【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】 作:米ビーバー
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「―――ごめんなさい」
「まぁ、うん……誰が悪いというわけでもないと思うよ、私は」
しんしんと降る雪の上、一面を覆う降雪の絨毯に囲まれた、廃墟の中で、ぽつりとつぶやくように告げられた懺悔の言葉に、俺は咄嗟にそんな、ギリギリフォローにもなってないフォローのような言葉を返すのが精いっぱいだった。
それは小さな声だったが、しかし静寂に満ちたこの空間ではやたらと響いて聞こえたようで、周囲で寄り集まって暖を取る皆もやや沈んだ表情を見せる。
「せめて……隊長の私がもっと偵察などで相手の動きを警戒していれば……」
「それだけでどうにかなるものでもないさ。ルクスの装甲で連中の砲弾なんか食らった日には一撃でアウトだし、偵察に出て撃破されました。隊長が不在でグダグダの状況で負けましたじゃ、シャレにならないでしょ」
誰の責任でもない。を強調するも、赤星さんの顔は曇ったままだ。それだけ、受けたダメージは大きかったという事だろう。
窓ガラスがギリギリ残っている窓から外の様子を見る。雪景色を彩る空模様は昏く、吹雪が予想されるほどだ。
「―――秋山さんたちが戻るのを、とりあえずは待とう」
俺の言葉に「はい」とだけ返した赤星さんは、毛布に包まって顔を隠し蹲ってしまった。その表情は読み取れないが、毛布を掴んでいる手に込められた力でわかる。
―――とりあえず俺に今できることは、その背中を撫でてやることくらいしかできない。周囲からの目が俺に集まっていることを感じながら、また窓の外を見上げる。
室内に入り込んだ一陣の風が――――――
―――俺の頭の上で存在を誇示する猫耳を揺らした……確実に周囲の目を集めてる理由、これだよな?
人間には触れてはいけない傷みがある。其処に触れてしまったら後は命のやり取りしかない。と言ったのは誰のセリフだったか――――
人が人たる所以として感情というものがあり、およそ生物においてはこれが行動の根幹を担い、時に有利に、時に不利に働くと言って過言ではない。怒りに任せた攻撃は単調になるし、怒りを制御して戦うことで攻撃の苛烈さだけが増す人だっている。
そして赤星小梅にとって「それ」は、看過できない傷みであった。ただそれだけの話だ。
『#7 次はいよいよプラウダ戦です~「今の発言を、取り消しなさい」~』
――月――日
港で補給作業のため、対プラウダ戦の買い出しに出かける。カートを押してる姿を単独で見られた場合「お嬢ちゃん?ママはどこ?」とか聞かれるのにも慣れたし、商店街の方にいくともうおじいちゃんおばあちゃんたちには周知されていて、色々とあーだこーだ世話を焼かれるので、大型デパートとかそっちに行くことにしてるんだが、このやり取り本気でめんどい……かといって大洗の制服着てデパートを歩くのもなんか恥ずかしい。
ジレンマの解消に一度武部殿を誘って二人でお買い物したところ、武部殿がママと誤認されてガチ凹みした結果、気の毒すぎて誘えなくなってしまった。
この身体は筋肉とか脂肪とかがパワーの割についておらず、肉が少ないため保温効果が著しく悪い。なので冬場とか暖房装置がないと死んでしまう(確信)
次のプラウダ戦とか原作で吹雪とか起きてたし、カイロなどの暖房効果があるアイテムを大量に持ち込んでおかないと死活問題になりかねないので、必要な投資なのだ―――
―――後で必要経費として申請だけしておこう。受けてもらえたら儲けものだし。
――月――日
会長にお呼ばれして赤星さんと二人、生徒会室で鍋パでした。
あんこう鍋うまかっ です 。
「ほらこれ、珍しいだろ、河嶋が笑ってんの」と嬉しそうに色々な写真を取り出して語っている会長と、懐かしそうに話す桃ちゃん柚子ちゃん。
「赤星ちゃん、天翔ちゃん。この艦を――――大洗をどう思ってる?」
会長の言葉の意味がよくわからなかった。赤星さんは「私は好きです。この街も、学園も、戦車道のみんなも」と答えている。俺も同感だし「黒森峰とはまた違ってますよね。でもここの雰囲気は、なんかいいですよね」と答えておく。
それ以上何かを言うことなく、笑顔で俺たちを見送る会長。やっぱり廃校の話はしないんだなぁ……。
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「良かったんですか?言わなくて……」
「―――天翔ちゃんの方はもう知ってるし、赤星ちゃんに負担かけさせたら危険だしね……ま、なるようになるさ。大丈夫」
炬燵に入ったまま、後ろにどーんと倒れ込んだ角谷杏は、天井を見上げる。
「“家族”にさぁ―――隠し事するのは、やっぱ辛いね」
杏のつぶやきは、誰にも聞こえることなく消えた。
――月――日
今日はプラウダ戦だ。みぽりんという軍神のブースト抜きでどこまでやれるのか……やれるところまでやってみよう。
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「あははははははは!!!このカチューシャを笑わせるためにそんな戦車まで用意したのね?ね?」
うわぁ、生カチュだー背ぇ小せぇー、俺も同じくらいだけど。的なことを考えつつ、寒さに震える俺。大笑いするカチューシャの視線がそんな俺の方へ――――そして止まる。
目を丸くしてじーっと俺を見ているカチューシャ。何なの?
