【 三次創作 装填騎兵エミカス ダージリン・ファイルズ 】   作:米ビーバー

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「はぁ……はぁ……はぁ……!!」

苛立ち紛れに散々叫び続けた後で、私の通信機に通信が響く。



 ―――“黒森峰のものではない”通信機から



「―――こちら逸見。撃破されたわ」
「うん。聞こえた」

のんびりとした声に若干イラッとする。けれどついさっきまで叫び続けてた私の沸点は下がっていて、そこで怒鳴り返すほどではなかったし……そんな暇なわけでもなかった
通信機の向こうからは相変わらずのんびりとした調子の声が響く。


「それで?どうだった?」
「……アンタの言った通りよ。悔しいけど、不意打ちで撃破されたからこそ言えるわ。


 ―――あの娘が“自分の矜持を捻じ曲げてでも勝ちに来てる”って」


私の出した結論に、通信機の向こう側の声が収まりやや静かな調子に変化する。


「―――そっかぁ……やっぱり、無理させちゃってるんだね。天翔ちゃんには」
「負けたら廃艦で、廃校になって、みんなバラバラ。気にするなって方が無理な話よ。みほが知ったら動揺なんてレベルじゃないわ。勝たなきゃいけないのに勝つことをしたくない、できないなんて二律背反に圧し潰されて身動きが取れなくなるでしょうよ」
「それは―――西住ちゃんにも黒森峰にも申し訳ないねぇ……ウチとしては助かっちゃうんだろうけど」

 おどけた調子の言葉だが、声に力がない。彼女も心配なのだ。試合の後のエミの去就が―――。そこまで追い込んでしまったと自責の念を感じるのは、彼女がエミを巻き込んでしまった自覚があるからに他ならないのだろうが。エミのために自分のために協力を申し出たし、協力を引き受けた。だが私はもう盤面に参加する資格を失った。自分と引き換えにエミの立ち位置を確認することを選んだ結果だから仕方ないことなのだけれど……。


「―――本当……嫌になるわ。全部“あいつ”の掌の上って気がしてるのが、特にね」


むかむかとした感情をぶつける先が見当たらないまま、私は空を見上げた。



【 装填騎兵エミカス IF:小梅ルート ⑬ 】

 『 #13 激戦です(後) ~「エミ、君は一体何をしたというんだ―――!?」~』

 

 

 

 あの娘。天翔エミは極めて正しく戦車道を戦車“道”として考えていると断じていい。と、私は考えている。

 

 かつて装填の訓練を続けるあの娘は言っていた。「自分には“これ”しかないからね」と。

 あの余人と一線を画すレベルの身体能力を以て行われる装填は、他の戦車道選手の追随を許さないものであった。少なくとも現在でも静止状態での装填ならば他のどの高校生戦車道選手であっても勝つことは不可能だろう。しかし、あの娘の軽すぎる矮躯が揺れる戦車内での装填を許さない。身体は左右に揺れて覚束なくなり、あの娘の膂力を活かす場面は喪われる。

 他のスポーツの分野ならば優にオリンピックすら狙えるであろう能力であると言っても過言ではない。けれどあの娘はそうしない。あくまで戦車道にかじりつき、装填手として戦車に乗り続けている。

 

「アンタはどうしてそうまでして戦車道に固執するの?引く手数多でしょう」

 

そう言ってやったことがある。その時あの娘は少しだけ考えるそぶりを見せて、こう言ったのだ。

 

「戦車道(これ)でしかやり遂げられないことがあるんだ。私はそれを成し遂げるために生きているんだよ」

 

 あの娘が戦車道に何を感じ入り、そして戦車道に何を求めているのか、それは分からない。けれどあの娘は戦車道に対してはいつだって真摯に向き合っていたし、あの娘なりの矜持であるという結論は揺るがないだろう。

 

