【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
そう(なるだろう)
よ
*今回小梅ちゃん、出ません(小梅ルート??)
この辺で黒森峰問題とか解決しておかないとやばない?やばいって感じだったので
「急ではあるが、今度の日曜日、練習試合を行うことになった。
相手は―――聖グロリアーナ女学院」
桃ちゃん先輩の言葉に他の面々に動揺が走る。急な試合に驚いている様子アリアリで、ついでに朝6時集合の宣言にまこりんがアリーヴェデルチ(さようならだ)である。「わたしのこと沙織先輩って呼んでみ!?」って独特のイントネーションが聞けたときちょっと満足感を感じたりした(ガルおじ感)
―――さて、赤星さんの性格でⅣ号の目覚まし空砲と起床ラッパが可能なんだろうか……?
『#2.5 試合、やります!―――の前に寄り道です 』
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送信者:西住みほ
件名:どういうこと?
本文:何で大洗で戦車道やることになったの!?赤星さんは大丈夫なの?
ちょっと色々聞きたいことがあるから後でまた連絡するね。
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みぽりんからのメールを閉じると同時に、携帯がけたたましく鳴り響いた。
画面に表示された名前は「逸見エリカ」。すこぶる嫌な予感を覚えつつ、通話をプッシュ。
「もしも―――『どういうことなの!?』
こっちの言葉を遮って、エリカのターン!ドロー!(ワンキルフラグ)
『何でそっちの学校で戦車道やってるの!?赤星の病気はどうなったの!?赤星も一緒に戦車道やってるの!?どういうことなの!?』
「―――オーケイエリカ。落ち着いて話し合おう」
思わず正座してしまうからその調子でしゃべり続けるのやめてくださいお願いします(土下座寸前感)
俺とみぽりんとエリカが仲良くやっていた黒森峰時代でも、エリカの気性の激しさとツッコミ気質に強い語気は健在で、特に俺は孤児院暮らしだったこともあり、女学園でのマナーだの、配慮だのが決定的に欠けていた時期があり、その都度エリカに「正座」を言いつけられていたりする―――。とはいえ、多少エリカと打ち解けるためにもわざとミスしてエリカに教えられることで優越感を助長させた部分もあったりするが。
―――考えて欲しい。逸見エリカに「馬鹿じゃないの!?」って怒鳴られて正座させられて、教えを乞うという権利である。
―――値万金ではなかろうか?(提訴)
まぁ、そんなこんなで俺もみぽりんもエリカの叱りつける声に関しては苦手意識というか、無意識的な屈服本能が芽吹いていると言って過言ではなかったりする。
―――まぁ本気で怒ってるときのみぽりんの「正座」の方が抗い難い凄味があるのだが―――だが、それがいい(傾奇者感)
【閑話休題】
『―――呆れた。こっちの事情も聞かないで一方的にそれって―――そっちの生徒会長アタマおかしいんじゃないの?』
「まぁ―――色々あるんだよ。きっと」
廃校云々については会長から聞いていない情報なので語らない。が、相当アレな話だと判断されたようだ。まあ正直多角的に見ても俺と赤星さん、被害者だからな。
俺の言葉に向こう側でため息を吐く音が聞こえる。どうやら心底呆れられてしまったようだった。
「それに正直言うとさ―――チャンスだと思ってる」
『チャンス?』
聞き返すエリカに、俺は少しだけ声の調子を高める。
「―――みほやまほ隊長。それにエリカと、敵として戦ってみたかった」
俺の言葉に
『―――あっきれた……アンタ、大昔に辞めて失伝してる学校の戦車道で大会を勝ち抜けると思ってるの?』
再び心底呆れたという調子で返事が返ってきた。そしてその後で『でもまぁ』と追加されて
『―――そうね、確かにいい機会だわ。こんな機会でもないと本気のぶつかり合いは出来そうにないものね』
なんて、愉しそうな声でそう言っていた―――エリカは本当にマウント取りたがる子やなぁもう(近所のおばちゃん感)
ところでさぁ―――みほとはどうなんその辺さぁ―――?(ねっとり)
―――とか直に聞くことはできないので、慎重に言葉を選ぶ。
「ところで、そっちはどうなんだ?最近」
『―――そうね。少しだけ面倒くさいわ』
