【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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前後編の予定。

そういえばやるやるって言ってやってなかったことを思い出したのではつとうこうです(強弁)


【まほルート 番外編『ダジ・だいありぃ』・前編】 

 

 ――月――日

 

 本日より、グロリアーナ学園艦に乗艦して、聖グロリアーナ女学院に入学する。

戦車道を通じて、グロリアーナ学園艦の名声を高めるために邁進する。それこそ

好きこそものの上手なれ。偉大なる先達の名に恥じぬように努力せねばならない。

常勝黒森峰の戦術は陸の学校の時代よりずっと調べて研究してきた。

 

私こそが、時代を変えて見せる―――。

 

 

*******

 

 

 マチルダⅡに乗り込み、戦場を進む。

常に優雅に、華麗に、グロリアーナの誇りを持って。

 

 戦車としては鈍重。しかし頑強な戦車。その特性を全力で活かせば―――例え“あの”西住まほの突撃戦術であろうと『受け止めることができる』。その自負があった。西住まほの突撃の勢いを止められれば、足の止まった西住まほを抑え込んでおくことだってできる。あとは自在に駆け回る“先輩”が他の面々を遊撃で蹴散らして回るまでの時間を稼げば、勝機も見込める。そんな打算を含めた計算が脳を駆け回り、目まぐるしく作戦に必要な指し手を算出し続ける。

 

 ―――中等部の身には、少々負担が大きい。角砂糖(とうぶん)を紅茶に放り込んで一緒に飲み下す。

 

 対応する手札は?必要な布陣は?戦車の損耗率は?

脳が勝手に疑問符を浮かべては自動で処理されていく感覚。過去に自分で計算して算出した答えを脳の引き出しから引っ張り出して穴埋め問題をクリアしていく。

 

 

「―――さぁ、殺し間にいらっしゃい。“西住の虎”(ニシズミマホ)

 

 

 勝算が確かに計算されていた。そう呼ぶにははるかに薄いものではあるが、確かに“在った”のだ。

 

 

 ―――“あんなもの”がいるだなんて聞いていなかったのだから。

 

 

 

 ――月――日

 

 何なのあの【差別的用語】は!?

ありえない存在にもほどがある!!化け物でしょう!?

同じ人類だと理解できない!!したくない!!

加えてあの酷い仕打ち……許せない!!

……いえ、私の態度も悪い部分はあったと思いますけれど。

 

 それはそれ!!これは、これ!!!

 

 

 

 *******

 

 

 

 ――月――日

 

 何度目になったかわからない模擬試合を終えた。私たちの敗北という形で。

 

―――何度計算しても、勝てない。

何度計算しても、届かない。

 

あの砲撃の嵐に、あの突撃の勢いに、あの二人の組み合わせに―――

 

 

 

 *******

 

 

「―――反則よね」

「アールグレイ様」

 

 スコーンを片手で摘まんで片肘をテーブルに付いたまま不機嫌そうにひと齧りして、そんな風に拗ねた顔で語る我が先輩を前に、咎めるように視線を向ける。

それでも先輩―――聖グロリアーナ女学院の隊長、アールグレイ様の様子は変わらない。不機嫌を崩すことなくスコーンをかじり、紅茶を飲み干す。

 

「凡そ3秒間隔の砲撃の雨に、示し合わせたわけでもないのに砲撃の雨にフレンドリー・ファイアされることなく突撃してくる神速の戦車小隊。誰が止められるのって話よ」

「そんなことは―――」

 

 ない。と答えようとして脳がそれを拒否して言葉を止めていた。

何度計算しても、何度作戦を立て直しても、何度戦力を再計上しても―――

 

 

 ―――あの二人を倒せない。あの二人に対応できない。

 

 

 聖グロリアーナの貧弱な戦車たちでは

 

 

 

―――違う。“それ”を認めてはいけない。

 私がもっと深く作戦を組み上げれば、正しく皆を指示できれば、グロリアーナが天を戴くことだって―――

 

 

「ダージリン」

 

 

 はっと我に返った。

目の前のアールグレイ様が片肘をついた行儀の悪い恰好のまま、私を見ていた。その視線が内心まで射貫いているようで、一瞬息を飲んでしまう。

 アールグレイ様は、しばらくそのままじっとこちらを真っ直ぐに見つめていたが、不意に視線を外してもうひとつスコーンを摘まんでひと齧り。

 

「責任感が強いのは別に悪いことじゃない。でもねダージリン

 

 ―――“グロリアーナ(どうでもいいこと)に拘って、自分を蔑ろにしないで”約束よ?」

「―――? おっしゃっていることが良くわかりませんわ……?」

 

