【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
ぼくはいま びょういんにいます。
アンツィオ戦の後、ルクスのメンテをしていた際に自動車部がレバーと床面の血痕に気づいたらしく、会長たちに報告。俺のグラブの内側が割と血まみれだったことを含め、血のにじむ包帯を巻いた指に付いて詰問され、「爪がちょっと剥げただけで、一本だけだし試合には影響ない」と言ったところ、
「―――天翔ちゃん。正座」
「はい」
―――俺最近正座してばっかじゃない?
エリカともみぽりんとも違うほぼ感情論なしの理詰めの正論でのお説教は割と心にザクザク突き刺さったんだが―――その後、不意にぎゅーっと感極まったかのように抱きしめられた。
―――罪悪感から血を吐きそうだったので、今後ピロシキは控えよう。己の罪業については、ダミー日記を隠れ蓑に日記に記しておいて、人生の終末ノートで清算しようと思う。
追記:後で会長に抱き着かれたこととか含めて桃ちゃんにめっちゃ怒鳴られました。あぁ~~~嫉妬イイっすねぇ~~(杏桃的に考えて)
天翔エミについて、私はあまりにも知らない。
けれどこの小さな救世主は、私たちにとって最も大切な破邪の剣であり、もう一本の剣を剣たらしめるための最も大切なファクターだ。
あの日、廃校を突き付けられた私が一縷の望みとして提示した「戦車道高校生大会優勝」の条件。「できるものなら」と言いたげな役人さんの嘲笑が脳裏に焼き付いて、それが今現在までも私の反骨精神の火を燻らせている。
……とはいえ、戦車道が廃れて久しい学園で、どこまでのことができるのか。最後の思い出作り程度の考えがなかったわけじゃない。
それでも、大人の思い通りに「はいわかりました」なんて、口が裂けても言えなかったのもまた、真実だ―――。
『#6.5 幕間 ~大洗女子学園生徒会長 角谷杏のここまでの記録~ 』
――月――日
「まずは戦車道するためのメンバーを選考しないとねぇ―――」
廃校を突き付けられ、鼻で笑われ、それでも不敵に飄々とした態度を崩してはいけない。だって私の横にいつも付いて回る二人は、不安な顔を見せれば心が折れてしまうだろうから―――。
――月――日
「他校からの編入組に、戦車道経験者が居ました。それも2名」
「いいねぇ。幸先いいじゃん」
戦車道経験者を優先的にスカウトしようと中学時代に戦車道やってたとかそういう経験の有無を河嶋に当たらせていたら、編入組の中に二人の生徒がリストアップされた。
一人は赤星小梅。中学からの戦車道経験者で、あの黒森峰でレギュラーメンバーとして活動していた生え抜きのようだ。
そしてもう一人が天翔エミ。戦車道界隈での「小さな巨人」と呼ばれる知る人ぞ知る有名人で、体格で足切りにあっていなければ国際強化選手の道すらあったかもしれない程の装填速度を誇る逸材―――らしい。
なんでそんな二人がこんな戦車道もない東の果てまで流れ流れてきているのか。について、私は最初「夢破れて」とかそう言うのだと思っていた。
だからこそ「もう一度夢を掴める可能性」を提示すれば、それにノッて来ると思ったんだ……。
「―――赤星ちゃんに天翔ちゃんさぁ―――選択必修科目、戦車道、取ってね?」
距離を詰めるのは精神的に圧を掛けるため。覗き込む態度は相手の奥底を見つめるようにしてさらに圧を増やすため。一挙手一投足を相手を追い詰めて追い込むために使う。交渉や説得における“力押し”の基本―――。
「私はともかく、赤星さんに戦車道は無理です」
与しやすいと踏んでいたはずの方から飛んできた拒否の声に、私は内心で二人の立ち位置を修正する。目の前の私よりも背が低い少女には、はっきりとした強い意志を感じるから―――。
「赤星さんはここに来る原因になった事故がもとで、戦車に乗れない身体になってしまっている。とてもじゃないが、戦車道なんてさせられない」
そこに“赤星小梅を守る”強い意志を感じた。だけど私も退けないんだよ。
「えー?でもさぁ……Ⅱ号戦車で毎日登校して来てるよね?」
過保護に護ることを悪いとは言わない。けれど赤星ちゃんはまだ戦車道を続けたいんでしょう?だから戦車に乗ってるんでしょう?