―――少なくとも、「敵として戦ってみたかった」と言っていたあの娘が、敵として見た相手を前に正面からの戦闘をすることもなく「煙幕から他愛ない雑談で油断を誘い、盤外戦術から不意打ちの狙撃」などという手段を用いて相手を撃破するなどありえない。普段のあの娘の性質を知っているならば猶更の話だ。

 

 

 

『全方位通達――――――――!!“牙を突き立てろ”』

 

 

 

 チーム内の固有周波通信ではなく全方位への通信でのこの言葉は、エミの作戦が始まった合図であり――――私たちへの訣別の言葉ともいえる。

 

 

「―――お願いよ、みんな」

 

 

 天を仰いだまま祈るように呟く。私にできることはもうない。少なくとも、今のところは―――。

 

 

 

 

*******  Erika → Mob

 

 

 

 ―――嘘だ。

 

 砲火の華が咲く。そこかしこで起きる爆発音は、しかしわたしたちの勝利の凱歌ではなかった。

 

 ―――嘘だ。

 

 周囲に激震が走る。砲撃の余韻で空気が震え、連鎖の波で建物が揺れている。共振は振動となって空間を伝ってここまで走ってきている。

 

―――うそだ

 

 報告が届く、次々と―――

 

 

「―――嘘だぁ……」

 

 呆然と呟く私の声は絶望に満ちていて―――

 

 

「―――嘘ではない。当然の事実だ」

 

私の前を征くティーガーⅠから顔を覗かせる憎たらしい仇敵。

―――西住まほの声が、響いていた。

 

 

 

******* Mob → Emi

 

 

 

「―――以前に言ったはずだが、お前たちは学ばなかったようだな。

 

  ただ数を揃えるだけで勝てるなど、西住流に対する冒涜だ」

 

 ―――いや、それにしても限度があるだろ。

 

 内心で毒づく俺は今―――ティーガーⅠのまぽりんを取り囲むマウスとかませさんの配下が操る合計7輛のパンターとティーガーⅡの、“頭上”にいる。砲撃の雨に晒され割と倒壊しそうな斜めに崩れたビルの上、(かし)いだ屋上部分に座りこんで双眼鏡片手に覗いている俺である。

 

「―――いや、強すぎるだろまぽりん」

 

 そういえば、と思い出す。まぽりん高等部に上がってすぐのころに当時の高等部の戦車道生全員ぶっ飛ばすというサル山のボス猿理論でてっぺん取ったんだったか……そりゃ数の戦いに慣れてるわ。と納得もできん。どう考えても動きがおかしい。おかしすぎる。とはいえこの状況は拙すぎるんでスロートマイクを使ってレオポンに連絡を入れる。

 

「もしもしレオポン?作戦変更。砲撃支援しなきゃマウス以外速攻で落ちるよこれ」

『こちらレオポン。ごめーん、ちょっと無理ー』

 

 ―――は?と、思わず声が漏れた。

 

『なんかねー?こっちの照準が合う直前にー、なんかスッと動くんだよあの戦車―。こっちの攻撃が見えてるのかもー?』

 

 ―――悲報、まぽりんが人外過ぎた件。

 

 いや落ち着け俺、ビークール!KOOLになれ俺よ!相手は同じ人間なのだから。

―――言ってて自分で「いや俺も大概だよなぁ」と納得してしまったよ!畜生なんてことだ!!

 とはいえ思考停止してもいられない。

 

「んじゃレオポン。ここはいいからアヒルとカモさんの応援に行ったげて?あそこが装甲抜けない分一番辛いから」

『りょーかーい』

 

レオポンに指示を飛ばして、上から俯瞰して7対1の試合を観戦してみる。

 なお、この決着は僅か2分ほどでついた。同士討ちを考えて動きが固くなったパンターを次々撃破していくティーガーⅠに対して完全に置物のマウス。実質6対1で、動きにくい市街地の中でこんだけギャンギャン動けるって相当なんだが……

 

