【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
もう一度、貴女に。
そう願ったのは真実で、だけど現実はどこまでも無慈悲で
―――折角訪れた非現実も、私が思っていたものではなかった。
だって、
「……永遠の愛を、貴女に誓います。 ずっと、ずっと一緒です、天翔エミさん」
「生涯不敗を貫いて見せますわ。私に勝利して良い貴女はもういないのだから」
コンコンコンコン……
壁をガラスをノックする音が響いている。
がりがりざりざりがりがりざりざり・・・
爪で磨りガラスをひっかいているような音も響いている。気分は部屋の外にゾンビが居る状態でパニックを起こして身を縮こませている一般人である(恐怖)
「エミリ……開けて?どうしてにげるの?」
シャワールームのドアを外から指でひっかき、拳でノックしながら抑揚のない声で囁くようなボイスで語り掛けてくるのは島田愛里寿。俺を部屋に閉じ込めた張本人である。
あの後―――内鍵を閉められドアの前に陣取られた俺は、逃げ場を失い……
こうして、ラブホ特有の『なんか半透明で向こう側の景色がうっすら見えるシャワールーム』に立てこもっているというわけである。
しかしサルでもわかる現実の情報として―――こんなもん一時しのぎにすらならない。壁をノックし続けている愛里寿が額やほっぺたをぺとっとくっ付けてるためその部分だけはっきりと映っててあとはうすぼんやりとしている見る人が見れば事象の地平まで萌え死ねる構図なのだが、生憎と今の状況のためか存在感だけひょっこりしているところが非常に精神的に恐怖をあおる構図になっている。
状況は完全に『詰んでいる』。 だって逃げる場所がねーんだもの……orz
一先ずどっか行けそうなとこで思いついたのがこの場所しかなく、仕方なく逃げ込んだというのが近い。愛里寿もその辺がわかってるのかカリカリと摺りガラスをひっかいて囁いて籠城を決め込んでる俺に精神的な圧をかけるにとどめているのだ。道具もねぇ、武器もねぇ、逃げ場もねぇ。マジ詰んでるなこの状況!!
そんなこんなな俺の絶叫が天にでも届いたのか、
『ガツン!』
と、天井付近から大きな音が響く。
さらにもう一発 『ガツン!』
さらにもう一発 『ガツン!』
音の発生源を見上げた俺の視線の先にあったのは、通気ダクト。ネジで止められたその場所を、向こう側から誰かがこじ開けようとしていた。勢いよく何かが激突する『ガツン!』という音が複数回。
やがて留めていたネジを根本から吹き飛ばし、通気口のカバーもろともに吹き飛ばしてアーミーブーツの脚がダクトから飛び出した。
「ほっ!」
スルリとダクトを抜けて降り立ったのは、20代前半~半ばのくせっ毛のかわいらしさを残す大人な女性。どっかで見たことのある人懐っこい瞳で俺を見つめて―――今にも泣きそうな、それでいて嬉しそうな、どこか寂しそうな表情を見せた。
「お助けに上がりました!エm―――天翔殿!!」
その声に、俺はとても聞き覚えがあったのだが―――脳が記憶とつながることを拒否していた。が、異常を察して慌てた様子で扉を叩き始めた愛里寿の様子にまずは逃げることを優先させることにしてフリーズした脳を強制的に再起動する。
「ありがとう!とりあえずここを出よう!