乗用車の送迎の様に毎朝戦車で校門をくぐり、自動車部のガレージに戦車を置いてやって来るこの子たちの存在は、戦車道を始めようとする生徒たちの興味を引く恰好の広告塔だ。
私と天翔ちゃんの視線が交錯して、お互いの譲れない想いがぶつかる。
「―――あの、私……っ、戦車道、やります」
空気を打ち破ったのは、私が解放した赤星ちゃんの方だった。
―――その瞳に宿る決意に、ちょっとだけ気圧されたのは、内緒にしておこうと思う。
――月――日
戦車道を始めて、学園内で転がってたスクラップ手前の戦車を寄せ集めて、出来上がった5輛の編成。
八九式、M3、Ⅲ突、38t、Ⅳ号。
正直戦力としては頼りないにも程がある。けれどやるしかなかった―――。
戦車道連盟を通して教導を依頼したところ、蝶野亜美教官という方がやってきてくれた。色々と豪快な性格で気風のいい「格好いい大人」だった。
―――ズブの素人だらけだけど、鍛えればそこそこは戦えそうだ。やっぱり、主力とすべきは赤星ちゃんと天翔ちゃんになりそうだと、改めて思った。
――月――日
聖グロリアーナとの練習試合を、河嶋がまとめてきた。
強豪校の一角ではあるが、戦車の質を考えると最初の一戦で心がへし折られるよりはいいだろうと思うレベルだ。これから先の指針にもできるし、
何より近い。ここより近いところだと知波単くらいしか思いつかないし、あそこと最初にやり合ったら実力を勘違いしそうだしねぇ―――。
試合は五対五の殲滅戦ルール。こっちの車輛は天翔ちゃんたちが乗る車輛も含め六輛なので、ルクスにはお休みしてもらう。
けれど車長隊長としての適性を見たいし、経験者なしで戦ってもグダグダの戦いになって実入りなんかないし、赤星ちゃんと天翔ちゃんは乗員の定員数の足りない38tとⅣ号にそれぞれ乗せることにした。
*****
――――ごめんなさい。と、謝罪の言葉を内心で繰り返す。
「―――はぁ、はぁ―――は、は―――ッ!――――ぁ……」
「もういいよ!もういいから小梅ちゃん!降りよう!外出て!息吸って!」
悲鳴の様な声を上げて赤星ちゃんを引きずり出している武部ちゃんの姿が見える。その様子には演技などと言ったものはなく―――いかに彼女の症状が深刻なのかを物語っていた。
「―――ごめん。あれ、本当だったんだね」
―――あの日、赤星ちゃんを護るように声を上げ、背に庇う様に立った彼女。
「いえ、赤星さんが望んだ事ですから」
厳しい言い草だけど、赤星ちゃんが自分で臨んだ道を全力で助けようとする心を見て取れる―――それだけ大事なんだね。わかるよ。
――月――日
親善試合の日。やってきた優雅を絵にかいたような女性。あれがダージリンだね。隊長クラスは月間戦車道の特集で見て顔は覚えてるし。
当初優雅だった彼女は、Ⅳ号戦車のハッチから顔を出している天翔ちゃんに気が付くなり、柳眉を逆立て、ゆらりと髪の毛が逆立つようなオーラが見え隠れし始め―――
うん、何やったのさ天翔ちゃん……
試合でボコボコにされた後で聞いてみると「黒森峰時代にライバル視されて困ってる。面倒くさい相手」だと返された。
いや、わけわかんないよ。一体何なのさ二人の関係性……
――月――日
「コーチングアドバイザーの西住みほです」
「同じく、逸見エリカよ」
―――ごめん、わけわかんない。説明して?
天翔ちゃんに尋ねたところ、天翔ちゃんがお世話になってた黒森峰の現隊長がこちらに寄越した とのこと。余裕ってやつ?かと思ったら、そうでもないみたいだ。
―――だからこそ解せないんだよねぇ―――どんな魂胆があるのやら?
「―――あのさ?何でここまでしてくれるの?そっちの隊長さんは」
考えてもわからないから素直に聞いてみることにした。嘘とか苦手そうな西住ちゃん―――西住まほの妹ちゃんに。
「えっと―――多分、ですけど。お姉ちゃんにとって、エミちゃんが他人ではないって思ったからだと思います」
まるで要領を得ない返答に、ちょっと困る。
「―――エミは“家族”だからよ。身内のために多少の手助けくらい、するでしょ?普通」
横からやってきた逸見ちゃんの説明で、それなりに納得できた。西住まほにとって、天翔エミは身内なのだ。だから、多少の融通は利かせる。大会で当たるとしたら決勝なので、そこまではいくらかの支援をしてあげようという感じだろう。
「エミから聞いた会長さんの手口について言いたいこともあったけど、やめておくわ。エミが何も言わない以上、私が何か言うのは筋が違うしね」
「ほんとにねぇ。天翔ちゃんも、悪態の一つくらいついてもいいと思うんだけど―――」
本当にそう思う。表立って怒りをぶつけられたり、恨み言を吐かれる覚悟くらいはしているつもりなのに、彼女は無茶を振ってもはいはいと適当に頷いて、そして時に軽々と、時に仲間たちと一緒に、それらをこなしてしまうのだ。
「―――それはきっと、家族だからですよ」
「―――はぁ?」
思わず間抜けな声を上げてしまった私を気にしない様子で、西住ちゃんが言葉を続ける。
「エミちゃんが昔、言ってたんです。『私には家族はいない……いや、いなかった。でも今はチームのみんなが家族みたいなものだと思ってるよ。みんなと一緒に戦車道をやれて、本当に幸せだ』って」
「あの子は昔から、身内と認めた相手にはダダ甘だから困るの」
西住ちゃんの言葉に逸見ちゃんも追従して頷き合う。いや、それは確かにいい話だなーと思うよ?でもなんでそれが私に関係あるのさ?