 で、上から見ててわかったこと。【西住まほは砲塔の方向から射線を見切り、その中心点から弾道のぶれまでを計算してあらかじめ回避距離を見切って動いている】

 普通にありえない。人間の所業とは思えない思考ではある―――のだが、どうしようみぽりんの原作の計算能力とか記憶力考えたら姉が同じことをできないとは全く思えない(恐怖)

 どうやってあんなのに勝てって言うんだよ……とまぁ、若干心がへし折れかけた俺の方向へ

 

 

―――ふっと顔を向けるまぽりんと、“目が合った”

 

 

 

―――バレてぇらぁ……(畏怖)

 

 

 

 

なんなの?なんなのまぽりんもみぽりんも、マジなんなの?人体のスペック勘違いしてない?おかしくない?どうやって気づいたの?気とか感じ取れるの?かめ●め波とか撃てたりするの?

 

 ―――想像して「西住波ー!!」とか叫んで気功波を撃ち出して戦車をぶっ飛ばすしぽりんの姿が幻視出来たので怖すぎるからこの思考終了!!

 

 『―――エミ。いるんだろう?降りてこい』

 

まぽりんから渡された通信機から声がする。逃げ場は―――なさそうだ。

 

『天翔ちゃーん?こちらカメさん、パンター1輛撃破したけどどっちに行こうか?』

 

能天気な会長の声が若干恨めしく―――

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

「―――会長。まほ隊長からのお誘いなんで、こっち来てもらえます?」

『え?私らでいいの?Ⅳ号の方が―――』

「会長たちの力が、必要なんです」

 

強い口調でお願いする。一縷の望みが見えたのだ、ここで逃げるわけには行かない。どの道、まぽりんを沈黙させなければ黒森峰には勝てないだろうし、フラッグのⅣ号で挑んで負けられない戦いなんかするのは無理ゲー過ぎる。

 

『―――そっかぁ。わかったよ、おねーさんにまっかせーなさーい』

「よろしくお願いします。それと―――」

 

俺は手短に指示だけを伝えると、通信を切って、“翔んだ”。

 

屋上からふわりと身を躍らせ、風を絡ませ落下。その途中で外灯を掴んで曲がっている部分を使って大車輪、片手車輪、かーらーのー隣の建物の壁に向かって射出。壁を蹴って減速、ベランダでもう一度減速して、ふわりとティーガーの前に降り立った。

 

 

「降りてきましたよ。生憎、戦車は来るまでもう少しかかるんでちょっと待っててください」

「そうか、では待ってる間、正座だ」

 

 

 

―――何で?(困惑)

 

 

 

「え?あの……まほさん?」

「正座だ」

「あの……ほら、黒森峰と大洗で、決勝戦で、あの」

「正座だ」

 

「――――――はい」

 

―――そういうことになった(夢枕獏感)

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

「―――おまたせ~」

 

 5分後、コンクリの上に正座してティーガーの上からまぽりんに睨まれている俺のところに会長がやってきた。ちなみにマウスは沈黙したまま。隙をついて狙おうとしないのはすぐ傍に俺が居て着弾の爆風に巻き込まれるからだろうか……?

 

なお、5分間の間に戦場は激変していた。

具体的に言うと【まぽりんとみぽりんを除く黒森峰戦車が全滅している】。

ウサギさんの戦略大作戦だとか、うっちゃりヤークト撃破とかも見どころだし、カモさんアヒルさんのツインバードとレオポンの【ダックハント】も見どころと言えよう。戦車道大会決勝戦として、実に見どころある戦いだった。

 

 ちなみに今、大洗に大分有利に働いているのだが―――俺としては戦々恐々だったりする。

だってみぽりんがまだ残ってるからね。背水の陣を敷いて劣勢になればなるほど光り輝く逆転の化け物だからね!!(恐怖)

 

 

「―――では、始めようか」

「そうですね。始めましょうか」

 

バックステップで飛び退り、とんぼを切りながらヘッツァーを昇り、昇降口のハッチを開いて飛び乗る。いつも通り上からこちらをじっと見つめるまぽりんが、スッとコインを取り出し

 

 

 

 

 

 