そう言って語ってくれた内容は何というか―――本当に面倒な内容だった。
俺と赤星さんが黒森峰を去った後、副長をあくまでみほのままで行くという「みほ派閥」(実質は西住まほシンパ)と、装填手のせいとは言え撃破される車長に副長は務まらないという理論でみほをスポイルしようとする「副隊長逸見エリカ派」(実質アンチ西住まほ)に分裂して、こっちの言うことも聞かずに暴走していた らしい。
――――なんで?(素)
いや聞きたいのはそういう事じゃないのよ。俺が聞きたいのは俺がいなくなったことによる二人の距離感なのよ。わかって(懇願)
とはいえそんな話聞いた以上放置するわけにもいかない。なぜならそんなめんどくさい対立派閥が生まれてるロミジュリ感溢れる状況で、二人が仲良く会話なんかできるはずがないからだ。特にみぽりんとか孤立するに決まってる。
あの娘の不器用さを舐めてはいけない。黒森峰で友達になってから親密度をアップさせるべく会話を繰り返していたころ、不意に思いついて「私から話題を振らなかったらどうするだろうか?」と軽く会話の流れを止めてみたところ―――
―――実に30分間ほど、話題を切り出そうか、俺が何か切り出してくるかもしれないから黙っておこうかをウロウロウロウロ迷いまくった挙句、さらに10分経過した40分後に不意に近所のコンビニの陳列商品の話題を切り出し始めるくらい不器用なのだ。
そら(原作最終話で「何か一言言って締めろ」って言われてテンパって色々と悩んだ挙句「パンツァーフォー」しか言えなかった娘に期待したら)そう(なるだろう)よ。
「エリカ。まほ隊長と話をする必要が出てきた。すまないが今日はここで」
『え?あ、うん―――じゃあ、赤星にもよろしくね』
最後の最後で赤星さんを気に掛ける言葉を残すあたりにエリカの優しさを感じる。デレの魅せ方が秀逸やん()
「エリカ―――この後黒森峰で何が起きても、まほ隊長と私を信じて欲しい。みほにも、そう伝えてくれ」
『――――?アンタ、もしかして何か―――』
通話を打ち切り、長い長い息を吐く―――。
これから俺がしようとすることは赤星さんにも他人事ではなくなる。きっちりと相談しておかなくては―――。
―――通話中に5分おきにみぽりんからの着信履歴があった件。その回数実に25回(エリカとの通話時間約2時間15分弱)
もう一回くらいかけて来るかなと思って待ってみたがかかっては来なかった。あるいはエリカからみぽりんに通話が行っているのかもしれない。対立派閥の神輿で気軽に学園内での会話もできないとかマジでロミジュリじゃねぇの―――イカンでしょ?……救わなきゃ(使命感)
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「―――エミさんが決めたことなら、私に言うことはありません」
割とあっさりと、赤星さんはオーケーしてくれた。あらやだ、天使かこの娘(素)
ともあれ、問題になり得る当人からの許可も得たので即座にまぽりんに電話をかける―――。
「―――あ、まほ隊長ですか?ご無沙汰してます。天翔です
―――そちらの状況をエリカから聞きました。そのうえで、ご相談があります」
俺の提示した内容に、まぽりんは少し考えるように沈黙し、
『確かに、その話ならば黒森峰にある今の空気は一部払拭されるだろう。
―――だが、代わりに君と赤星は―――』
「覚悟の上です」
即答する俺に、向こう側で息をのむ様子が手に取るようにわかる。まぁ自分から戻るべき場所を爆破して背水の陣を敷くとかどこの修羅の国の民かって話だわな。
『……天翔、君と赤星に感謝する―――!』
「いえいえ。みほとエリカのことを、よろしくお願いします」
通話を切り――――どっと襲ってきた疲労感にそのまま後ろ向きにベッドに倒れ込んだ。さて……とりあえずは―――
――――携帯買い替えて、番号変えなきゃな。みぽりんから追及のお電話が来るだろうし。
後回しにしてもどうしようもない問題を後回しにして致命傷になる未来を、今このタイミングで知ることなど誰にもできない。きっとこの時の俺がそうだった
――――んだと思う。きっと(震え声)
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―――黒森峰女学園において綱紀粛正の嵐が巻き起こった。