―――秋山さん!……で、いいんだよね!?」
「はい!不肖秋山優花里!お助けに上がりました!!」
20代になって大人びた女性の姿をした秋山殿は、そう言って俺の記憶にあるままの、高校生のころと変わらない笑顔を見せて可愛く敬礼して見せた。かわいい(語彙滅却)
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「移動しながらで申し訳ありません」
「いや、一刻も早い状況把握は必要だし、ありがたいよ」
通気ダクトによじ登ってダクトの中を這いずって進む。秋山殿の声を耳に拾いながら、後ろを確認しつつ距離感を感覚で測って追随しつつそんな返事を返す。
前を見ない理由?秋山殿が先行していて、這って進んでいる。俺も同じ態勢で進んでいる。後は、わかるな?もしもの場合俺の目玉両方で済ませていい問題ではない光景にはちあわせが必至なのだから致し方ないだろ常考。
「荒唐無稽なお話ではあるのですが……」
そんな語りから始まった秋山殿のお話は、普通は信じられないような話だった。
曰く、「ここは普通の世界ではない」
曰く、「ここにいる“天翔エミの知りうる皆”は“様々な未来からやってきている”」
曰く、「ここに来る人たちは『天翔エミにもう一度会いたい』と強く願った」
荒唐無稽すぎて信じられない話だろう―――
転生案件というなろう味溢れる経験が生きたと言おうか……どんだけ荒唐無稽な話だったとしても、俺という実例を俺自身が知っている以上『そういう事もありうる』と理解してしまう。
秋山殿のいう事には『ここで出会う人たちというのは別の時間軸で出会う女の子である』という事。
つまり、“学校指定のやつ姿”だった冷泉殿の様子がおかしかったのも、
空っぽの車いすを押して『おむつを変えないとなぁ……(ニチャァ』してたアンチョビも、
部屋いっぱいに俺の写真を飾っていた愛里寿も、全部『別の世界線の俺がしでかした結果』ということになる。いったいどんな業を積み重ねたらあんな罪深い存在が生まれてきてしまうのか……?!別の世界線のクソ間抜けにもほどがある俺は一体何をしでかしてしまったというのか……?
本当マジで馬鹿じゃねーの!?マジで馬鹿じゃねーの!?(大事なことなので2回言った)〇ねよ別世界の俺!!いや多分死んでるんだろうけど。
みほエリを為せずどころかあんなにも酷いことをしでかした別世界線の
「その理屈で言うと、秋山さんも別の世界の秋山さんってことだよね?」
狭いダクトをスイスイと進む秋山殿にそんな風に聞いてみる。俺を助けに来た秋山殿は明らかに時間軸から違っている。未来の世界から俺を救いにやってきたらしいトランクスな秋山殿が一体どんなスタンスなのか興味が尽きない。
「ええ、私も違う世界からこちらにやってきました」
「その場合、秋山さんも私に会いたかったってこと?」
俺としては『それ以外でこの場所にやってくる方法があるのか?』的なつもりだったのだが―――
それを訪ねた時秋山殿は少しだけ寂しそうに、嬉しそうに、どこか安心したような、それでいて沈んだ声で
「はい」
そんな風に短く答えた。
何故だろうか?その答えの言葉を聞いて、少しだけ死にたくなった。
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「ひとまず一安心ですね」
狭いダクトを抜けてさっきまでのラブホめいた通路で一息ついた秋山殿と俺。せまっ苦しいダクトを無理くりに這って進んだせいか汗だくなうえあちこち埃だらけである。20代の秋山殿の健康的な汗まみれ姿が実に思考に悪い。俺のPPが加速している感がすごい(謎語彙)
「先ほどの続きですが」
そんな俺の内面に考慮とかするわけはなく秋山殿が説明を続けていく。その結果よりめんどくさい状況が明らかになってきた。
曰く、「様々な世界線からやってきているため、複数名同じ人物がいる」こと
曰く、「ただしパラドックスの問題なのか、お互いにお互いを認識できる距離に近づけなくなっている」こと
