。省電源で外套の明かりが減り、空に浮かぶ星々が見える様に調整されている。天を彩る星々の光を見ていると、先ほどの行いが胸を苛む―――。

 

「―――新聞部としてというより、人としてこれはないわね。見た感じ、背中はきれいなものだったし、映像を残す意味もないし―――」

 

 

大河がカメラを操作してデータを消去――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――お待ちになって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポンと、その肩が叩かれた。

 

 

 

**********

 

 

 

―――謎だ。

 

 王大河は、『放送部/新聞部』のプレートが掲げられた一室の真ん中でむむむと唸り声をあげていた。

目の前にはガリ版で印刷された一部の草稿。

 

 

「―――“バレー部大型増強!期待の新星は大洗の英雄!?バレー界に二度目の奇蹟を巻き起こすか?!”か―――

 

 

    ――――――――私、いつこんな記事書いたんだっけ―――?」

 

 

大河は首をひねり続ける。そうして空白の一日の記憶をどうにか取り戻そうと苦心するのだった―――。

 

 




小ネタに時系列とか求めてはいけない。イイネ?

なお途中でインターセプトが入りましたが、ストップがかからず、自重しない場合の迷惑なブン屋と化した王さん改め王カス(オーカス的な)だった場合は



―――黎明の時刻にトレーニングに出たエミカスを見送った後。部屋の中を探索して



―――例の日記を見つけることでしょう(闇)

 犠牲になったブン屋はいなかったのだ。こんなに嬉しいことはない()


深淵を覗き込むものは深淵に覗かれていることを理解しなくてはいけない(戦慄)


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