よくわからなかった私の困惑に気づいたようで、逸見ちゃんが「わからないの?」という顔を見せた。
「―――大洗学園艦のみんなと過ごして、大洗が『家族』だって思ったんでしょうよ。癪だけど」
―――ずるいなぁ、天翔ちゃんは
―――本当、狡い。言ってよ、そういう事はさぁ―――
「そっか―――それは、嬉しいなぁ」
くしゃりと顔が笑みの形に撓む。嬉しくて仕方がない。
だって彼女も認めてくれたんだから。―――この街を、この艦を、この学園を、わたしたちを―――。
「―――言っとくけど、『家族』って言うのなら私たちが先だからね?そこは譲らないわよ?」
「えぇ……そこマウント取るところじゃないでしょ?逸見ちゃん心狭くない?」
軽口を叩き合えるのは良いことだ。背負ってた重荷が、ほんの少し軽くなった気がした。誰かを頼れるっていう事の大切さは、かーしまと小山でわかってたんだけどなぁ―――。
「―――でも、だからこそ気を付けてね?あの子は、身内のためにならどんな無茶でも無謀でも、やってのけようとする気概があるし、無茶できるだけの能力があるから―――」
最後の逸見ちゃんの言葉が、何故かとても心に残った―――。
――月――日
サンダース戦―――立ち上がりからピンチの連続だけど、通信傍受機を見つけ出して反撃して、そこからは、見敵必殺の殴り合いだ。
フラッグ車を発見したという報告に、全車輛で追い込みをかける。それでも、ファイアフライが追いかけて来る限り、じわじわと追い詰められていくのは私たちで―――
「―――灯火(ランプ)チーム。行きます」
通信からそんな声が響いたのは、そんな折だった―――。
「Ⅳ号が稜線射撃で狙います。私たちが時間を稼ぎますから、今のうちにポイントに追い込んでください!」
強い決意のこもった声の赤星ちゃん。天翔ちゃんが傍に居る限り、彼女の闘志は衰えないまま轟々と燃え上がる。
―――この試合は結局、稜線射撃でフラッグ車を貫いた大洗女子の勝利で終わり……なんだけど、
―――ファイアフライを止めるために全速力で突撃し、事故車輛のように色々な場所がひしゃげてボロボロの姿になったⅡ号戦車から、天翔ちゃんと赤星ちゃんを引っ張り出すことに成功した。
―――なんて無茶をするのさ―――!!
思いきり怒鳴りつけてやりたかったけどもそれは私のキャラじゃないし、って考えていたら、黒森峰のPJを着た険しい顔の娘に正座させられていた。
あれ、西住まほじゃない?黒森峰の隊長の。何で?(困惑)
「天翔―――いや、エミ。私はあの日、君を家族の一員として認めた。無論、赤星もだ。だから無茶をするなら叱るし、痛みを悼んで涙も流そう。それが嫌だというのなら、こんな無謀はもうやめてくれ」
本当、そう思うよ。いくらカーボンコーティングが万能とはいえ、あんなんじゃいつか致命的な事態を招く―――
「心には留めておきます」
まぁ、絶対に「はい」と頷くことはないところが天翔エミなんだけどさ―――。
――月――日
アンツィオ戦での大勝利を終えて、車輛整備をしていた自動車部から報告が上がった。「ルクスの車内に血痕が残ってる」って―――
そのことで天翔ちゃんを問い詰めたところ、彼女のグラブの内側が血まみれになってて、人差し指に巻かれた包帯から血がにじんでいた。
「―――あー……練習中に、一寸ひっかけて、爪がベリッと。人差し指一本だけだったし、試合には影響なかったですよ」
―――いや、言おうよそこは!!感染症とかさぁ!破傷風とか危なすぎるじゃないか!!!
とりあえず緊急検査入院という体をとって校長に車で病院に送ってもらうとして―――
「―――天翔ちゃん。正座」
「はい」
スッと堂に入った座り方。明らかに座りなれている。
これは本当―――矯正のし甲斐があるなぁ。
『家族』って認定されたんだもんね。
少なくともこれ以上の無茶はやめてよ天翔ちゃん。おねーさん。結構胃に辛いんだよ本当……。
―――まぁ、そんな私の祈りなんか吹っ飛ばす出来事が、この後も続くんだろうなぁとしか、思えないんだけど―――。
プラウダ戦前になんか入れておきたくなって「じゃあ入れようか」で挿し込んでみた()
多分小梅ルートのプロット出力し続ける方が脳に優しいので最後までこっちを先に突き抜ける所存。
チーレム主人公みたいになっていると思った人もいると思いますが、会長のポジはたぶん某所でのドゥーチェです(あそこまで突っ切ってはいない)