【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
「「「お疲れさまでした!!!」」」
全員で整列し、礼を行う。壇上から降りて更衣室へ向かう隊長の後ろに付いていつものように
「―――ああ、エリカ。今日は付き添わなくていい。帰れ」
「―――えっ?」
【逸見エリカのお誕生日会 in ダージリンファイルズ】
―――今日は最悪な一日だ。
PJを着替えた記憶がなかった。けれど制服に着替えていて、授業も耳に残っていなくて……生きている実感が薄かった。
隊長に拒絶された。
そう感じてしまった部分があるけれど、そのショックが大きすぎている気がする。
―――いや、無理もないのか。だって今の私は【一人】なんだ。
あの事件の後、突然いなくなってしまった私のかけがえのない親友たちは、遠く離れた場所で戦車道を続けている。私に何の相談もなくいきなり二人で消えてしまった。
いや、正確には相談を一度されている。件の消えた親友の一人天翔エミから「私は学園を離れるから彼女のことを頼む」と、お願いをされた。その決意を覆せなかったから私は彼女を見送った。
そうしたら、何故かもう一人の親友と一緒に消えてしまったのだ。なぜか。
その居なくなってしまったもう一人が、あろうことかエミと一緒に居なくなって、しかもエミを連れて転校した先で戦車道を始めていたと知った時の私の感情は、筆舌に尽くしがたいモノが在った。
―――いや、そんな話は今はどうでもいい。兎に角、私は今一人きりなのだ。
同じように一人になってしまった隊長を支えるために副隊長として頑張ってきた。努力を続けてきたはずだった。
けれど突き放されて、今の感情が良くわからなくなった。
話をする友人はいる。世話をする後輩もいる。けれど―――純粋に内面を預けられる親友は、今ここに居ない。
「―――はぁ……」
こうしていてもはじまらない。トボトボとした足取りで寮へ向かう。なんだか心のザワザワが落ち着かないので今日はハンバーグを食べようと思った。スーパーなどのレンチンやインスタントではなくて、ひき肉から手捏ねで作るお手製のハンバーグだ。
そうと決まったら足取りは迅速に、行動は脳内処理で。
合い挽き肉ではなく、牛と豚のひき肉をそれぞれ買い込んで自前で配合するのが自作のトレンド。牛脂もついでにお持ち帰りしておく。素材の厳選を終えたら後は調理工程を脳内で反芻しながら寮のドアを開けて―――
「―――エリカさん!お誕生日おめでとう!!!」
「ハッピーバースディ!エリカ!!」
それほど広くない寮の部屋のテーブルに並べられたケーキと、親友二人の笑顔が私を出迎えてくれた。
「―――な、なんで?え?どうして??」
困惑する私に「あれ?もしかして聞いてない?」と呟いているみほの姿。
私はそんなみほたちの様子に、記憶の糸を手繰り寄せる。練習後のやり取りを、脳内で―――
『―――ああ、エリカ。今日は(誕生日だと聞いて居る。無理をしなくていいので)付き添わなくていい。(みほたちが準備をしているだろうから先に部屋に)帰れ』
そこそこ説明を省いた端的なお言葉を反芻するに、そういう意図があったのだろう。正確に伝わっていないけれど―――
「―――おっ、ハンバーグの材料?いいねぇ!久しぶりにエリカのハンバーグ食べたいなぁ、いいなぁ~」
「もう、エミちゃん。今日はエリカさんが主役なんだよ?」
買い物袋を目ざとく見つめてさりげなくもないおねだりをしてくるエミと、それを嗜めるようにしつつこっそりと期待する様子のみほに
「―――しょうがないわね!大人しく待ってなさい」
私はエプロンを取り出してキッチンに立った。
―――今日は素晴らしい日だ!!
*********
――月――日
計 画 通 り !!
学園艦の入港日程を会長に嘆願してズラしてもらい、エリカの誕生日に黒森峰学園艦と交流できる日程を作る。
そしてみぽりんを連れてサプライズパーティー!!これやで工藤!!みほエリの進化の一助になれり!!