つまるところ『同じ人物は同一空間内に存在しない』という事であり、あの天使の皮を被ったヤンデレという感じの愛里寿とも、別の愛里寿が傍にいれば近寄れないということらしい。
「―――よろしいかしら?」
ポンと肩を叩かれ全身が総毛立つ感覚とともに身を翻して飛び退る。犬猫のように両手両足を付いて秋山殿を後ろに護るように立つ俺を前に
「全く―――どこの誰であっても変わってませんのね。あなた」
そう言ってくすくすと笑っていたのはダージリンだった。
「ミカとオレンジペコは―――いや、違うな。お前“どこの誰だ”?」
「順応力が高いのね」
俺の問いかけに答えになってない答えを返すダージリン。何がおかしいのかくすくすと笑っていて、だってのに冷や汗と悪寒が止まらない。得体のしれない恐怖というやつが全身を包んでいる感覚にいつでも飛び掛かれる体制を整えていると
「安心なさい。貴女をどうこうする気はないわ」
そんな風にしれッと返してカップと紅茶をどこからともなく取り出していつものダージリンポーズをとっていた。
「貴女に言ったところで欠片も理解できないでしょうけれど、私、戦車道以外で貴女を倒すことを考えておりませんの。その戦車道ですら、私が倒したい相手は貴女ではありませんし、ね……」
少しだけ寂しそうな、自嘲的な微笑みでそう言って「ついてらっしゃい」と先導を始める。ついて行っていいものか正直わからないが、秋山殿は敵意がないことを理解したのかついていく方針っぽいのでそれに追従することにした。
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「ではダージリンさんは英国で?」
「ええ、プロ戦車道プレイヤーをやっておりますの」
俺を挟んでダブルサイドでにこやかに談笑する秋山殿とダージリン。おかしい……おかしくない?今までの不穏な空気どこ……?ここ……?
「って言うかお前
「年齢のことを言うんじゃありません。ちょっと若いからって全くもう……」
お互いの情報のすり合わせを行ってた結果出てきた【ダージリンにじゅう〇〇さい】という情報にもむくれた様子ではあるが懐かしいものを見る様子で朗らかに微笑んでいるダージリン。なんていうか、この大人の余裕よ……違和感がすごいわ。
「お前さんと顔を合わせたらとりあえず喧嘩売られるか怒鳴られるか叫んでるかだったからなぁ……違和感はんぱねぇわ」
「でしょうね。私も貴女くらいのころは余裕がありませんでしたから」
そんな風に談笑する余裕がある。なんつーか、大人になるって悲しいことなの……と言った偉い人もいるようだが、この変化は正直助かる。面倒くさかったからなぁ……フッドの相手するの。
そんなこんなな談笑しつつラブホっぽい通路を征く。
「ところで―――この場所がいかがわしいホテルっぽいのにも理由があるのか?」
「ここが集合無意識の場所だから、でしょうね」
若干言いづらそうな秋山殿の様子に、すんと澄ました表情でダージリンが続ける。
「要するに―――貴女に逢いたい女性たちの願いがそういうことなんでしょうよ。愛されてるわね、あなた」
「勘弁してくれ」
一瞬胃袋にでっけぇ穴が開いたかと思うくらいのダメージが入ったわ。別世界線の俺何してくれとるん?
というかもしかしなくても別の世界線で俺が死んでるの自決なんではなかろうか?いやまぁ彼女たちの豹変ぶりを見るに残当としか言いようがねぇが。
「―――探したぞ、エミ」
ざり、と砂地を噛んだブーツの音を響かせて、黒森峰のPJを纏ったまぽりんが俺たちの前に立ったのはそのタイミングだった。臨戦態勢を取る秋山殿と、泰然自若でまぽりんに視線を送るダージリン。そんな二人に目もくれず、視線を後ろで様子を見ている俺にだけあわせているまぽりん。微妙にハイライトが見えないのは気のせいだと思いたい―――いやごめん、手に鎖と首輪持ってる時点でアカンわこれ。
「エミ……逢いたかった……私を置いて行かないでくれ……」
そんな風に弱々しく声を漏らすまぽりんに違和感と罪悪感で死にたくなってくる。あの世界の俺は一体何をどうしたらまぽりんがこうなってしまったんだよ……。
「―――天翔エミ、先に行きなさい。そして扉の先にある【違う場所】を探しなさい」