―――ピィンと、指で空に向けて弾いた。

 

 

 

 

 

 

―――キィィィンッッッッ

 

 

「―――回頭!!全速前進!!」

「回頭!追撃だ!!」

 

 

コインが地面に落ちて金属質の音を立てたのをスタートの合図にヘッツァーとティーガーⅠが弾かれたように駆け出した。

 

 マウスを盾に死角に入り込むヘッツァーと、それを許さずこちらの向かう先を読んで回り込もうとするティーガーⅠ。あちらには行進間射撃のノウハウもあり、不利は否めない。加えて、さっきの回避力なら絶望的もいいところだ。

 

 

―――そこに付け入る隙がある。

 

 

虎視眈々と狙いを定め、俺は装填席で静かにタイミングを待つ。

 

「天翔ちゃーん?ほんとにそこでいいの?こういうのって車長は天翔ちゃんがやるもんじゃないの?」

「いいんですよ。ガラじゃないんで、それにまぁ、ここのが【らしい】でしょ?」

 

 

 

*******  Emi → Maho

 

 

 

 単調ではない、それなりに複雑に動き回っている。流石は偵察車輛と言ったところか。だが、こちらの装甲はやすやすとは貫けない。加えて、ヘッツァーは「こちらの車輛」だ。その移動速度や砲の可動範囲も熟知している。

 

 

―――君がもしも奇蹟を起こすというのなら、見せてくれ、エミ!!

 

 

 ティーガーを回頭させ、同時に後退のサインをスタンプ(踏)で送る。キックの強弱で速度の調整を、回数で微動か走行か、その差異は叩き込んである。

後退で加速しマウスの照準を躱す。エミが来たことでやや心が持ち直したか、惨めったらしくこちらを狙っているようだが……

 

「―――もはやお前(マウス)は私の“敵”ですらない」

 

後退に旋回を加えて移動。砲塔を向けて至近距離で一撃。

 

 

―――ゴガァンッッ!!!

 

 

 衝撃と反動が車体全体にも走ったが、履帯を覆うスカートを吹き飛ばし、片輪に咬みつかせることに成功した。これでもう身動きもとれまい。

 一仕事をする間にこちらに隙ができてしまったようだった。側面を取られ回頭したヘッツァーがこちらに向く。

 

―――左、旋回、高速、後退

 

足で指示を刻み、ティーガーを旋回させる。ヘッツァーの射界から完全に外れたことを確認して再度指示を―――

 

 

 

「―――うてぇーい!!」

―――ドォンッッ!!!

 

 

 

「―――なに……?」

 

 

 衝撃がティーガーを揺らした。砲撃が履帯を覆う前面装甲の一部に掠り、削られている。

 

 

―――どういうことだ?射線からは完全に外れていたはずだ。

 

 

 

「―――エミ。君は一体、何をしたというんだ―――!?」

 

 

 

 

******* Maho → Emi

 

 

 

 

「ちゃくだんかくにーん!よぉっしよっし!あたったよぉ!!」

 

 

会長の嬉しそうな声に

 

 

「かいちょぉ!もう無理ですぅ!ティーガーに追いつかれるぅ!!」

 

 

悲鳴を上げる柚子ちゃんと

 

 

「あ、当たった―――当たったぞ天翔!!見たかぁ!これが私の実力だぁ!!」

 

 

―――ものすっげぇ嬉しそうな声の桃ちゃん先輩。

 

 

 

 

 今頃きっと「何の魔法を使ったんだ」的な困惑をしているであろうまぽりんへ―――

 

 

 

 

  ―――わたしにもわからん!!(鉄男感)

 

 

 

 俺がまぽりんの動きから推測した「まぽりんは相手の車輛のデータを脳内に叩き込んでいて、射線と射撃半径を見切って避けている」という予測。そこから逆転の発想に至ったのは、会長からの通信のおかげだった。

 

 

―――データをもとに射撃を予測回避するなら、予測の効かない砲撃でどうよ?()という作戦でも何でもないただの博打である。

 