一応話を通しておこうとまぽりんには話を通したし問題はない。
あとはエリカとみぽりんのキャッキャウフフを特等席で眺めるだけの簡単なお仕事です。
でも俺が身分的に同席するのがどうかと思うのでとりあえず3ピロシキくらいが妥当だと思いました。(後日滅茶苦茶執行した)
◀◁◀◁◀◁◀◁◀◁ 時を戻そう(某芸人感) ◀◁◀◁◀◁◀◁
「ハッピーバァァァスディ!!!」
若干テンション高めに盛り上げようと声を上げる俺と、そんな俺を道化に思ってくれてたらいいナーと期待したい目下のみぽりん、そして赤星さんとエリカ。
総勢4名が集まっていた。
【逸見エリカのお誕生日会 in 小梅ルート】
黒森峰学園艦と大洗学園艦の姉妹同盟が締結され、島田愛里寿が入学を決めて年末。次期生徒会長選挙で俺が生徒会長をやることになり、まぽりんはドイツに旅立った。
順調にリハビリを終え「天翔エミ復活ッ!!」と復活アピールしたときには暦の上では11月。まぽりんのドイツ行きの前に全員でお泊り会やって―――色々と戦慄を禁じえない情報を記憶に残してしまった。今も胃が痛かったりする。
11月に退院したということで愛里寿の誕生日も、みぽりんの誕生日も逃してしまい、盛大に祝うことができなかった俺は「とりあえず一本逝っとく?」と脳内で決議案を提示したり、けど戦車道的に冬には無限軌道杯とかあるしなぁととりあえず保留したりと色々あった。無限軌道杯については――――病み上がりってこともあり俺出場できなかったんだけどさ(大人の事情)
そんなこんなで年が明けて、バタバタしてたら3月で―――Xデーやで!ってことでみぽりんにそれとなーく話を振ってみたんだが……
【悲報】黒森峰はストイック杉田【まぽりんの弊害?】
なんということでしょうか……みぽりんたちは去年、誕生会を一切やっていなかったと言うではありませんか……。高等部一年目のあの決勝戦の前にやったエリカの誕生会が最後で、翌年の春は突然戦車道始めた俺のことでいっぱいいっぱいでそれどころではなかった上、例のロミジュリ事件(俺命名)があったしでどうしようもなかったそうな。……あれ?これ俺のせいでは?(PP+1)
これはいかんよなぁ……テコいれもやむ無しよなぁ……?ということで赤星さんを巻き込み3人でエリカのとこに凸してみんなで誕生日祝おうぜ!ってノリと勢いで押し込んで全員でパーティータイムである。
本来ならばいつも愛里寿が後ろをついて回って俺のピロシキカウンターをグルグル回転させているところなのだが、4月からの年度更新で進級して正式に大洗の制服を着ることになるとかで島田の家に戻って採寸作業の真っ最中らしい。試着した後アルバムに写真残したりするんだろう。主にちよきちさんとミミミが。
【閑話休題】
「一年越し、二年ぶりって言うのに……なんか懐かしい気分ね。でも……うん、悪くないわ」
「そうかい?気分悪くしなかったのならいいことだね」
ジュースとノンアルで乾杯してエリカが若干嬉しそうに気恥ずかしそうに呟いているのを見てるとやってよかったなーと思う。なのでみぽりんも祝辞述べてやって、どうぞ。
本日のお誕生日会はハンバーグ多めのコースになっております。エリカは本当にハンバーグ好きだよなーって話題振ったら「アンタが前に食べたいって言ってたからでしょ!?」と返された件。やだこの娘、天使かな?(PP+3)
******
「誕生日、お祝いにいくから」
いつものメールの末尾に、さらっと書かれた一文を流し読んでメールを閉じて―――
―――しばらくして見間違いかな?勘違いかな?と思いながらメールを確認して
「――――――みほっっ!!部屋を片付けたいから……手伝って!!」
全力で迎撃準備を整えることを決めた私は、少しでも確実性を高める選択肢を選んだ。
午前中に来て飾りつけとか色々をやっていくという内容にみほと一緒に部屋を片付けて、あれやこれやとエミを迎えるための用意を整えた結果、やってきたエミが「エリカはすごいね」と感嘆するほどになったが、気合を入れていつもよりも頑張った結果をボーダーに設定されたような気がして少し悩んだ。
誕生会のために“もてなされる側”が料理を用意するというのは本末転倒なのかも?とみほも言っていたけれど、これはどうしても私が用意したかった。
ついこの間まで入院していて、病院食以外が恋しいと軽口を叩いていた彼女が言っていたから。
「エリカのハンバーグ、アレ退院したら久しぶりに食べてみたい」って言っていたから。
「美味しい」と言ってくれる彼女の姿で、努力は報われるから。
夜にバルコニーで夜風に当たり、考える。これまでのことや、これから先のこと。
三年生に上がり、私とみほで、隊長が抜けた穴を埋めて黒森峰を再び常勝の優勝校にしていかなければならない。そのとっかかりとなる三年目の大会で、エミがいる大洗女子には強力な敵が存在する。
島田愛里寿。 隊長とみほの二人がかりでやっと打倒できた怪物。
わたしにあの娘の相手が務まるだろうか?彼女の取り巻きである大学選抜の三人はいないけれど、その代わりにあちらにはエミと赤星がいる。あの二人の相手をしながら島田愛里寿を相手取る……現実的とは言い難いと思える。