西住みほを担ぎ上げて反旗を翻すため、副隊長候補である逸見エリカをも抱き込み、クーデターを引き起こそうとしていた首魁。
―――それが天翔エミである。
赤星小梅を命がけで救うことで同シンパを集め、徹底的に西住まほを孤立させる目論見であった彼女の計画は、黒森峰の10連覇の阻止による西住まほの求心力低下をも視野に入れた悪辣なものであった。これに対して天翔エミを放逐、体のいい島流しにした。というのが天翔エミの転校の真相である。
そんな噂が黒森峰内部に蔓延し、今後西住みほ、逸見エリカを担ぎ上げようとする連中に対しての強いカウンターとなった。
「―――何で……?どうして……?」
噂の渦中であり、フラッグ車の隊長として抜擢され、最も信頼を寄せていた親友が、実は自分を利用していた叛徒であったことから、西住みほを叩こうとする連中は鳴りを潜めた。逆に同情から彼女を擁護する人間が増えた。
同じく逸見エリカも同様に、二人を担ぎ上げようとする派閥の争いは激化することなく沈静化―――あとは西住まほの手腕次第で黒森峰は一枚にまとまるだろう―――。
「―――あの馬鹿―――何でつながらないのよ―――!!説明をしなさいよ―――!!!」
何度電話をかけようとしても繋がらない。苛立ちだけが募り、エリカは携帯を叩きつけたくなる衝動をどうにかして抑え込み、代わりに地団太を踏む様に地面を蹴った。みほは蔓延する噂を信じようとはしていないが、自分に集まる同情の根底にあるエミへのヘイトに気分の悪さを感じて軽いノイローゼにも似た症状を起こしかけている。
かつてエミと過ごした、エミが居た部屋で二人集まって所在無く座り込む。彼女の真意がまるで読めない。いや、本当は分かっている。彼女が自分たちのためにやったことなのだということは。その結果自分が戻れなくなっては意味がないというのに―――。
「―――やはりここにいたか」
ドアを開けて入ってきたのはまほだった。驚く二人を前に、ドアの鍵を閉めてスタスタと部屋の中に入ってきたまほは、その場に座り
「―――公の場でこうすることが、私にはできない。本当にすまない―――ふたりとも」
深々と、頭を下げた。
「今の黒森峰を取り巻く状況はすべて私の責任だ。西住流として黒森峰隊長として私が至らなかったばかりに、ここにいない天翔が気を揉み今の状況を作り出した。天翔と赤星の戻る場所を奪ってしまった―――私は、自分が情けない―――!!」
ギュゥと強く血の気を失い白くなるほどに握りしめられた拳、深く深く悔いるような声、下げられた頭で表情は見えないが、ポタポタと膝の上を濡らす滴。
まほが好んでこの状況を作り出したわけではないが、それに強い責任を感じていた証左であった。
「―――お姉ちゃん。大会、頑張ろう?」
「みほ……?」
そっと、まほの肩に手を置くみほの言葉に、まほが疑問で返す。状況と会話のつながりがあまりにも見えなかった
「―――エミさんはいつもこうだから。私やエリカさんのためにいつもこうだったから―――でもエミさんは自分で選んで行動したから後悔はしてないって言うんだよ。ずっと、ずーっと」
ぽつりぽつりと独白するように、みほは語る。
「エミさんが何を考えてるのかわからないから、きっと大会なら顔を合わせることができるから―――その時にきっと全部聞ける」
「そうね。直接会って、場合によっては一発ぶん殴ってやるんだから―――!」
口々にそう言って笑うみほとエリカに、まほはうつむいたまま目元を袖で拭い、表情を戻す。
「―――ならば今回の大会。勝ちに行くぞ。天翔と赤星ならば、そうそう負けることはないだろう」
『―――はい!!』
まほの言葉に元気よく返事を返すみほとエリカ。ここに三人の団結は成った。黒森峰は、より強固な存在となって、大洗の前に立ちはだかる壁となる―――。
―――なお、未来の話になるが、一回戦でサンダースとの対戦を引き当て、準決勝でプラウダと当たるという逆ブロックに配置された大洗に、割と本気で勝ち上がれるかどうか心配になる三人の姿が在ったという―――。
「俺が悪者になる→エリカとみほが二人で会えるようになる→みほエリが進む→俺がフェードアウトしても誰も傷つかない状況が完成する
完璧すぎる計画だな。穴の一つもない。問題は赤星さんも帰れなくなってしまう可能性がある点にあるが、本人がオッケー出したので問題なし。これはみほエリ大勝利フラグやで(キリッ)」
だいたいこんな脳内です()