「ノンナ!!」「Я понимаю」
「日本語!」「了解しました」
それからのやり取りはまさに電光石火だった。阿吽の呼吸ってレベルで二人の声がノータイムでシンクロし、一歩で踏みこんだかのような錯覚すら覚える入身で、一息に間合いに踏み込んだノンナによって担ぎ上げられる俺。
「わぁぁぁぁぁ!?」
「エミさん!!?何をするんですか!!」
「大人しくしていてください。すぐに済ませます」
柄にもなく大声の悲鳴を上げてしまう俺と、困惑する赤星さん。俺を抱き上げたノンナは頭頂部から足先までを服の裾から取り出したメジャーをサッと伸ばし、その後ぐっとハグして解放する。やんわりと地面に降ろしてから俺の頭を「よく我慢できましたね」とでも言わんばかりにナデナデしてから踵を返し、カチューシャの前で恭しく傅くように片膝を突く。
「身長124センチ、誤差0.5以内。 体重22キロ、誤差100グラム以内です」
「―――――!! あなた、名前は?!」
ズイと詰め寄って来るカチューシャに、反射的に「て、天翔エミです」と答えると、グッと両手で俺の両手を包む様に握ってぶんぶんと上下に揺さぶり始めるカチューシャ。もう当惑しきりでなされるがままに上下に揺さぶられてる俺。
ちなみに先ほどの身長体重はこの間PJのために測定した結果と全く同じだった。何なのノンナ……マジ何なの……?(驚愕)
「気に入ったわ!カチューシャの
なんかカチューシャにめっさ気に入られている件。なんで?(困惑)
思い当たる節と言えばさっきの実測なんだが……あれ?目線ちょっと俺の方が下じゃね?もしかして俺、カチューシャより背ぇ低くね??(驚愕)
そら大洗のメンバーがカチューシャにさほど驚きもないはずだわな。わかってたことではあるが実際に自分の背の低さを再確認すると、なんだ、その……凹むわぁ。
お誘いは嬉しいんだが俺には赤星さんの治療とかみほエリを成しえるとかやらねばならないことがたくさんある。それはまぁプラウダでもできなくはないんだが……
「―――お断りします」
俺を引っ張り込む様にしてカチューシャから取り上げたのは赤星さんだった―――あの、顔険しいです赤星さん(敬語)
「―――なんなの?貴女」
「エミさんのお友達で、エミさんと同じく黒森峰から大洗に来た、赤星小梅です」
“エミさんのお友達”と“エミさんと同じく”を強調してるように聞こえるんだけど、マウント取ろうとしてる?してない?何で?(困惑Lv2)
黒森峰という単語にピクリと反応したカチューシャは赤星さんを見上げ……ムッとした表情でノンナを呼びよせて肩車モードに移行、そのまま赤星さんを見下すような視線を向ける。
「生意気ね貴女。このカチューシャを見下ろすなんて10年じゃ足りないくらい早いんだから!それに―――黒森峰ですって?去年ウチに負けた負け犬じゃないの。そんなところからやってきたとか自慢にも――――」
―――カチューシャの言葉は最後まで続かなかった。
「―――――取り消しなさい」
俺を後ろに降ろして、改めてノンナの上に乗るカチューシャを見上げる。強い怒気を孕んだ気迫を内に含んだ瞳で。
「な、何よ……凄んだって怖くなんかないんだからね!!」
「―――取り消しなさいと言っているんです!!黒森峰は負け犬じゃない!!私が失敗さえしなかったら!あの事故さえなければ黒森峰は―――――ッッ!?」
がくんと糸が切れた人形のようにその場に膝を突いて倒れる赤星さん。慌てて駆け寄った俺の耳に、ひゅぅひゅぅという息遣いが―――
「会長!ビニール袋!過呼吸だ!!」
「河島ぁ!!」
俺の声に反応して会長が叫ぶ。桃ちゃんが慌てた様子でこちらに駆け寄り、持ち歩いているビニール袋を赤星さんの口に押し当てるようにして応急処置を施し―――
「―――何なの?そんなザマでよくカチューシャに文句が言えたものね?……まぁいいわ、エミーシャ?そんな連中放ってウチに来なさい。試合の後に返事を聞かせてね?それじゃあね~、ピロシキ~」
言いたいことだけを言って地に伏す赤星さんを尻目に去っていくカチューシャ。
ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、か細い声で、赤星さんは呟いている。
「―――隊長の……みほさん……の……エリ……カ、さん、……の……――――
――――みんなへの、暴言を……っ!取り消して……―――ッッッ!!!」
その悲痛な姿に、大洗の戦車乙女たちの胸に強い決意が宿るのは自明の理だった。
だが、怒りというものは冷静さを失わせる。
しんしんと降る雪が、多少なりとも炎を鎮めていれば、ああはならなかったかもしれない―――。
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「カチューシャ、先ほどの発言は―――」
「わかってるわよノンナ……試合の後でちゃんと謝るから。……にしても、あんな状態の選手を試合に出すなんて、どうかしてるわ」
肩車をされたまま咎めるような口調のノンナに、ぶすっと口を膨らませるカチューシャ。当人もあんな結果になると思ってもいなかったようだ。
本来の予定では十分に相手に挑発を行い、冷静さを欠かせて包囲殲滅までの時間を短く済ませたいと思っての行動であったはず―――だったのだが、悲惨な様子の小梅にそれ以上の追撃もできず、心配そうに寄添うエミの様子に小梅を追い詰めた手前、どうにも仲良く声をかけることができず、割とどん詰まりの思考に陥っていた。
「―――エミーシャを引き抜くなら、まずあの娘を引き込まないといけないわね」
「……本気で彼女をプラウダに?」
「勿論よ。エミーシャとなら仲良くやれそうな気がするもの」
ニコニコと笑うカチューシャにノンナは思考する―――そうなった際の日々を……
カチューシャが居て、自分が居て、カチューシャと同じくらいの背丈で艶やかな黒髪の、子猫のような少女が居て――――
「――――――――」
「ノンナ?」
「Прости(失礼)、少し暖気を強め過ぎたようです」
鼻と口元を手で押さえるノンナに、カチューシャが心配そうに身体を曲げて覗き込む。ノンナはそんなカチューシャの頭を優しく撫でて、目を細め大丈夫だとアピールして見せた。
「―――では、私の方から和解のための品をお送りしておきます」
「ん。任せたわ」
上機嫌に戻ったカチューシャを乗せたまま、ノンナはプラウダ陣営のテントまで戻っていった。
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「―――敵の作戦はおそらく包囲作戦です。そのため、敵は広く陣形を展開し、こちらを包む様に進軍、両翼が反転しての包囲だと思われるので、包囲が完成する前に敵陣を切り裂いて向こう側に抜け、反転してフラッグを叩きます」
復活した赤星さんの作戦提示が行われる。作戦名「疾風怒濤(スツルム・ウント・ドランク)」雪中行軍という寒さを考慮して一気呵成に攻め込み、早期決着をつけようという目的の作戦である。―――原作からすると破綻するんだが、アンツィオに勝利した勢いもあり、大洗陣営はこの攻め攻めの作戦に超乗り気である。
さぁこれから試合だと始まる前に、なんかプラウダから特使と名乗る二人組がやってきた。
「先ほどの謝罪にこれを、と、ノンナ様から」
そう言って俺にプレゼントボックスを手渡して去っていく。受け取った俺の方としては「?」なんだが……何で俺?(困惑Lv3)
とりあえず開けてみる。
―――――フワフワした毛並みの猫耳カチューシャが鎮座していた。
――――何で?(困惑Lv4)
「―――連中、私たちのこと舐めてますよこれ!!」
「目にもの見せてやりましょう!!」
一年生ズが主に燃え上がっていた。なお熱は伝播し、大洗全体になんか半端ない士気高揚が起きていた。
―――なのでまぁ、状況としては
会敵するまで真っ直ぐに駆けだした大洗軍はプラウダ陣営の一団と会敵、砲撃戦もそこそこに相手が後退を始めたので追撃。
交代する相手が他の団体と合流、砲撃戦を行うも、その中にフラッグ車を発見。ここで全員の目がフラッグ車のみに釘付けになった。
分厚い装甲の重戦車とT-34の傾斜装甲で砲撃をいなしながらフラッグを逃がすプラウダに対し、大洗の追撃は敵中突破を是とした。