 アールグレイ様の言葉を上手く咀嚼できず、聞き返すもアールグレイ様はスコーンの残りをぱくりと一口で食べ切って乱暴に紅茶で流し込んで席を立ってしまった。後にぽつんと残された私は、冷めかけた紅茶とバスケットに残ったスコーンを少しの間見つめて思案し続けていたが―――

 

 

 結局、冷めかけた紅茶が冷め切るまで、私は俯いて呆然としていた。

 

 

 

 *******

 

 

 

 ――月――日

 

 中等部最後の大会がやってきた。

アールグレイ様がいない大会が。

それでもこの身に宿るグロリアーナの教えが私を導いてくれる――きっと……。

 

 

 

 *******

 

 

 

 「―――損害状況の確認!!急いで!」

 

矢継ぎ早に指示を出す。通信機に向かって口頭で、操縦手に向かって“踏”(ストンプ)で、手元の卓上地図に向かって腕とペンで。全身を使って並列処理(マルチタスク)を行う。脳がショートしそうで目の前がチカチカしている。

 

 「足回り問題ありません。損傷は装甲のみ!駆動系に問題なし!」

「右側方に注意しながら左後方に後退。牽制砲撃も許可するわ」

 

手短に言葉で復唱しながら“踏”を送る。続けて通信機からの声が響く。

 

『こちらウーヴァ!被弾により後退を選択!西北西距離2300!』

 

 響いてくるのは被害報告。じりじりと追い詰められているのがわかる。わかってしまう。

 

 

 

 ―――“黒森峰でもなんでもない、二回戦如きで”!!!

 

 

 

 「―――ッ!!」

 

ギリッと深く歯噛みした音が歯軋りのように響く。皆の規範であるべきという教えが無ければこの場で悪態の3つ4つ吐いていただろう。

 

 「―――なんて……無様……ッ!!」

 

 握りしめる指の力が強まり、カップの取っ手部分が圧し折れ車内の床にカップ部分が落ちて砕けて散った。

 

―――結局。私は今大会、何も成すことが出来ないまま―――

 

  ―――聖グロリアーナ女学院は二回戦敗退。屈辱的な結末を歴史に残したのだった―――。

 

 

 *******

 

 

 ――月――日

 

 アールグレイ様にもあの子にも合わせる顔がない。

そんな風に考えていた私のところにアールグレイ様の方からやってきた。

 

「あまり気にしないように。来年高等部に上がって来てからが本番」

 

そんな慰めもどこか遠いように思えた。

 

 

 ――月――日

 

 高等部に昇学し、戦車道課に向かう。

生徒会のメンバーとして既にアールグレイ様より話はついている。

早急に高等部の戦車道ルールと戦法に慣れておかなければならない。

 

 まず間違いなく、あの娘も、西住まほも高等部ルールにすぐに適応してくるだろうから―――。

 

 

 ――月――日

 

 高等部のルールに合わせた練習メニューを考案していく。

黒森峰に追いつくためには、今までの練習メニューでは足りない。

どう足掻いても限界はある。その限界を努力を積み上げて積み上げて届きうる牙に

そんな奇跡を生むには、いったいどれだけの無茶を積み重ねる必要があるのか。

 

 聖グロリアーナを取り巻くOG会の影響が、今のこの学院の首を絞めている。 

 

 同時に―――諜報部からの報告で“あの娘”と“彼女”は着々と勝利を重ねているだけに、泥中を歩んでいるような感覚が消えない。

 

 

 ――月――日

 

 高等部に上がっても、練習試合の打診を行い、新戦術のためのすり合わせに苦心することになる。レストアが終わったクロムウェルに乗り換えたア-ルグレイ様も高速機動に少々苦労しているようだった。

 

 ―――結果としては惨敗。新機軸の戦術を試すにも練度が足りない。まだまだ足りない部分が多すぎる。

 

 それでも―――

 

 

 *******

 

 

 「―――失礼する」

 

 そんな言葉とともに試合後のチームテントにやってきたのは、西住まほだった。

テントの中に簡易のテーブルを用意して軽い小物と紅茶を準備していた私たちが手を止めて彼女の方を見ると、その後ろからひょっこりと“あの娘”がやってきていた。

 

 「不躾な訪問だね。―――あ、ダージリン?この二人にも紅茶出してあげてー」

 

 ぱたぱたと手を振って「動いた動いた」と周囲に命令を与えるアールグレイ様に動かされるようにして弾かれたように周囲の子たちが駆け出す。私もそれに合わせて新しいカップをお湯を張った鍋から取り出し、水気を拭って並べる。

 茶葉の開き具合別に仕分けわれたものの中から最適な茶葉を選んでジャンピングを試し、己の出来る限りを示す。いついかなる時も己の最善を尽くすことが茶道における“詫び寂び”の極意。

 