それでも、託されたバトンを私とみほで受け取り、次の世代に繋げる使命が、私にはある。みほの凄まじい才能を、エミの努力に裏付けられた力を見てきた私だからこそ、あの二人をして更に上に居る島田愛里寿の存在に、私程度でどうにかなるのかという諦観を―――赤星小梅の背中が吹き飛ばしてくれる。
―――負けてなるものか。
トラウマを克服して、痛みをものともせずに、貫き通した凡人がその意地で西住みほを打ち破って見せた。ならば私にだってできない道理はないはずだ。諦めない限り、模索し続ける限り。
「―――エリカか?」
肌寒さを感じて軽く身震いした私の後ろから声がかかり、振り返った先にはエミが居た。なんだか少し辛そうな表情をしているのが見て取れて、病み上がりに無茶をさせてしまったのかと不安になる。
「大丈夫なの?気分が悪そうだけど」
「ああ、へーきへーき。久しぶりに食べたハンバーグにちょっと食べ過ぎただけだよ」
そう言ってニッと笑って大丈夫だとアピールして見せるエミに苦笑を返す。
「ならいいけど―――本当、無茶はやめてよ?大学選抜戦の時みたいなのはもう禁止だからね?心配するこっちの身がもたないんだから」
「言われなくても二度とやりたくないさ」
「おおこわい」と身震いして見せるエミの様子に内心で嘆息する。どうせこの娘は、どうしようもなくなったら同じことをするのだろう。そう心で理解できた。
だから―――
「ねぇエミ? 私、誕生日のプレゼントが欲しいわ」
「プレゼント?それならさっき交換会をやったじゃないか」
誕生日会の最後に音楽とともにプレゼントをローテーションする恒例のプレゼント交換をやったことを指しているのだろう。エミは不思議そうな顔をする。でも私は知っている。エミがこっそりとタイミングと座っている順番を計算して操作して、赤星の手元に自分の用意したプレゼントが入れるように画策していたことを*1。
まだまだ赤星の傍で経過を見ながらあの子の世話を焼いていくという意志表現に思えて、同じように気づいていたみほとふたり、アイコンタクトで残念無念を分かち合った。
「―――アレとは違う、特別なやつ。一つだけでいいの」
「―――話が見えてこないなぁ……」
私の様子に少し違和感でも感じ取ったか、バルコニーの狭いスペースに腰を下ろして私を見上げる様な態勢で言葉を漏らすエミに
「簡単なことだから。いい?」
念を押すように、縋るように、そんな切に願うような声だったらしい私の言葉を受けて、エミは鷹揚に「いいよ」と頷いてくれた。
私はそんなエミに視線を合わせるようにしてすっと手を差し出す。小指を伸ばして、「約束」と。
お互いの小指を絡めて、ゆびきりげんまん。子供みたいなそれを、胸の内に仕舞う様に。
「―――エミは思い立ったらすーぐにどっかに飛んで行っていなくなっちゃう子だから、約束」
「そう言われると辛いね……前科があるだけに」
困ったような顔をするエミと一緒に唱和する。
「ゆびきりげんまん。―――何処に行ってもいい。でも必ず私とみほのところに戻ってくること。その後どこかに行ってしまっても、また絶対に戻って来る事。いい?」
「―――なんだいそりゃ?」
あの時、赤星は言った。「私一人ではエミさんを止めて置けない」と。
だから私だけでもきっと無理だ。もっと重石を増やさないといけない。だったら……あの頃と同じように、みほと二人でエミを抑え込めばいい。その後独占したかったら、その時みほと決着を付ければいいだけのこと。
「いいから約束!!私とみほが一緒に待っててあげるから、いきなりいなくなってもいいけど、絶対に戻ってきて」
「―――あぁ、わかったよ」
強引でも、無理やりでも、私やみほがお願いすると「約束だ」と言ってくれる。
そんなエミが堪らなく好きだ。
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――月――日
エリカの誕生日でヒャッハーしてきた。今日はすこぶる喜ばしいメモリーデイである!全世界のみほエリ信者よ!我が世の春が来たぁぁぁぁぁ!!!!
誕生日会が終わってお泊りモードの最中、ベッドが足りないので床にオフトゥン敷いて眠っていたら夜中不穏な気配に目を覚ますとみぽりんがすぐ隣で寝ていた。余りの状況に決して気付かれないように気配を殺してアサシン歩きでバルコニーまで飛び出したところ、エリカが外で夜風に当たっていたのだ。が―――
あろうことか夜にエリカと小指絡めてゆびきりげんまんをすることになった俺である。この後エンコ詰めるべきかな?と思った矢先、エリカから重大発言が飛び出したのだ!
「私とみほが一緒に待っててあげるから」と!!!
クォレハァ……みほエリ、スタートしちゃってるよね?あの衝撃の告白の夜(小梅ルートエピローグ参照)から僅か半年足らずほどではあるが……赤星さんの傍に付くことを選んだことで俺のフラグは見事に叩き折れていたようである。
やはり俺の仮説は正しかった!!そして俺が消えたことで世界の摂理は正しくみほエリを描いている!!俺は勝った!運命に打ち勝ったのだ!!
嗚呼みほエリよ永遠なれ!!!俺は生涯この日を忘れまい!!
それはそれとしてこの後めちゃくちゃ【清算】した()
とまぁ、偏在する2つのルートVerエリカバースデー ということでひとつ。
まほルートVer?まだ完結してないから、またな!!()