プラウダの車輛が軒並みフラッグを護衛して後退するのを追いかけるように前進する大洗車輛。
村落のような石造りの家屋が立ち並ぶ場所でフラッグを追い詰め―――周囲の家屋から飛び出してくる他の車輛に囲まれたことに気付く大洗メンバー。
すぐ近くにある大聖堂というか、大型家屋の中に全車輛で逃げ込み何とか全員逃げ込む。逃げ込む際に履帯をやられて動けなくなった三突と、それを押し込む際に砲塔をやられたⅣ号。這う這うの体というのがよく似合う状況だ。
轟音と衝撃が鳴り響く中、耐えているとふいに砲撃が収まり―――
白旗を掲げた使者がやってきた。
「降伏の勧告に参りました。隊長はお優しい方なので、全員土下座すれば許してやる、とおっしゃっています」
「隊長はお優しいので3時間待ってやるとおっしゃっています。では、3時間後に、また」
そう告げると、きょろきょろと周囲を見回し始める二人組。
「―――あの、天翔エミさんという方はどなたでしょうか?」
「あ、はい、私ですが?」
手を上げて応える俺に、どこからか取り出したカメラを向ける二人組の一方。
「すいません。試合前に贈った猫耳を装着したうえで、写真を撮影させていただけないでしょうか?」
――――――――――何で?(困惑Lv5 上限)
「お願いします。断られると副隊長にお仕置きされる可能性が高く、我々も必死なのです」と泣いて懇願され仕方なく猫耳撮影会になった()
報酬として大鍋一杯のボルシチを受け取り
「はい、こっちに目線下さーい。いきますよー」
「――――にゃぁん」
死んだ目にだってなろう。一時の恥もこの後の反撃のための狼煙にすべきなのだ―――!!そう考えないと心が折れそうです(弱音)
秋山殿の視線がなんかすごいやばい感じがするのと、真面目過ぎる赤星さんが若干現実逃避してるのと、あと会長がなんかちょっと怒ってるのとで大洗の空気はすごく……微妙です。
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「―――降伏は……したくありません」
「だよねぇ」
復活した赤星さんと会長の意見は一致している。周囲の大洗メンバーの士気もまだまだ高い。
―――とはいえ、寒さには勝てない。時間がたつにつれて闘志も萎えて来る。偵察に出ると言って出て行った秋山殿・エルヴィンペアとそど子・まこりんペアの二組が帰還するまで、ジッと待つしかない。
―――外は吹雪いてきている。ボルシチで十分に腹が膨れて体温も持ち直してはいるが……手持ちの暖房グッズが皆の士気をどれだけ維持していられるか、正念場と言えた……。
「この吹雪にあの状況――――大洗にとって状況は劣悪と言えるな」
「でも……エミちゃんもみんなも、まだ諦めてないみたい」
雪の降る中、まほとみほは並んで戦況を示す掲示板を眺めている。
「はい、温かい飲み物、買って来たわ」
「ありがとう、エリカさん」
ホットココアの入ったカップを手渡し、次にまほにも同じものを渡そうと移動するエリカの背後で
「熱っっ!!」
カップの上蓋を外し中身を一口飲んだみほが、あまりの熱さに声を上げ、手を離してしまいカップの中身を盛大に首元のマフラーにぶちまけてしまう。
「……ああもう、何やってんのよ本当にもう……!!」
「ご、ごめんなさぁい……」
みほのマフラーを急いで外し、首元を手持ちのハンカチで拭っていくエリカ。そんな二人の様子をなんだか微笑ましい様子で見ているまほ。
水分を吸ったマフラーはもう役に立たないので、持ち帰るためのサイドバッグに詰め込まれた。
身を竦ませる寒さに吐く息白く、肩をすくめて身を縮ませるみほに
「ほら、使いなさい。私はそれほど寒さに弱くはないから」
「―――あ、ありがとう……」
自分のまいていたマフラーをみほに巻きつけて、ホットコーヒーをぐいと煽るエリカ。
「―――私もココアにすればよかったわ。珈琲ならエミの方がずっと美味しい」
「うん。そうだね」
「―――――今なんか良質のみほエリがどこかで起きた気がする!!」
エミの叫びは寒さによる幻覚で片づけられ、事なきを得たという―――。