 

 まさかここまで覿面に当たるとは思ってなかった(迫真)

ともあれ、回避の予測が立たない砲撃にまぽりんのデータ回避は崩れ、勝負はこちらに有利な流れを取り戻した。

 

 が、それでも早々沈んでくれないのが西住が生んだ最強の刺客まぽりんである。

 

ヘッツァーの砲では数を撃たなければダメージを蓄積できない。その分撃ち続ける必要があるわけで―――

 

―――ぶっちゃけ言うと【桃ちゃん先輩の砲撃に対応し始めて来た】のだ。

 

 本気でありえねぇよこの人。みぽりんのやったような「相手の履帯攻撃して動きを止め、ドリフトで滑り込みながら接近して接射」か、或いは愛里寿みたいに「砲撃の射線を読み切れないようにコマのように回転しながら行進間射撃」がまぽりん撃破の最適解だったということだろう。極まりすぎてないこの人?

 

 

 

 ―――というわけで作戦Cを発動。

 

 

 

 十分に桃ちゃんの砲撃に慣れて、こっちの砲撃の射線のズレを修正してくれたところに

 

 

―――おもむろに会長が射撃をするのである

 

 

想定されていた射線のズレがないまま真っ直ぐ飛んできた砲弾に貫かれ、装甲のぶっ飛んだ履帯部分を破壊されたティーガー。

 

 

「会長!止めだ!!」

「はーいよぉ!」

 

 

快速でぶっ飛ばし、旋回する砲塔から逃げながら後部へ回り込むヘッツァー

 

 

 

 

 

―――勝った!!第三部完ッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

―――ゴリンッ と、なんか絶望的な音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ごめぇん天翔ちゃん。転輪はずれちった♪」

 

 

テヘペロッ☆ミ とおどける会長と、桃ちゃん柚子ちゃんの絶叫が響くヘッツァーは盛大にドリフトし、それでも意地でティーガーの背後に回り込んだ。が、砲塔が明後日の方向を向いていて―――

 

 

 

「「―――撃てッッ!!!」」

 

 

 

二つの命令と砲撃は同時で――――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――黒煙が晴れた後には

 

 

―――白旗を上げるティーガーとヘッツァーの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「馬鹿な―――!?どこから……!?」


シュポッと気の抜けた音を立てて、Ⅲ号突撃砲から白旗が上がる。



~~~♪~~ゃ~~~~るぜ~~♪


軽快に鼻歌を口ずさみながら、足でダンスを踊るようにステップを踏む。
肩に刻まれるステップから読み取った砲手と操縦手は回頭と旋回を行い、次の狙いを定めた。


「―――撃てっ!」


ゴゥンッと重い音を立てて吐き出された砲弾が、大通りの向こうから“こちらに逃げて来る”アヒルさんチームの八九式に正面から突き刺さり、衝撃で前のめりに回転して吹き飛ばされた八九式はそのまま沈黙、白旗を上げた。


ゆっくりと、地面を踏みしめる履帯の音を響かせて、ティーガーが往く。


この大地は我がものぞと、誇示するように。


―――『黒森峰、ティーガーⅠ!大洗女子、ヘッツァー!行動不能!!』


運営の放送を耳にし、ハッチから顔を出してウキウキとしていた少女は、やや顔を曇らせた。


「―――そっか、エミちゃん、やられちゃったんだ……」


その内心を包んでいたのは「お姉ちゃんはずるいなぁ」という若干の嫉妬と、「お姉ちゃんを撃破できたんだ。やっぱりすごいなぁ」という憧憬。


「―――うん。じゃあ、当初の予定通りに―――」


後退して、と指示を送ろうとした少女は、不意に顔を上げて、大通りの向こうを見た。




「―――西住副隊長。―――いえ、みほさん



 ―――わたしと、“わたしたちと”、戦ってください」



赤星小梅と、Ⅲ号戦車が彼女を待ち受けるようにそこに居た――――。


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