スッと一人前に出るダージリンはそんなことを言ってまぽりんから俺を隠すように立ち位置を調整する。その様子に秋山殿が俺を抱えるようにして後ろに下がる。
「―――ひとつだけ勘違いしないように言っておいてあげる。これは私が選んだ私の我儘。貴女が気に病む必要はないわ。あの日あの時貴女ではない貴女へしでかしてしまった罪の贖い―――できるとは思わなかったけれど」
KAKUGOをキメた様子のダージリンに別世界の俺のスタンスってどういうものだったのか非常に気になったが
「―――サンキューフッド」
ただそれだけを残して俺は自分から踵を返し逃走した。背後から打撃音とか聞こえてきたがダージリンとまぽりんで一体どんな戦いを繰り広げることになってるのか全く想像がつかねぇ……。
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なんかめっちゃ涙流して抱き着いてくるペパロニだったり
なんかKAKUGOをキメた表情でどっかの赤い弓兵ばりに愛里寿に立ち向かう赤星さんとか
見覚えないのだが俺のために壁になってくれたなんかモブの方々とか
その他にも色々な出会いがあって、別れがあった。記憶に遺すと精神ダメージが半端ないから端折って脳内からはじき出したが
秋山殿と一緒にいくつ目かわからない扉を開けた先に
「―――待ってたよ。エミちゃん」
見慣れたガレージの、見慣れた景色の、見慣れた戦車の前に立っているみぽりんが居た。
「ここが終点。終わらせ方はエミちゃん自身が良く知ってると思うよ」
「随分とまたメタな話だな……」
ニコニコと笑顔で俺にそんなことを言ってくるみぽりんは俺の様子に楽しそうにフフッと笑う。
「懐かしいなぁ……もうずっと昔の話みたい」
そう言って天井を見上げるみぽりんの表情は見えない。
「エミちゃんは―――帰りたいんだよね?」
「ああ……帰りたい」
正直実を言うと【もしもここでみほエリを拝めるのであればその辺はどうでもいい】と思っている。が、しかし。しかしだ―――
この次元、全方位俺が挟まってるんだよ……orz
カチュエミノン みほエミエリ まほエミにエミ梅にまほエミエリ、まほエミチョビなんだわ。気が狂う(確信)
だったら俺が着々と積み上げたみほエリの結実が待っている世界に戻りたいのが実情である。目の前のみぽりんには口が裂けても言えんけども!言えんけども!!
気が付くと―――ガレージの中には誰もいなくて、
秋山殿も、みぽりんもいなくなっていて
目の前に、短いがしっかりとした作りの短刀があった。
―――あ、これ無限〇車編で見たわ。
その場に正座して、着衣を正し、スルリと手に取った短刀の刃の部分を頸に当てる。太刀じゃないのはまぁたぶん世界線的にアレだからだろう。
じゃあな!ABAYO!ファッキンワンダーランド!!もう来ねぇよ!!!(恨み節)
「―――――――――っ……~~~……」
微妙に重い頭を振り、鈍痛にも似た感覚を振り払う。
朧げな記憶の果てに
「ああ、帰ってきたのか……」
と独り言ちた。
非常に得難い経験をしたが、あれは夢だったのかもしれないという感覚もある。というかぶっちゃけ夢であって欲しい。(懇願)
『おはよう、案外と寝坊助なのね、貴女』
思考の海にダイブしてた俺をふいに横から聞こえた声が呼び戻した。首だけを其方に向ける前に部屋の装飾に不信を覚える。はて?俺の部屋はもっとシンプルだったよな?ここ誰の部屋だ?
あれ?デジャブ?無限ループって怖くね?
そうして、首を其方に完全に向けると―――
―――天蓋付きの豪奢なベッドで俺は横になっていて
―――映画のピロートークのような姿で肘をついてこちらを見ているダージリンが居た。
「―――ちょっと!?天翔エミ!?唐突に気絶とか失礼にもほどが―――は!?ちょ、ペコ!!アッサム!!救急車を―――ああもう!!何ですのこの展開ーーー!?」
4月“2”日
ぼくはいまびょういんにいます
《私信》 大遅刻してしまって申し訳ない。今もう一つ書いてるのがあるのでそっちもできる限り早く投下しもす()