「―――お待たせしましたわ」

 

 カップを用意して紅茶をサーブする。「ありがとう」と短く答える西住まほにきちんと(愛想とはいえ)笑顔を作れているか少し不安に思いながら、次は隣に、と移動してティーポットを手に隣に立つと

 

 

 

―――コポポポポポポ……

 

 

 

「あ、結構です」

「マナー違反も甚だしいでしょ!!?」

 

 持参した魔法瓶の中から真っ黒な液体を、よりにもよってこちらが用意したティーカップに注いでいる彼女―――天翔エミを前に思わず叫んでいた。

 いやいやいやいや――マナー違反とかそういう問題ではない。紅茶の園である聖グロリアーナのチームテントにアポイントメントもなく訪れて、こちらが用意した歓待の茶会の席でサーブを断るなど言語道断な話だ。

 

「どう言うおつもりで―――」

「あぁ、私珈琲党なんで。紅茶は宗教的にNGってことで」

 

 前々からずっとずっとずっとずっと文句のひとつも言ってやろうと思っていたところにこの仕打ち。ふつふつと怒りが沸きあがって―――

 

「こちらに踏み入って置いて歓待を受けないなどと無礼ではありませんの?」

「おう常時紅茶のカップ&ソーサー持参で紅茶飲んでる自分の姿振り返って言えよ?」

 

 務めて冷静に言ったのに全力のストレートで殴り返してくる天翔エミに、知らず強めの言葉になる。そんな半分言い争いに近い皮肉と嫌味の応酬を無表情でじっと見ている西住まほに向けて、アールグレイ様が切り出した。

 

「―――で?突然の訪問の理由は?」

 

 アールグレイ様の真っ直ぐな切り出しに、紅茶のカップを取ろうとしていた手を止め、ゆっくりと元の姿勢に戻った西住まほは、少しだけ考えた様子で無表情のまま視線だけを下に上に、隣の天翔エミにとスライドさせて見せて―――

 

「……練習を。渡りに船だろう?」

 

 そう、短く答えた。

言っている意味がよくわからない。練習、とは?頭に複数個の「?」が浮かんだままの私と対照的に、アールグレイ様は「ふぅん?」と楽しそうに意味ありげに微笑みながら紅茶を一口飲んで舌を湿らせた。

 

「……翻訳ちゃーん?仕事して?」

「アッハイ」

 

 そうして全力で天翔エミに丸投げした。

水を向けられた天翔エミを解放して視線が通る様に横に避けると、天翔エミはアールグレイ様の方向へ一歩前に出て、視線を合わせた。

 

「―――えー……『先の模擬試合での戦車の動きが今までと違っていた。推察するに新しい戦術を試していると見受けられた。なので【練習を】するならば相手を引き受けよう。君たちも仮想黒森峰を想定して戦術を模索しているのだろうから【渡りに船】だと思うがどう【だろう】か?』……かな?」

 

 少し考えながらそう通訳した天翔エミに、うんうんと無言で頷いている西住まほ。紅茶を傾けながらその様子を楽し気に見ているアールグレイ様の三者三様を見ていると、ここが異次元なのかと錯覚しそうになる。混乱と困惑で頭がくらくらしてきて、自分が抱えたままの温かさを残すティーポットから手元のカップに紅茶をサーブしてグッと飲み干していた。これはゲストである天翔エミのための紅茶だけど、拒否されたしセーフ。そんな風に脳内で言い訳を並べながら。

 

 ―――結局この後3日ほど黒森峰学園艦が逗留し、その逗留期間の間ずっと模擬戦を繰り返すという結論になり、聖グロリアーナは戦車の修理費だけで学院運営費の半年分ほどが吹き飛ぶレベルの金額が計上され、アッサムが卒倒した。

 

 

 *******

 

 

 ――月――日

 

 黒森峰が敗けた、らしい。

天翔エミと西住まほ。あの二人のコンビネーションは完璧だ。それはアールグレイ様も正しく評価するほど。

だというのにそれが敗けた?ありえない。

GI6からの情報を見る限り「天翔エミと西住まほが試合中に包囲され、天翔エミがヤークトティーガーから離脱して逃走。それとは別の場所でフラッグ車が撃破され敗北」と書かれている。意味が分からない。

“あの”天翔エミが西住まほを見捨てて逃亡?ありえない。

 

ありえないありえないありえない―――絶対に。

 

 もっと詳細で詳しい情報が必要だ。GI6を個人的に動かすことになったとしても

 

 

 ――月――日

 

 アールグレイ様が天翔エミを拾ってきた。

 わけがわかりません。

 

 だれかせつめいしてください

 

 




後半へぇ~続く(CV:キー●ン山田)


後半は原作本編時空~エピローグまで
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